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  • from: ☆(⌒杰⌒) AMA-G'ですさん

    2010年03月19日 18時18分38秒

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    想い出の縁側、戻らないあの頃を偲んで、猪口を傾けた。

    春の気配は日暮れからの、一人で早めの晩酌…。
    ★(⌒杰⌒) AMA-G'です

    窓から差し込む陽の光の感じが変わってきたのは
    まちがいなく季節が移ったからだ。

    蘇った太陽の暖かさはいつのまにやら
    舗道の雪を解かして、長かった冬がもう少しで終わることを告げている。

    四季がはっきりしているといわれる日本も
    東西南北、住む所によって、そのはっきりさ加減は大いに違う。

    かれこれ三十年も暮らすこの街は
    移ろう四季のカレンダーのメリハリがよくきいていて
    酒飲みのシチュエーションも変化があって実に愉快だ。

    随分と昔、
    学校を卒業して就職したての頃、
    社会人としての小さな望みがあった。

    「あぁ〜、いつかもっと稼げる身分になったら
    土曜の昼間からお酒を飲み、ご飯を食べたいものだ」

    なんのことはない。
    まだ週休二日にもなっておらず、
    土曜も普通勤務の新卒サラリーマンが
    昼飯を食べに立ち寄った店でみかけた
    お金のありそうなどこかの会社員のぜいたくな昼飯風景を
    うらやんでのぼやきだったのだ。

    そんな私も今は
    数年後には定年を迎える身。
    週休二日の休みも普通に取れて
    その気になれば、〝昼酒〟だって可能になった。

    実際、
    カミさんが出勤日の土曜には
    数少ない料理のレパートリーから
    スパゲティなど茹でて、ニンニク・鷹の爪・タマネギ・シメジ・ソーセージと
    炒め合わせれば、暢気なにわか独身の午餐となる。

    スパゲティに合わせて、
    買い置きの安いワインを100円ショップのワイングラスに注ぎ
    取り置きのビデオを見ながら、ゆったりとひとりご飯なのだ。

    故郷の家には、昔ながらの縁側というものがあった。
    南に向かって庭があり、父が作った葡萄棚がほどよく日差しを
    遮ってくれていた。

    縁側に座れば吹いてくる風は心地良く
    家のすぐ横を流れる小川のせせらぎが涼味を誘う。
    あのころ、まだ十代だった自分に
    その縁側で夕暮れ時の晩酌をセッティングする甲斐性はない。

    夏ならば、
    夜になっても昼間の熱気が鎮まらなかった。
    街灯一つ無い、田舎の暗闇の中にゆらゆらと飛ぶ蛍の火。

    夕涼みがてら、縁側に出る。
    親父の畑からもいできた香り高いトマトと
    幼なじみの親が営む雑貨屋から買い求めた地酒を
    本家である隣家の井戸水で冷やす。

    仕事帰りに弟が買い求めてきた魚を
    東京で寿司職人だった兄が手際よく捌く。
    畑から戻った親父が外の水道で顔を洗っている音がする。

    母が台所で夕飯の支度を始めたようだ。

    一番幸せだったあの頃…。
    家族5人で過ごした故郷のあの家に、
    父は今、兄の忘れ形見の孫と2人で暮らしている。

    母も兄も逝ってしまった…。

    日暮れが遅くなれば、
    まだ明るさの残った夕暮れ時から
    一杯飲み出すこともできたりする。

    息子達は学校とバイト。
    カミさんは仕事帰りの買い物で
    家に一人の気楽さよ。

    鮪の短冊をぶつ切りに
    奴は生姜と刻みネギで。
    ふろふき大根とはいえないような大根をただ出し汁で炊いたもの。

    お盆に載せてこれら肴を居間まで運び
    早めの晩酌の場を設える。
    窓越しに見える庭の栗の木に雀が留まる。

    鎌刃のような月が輝きを増せば
    黄昏が深くなりつつあるしるし。
    街の中心街の喧騒から離れた住宅街だから
    聞こえるのは鳥や隣家の駄犬の声くらい。

    家族が帰って来るまでの
    ほんの小一時間の、一人だけの早めの晩酌が
    こんなにも豊かな気持ちにさせてくれるとは…。

    家族があってはじめての、ささやかな幸せなのだ。
    ハナから一人暮らしの侘びしさからはけっして生まれ得ない
    人生の妙味とでもいいたいような…。

    こうして、
    猪口を傾けながら、心地良い酔いのふわふわとなりながら
    少しづつ深くなってゆく外の景色に
    ダイダイ色の街灯が灯る頃、ひとり二人と家族が家に帰ってくるのだ。

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