私の横にピッタリとくっついてます。すでに３０分経過。

　私自身は空腹のため、早く夕食をとりたいのですが、姫の気が済むまで我慢してます。
　ときどき頭をなでろと催促する時の、上目目線の顔が可愛いです。

　とにかく最近の姫はダダッ子だった。私が残業続きで疲れて帰ってきてるのに、一緒に居てあげないと怒るやら、すねるやら。私の手の届かない高ァ〜い場所へ行ってしまって、降りてこないのだ。
　そこから降りてきてもらうためには、私の部屋のドアを開けて、待っていなくてはならない。そうすると、自分から降りてきて、私の部屋に入ってくる。そして、卓袱台で家計簿を付けたり、読書している私の横で、ゴロンゴロンと寝返りを打ちながらごろ寝を始める。だから私は頭を撫でてあげたりするのだが、暑さのせいか、あまり構いすぎても猫パンチされる。
　とにかく姫は私のそばに居られれば満足らしい。早くご飯を食べさせたいので――また私も空腹な時間なので、姫に猫ゲージに戻ってもらおうと抱き上げようとすると、まだ姫が満足していない時は必死の抵抗をされてしまう。だが姫が満足していれば、あっさり抱っこさせてくれる。この時間が日によって違う。昨日は３０分くらいで満足してくれたが、先週は一時間に及んだことも。
　仕方ない。姫は寂しいのだ。最近、私が家にいる時間が短いから。

　そんな状況で、今日はちがった。
　我が家は庭に面した窓には簾を下げているのだが、その簾と網戸の間に、一匹のアゲハチョウが入り込んでしまったのだ。
　アゲハチョウを助けてやるためには、網戸を開けて簾をずらしてやればいいのだが、そうするとゲージから出ていた姫がお外に逃げてしまう危険性がある（現に子猫の時に脱走経験がある。２分で帰ってきたけど）
　「これは、アゲハチョウには悪いけど、姫が満足するまで待っててもらうしかないわね」
　さっそく姫のゲージの掃除を始めていると、そのあいだ姫は、ずうっとアゲハチョウを見ていた。
　そして、私が姫のご飯を作り終え、
　「はい、姫ちゃん！　おいで！」
　と声をかけたところ、いつもなら「遊んでもらえる」と思って駆け寄ってくる子が、来ない。――高いところにも登らない。
　姫は、私の顔をじっと見てから、自分から猫ゲージに入ってしまった。
　アゲハチョウを早く助けて！　と、言っているようだった。姫には、自分と似たような模様をしている小さな生き物が、他人に見えなかったのだろう。

　アゲハチョウを助けるのは、そう簡単にはいかなかった。強めの風が吹いたせいでチョウが部屋の中に入ってしまったり、なんとか捕まえて外に出しても、また外側からうちの網戸に停まってしまったり。チョウは家の明かりに吸い寄せられてしまっているのだ。
　私が悪戦苦闘している間、姫はずうっとチョウを目で追っていた。
　なんとかアゲハチョウを外に放すことができたが、姫はもう私に遊んでとはせがまなかった。アゲハチョウも私も大変だったことが分かったのだろう。

　明日は休みだから、存分に甘やかしてあげよう。