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奇跡をくれた犬たち

奇跡をくれた犬たち>掲示板

公開 メンバー数:8人

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  • from: きなこさん

    2011年12月24日 20時19分49秒

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    18

    マックを家族にむかえてくれた新しい飼い主からは、電話がしょっちゅうかかってきた。元気そうなマックの様子、かわいがってもらっている様子が手にとるように伝わってきて、電話がくるたびに幸せな気分を味わわせていただいた。そんなある日…。

    「篠原さん、実はマックのことでご相談があるんです」落ち込んだような暗い声のマックの飼い主の様子に、私は大きな不安を覚えた。

    「実は…、主人が病気になりました…。病気になった、というよりも、マックをいただいた時にはすでに患(わずら)っていたそうです。ちょっと大変な病気で…。これからすぐにでも入院しなくてはならないのですが、私も泊まりこみで付き添うことになりましたもので、その間のマックの行き先がないんです。完治(かんち)の見通しが立てば一時預かっていただくという方法もあるとはおもいますが、この先どれだけ入院するのか…、いえ完治するのかもわからない状態です。本当に申しわけないのですが、マックをお返しできないでしょうか…」

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  • from: きなこさん

    2011年12月24日 19時37分36秒

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    17

    久しく子犬のいなかったわが家では、マックはすぐに人気者になった。ヒョコヒョコとしたカンガルー歩きで、一生懸命に私たちのあとを追う姿がなんとも愛らしい。このままうちの愛犬に…と真剣に考えたが、これ以上わが家の愛犬が増えれば、保護犬を預かれない。私が預からなければ命を落とす保護犬もいるのだ。心を鬼にしても新しい家族を探さねば…

    マックの新しい飼い主は一ヶ月ほどで見つかった。三十代の夫婦で、子供はできないらしい。「子供だと思って育てさせてください」と申し出てくれたこの夫婦を、私はマックの両親にえらんだ。

    マックがこの夫婦に引き取られる日はすぐにやってきた。

    「マック、かわいがってもらうんだよ。お母さん、マックの幸せを祈っているよ」

    涙をボロボロ流しながら見送る私たちに、愛(いと)おしそうにマックを抱いた新しい飼い主は、

    「大切に…大切にします」と何度も頭を下げて帰っていった。

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  • from: きなこさん

    2011年12月24日 12時14分18秒

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    16

    私はその子犬にマックという名前をつけ、早々に獣医の診察を受けさせた。女性店主から聞いた話とはちがう結果を期待したが、そこだけは、かかりつけの獣医も同じ診断をくだした。

    「もう少し早ければ、何とかなったんだけどなぁ」

    くやしそうに言う獣医の言葉に、私もうなだれるしかなかった。しかし、ガッカリしたのは一瞬である。治らないのならば、マックの最大の特徴はこのX脚だ。この足でなければマックじゃない、と思えばいい

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  • from: きなこさん

    2011年12月23日 09時19分23秒

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    15

    「この子犬、私に売ってください!役立たずになったから殺すだなんてひどすぎます。この子は見た目の問題だけで、排泄(はいせつ)の障害などないのであれば、家庭犬として十分なはずです。役立たずになんてなっていないし、役立たずの命なんてこの世にあるわけがない!いくらですか!?」

    私の口調(くちょう)はそうとう激しいものになっていた。女性店主は一瞬びっくりしたような顔をし、すぐに下を向いて言った。

    「私だって殺したいわけじゃないんです。でも、この店ははやっているわけでもないし、繁殖犬はたくさんいるし、その子を食べさせてゆけないんです」

    しかし、女性店主のこの言葉は、私には言いわけにしか聞こえなかった。成犬になっても体重が五キログラム以下にしかならない犬種である。多少無理はあったとしても面倒を見きれないとは思えなかった。

    私のように、新しい飼い主を探してもいいはずである。しかし、かわいそうだ、殺したくないと言いながらも、そういう努力はせずに殺す道を考えているのである。

    「いくらなんですか?私買いますから」私がなおもそう言うと、

    「もっていってもらえるのなら、無料でいいです」と、蚊(か)の鳴くような声でボソッと言った。

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  • from: きなこさん

    2011年12月23日 09時01分33秒

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    14

    「そういう事情だったんですか…。で、この子犬、どうしようと思っているんですか?」私がそう聞くと、女性店主は答えた。

    「このまま飼っていても何の役にも立たないので、今日の午後収容所にもっていくんです」

    収容所に入れるということは、この子犬を殺すということである。商売の道具として利用され、役立たずになったと思ったら殺してしまうのかい!!そこに命を重んじる気持ちなどかけらもないことに、私の中に激しい怒りがこみあげてきた。

    (私がこの子犬を買おう。そして新しい家族を探してあげよう)

    すでに保護犬をかかえていたわが家では、この子犬を私の家の子として飼うスペースはなかった。でも、保護犬として面倒(めんどう)を見、後ろ足の変形や歩き方のおかしさなんて気にせず、かわいがってくれる家族は絶対にいるはずである。

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  • from: きなこさん

    2011年12月21日 00時25分31秒

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    13

    「こりゃ先天性な病気なんかじゃないですねぇ。どこか高い所から落ちたんだよ、きっと。後ろ両足の腱(けん)が切れちゃってて、その時に適切(てきせつ)な手術を受けなかったものだから、そのまま固まっちゃったんだよ。今からでも手術はできるけど、ここまでほうっておかれたんじゃなあ。こんなに固まっちゃってるとね、手術をしても治らない確率の方が高いですよ。痛みもないし、これからも痛みは出ないだろうから、成功率の低い手術をするよりこのままの方がいいんじゃないかな…」

    レントゲン写真を見ながら言う獣医の診断はたぶん、正しいだろう。

    (治るのか治らないのかわからない手術を受けるより、この子もこのままが幸せなはずだ)

    女性店主はそう思って手術をあきらめたが、心の中にはもう一つ、経営者としての気持ちがあった。

    (たとえ手術をすれば治るケガであっても、そんな治療をしたら大赤字じゃないの。それより繁殖にも使えないこの犬をどうしようかな…。飼いつづけてもお金にならないし…)

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  • from: きなこさん

    2011年12月21日 00時11分08秒

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    12

    あまりの剣幕(けんまく)に、女性店主は交渉(こうしょう)するのがいやになってしまった。

    (子犬のこの後ろ足の症状が先天性なものとはどうしても思えない。でも、こんな人たちとこれ以上話をするのもいやだ)

    女性店主は、子犬を売った時に支払ってもらった金額をこの夫婦に返し、こんな子犬なんていらないと言う夫婦の希望通り子犬を引き取った。

    引き取ってすぐに、かかりつけの獣医のもとへと走った。診察をし、レントゲンを撮る。

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  • from: きなこさん

    2011年12月21日 00時03分13秒

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    11

    連れてこられた子犬は、確かにこのショップの店主が売った子犬だった。

    「この後ろ足、見なさいよ」

    どなるように妻に言われ、店主が子犬を抱き上げて見てみると、その子犬の後ろ両足はみごとなまでにX脚に変形し、正常な歩行ができなくなっていた。しかし…。

    (先天性の病気の中にこんな症状の出るものがあったかなぁ)

    そう思い、その疑問を素直にぶつけた店主は、この二人をますます怒らせた。

    「あなたは自分の非を認めないの?こんな犬を売りつけて、それで平気なの?」

    そういう妻の言葉をさえぎるように、夫が口をだした。

    「こっちはな、ちゃんと獣医に診てもらったんだ!!生まれつきの病気だって言われたんだ!こんな犬、うちじゃ飼えない。引き取って金を返せ!!」

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  • from: きなこさん

    2011年12月20日 18時23分23秒

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    10

    しかし、なかには先天性の異常はあるが、普通の家庭犬として大切に飼われれば、ふだんの性格には何の問題もなく、飼い主ですらそういう病気のあることに一生気づかないというケースも多くある。

    ところが、飼い主側の乱暴な取り扱いのために、病気が引き出されてしまう場合もあるし、そういう病気は完全に治すのがむずかしく一生ひきずらなければならないものが多いのに加えて、あるていどいっしょにすごしてから症状の出る場合が多いので、家族の一員として大切に思えば思うほど、病気がわかったからはいさようなら、と手ばなすわけにもいかず…と、この問題はドロ沼化することが多い。

    自分で繁殖をし、自分の店で子犬を売っていた店主は、ヘタに逆(さか)らえば問題をどんどん大きくするばかりでなく、相手をよけいに怒らせ、決して穏便(おんびん)な解決に結びつかないことがよくわかっていた。

    しかし、先天性の病気を出したという事実は、繁殖者としての腕を問われる問題でもある。事実ならあやまるしかないが、事実でないとしたら自分の信用にもかかわるので、とにかく自分の目で確かめようと、子犬をショップまで連れてきてもらうことにした。

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  • from: きなこさん

    2011年12月20日 17時55分57秒

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    9

    「わー、かっわいい!!この子にしましょうよ」

    四十代なかばくらいの夫婦が、まだ一ヶ月半だった真っ白いトイ・プードルの子犬を抱き上げた。

    「この子犬はうちで生まれた子犬なんです。性格がおだやかでいい子ですよ」

    店主はさかんにこの子犬を二人にすすめ、夫婦は迷うことなく子犬を買っていった。それから一ヶ月半ほどたった頃、ものすごい剣幕(けんまく)で店に電話がかかってきた。

    「お宅(たく)で買った子犬、先天性(せんてんせい)の病気が出たわよ!!どうしてくれるのよ!!」話を聞くと、真っ白いトイ・プードルの子犬だということで、店主にも売った覚えがあった。

    「あの…どういう症状なのでしょうか?」

    先天性の病気とは、親や祖父母などの祖先にあたる犬から受けついでしまったり、生まれつきもってきてしまった病気のことを言う。防ぐ手だては、病気の要素をもつ血統(けっとう)での繁殖(はんしょく・子供を産ませること)をしない、ということぐらいしかなく、生まれてすぐにわかるものよりも、あるていど成長してから発病したり発見されたりする場合が多い。飼い主も売る側もそういう病気をもっていることを知らずに売買するのがほとんどではあるが、生まれつきであるものだから売った側の責任になるのが普通だ。

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