2010/10/29 23:07 ニュースソース 日本経済新聞　電子版 　【ハノイ＝岩本陽一、桃井裕理】ベトナムの原子力発電所建設プロジェクトで、日本勢が事業規模約１兆円の第２期工事の独占的な優先交渉権を得る見通しとなった。29日、複数の関係者が明らかにした。日本勢は官民合同出資で今月22日に発足した国際原子力開発が中核で、越側には既に発注要件を満たす意向を伝達。ハノイで31日開く日越首脳会談で合意すれば事実上の受注内定となる。

　官民一体の「オールジャパン体制」として初の成果で、日本企業が新興国で原発を受注するのは今回が初めて。電力不足が深刻化する新興国向け原発輸出に弾みが付く可能性がある。国際原子力開発には東芝、三菱重工業、日立製作所などが出資している。

　原発の建設予定地はベトナム南部のニントアン省。日本勢は100万キロワット級の発電能力を持つ中型炉を２基整備する。2021年の運転開始を目指す。炉型などプラントの詳細は明らかになっていない。

　原発発注の条件として(1)実証された先端技術の導入(2)燃料の長期安定供給(3)廃棄物処理(4)技術移転(5)人材育成(6)資金支援――の６点を示したベトナムに対し、日本勢は８月、ウラン燃料の共同調達や資金支援策の拡充など７分野の包括支援策を提案。今月にベトナムとの原子力協定で実質合意し、原発輸出の環境を整えた。

　関係筋によると、ベトナムではズン首相が既に同国の最高意思決定機関である共産党政治局に日本への発注方針を説明したもよう。31日はズン首相が菅直人首相との会談で、日本にプロジェクトへの協力を正式に要請する見通し。ベトナム側が発注条件に空港や港湾など他の重要インフラ整備への資金支援などを付け加える可能性もある。

　ベトナム政府内では、第１段階として事業化調査（ＦＳ）だけを発注する案と、今年初めに第１期工事を受注したロシアと同様に建設工事まで一括して請け負わせる案が検討されてきた。ＦＳ発注だけにとどまった場合も「プラントの仕様などは日本企業に有利なように決められ、日本勢が工事を受注するのはほぼ間違いない」（プロジェクト関係者）という。

　経済成長のペースが速く、電力不足が深刻な新興国では原発需要が急速に高まっている。原発は二酸化炭素（ＣＯ2）を排出しないため、温暖化対策にも役立つとみられており、アジア全体での市場規模は25年までに100兆円に達する見通し。日本勢はベトナムでの受注内定を突破口に同市場を本格開拓し、日本経済のけん引役の１つとして官民一体の原発輸出を進める方針だ。

　東南アジア初となるベトナム原発は日本やロシア、フランス、韓国、中国などが数年間にわたり激しい受注競争を展開。プロジェクトは大規模なシステム輸出につながるだけに、各国とも政府が全面支援してきた。

　第１期工事を受注したのはロシアの国営原子力企業ロスアトム。13〜14年に建設を始め、20年に100万キロワット級の原発２基の稼働を目指す。同国は潜水艦など武器売却と合わせて受注を獲得したとされる。日本は政府の本格関与が競合相手より遅かったが、ロシアに敗退した第１期商談の後、巻き返しを図っていた。

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