「君の名前で僕を呼んで」というタイトルについて、・・・ツラツラと考えてみた

三島由紀夫の「仮面の告白」の中に
「わたしはこの世にひりつくようなある種の欲望があるのを予感した。汚れた若者の姿を見上げながら『私が彼になりたい』という欲求、『わたしが彼で有りたい』という欲求がわたしを締め付けた。」
また別の箇所に
「愛の奥処には、寸分たがわず相手に似たいという不可解な熱望が流れていはしないだろうか？」
という一文がある。

少年が自分より年上の男性に「英雄（ヒーロー）願望」を投影し、「彼のようになりたい」と憧れるのは、ごく自然なことで、羽生君が子供時代にプル様と同じ髪型をし、オリンピック連覇をはたした次のシーズンに、少年時代からの願望の成就を象徴するように、プル様の伝説プログラムに挑んだことは、誰にとっても「ええ話や～」と微笑まれるエピソードである。

エリオもまたオリバーを崇拝し、「オリバーになりたい」と強く願った。
「尊敬」と「憧れ」は、「恋」によく似てる。
似ていながら両者の決定的に異なる点とは？

相手への関心の度合いだろうか？独占欲の有無だろうか？

相手が同性でも異性でも、子供ほど年下でも、好きな相手のことをよく知りたいとか、その相手に好かれたいとか、親しくなりたいとか、時には独占したいという感情さえ生じることもまた自然で。
その点でも「尊敬」と「憧れ」」は「恋」にもよく似てる

よく似ていながらも
「尊敬」「憧れ」が「友情」になるのか？「恋情」になるのか？の異なる一点は？

その相手の肉体に欲情するか否かであろうか？

人類の女性は進化の過程で発情期を隠蔽するのに成功したので、少女においては、そのような欲情は本人にすら隠蔽されてしまうが
少年においては、ホルモンの過剰分泌によって性的な欲望と好奇心が旺盛になる思春期、心より先に身体的反応が現れてしまう。エリオにおいては、オリバーへの好意を意識するより前に、オリバーの肩や胸や尻の形を見る度に肉体的に刺激されてしまい、欲情を持て余す。

彼に成りたいという少年らしい純粋な憧れと同時に、彼を抱きたいという邪な欲望が併存してしまう
「彼になって彼を抱きたい」
という自己否定を含むような矛盾した欲望の在り方は、腐女子の究極的願望と類似していて。。。共感

「オリバー」と呼ばれる時、エリオに自分の姿は見えないから自分がオリバーになったと感じられ、オリバーを面前に見ながら彼のことを「エリオ」と自分の名前を呼ぶ時、鏡をみるようにオリバーの姿になった自分をそこに見る。