魂は何に漂流しているかといると
アレックスである
NTー１の反応が早すぎるアレックスではなく
ポンヌフの恋人である
アレックスなのである
心はアレックスに漂流し
アレックスと散る

水色のノートNo.１０

ある赤毛の男がいた
その男には目と耳がなかった
彼には髪の毛もなかった
だから
彼が赤毛だというのも
とりあえずそう呼んでいただけだった
彼はしゃべることもできなかった
だって口がなかったんだから
鼻もなかった
彼には手や足さえなかった
おなかもなければ背中もない
背骨もなけりゃ
内臓ひとつありはしないのだった
なんにもなかった
だから
だれのことを言ってるんだか見当もつかない
こうなったら彼のことはもうこれ以上言わないほうがよかろう

１９３？年
Ｄ・ハルムス

アレックスはハルムスの元に行った
花火のようだと通行猫は目で言った
ついでのようだと通行風が目にしみる
ボロのララバイがオルガンのような琴から始まる

君の始まりはいつだった？
ハルムスに教えてやれ

だって…


Adios！Hasta luego！