今後３カ月の日本株の行方を読む「日本株の透視図」。今回はカブドットコム証券の河合達憲さんがファンダメンタルズから分析した。

河合さんは、国内の電力不足に加え海外にも悪材料が多く、６月末にかけ２番底を試しにいくと予想する。


◆過去の３カ月を分析！
→インフレを恐れない（？）　米国株の一人勝ち！

　３カ月を振り返ってみて、外部環境の変化で特筆すべきは「ユーロの独歩高」です。トリシェＥＣＢ総裁は３月の記者会見で、「４月の会合で利上げをする可能性がある」と明言しました。４月７日、この言葉どおり利上げを行ない、さらにマーケットは、６月にも利上げがあるのではないかと見ています。なぜならトリシェ総裁は、相変わらずインフレを警戒しているからです。

　中国もインフレを恐れ、４月６日に利上げをしました。これで、昨年10月にスタートした利上げは、12月、２月と合わせ、計４回になりました。そして、「中国の利上げも、これでは終わらない」というのが大方の見方です。

　一方、バーナンキＦＲＢ議長は、４月に行なわれた記者会見で「インフレの加速は一時的だ」と発言しました。このインフレに対する見方の温度差が、そのまま通貨の動き（＝ユーロ高・ドル安）に表れています。

　米国株は約３年ぶりの高値圏にありますが、これはＱＥ２が誘因。バーナンキ議長は「雇用」と「景気回復」を金融面から支援していくつもりでしたが、株を３年ぶりの水準にまでかち上げてしまった。おそらくこの状況には、危機感を持っているはずです。

　外部環境が大きく変わらない中で日本はどうかというと、東日本大震災後、日経平均は震災前の１万400円から約2000円下落しました。2012年３月期の企業業績は15％増益の想定でしたが、これをすべて吹き飛ばした格好です。15％増益分が剥がれたことを株価が織り込みにいったとすれば、2000円の下げで済むのか？　それがこの先、試されるところです。

◆今後の３カ月を予測！
→６月末にかけ外部環境は悪材料のオンパレード！

　まず、ＥＵは６月に南欧のストレステスト（健全性審査）を控え、ユーロが不安定な動きとなるでしょう。
昨年のギリシャショック以降、投資家はユーロを叩き売りました。ところがこのユーロ安で、ドイツなどＥＵの“優等生”の輸出が絶好調となり、ユーロ圏は救われたのです。


6月下旬にかけて株価が下落する4つの要因　逆に今はユーロ高。インフレを恐れてさらに金利を上げようとしているわけですから、いつ南欧諸国の国債危機が再燃してもおかしくありません。中国の再利上げも重要なポイント。この利上げが、マーケットにとってはネガティブな要因となる可能性があります。

　中東問題も長引きそうな雰囲気。ということは、原油高が続くということ。原油価格が下がらない限り、インフレの芽は摘めません。そもそも、ＥＵや中国の金融引き締めの背景となっているのもこの原油高なのです。米国はＱＥ２終了に伴い、米国株の強さがピークアウトする可能性も。

　国内に目を転じても、電力不足に消費の萎縮…、国内企業の時価総額ベースの決算発表が５月13日にヤマ場を迎えましたが、ここで事前予想を大きく下回る業績見通しが相次ぐでしょう。

　何をきっかけに下げてもおかしくないという状況になる中で、６月末までに二番底を試しにいく展開が予想されます。ただ、一旦底をつければ７月はサマーラリーに。サマーラリーはもともと個別株物色ですが、今年は輪をかけて「巣籠り消費」などをテーマに個別銘柄が物色されると予想します。

★河合さんの結論！
・６月末にかけ２番底をつけに行く！
・「巣籠り消費」がテーマに！

＜お話しを聞いたのは＞
河合達憲さん
カブドットコム証券チーフストラテジスト。調査情報畑一本で20年来の実力者。マクロから個別銘柄まで鋭く分析する。

http://www.zai.ne.jp/articles/-/982