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奇跡をくれた犬たち

奇跡をくれた犬たち>掲示板

公開 メンバー数:8人

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  • from: きなこさん

    2012年01月25日 20時11分47秒

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    12

    「ねっ、犬は人よりもはるかに速いスピードで物事を覚えてくれるでしょう」

    落ちた上原さんの肩を、私はポンとたたいた。

    「そうですよね、人間よりも育てる時間は少ないんですよね。なんで俺、それをついつい忘れてしまうんだろう」

    上原さんは曇った顔をとたんに明るくして、実践トレーニングにはげむ他の生徒に視線を移した。

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  • from: きなこさん

    2012年01月25日 20時03分16秒

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    11

    こんなふうに生徒が落ちこんだとき、私は人の話をする。人の成長は、犬のそれよりもはるかに遅いものだ。犬は生後二ヶ月ともなればトコトコとよく歩くが、人はどうだろう。生まれて一年くらいたってから、やっと歩きだす。

    トイレのしつけなどは、覚える時間そのものに人と犬とでは大きな差が出る。犬はそもそも、トイレの場所は自分で決める。でも、人と暮らす犬に、自分で勝手にトイレの場所を決められては非常に困る場合がある。だから、人が用意したトイレに、ここで用はたしてね、と教えるわけだが、自分で決める動物だからこそ多少の時間がかかる場合がほとんどだ。でも、それでもせいぜい三ヶ月くらい教えれば、犬も覚えてゆく。しかし、人間は早い子でも生後一年半くらいから、やっとトイレトレーニングを始めるのが平均的なのだ。

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  • from: きなこさん

    2012年01月25日 19時48分24秒

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    10

    彼のつける愛犬の名前は、実にユニークだ。人にすればさしてめずらしくない「ゆうこ」という名前が、犬の名前となればとたんにめずらしくなる。ワクチネーションがすんでいないゆうこが教室に参加するのはまだずっと先のことであるが、その名前は教室に参加した生徒全員に一発で覚えられた。

    「先生…、朝目がさめたら、部屋中に細かく食いちぎられたスリッパが散乱していました…。盲導犬になる賢い犬、イコール楽な生活だったはずなのに…」

    ベソかいたような表情で、上原さんが訴えてくる。

    「ああ、子犬だもの、それくらいのイタズラをするのは当たり前ですね。いいですか?はいはいしている赤ちゃんが家の中にいると思ってください。こわされたくない物は棚の上などに上げる。もし、してはいけないことをしているのを見つけたら、その場で叱り、やめたらほめる。とにかく、すべての生活の基本がそれの繰り返しです。眠っているときなどは注意のしようがありませんから、スリッパは、寝るときはしまってください。ボロボロになるのはあきらめもつけられるけど、もし食べてしまったら、取り返しのつかない事態になるかもしれませんから」

    「はい…」

    上原さんは、ガックリと肩を落とした。

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  • from: きなこさん

    2012年01月24日 18時36分57秒

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    9

    「もう一つ、ゆうこを買ったのは農家で、農作業の合間に繁殖しているんです。そこの親父が、子供を産ませたらいい、生まれた子犬は五万円程度で売れるし、一回に六、七頭は生まれるからちょっとした小遣いになるとも言われて。これから小遣い稼ぎに繁殖しようと思っています」

    上原さんの言葉に、私はギョッと目をむいた。

    犬の繁殖は、イコール新たな命を創(つく)り出すということである。遺伝性疾患(いでんせいしっかん)の勉強はもちろん、性格や体格、毛色ひとつとっても、かなり深く勉強せねばならない。ちょっとした小遣い稼ぎ程度の気持ちで安易に命がつくれるほど現実は甘くないのだ。それを無視して繁殖すれば、母犬になるゆうこも、生まれてきた子犬たちも幸せなどなれない。私は、このような安易な気持ちで繁殖された犬たちの不幸を、保護犬を通してイヤというほどの目の当たりにしてきた。

    「繁殖…ですか。教室が終了した後もなお小遣い稼ぎに繁殖したいと考えられたら、そうしてください」

    私はそう答えた。彼はまだ教室に参加したばかりで、世にあふれている保護犬たちの不幸を知らない。教室の中でそれらを少しずつ話してゆき、それでも繁殖したいと思うのであれば、それはもう私の立ち入る世界ではなくなるのだ。

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  • from: きなこさん

    2012年01月24日 18時09分12秒

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    8

    私の質問を受けた上原さんは、とたんに満面の笑みを浮かべて答えた。

    「はい、ラブラドールは盲導犬として活躍している犬ですから、苦労しなくても楽に生活できる、そう思ってラブにしました。」

    このときの上原さんの笑顔を、私はいまだに忘れない。

    私は思わず吹きだした。私と同じくして五頭のラブラドールとともに教室に参加していた生徒も吹きだした。

    「なんで笑うんですか?」

    上原さんは怒りはしなかったが、よほど想像していなかった反応だったのだろう。あっけにとられた顔をする。

    「いやいや。笑ってごめんなさい。でも、苦労をしなくても楽な生活ができるかどうかは、きっとゆうこ自身が日々、上原さんに教えていってくれると思います」

    その言葉通り、上原さんの愛犬、黒ラブのゆうこは、楽な生活とはかけ離れた現実を上原さんに学習させ続けることになる。

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  • from: きなこさん

    2012年01月24日 17時54分39秒

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    7

    「上原さん、なぜラブラドールを愛犬にしたのですか?」

    個人カウンセリングの時間、私は上原さんにこんな質問をした。

    犬を選ぶとき、その人なりの理由が存在する。どんな理由でどんな犬を選ぼうが飼い主の勝手ではあるのだが、理由によってはその考え方を変えていかねばならないことがあるのだ。

    ラブラドールやシェパードといった、訓練士が専門的に訓練し、その犬の長所を最大限に引き出してもらったうえでそれぞれの作業をこなしているのを目にする機会のある犬種は特に、である。

    ラブラドールは盲導犬、シェパードは警察犬など、これらの犬種を愛犬にした人の中には何もしなくても訓練されたそれらの犬たちのように育つと勘違いしている人が多々いるものなのだ。

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  • from: きなこさん

    2012年01月21日 14時24分57秒

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    6

    こうしてやってきたのは、四十代後半の上原さんという男性である。上原さんの愛犬は、メスのラブラドールレトリバーで、名前はゆうこ。全身真っ黒で、俗に黒ラブと呼ばれている犬種である。

    ラブラドールレトリバーは、盲導犬としておなじみの犬種であるが、もともとは水辺で待機し、人が撃ち落とした鳥などを泳いで回収してくる回収犬として確率された大型犬種だ。レトリバーは、レトリーブ、つまり物を回収してくるという言葉が語源になっている。

    陽気で明るく穏和な性格で、人によくなつき、泳ぎもうまい。が、運動量を多く必要とする犬種で、運動量が少なかったり適切なしつけをおこたれば、ラブラドールに限らずだがドタバタとした乱暴なだけの犬に育ちかねない面もある。

    「こんにちは。今日からよろしくお願いします」

    愛犬を同伴してきている他の生徒の中で、上原さんはただ一人、飼い主単独での参加だ。

    教室は一回約三時間〜三・五時間ほどで、二時間〜二・五時間が講義と個人カウンセリング、あとの一時間〜一・五時間が、ドッグランでの実践トレーニングとなる。

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  • from: きなこさん

    2012年01月21日 13時40分22秒

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    先住犬がいる家に新たに子犬を入れる場合には、別の注意も必要だ。先住犬は混合ワクチンの接種をしており免疫ができているはずだから、保菌していても発病していないだけということがある。ここに免疫のできていない子犬を入れれば、当然のごとく保菌犬から感染し、発病してしまうことがあるのだ。こういう場合は、二度目の混合ワクチン接種をすませ、免疫のできる二〜三週間の間を考慮し、子犬に免疫ができた時期に一緒にすれば問題は起きないはずである。

    混合ワクチンの免疫効果は、成犬になっても約一年〜一年半で切れてしまうので、毎年一度の接種が必要となっていく。

    「はい、犬がうちに来てからすぐに予防注射をしました」

    「一度ですね?」

    「はい、一度です。獣医さんから、一度目の予防注射を打ってから1ヶ月後に二度目の予防注射をしましょうと言われています」

    「そうですか。まだ子犬を外に出せる時期ではありませんものね」

    「犬がいなくても、教室に参加することはできますか?」

    「はい、できますよ。犬がいなくても家でやっていただきたいことはあるし、犬ではなく人が覚えるべき知識もたくさんありますから、子犬が教室に参加できるようになるまでは、そういうことを学んで、参加できるようになったら実践を学べばいいだけです」

    「ああ、よかった。では次回の教室から参加させていただきます」

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  • from: きなこさん

    2012年01月21日 13時11分57秒

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    4

    接種時期は、たいがいの子犬が生後二ヶ月未満であり、この頃は、母犬からもらった母胎免疫が切れるか切れないかといった微妙な時期で、母胎免疫が切れていなければ混合ワクチンを接種してもそれによって新たな免疫はできない。だからといって予防注射をしなければ、もし母胎免疫が切れていた場合には不幸にも感染してしまう恐れがあるので、母胎免疫が絶対に切れているであろう時期、つまり一度目のワクチンを接種した1ヶ月後くらいに混合ワクチンを接種するのが普通である。

    注意しなければならないことは、混合ワクチンは今日接種したからといってすぐに免疫ができるわけではないということである。免疫効果が現れるのは、混合ワクチン接種後、二週間から三週間ほど後だ。だから、子犬を散歩に連れ出したり、他の犬に会わせたりするのは二度目の予防接種をしてから、二〜三週間後くらいからである。

    だが、混合ワクチンを接種していればこれらの病気に感染しない、というのは間違った知識である。正しくは感染しても発病しない、もしくは発病しても軽い症状ですむということで、考え方としとは私たちのはしかや水疱瘡(みずぼうそう)の予防注射と同じだとおもえばいい。

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  • from: きなこさん

    2012年01月21日 12時51分59秒

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    3

    「ワクチネーションはすんでいますか?」

    ワクチネーションとは、子犬が手もとに来てからすぐに検討すべき予防注射の計画のことをいう。

    接種するのは混合ワクチンで、パルボやジステンパー、レプトスピラや肝炎といった感染すれば死んでしまうか、助かったとしても神経障害のような後遺症が残ったりする恐ろしい病気ばかりのものである。

    母犬の乳を飲んでいる間の子犬たちは、通常その乳から母胎免疫(ぼたいめんえき)という、これらの病気に対する免疫をもらっているので感染することは少ないが、私たちの手もとに来るのは乳を飲むのをやめた時期なので、これらの病気に対する免疫がゼロに等しい。そこで、この時期に新たに免疫をつけさせるために一度目の混合ワクチンを接種するのだ。

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