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from: マスター次郎さん
2009/07/15 13:43:04
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ある女性のお客様からのお話
マスター、私のこと覚えてる?
帰省するたびにこの店に寄らせてもらってるの。
マスターはこの地元の人じゃないんだよね。
じゃあ知らないかもしれないけど、私が中学校へ通ってた頃、ここの近くに「開かずの踏切」があったの。
その踏切は私の中学校の通学路でね。
開かずって言っても5分くらいなんだけどね、一度その5分に引っかかったら、猛ダッシュしないと学校に間に合わない嫌なタイミングで締まるのよ。
もっと早く家を出ればすむことなんだけど、それがなかなかね。(笑)
でね、その踏切に引っかかったとき、踏切の向こう側にいつも私と同い年くらいの男の子がいたの。
踏切が開くと、私もその男の子も猛ダッシュですれ違って、お互い反対の方向へ走っていくわけ。
何十回もすれ違ったからその子の顔覚えちゃった。
多分向こうも私のこと知ってたと思う。
そのうちに、その踏切のすぐそばに、高架橋が出来ることになったの。
高架橋が少しずつ出来ていくのを見ながら、私は「あの男の子と高架橋ですれ違ったら『おはよう』って声をかけてみようかな」って思うようになった。
なぜかは分からないけど、何となく親近感があって、話してみたいなって思ったから…。
そして、いよいよ高架橋の完成が近づいた時、いつものように踏切に引っかかって開くのを待ってたんだけど、男の子が現れなかったの。
たまたまかなって思ってたんだけど、次に引っかかった時も、その次も、男の子はいない。
こんなに立て続けに会えないこと今まで無かったから、どうしたんだろうって不安になってね。
結局それから一度も会えないまま、高架橋は完成したわ。
その後も、その男の子とはそれっきり会えなかった。
帰省するたびに、大人になったあの男の子とばったり会うんじゃないかって、なぜか少しワクワクしてしまうのよ。
二人して「あ、あの踏切の人!」って指差しあう光景を想像して、ちょっとニヤニヤしちゃうのね。
自分でも変だと思うけど。
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