自分は猫が大好きです。でも、猫を飼うことができません。猫を見ていると、昔、一緒にさすらい旅をした黒猫を思い出してしまい、涙が止まらなくなってしまうからです。

僕の親友、恩猫のクロニャン、つらい思い出ばかりの家から僕が逃れて旅に出たとき、傷だらけの体で僕について来ました。そして、旅の途中で死にました。同行させずに、猫好きの知り合いに預けるべきであったと、僕はずっと悔やんで生きてきました。でも、ヒトに託そうとしても、恐らく、クロニャンは僕のあとを追ってきたと思います。

もう半世紀近くも昔の事なのに、まるで昨日の事のように思えるのは何故でしょうか。学校でも家でもいじめられてばかりの僕でしたが、クロニャンも悪い奴らからひどい虐待を受けて足が不自由になっていたのです。愛しいクロニャン。旅先の山中で埋葬はしましたが、その後も、彼の死を受け容れることができず、僕はその黒猫と命を共有して、一心同体となって生きる決意をしたのでした。