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from: ジャニス†さん
2007年02月18日 01時20分26秒
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中山可穂Ⅰ
私はあなたの手を見て泣いた。
春の金色の光の中で
あなたの手は虚空にむかってひらかれていた。
まるで何かを、ひらひらと跳ねまわる気紛れな何かを無心に掴み取ろうとするかのように。
やがてその手は
わたしの上に落ちてきた。
何者かに撃たれて墜落した鳥のように弱々しく痙攣しながら
ゆっくりとわたしの上に降ってきた。
あなたの手ほど孤独でかなしく美しいものを
わたしはほかに見たことがない。
その手は一分の隙もなく
完璧にわたしを拒絶する。
わたしの思いを、欲望を、夢を、わたしのさびしい命のありかを、わたしのすべてを弾き飛ばして
あなたの白い手がわたしの頬を撫でるように滑り落ちていく。
―卒塔婆小町より-
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コメント: 全3件
from: ジャニス†さん
2007年02月18日 02時16分40秒
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「中山可穂Ⅲ」
わたしはあなたの背中を見て泣いた。
あなたの背中はこちら側とあちら側を隔てる壁
いかなるハンマーをもってしても打ち砕くことはできない。
そのつめたい背中に
手のひらを押しあててわたしは泣く。
指先からわたしの苦しみがあなたの人生にまじりあい
その呪いの力であなたの背骨が醜く曲がればいいというように。
あたが死んだならあなたの背骨でペンダントを作ろう。
ぴかぴかに磨いて
プラチナの鎖をつけて
肌身離さず身につけていよう。
あなたの骨は風の強い夜にキュッキュッと啜り泣くような音がするだろう。
それはわたしの指先から滲み出した吐息の記憶だ。
かつてあなたを想いすぎて溢れ出た行き場のない熱情のしるしだ。
あなたは骨になっても
わたしの愛から逃れることはできないのだ。
―卒塔婆小町より
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from: ジャニス†さん
2007年02月18日 02時01分41秒
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「中山可穂Ⅱ」
わたしはあなたの目を見て泣いた。
夏の残酷な陽射しに負けてあなたの目はゆるやかに疲弊し
涼を求めるかのようにふっとわたしから目をそらす。
わたしを見つめつづけることにあなたの目は耐えられない。
なぜならわたしの目から放たれる光は
八月の太陽のようにあなたの網膜を灼き尽くすから。
火傷したらわたしの涙であなたの目玉を洗ってあげる。
愛しすぎて傷つけたなら
わたしの血であなたの心臓を清めてあげる。
あなたの目ほど正直に絶望を剥き出しにするものはほかにない。
緑がかった薄茶色の宝石をあなたの眼窩から抉り出して海の底に沈め
かわりにブラッドオレンジのようなルビーを埋め込みたいとわたしは思う。
そうすればあなたの瞳は
わたしの狂熱に耐えられるから。
―卒塔婆小町より
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from: ジャニス†さん
2007年02月18日 02時27分01秒
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「中山可穂Ⅳ」
あなたはわたしの涙にまみれて泣いた。
わたしはあなたの香りを吸い込んで泣いた。
あなたはわたしの闇に泣きわたしはあなたの光に泣いた。
わたしたちは月明かりの小舟で運ばれる死体のように
ただ静かに
そして永遠に交わることなく行き過ぎる二つの影。
波間にきらめいているのは真珠ではなく
痩せた小魚の銀の鱗だ。
この世は昏い海のようだから
無数の鱗が綺麗な宝石に見えるのだ。
愛という言葉が
無数の棘となってあなたに突き刺さるのとそれはどこか似ている。
―卒塔婆小町より
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