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奇跡をくれた犬たち

奇跡をくれた犬たち>掲示板

公開 メンバー数:8人

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  • from: きなこさん

    2011年10月25日 01時01分05秒

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    50

    庭を見渡せる廊下に、家族全員が足音を忍ばせながら勢ぞろいした。暗がりの中だが白い毛のその犬は意外と目立ち、動きがよく見える。

    「そうそう、あの犬だよ」

    私が言うと、

    「ねぇ、今からフードを置いてこようよ」

    と、長女が言った。

    「今出ていったら、あの犬、きっと逃げちゃうよ」

    そう言う長男の言葉を、長女はすぐに否定する。

    「だって、どうやったって今は逃げられちゃうじゃん。だったらフードを置いてきて、食べにもどってくるか見ていようよ」

    「あっ、そうか。一度逃げたとしても、しばらくしてもどってきて食べたら捕まえられるかもしれないね」

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  • from: きなこさん

    2011年10月25日 00時47分57秒

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    49

    (お願いだから早くなれてちょうだいね)

    私は、一週間のかけにでた。子供たちの提案したフード作戦が成功し、一週間以内に捕まえられればよし。でも、一週間以内に捕まえることができない場合は、あの犬の健康状態を考えて捕獲箱を使うことを考えよう、と思っていたのである。

    その日の夜、八時頃のことだ。

    「お母さん、犬が庭に来てるよ」

    自室にいた私に、三女が小声で知らせにきた。家の中で小さな声で話しても何の効果もなかろうに…そう苦笑しながらも、
    「どれどれ」

    私もついつい小声になる。

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  • from: きなこさん

    2011年10月25日 00時36分16秒

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    48

    動物指導センターにお願いすれば、捕獲箱を借りることができる。捕獲箱とは、ケージ入り口の扉が上に引き上げられた状態で開けられており、その扉が下に下りるのをフックで留めてある。

    ケージの奥に食べ物を置き、犬が中に入ってその食べ物を口にした瞬間、扉を留めていたフックがはずれ、ガシャンと扉が落ちて閉まるというものだ。うまくすれば確実に捕獲できるが、万が一、失敗しようものなら、あの犬に恐怖心とともに強い警戒心を持たせることになり、二度とうちには姿を現さないだろう。

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  • from: きなこさん

    2011年10月22日 22時08分18秒

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    47

    庭をうろついていた犬に、私たちは決して怖い人間ではない、とわかってもらうのがいい方法だ、と私は言ったが、ただ一つだけ心配があった。それは、あの犬の腹部の様子である。さわってみれば今よりはもう少し判断しやすいのだが、現況は見た目で判断せざるをえない。

    (もしあのふくらみが腹水だとしたら、向こうから近づいてくるまで待つという時間をとれるだろうか。一刻を争うのではないか)

    私の中に、暗い影が広がる。

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  • from: きなこさん

    2011年10月22日 21時59分30秒

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    46

    今となっては知らない人が来てもみずからにおいをかぎにいき、逃げなくなったが、保護犬としてうちに来た当初のレイディは、人、特に男性と見れば、恐怖心からパニックを起こし、あっちこっちと逃げまどうほどの拒否反応を示す犬だった。

    レイディは、倒産した犬のテーマパークからやってきた。フードや水の飲み方が異常で、十分な量をもらっていなかったことがうかがえた。

    「男の人に、怖い目にあわされたことがあるのかな」

    保護した当日から、レイディの面倒はあえてそのほとんどすべてを主人に担当してもらった。

    私たち家族はレイディに、虐待をする人間も確かにいる、でも、それは一部の人間の仕業(しわざ)であって、私たちはレイディが大好きなんだよ、それは男性である主人も同じ気持ちなんだよ、とわかってもらえるよう、レイディの心のリハビリをした経験があった。あのとき私たちは、こちらから近づくのではなく、レイディみずからが心を開いて近づいてきてくれるのを待ったのである。

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  • from: きなこさん

    2011年10月22日 21時40分21秒

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    45

    「いい方法だね。何が原因かはわからないけれど、もしその犬が、人間は怖いものだと思っていたとしたら、まずはご飯をくれる優しい人間、怖いことは何もしない人間だとあの犬に認めてもらうことが先決だよね」

    私がそう賛成すると、

    「ほら、お母さん、レイディのときみたいにさ、あっちがそばに来てくれるまで待てばいいんだよ」
    長男がにこにこしながら言った。

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  • from: きなこさん

    2011年10月22日 21時34分24秒

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    44

    その日の夕方、学校から次々と帰宅してきた子供たちに、昼間の犬の様子や、何とかして捕まえたいという私の思いを話した。

    「病気かもしれないんだ。じゃあ、すぐにお医者さんに連れていってあげたほうがいいよね」

    次女がそう言うと、みんな「うんうん」とうなずき、次は、どう捕獲するか、といった話になった。

    「逃げるってことはさ、人間が怖いんじゃないかな」
    長男が言う。

    「そうだねぇ。その可能性はあるね。じゃさ、しばらくの間、その犬が警戒心をといてくれるまで、庭にフードを出しておいたらどうかな」
    長女が提案する。

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  • from: きなこさん

    2011年10月22日 02時36分53秒

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    43

    「くーちゃん、ここから犬を見ていてね。お母さんは、何かおやつを持ってくるから」

    「うん」

    私は、急いで家の中に入り、犬用のビスケットを数枚持ってくると、犬を驚かせないように、ゆっくりとした動きでそっと玄関から出た。

    「おいで」

    持って出たビスケットで、庭をうろつく犬をおびき寄せようというのだ。が、私の作戦は、玄関を出た時点であえなく玉砕(ぎょくさい)する。玄関のドアからすべるようにして出てきた私の姿を見るやいなや、その犬は脱兎(だっと)のごとく裏山へと走り去ってしまったのだ。

    「あ〜あ、犬、逃げちゃった…」

    行き先のなくなったビスケットを手の中で持てあます私の耳に、三女の残念そうな声がむなしく響いた。

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  • from: きなこさん

    2011年10月22日 02時25分24秒

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    42

    妊娠しているのか?それとも、何らかの病気を患い、腹水がたまっているのか…。ここからでは、その犬の性別を確認することすらできない。

    近づいて確かめることもできない状況に、私は奥歯を噛んだ。重い病気にかかっているかも、そう思うと、このままほうっておくことはどうしてもできなくなり、私はその犬を捕獲(ほかく)し保護をしようと思い立つ。

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  • from: きなこさん

    2011年10月22日 02時18分49秒

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    「お母さん、どこの犬だろうねぇ」

    声のトーンを落とした三女が、玄関の戸の隙間からそっと外をうかがっていた私に話しかけた。

    「どこの犬かなぁ。首輪はしてるみたいだけど…」

    そう言いながら、庭をうろつく見知らぬ犬を見つめていた私だが、どこの犬なのかというヒントを見つける前に、気になったことがある。遠目にも背骨や腰骨の様子がうかがえるほど痩せた犬であるにもかかわらず、そのお腹だけが風船のようにプックリとしていたのだ。

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