３度目はLong good-bye

　　　　　　　　　　　神戸忠雄

　第３章　２度目のgood-bye

　　　（三十）

　大学の受付に面接のアポイントがあることを述べ，その対応を観察した。受付の女性は，直ぐさま誰かに電話をかけ，私を面接の控え室と思われる場所に案内してくれた。言葉使いも対応も，それなりに好感が持てた。
　案内された部屋で，私はしばらく待たされた。部屋は，幅のある長机に，両サイドに椅子が並んである状況であった。壁にはホワイトボードが掛かっているだけであった。窓にはブラインドがあり，半分空いた状態であり，いかにも普段は使っていませんよ，という状態が明かであった。多分，普段は会議か何かに利用されている場所なのであろう。私は，窓の外を眺めた。窓からは，大学のグラウンドが見えた。グランドは，ただ，雑草が生え茂っていただけであった。以前，私が努めていた大学よりも状態はひどかった。以前の大学だと，様々なクラブがグランドを利用していた。そんな雰囲気も全くなかった。
　窓の外を観ていると，部屋のドアが開き，メガネをかけた男性が入ってきた。その男性は，「お待たせしました。どうぞお掛け下さい。」と私に話しかけてきた。私はこの部屋が控え室で，面接の前には先ほど対応してくれた受付の女性が入ってくるものだと思っていたため，少し戸惑った。とりあえず，私は所定された椅子に座った。
　すると，別の人達が，１人，また１人と徐々に入ってきて，最終的には，男性４名と女性１名との合計５名の方々が集まって，私の前に並んだ。
　私は何が起こっているのか，一瞬躊躇ったが，これが面接の開始かも知れない，と考え，気持ちを切り替えた。案の定，一番最初に入ってきたメガネをかけた男性が，面接を開始し始めた。私は，面接で自分の教育理念を語ろうと思っていた。そう，メジャーデビューを果たした，あの彼女のような一部の学生を育てる教育ではなく，なるべく万人に理解できるような講義を目指す，そんな教育理念をだ。しかし面接の内容は，そんなことはどうでもよかった。以下に学生を育てるかという私の教育理念が重要なのではなく，いかに大学の仕事を手伝うか，また，いかに大学の宣伝が出来るか，それに集約されていた。面接官の中で，中央に座っていた男性は，そんな大学の仕事の内容を，私に延々と伝えた。私は正直吃驚した。そらそうであろう。以前の努めていた大学では，講義の内容で私の価値観を批判され，私もそれを反省し，いかにわかりやすい講義を実施するのか，その教育理念を掲げて面接に挑んでいたからだ。
　面接は，終始，大学で私がすべき仕事の内容が伝えられただけであった。その内容は，様々であったが，いかに高校生を集められるか，その１点に尽きるような気がした。

　私は，不思議な面接を終え，大学を後にした。

　その面接の２日後，採用の通知と契約書が来た。私はこの時点でどうするか迷っていた。しかし，紹介してくれた友人の面子もあるし，何しろ，デビューした教え子の彼女の頑張っている姿に負けないように，大学の教員として働くべきだ，という意識もあった。そんなことを悩みながらも，私は面接を受けた大学に勤務することにして，契約書にサインして大学に返信した。

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今日も大学に来ています。実験の測定です。
ホント，誰もいない大学ですね。
ま，いいか。

３月１９日に始めたこのブログですが，２００８年ももちろん書き続けます。
小説は，飛び飛びになると思いますが，読んでいただければ幸いです。

こんな拙いブログに付き合っていただきました皆さんに感謝しています。
来年もよろしくお願い申し上げます。