こんにちは。調査隊のイイオ＆ニッシーです。
ここまで研究棟の内部や新商品の試作の流れなどをご紹介してきましたが、開発レポートの最終回はインタビュー。今回案内してくれた伊藤園開発一部第一課の今枝課長にお話を伺ってきました。

商品づくりを技術で支える開発部は味づくりのエキスパート
イイオ「ご案内ありがとうございました。ここまで主に試作の流れに沿って研究棟の中を見学してきましたが、研究開発の仕事は試作以外にもありますよね？開発のお仕事について教えていただけますか？
今枝「基本の仕事は味づくりですが、製造段階での課題はすべて開発の役割です。味づくりのほかには製造上の問題にも取り組みます。チームは自分も含めて8名。それぞれが担当する商品の焙煎から調合、充填まで商品開発における、あらゆる技術課題に取り組みます。また、豆の分析や焙煎、抽出に関する技術の研究など基礎的な研究も行っています。」

イイオ「入社して数年の社員もいらっしゃるとのことですが、焙煎などの知識はどうやって得ていくのですか？」
今枝「知識を増やすのは本を読んだり、資格を取ったりして勉強していきますが、社内外で焙煎に関わる人と情報交換をすることもあります。焙煎機は自由に使えるようにしていて、コーヒーもいつでも淹れていいことにしています。根詰めて試作ばかりしていると、視野が狭くなったり、成長意欲が削がれたりすることもありますから、なるべく自由に研究できる環境づくりは心がけていますね。先日はちょっとした遊びでシルバースキン（コーヒー豆の表面にある薄皮）を取り寄せて、分析してみたりもしました。」

栄養成分表示を見たら、同じコーヒーをつくれる？！
ニッシー「他社商品の分析なんかもされたりするんですか？」
今枝「重要な仕事のひとつですね」
ニッシー「もしかして開発部のみなさんの知識があれば、パッケージの原材料を見ただけで同じような商品がつくれたりするんですか？」
今枝「豆からつくっているのか、エキスからつくっているのかなどの製法が分かれば、予測はできますね。パッケージに表示されている栄養成分値からも推測できるので、基本的な機械分析のデータと成分の分析データ、それに官能検査を組み合わせると、どういったものを使ってどんなふうにつくっているのか、大体のところは把握できますね。」

イイオ「過去に、苦労した商品などはありますか？」
今枝「赴任してすぐに取り組んだ、ミルク入りのコーヒーは大変でした。商品の発売直前で技術的な問題が浮上し、販売延期にせざるを得なかったんです。報告を受けた当時は手がかりゼロの状態から問題を検証しなくてはなりませんでした。通常、会社に蓄積されている過去の知見から、ある程度は解決手順の方向性は予想がつくのですが、この時は完全に暗中模索の状況で、大変だったのを覚えています。」

お客様においしいと思ってもらえるものをつくるために
今枝「例えば缶飲料などの商品は賞味期限が長いので、その分味わいを担保するための技術的課題も多くなります。ひとつ課題を解決してもまた次の課題がでてきて、尽きることはないですね。」
イイオ「開発の役割を一言でいうと？」
今枝「"おいしいものづくり"ですね。マーケティング本部は市場調査をした上でコンセプトを出しているので、その要望にしたがって味を再現していきますが、言われた通りに味を合わせていくのではなく、お客様がおいしいと思うものづくりという原点を忘れないようにしています。商品を開発していくにあたっては、原料価格なども含め、製造コストも重要な検討事項です。さまざまな制約条件を踏まえたうえで、最もおいしい味を見出すため、最初は選択肢の幅をなるべく広げます。その中からマーケティング本部と協力しながら、味の方向性を決め、さらに微調整を加えて味をつくっていきます。与えられた条件の中でどうすれば最もおいしくつくれるか、毎回トライアンドエラーですね。」

「といってもエラーばかりだけど」と笑いながらおっしゃる今枝課長でしたが、私たちが研究棟を出た後もマーケティング本部の面々とたくさんのサンプルを前に話し込み、"おいしいものづくり"に熱を上げておられました。
「もっとこうしたら、おいしいと思ってもらえるんじゃないか？」「この味をこう調整すると、こういう人にも楽しんでもらえるのでは？」そんな商品づくりのために、日々研究を重ねています。

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伊藤園静岡相良工場の取材も今回で最後。お読みいただきありがとうございました。

取材先ではたくさんのお話を聞かせていただき、まだお伝えしきれていないことが多くあります。また他にも取材してみたかったところがあるので、機会があれば、また勉強してきて、皆さんにお伝えしますね！

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