コメント: 全14件
from: ジャニス†さん
2007/03/14 12:42:07
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「ハジマリ 5ー14」
「ねぇ、幸一さん。自衛隊員って人殺しちゃっても平気なの?」
百合が尋ねた。
「いや、そんなことはないよ」
「そうよね、悪い人だけよね。私も白衣の天使なのに撃っちゃったもんね」
百合はヘリから見下ろす景色に感激していた。
しかしヘリが埼玉上空に到達すると辺りの景色は一変した。
あちこちで火災が発生し、黒煙が立ち上っていた。
「幸一さん、これじゃ火傷を負った人もたくさんいるでしょうね?痛いのよ、火傷は。痛くて苦しいの」
病院に到着すると二人がいた時とは比べものにならない程の患者で溢れていた。
from: ジャニス†さん
2007/03/14 12:39:45
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「ハジマリ 5ー13」
ガソリンスタンドも地震のため閉鎖されていた。
幸一はしかたなく自販機でアルコールを買うと、空になったガソリンタンクに入れた。
アルコールの主成分はエチルアルコールなので代替燃料として使えるのだ。
燃費は悪いがしかたない。
二人はなんとか防衛庁についた。
すぐに迷彩服に着替えると救難用UH-1ヘリに搭乗して埼玉へ向かった。
病院も被害を受けていたので負傷者を東京の病院に搬送しなければならない。
勇一はびっくりした。
百合は看護士だったのた。
from: ジャニス†さん
2007/03/14 03:07:04
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「ハジマリ 5ー12」
手りゅう弾は見事に命中し、男たちの乗った車は吹き飛んだ。
砕けた破片が幸一の頬をかすめ、うっすらと血が滲んだが何事もなかったようにバイクを飛ばす姿は、百合にとって子供の頃に見たアニメのヒーローそのものだった。
しばらく進むとバイクの燃料が切れた。
「幸一さん、これをつけてみて」
百合はポケットから指輪を取り出すと幸一の指にはめた。
「やっぱりぴったりだわ!」
百合は一人で納得したように微笑むと幸一の手をとり歩きだした。
この可笑しな女に幸一もまんざらではなかった。
from: ジャニス†さん
2007/03/14 03:04:28
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「ハジマリ 5ー11」
幸一のバイクは風となった。
空を飛び、小川を飛び越え廃墟となった町々を後にした。
疾走するバイクの後方から一台の車が追ってきた。
さっき殺害した男の仲間だった。
幸一はバックミラーで車を確認すると不適な笑みを漏らした。
幸一はバイクを180度回転させると車に向かってアクセルをふかせた。
バイクと車の距離はみるみる縮まっていく。
どちらも進路を譲らなかった。
「百合、しっかりつかまってろよ!」
「うん」
幸一は手りゅう弾のピンを歯で引き抜くと車にむかって投げた。
from: ジャニス†さん
2007/03/14 03:01:50
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「ハジマリ 5ー10」
なんて素敵な旅なんだろう!
幸一におぶわれて行くのも良かったが、バイクの後ろで風を切るのは、なんとも爽快な気分だった。
二人の乗ったバイクは瓦礫の上をいとも簡単に飛び越え、静まり返った外環を快適に進んだ。
路上のあちこちに追突して乗り捨てられた車があった。
荒川を越えると朝霞駐屯地から数機のヘリが飛び立つのが見えた。
百合はヘリに乗れなかったことを少し後悔していたが黙って幸一にしがみついていた。
このまま順調に進めば目的地には数時間で到着するだろう。
from: ジャニス†さん
2007/03/12 16:21:43
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「ハジマリ 5ー9」
幸一は、もう一人の男の後頭部をピストルで殴って失神させると女に言った。
「そんなに宝石が欲しいならくれてやる。ダイヤを抱いて地獄へ行け」
幸一は女の上半身を裸にするとダイヤのネックレスを次から次へと首に巻き付けていった。
女はネックレスで首を絞められ、もがき苦しんでいたが、やがてピクリとも動かなくなった。
幸一は店を出ると男たちの乗ってきたバイクのエンジンをかけた。
「百合、後ろへ乗れ。これで楽しい旅ができそうだぜ」
百合はヘルメットをかぶるとバイクの後ろに乗り、幸一の腰を抱いた。
from: ジャニス†さん
2007/03/12 14:24:20
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「ハジマリ 5ー8」
「きゃぁー!」
女の悲鳴を聞いた百合が店内に駆け込んだ。
「幸一さん、どうしたの?何?今の音は!」
その時、傾いたビルの窓枠がはずれ幸一に襲い掛かった。
寸でのところで窓枠の直撃を免れた幸一だったが、その手からピストルが飛び、男たちに取り押さえられてしまった。
「幸一さんに何をするのよ!」
百合がピストルを拾い構えた。
「百合さん、危ない!撃つな!」
幸一が叫ぶと同時に百合の手からピストルが発射され、男の太ももに命中した。
「平気よ、幸一さん。あなたを傷つける者は私が許さないから!」
百合はそう言うと幸一にピストルを返した。
from: ジャニス†さん
2007/03/12 12:52:44
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「ハジマリ 5ー7」
その時、数人の若者が宝石店の割れたショーウィンドゥから宝石や高級時計の略奪を始めた。
幸一は百合を背中から降ろすと言った。
「少し待っていてくれ。やつらを片付けてくる」
幸一は店に入って行った。
三人の男と一人の女が袋に宝石を詰めていた。
「はい、ご苦労さん。その袋をこっちへ渡すんだ」
四人はびくっとして振り向いた。
幸一の手にはピストルが握られていた。
「てめぇ、何者だ!」
リーダーの男が叫ぶと同時に銃声がして、男の額に穴が開き、男は後ろへどっと倒れた。
from: ジャニス†さん
2007/03/12 01:42:27
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「ハジマリ 5ー6」
「ねぇ、あれを見て!」
幸一の背中で百合が叫んだ。
百合の指差した先には埼京線の線路から大きく脱線した電車が崩れたビルに押し潰されていた。
通勤ラッシュの車内はすし詰め状態。
あれでは生存者はないに等しいだろう。
「あれって私たちが乗ったのの一本前の電車でしょ?私、本当はあれに乗るはずだったの!家を出たらね、雨が降ってきて傘を取りに戻ったの…奇跡だわ!」
「そ、そうだね」
背のうも小銃もおとなしくしていてくれるが、背中ではしゃぎ続ける百合は幸一の疲労を倍増させた。
from: ジャニス†さん
2007/03/11 21:47:44
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「ハジマリ 5ー5」
道路の至る所で亀裂が発生していて、幸一と百合は迂回しながら東京へ向かった。
それにしてもおかしな女だなと幸一は思った。
なんのために瓦礫の中を幸一と歩いて行くのだろう?
ヘリに乗れば安全に早く家に帰れるのに、いつ余震が起こるかもわからない場所にいる理由が幸一には全く理解出来なかった。
百合の足元がおぼつかないのを見てとると、幸一は百合をおぶった。
幸一は自衛隊の夜間行軍で重い背のうを背負い、小銃を肩にかけ、銃剣をぶらさげた完全装備で50キロ以上歩いたことが何度もある。
from: ジャニス†さん
2007/03/11 21:44:07
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「ハジマリ 5ー4」
病院を出ると辺りは騒然としていた。
平気だとは言ったものの、こんな靴で防衛庁までなんて歩いて行けるはずがない。
『でも幸一さんは百合の運命の人。これは運命の出会いなんだわ』
首都高速は崩れ、原型を留めない車、崩れたビル、同じ車両に乗っていた乗客のほとんどは重傷を負っていた。
そんな中で出会った私と幸一さん…。
百合は場違いな笑みを浮かべ、幸一に腕を絡ませると、瓦礫の中を鼻歌を歌いながら歩いた。
『疲れたらおんぶしてくれるって言ってたし、頼もしいわぁ、幸一さん!』
from: ジャニス†さん
2007/03/11 17:25:00
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「ハジマリ 5ー3」
「百合さんはどうしますか?僕は防衛庁へ行かなければなりません。東京消防庁のヘリと埼玉の朝霞駐屯地からも災害派遣のヘリが来ると思います。そのヘリを待って家へ帰ったらどうでしょう」
幸一は百合に言った。
「幸一さん私は大丈夫です。そのヘリには重傷者やお年寄りを乗せてあげてください。私、幸一さんと一緒に行きたい」
「ここはまだ川口ですから赤坂の防衛庁まではかなりある。徒歩になりますがそれでもいいですか?」
「かまいません、幸一さんと一緒なら」
「それじゃ、しんどくなったらおんぶします」
from: ジャニス†さん
2007/03/11 16:14:34
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「ハジマリ 5ー2」
幸一が顔をあげると車内は悲惨な状況だった。
百合は奇跡的に掠り傷程度の怪我で済んだ。
幸一も腕に打撲をおったものの、詳しい検査をするまでもなく、半ば追い出されるように日赤病院の診察室を出た。
ロビーは後から運ばれてきた重傷患者で溢れかえっている。
「ほんとうにありがとうございました。あなたが居なかったら私…」
「いや、とんでもない。無事で良かった」
お互い、自己紹介はしたものの身動きの取れない状態だった。
交通手段は断たれ電話も繋がらない。
「幸一さんは通勤の途中でしたのよね?私は休みで映画でもと。そしたらこんな…」
from: ジャニス†さん
2007/03/14 12:43:59
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「ハジマリ 5ー15」
百合は患者の手当てを次から次へと完璧にこなしていた。
その姿はクリミア戦争で傷ついた兵士を敵味方なく手当てしたナイチンゲールそのものだった。
幸一は突然、百合への想いが溢れるのを感じた。
百合をおぶってきたことを本当に良かったと思った。
二人の活躍でたくさんの人の命が救われた。
それから半年後、二人は結婚した。
幸一は防衛庁のテロ特命課で、百合は衛生隊で働いていた。
地震からまだ完全には復興していない埼玉だったが、二人は幸福な時間を共有していた。
終わり
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