アタシの昔の彼はねえ、トラッカーだったんだ。
ニッサンのビッグサムっていうゴツイのに乗っていた。
ゴリラみたいな奴だったよ・・

　耳緒の使い走りでの、高速で会ったことがあった。
追い越し車線で並んだ　トラックから、ホーンが聞こえた。

　アイツが、笑っていた。
　明るい笑顔だった。　アタシと・・・
　獣みたいな、セックスをしていた頃のアイツとは、
　ちょっと　違っていたな・・

　並走・・

　なんだ、お前　まだ　そんなバケモノに乗っているのか？
　アイツの目が、そう言っていた。


　あんた　こそ・・・

///////////

　インターチェンジ････ビッグサムのホーンが、長く長く
　鳴った。・・・・・バイバイ・・　

//////

　で、しばらくしてから彼から　電話があった。

　鍋がくいてえ。　魚の・・・

　なんにも、ないよ。　それから、あたしゃ　疲れてんだ。
　雇い主が、血も涙もないんだよ。

　俺がつくる。　その・・・魚とか　野菜とか・・・買ってきた。

　（アタシは、海育ちだから、どうも　肉より魚・・
　　じっちゃんは、現役の漁師だし。）
　　　　　
　どこに、いる？

　オマエのアパートの駐車場。

　（あちゃ）　殴らせてくれる？　金属バットで。
　
　腹なら、いいよ。

　///////

　金属バットを、持ったアタシと、スーパーの袋を持った
　アイツ。

　へへん　　

　ふふん

　寝るつもりはないからね。

　俺も

　みくびられたのかな？

　そういう意味じゃあない。充分・・ええと・・ここ（大阪）
　じゃあ　どういうのかな・・そう・・充分ベッピンさんだ。

　いくよ。

　どーぞ。

　私は、思いっきり　やってやった。
　ゴリラは、健在だった。
　ビクともしなかった。

　もうひとつ、お願いがあるんだけど・・・

　ミッドナイトのタイヤに、空気を入れてやって。
　
　バルブは、あるかい？

/////

　後は、知らない。

　自転車の、バルブは　２種類ある。
　洗濯バサミのようなものは、たぶん　オネエの愛車用だ。



　私のガールフレンドは、それでは、イヤﾂ　というので
　別のものを使う。
　彼女は、タフなのでとても、私の肺活量では、満足してくれ
　ない。

　ビッグサムの彼は、どうだったのだろう？