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  • from: あきらめてんさん

    2019/07/09 15:35:08

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    老後の椅子取りゲーム⑩

    外科医からレントゲン写真を見せられ、母親の大腿骨骨折は完治していた。病棟の看護婦長からも内々に言い含められていたが、正式に医師から病院で処置できることはありません。後は通院でリハビリに来てくださいと言われた。1週間後に退院して、久しぶりに母は家に帰った。
    「やっと、戻ってこれた。」
    玄関を入って、母親が発した最初の言葉であった。家の中は静止画のようで、生活が止まった状態になっていた。
    「コーヒーでも淹れようか。」
    「すまんな。信二郎。厄介になります。」
    母親は脚を伸ばした状態で仏壇の前に座った。
    「お父さん。あんたのお蔭で私の人生が無茶苦茶になりました。」
    ブレーキを踏み間違えて以来、母親は亡き夫との対面であった。最後の言葉を掛け合うこともなく夫は亡くなってしまった。母にしてみれば、憤懣が蓄積している。リハビリをしなければならない状態になったことに対しての怒りが湧いてきたのだろう。仏壇の位牌に線香を投げつけてみたとしても、元には戻らない。父のために母は晩年の人生を引き裂かれたのである。せめて位牌にでも文句を言って、当然であるが、それだけの話でしかない。今の事態がどうなるわけでもなかった。
    信二郎はコンビニで買ってきた、ドーナツを皿に移した。
    「美味しいな。病院の食事と違う。」
    母親は天井を見上げ、独り言を言って、コーヒーを美味しそうに飲んだ。

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