タムジンという人 2015/06/13

カメラマンの田村仁さんとは本当に長い付き合いである
７０年代の初め頃だったか
浅川マキさんとのジョイントコンサートが企画され
そのポスターを作るので撮影が行われた
そこに居たのがタムジンこと田村仁さんだった
そこから僕達の付き合いが始まる
今日までずーっと彼のカメラに
おさまって来た事になる
タムジンさんは撮影の時に「あれこれ」言わない
中には色々なポーズを指示するカメラマンも居たが
タムジンさんは何も言わない
せいぜい「ねー拓郎もうちょっと大きな感じ」とか
「遠くでも見てみようか」とか
「そこからここまで歩いてくれるかな」ってな具合だ
ところが彼の写真には必ずと言っていいのだが
「ドラマ」が見え隠れするから不思議だ
何でもないちょっとしたスナップでも
良く見ると「ドラマ」が見えてくる
昔はCDではなくアナログのLPレコードだったから
ジャケット写真が大きな存在だった
タムジンさんの撮影したジャケット写真が
僕のアルバムにもう一つの意味を持たせてくれていた

タムジン、僕のマネージャー、出版社の人
僕の４人でヨーロッパを回った事がある
某ジーンズのCM撮影だった
実はパリに到着した夜に僕ははしゃぎ過ぎて
体調を崩してしまった
そういう気分のままスペイン、イタリアと
撮影しながら回って最後にドイツ経由で日本に
帰る日が来た
ずーっと体調が変だったので好きなアルコールも
飲まないでの旅になっていた
旅の最終日！ドイツのホテルに着いた我々は
「今日はもう最後だから大いに飲もうか」と
いう事になった
長い禁酒生活だったので一気に気持ちが盛り上がり
全員が酔っぱらった
突然タムジンが叫んだ「タクロオー！もう勘弁ならん！
そこへヒザマズケ！許しを乞うまで俺はムチを
振るうぞ！どうだ許してくださいと謝るかアー」
完全に酔っていた
しかし僕も酔っている
「タムジンさまー！もう決してワガママは言いませぬ
２度とたてついたりいたしませぬ！どうかお許しを」
「えーい！ならぬわい！お前のワガママには
ほとほと愛想がつきた！ムチ打ちの刑に処する！」
と言いながら近所の夜店で買ってきたムチを
ビュンビュン言わせながら僕の周りを打つのだ
その時初めてわかった！
タムジンは何も言わないで僕を撮影しているが
実は「ウップンがワンサとたまっているらしい」
そして「タムジンはもしかしたらサド？(笑)」
タムジンさんと僕とは本当に「何も言わなくても」
わかり合える１点を共有している
2014年のライブで「タムジン！俺がギター弾き
だって事はわかってるよな」と伝えたら
彼は黙ってうなずき
素敵なショットを撮影してくれた

次のアルバムのテーマと次のステージの
1曲目はマーク2
これだけ決まっていればタムジンは又
最高の写真を撮ってくれるに違いないのだ
もちろんタムジンさんが家庭に帰って
サドぶりを発揮している・・という話は
一度も聞いた事がない


ボクも数回タムジンさんとお会いしている。
最初はつま恋の木下さんの著書の出版記念祝賀会の時。
会場へ入場する前に廊下で「いまです」（拓郎さんの最初の写真集）にサインをいただいた。
「これに本当にサインしてもいいの？」と聞かれたが、これは被写体が拓郎さんであってタムジンさんの作品だから是非お願いしますと申し上げたら苦笑いされてました。
祝賀会の最後には全員の集合写真をタムジンさんに撮ってもらった。
そう言えばあの写真どうしたのかなぁ、探してみよ～っと。

以後はライブ会場でお見かけするたびにご挨拶させていただいている。
飄々とした小柄なおじさまであります。