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from: あきらめてんさん
2019/06/18 10:50:54
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ショートショート『グラスに浮いたバラ』1
グラスの創作作家である宮原健作の発表展示会は盛況であった。協賛する洋酒メーカーは海外からも来ていたが、会場の隅で遠慮しながらも笑顔で場の雰囲気を眺めていた日本酒醸造元の貴公子、古河征四郎がいたことについて取材に来ていたマスコミの関係者は注目しなかった。会場の中央に円形のテーブルが置かれ、そこに新作のブランデーグラスが百個、バラの花びらを連想させるように並べられていた。そこには宮原の指示があるまでグラスには手を触れないでくださいという注意書きが添えられていた。
「このグラスにブランデーを注ぐと、バラの花びらが浮ぶのですか。」
好奇な目線で招待客の女性が丸テーブルの側に立っている警備員に声をかけた。周囲にいた人も注目して、説明を聞きたくて寄ってきた。
「詳しいことは先生がご説明なさいますので、もう、しばらくお待ちください。」
間髪を入れず、主催者の宮原が廊下に現れ、深く一礼して会場に入ってきた。信奉者なのだろう場内から一斉に拍手が起こった。
「みなさん。よくお越しいただきました。グラス製作を初めて三十年、この記念すべき時に、このような発表会を開催できましたことは大変幸せに思っております。今日はメーカーの方、販売店の方など多数の関係者の方に、ご協力いただきましたことについて厚く御礼申し上げます。」
この挨拶が合図だったのだろうか、別室に控えていたパーティーコンパニオンがブランデーの瓶を携えて入ってきた。宮原は挨拶をしながらも、部屋の隅にいた古河の姿をとらえていた。話し終えると古河のところに行って、無言で手を差し伸べた。<続く>-
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