サークルで活動するには参加が必要です。
「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
※参加を制限しているサークルもあります。
-
from: あきらめてんさん
2019/07/27 13:59:02
icon
老後の椅子取りゲーム⑱
建物の側面に通用口があった。錆びた鉄が擦られ、高い音立ててドアが開いた。
「どうぞ、入ってください。」
森山に手招きされて足を踏み入れた。天井が高く、大きなクレーンが中央にあった。建物の中は広い空間で風通しがあるのか、思いのほか静かでひんやりとしていた。
「中山先輩、おられますか。」
大きな声で森山は呼びかけた。この時、合図をするかのように金属の落下する音が奥の方でした。鉄の櫓が組まれ、水槽が上部に設置されていた。アルミ製の梯子の上から声がした。
「作業をしていて、スパナを落としたよ。まあ、こっちへ来てくれないか。」
ジーンズにシャツ姿の中山秀次が笑顔で迎えた。鉄の櫓の下には自転車と水槽が置かれていた。水槽の上には水車が設置され、水車の軸心が発電機に連結されているようであった。信二郎は素人でもあり、発電装置の構造的なことは理解できなかった。
「試作機というのは、これですか。」
信二郎は素直に質問した。
「そうです。まあ、試作品の試しづくりのようなものです。」
腕を腰にあて、どこか悠揚としたところが中山にあった。
「この装置で電気を発生させることができるのですか。」
「まだまだ微弱なものだから、公表するまでにはいっていません。」
実物を見る限り、感動めいたものは何もなかった。期待をしていたわけではない。好奇心があっただけだ。これでは子供の工作に、産毛がはえたようなものである。
ここで森山が口を挿んだ。
「先輩。水車を回す液体を持ち上げてもらいましょうか。」
「ええ。この僕が自転車をこぐのですか。」
信二郎は予定外の提案に顔を緊張させた。
「秘密は水のような、この液体にあるのですよ。」
こう言って、中山は水槽の傍に置いてあったブリキ製のバケツを指差した。-
サークルで活動するには参加が必要です。
「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
※参加を制限しているサークルもあります。 - 0
-
サークルで活動するには参加が必要です。
「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
※参加を制限しているサークルもあります。 - 0
icon拍手者リスト
-
コメント: 全0件