◇捜査用に導入
　捜査の効率化を図るため、県警が今年から全国にさきがけて導入したＰＩＴ（警察情報統合端末）が、ストーカーや家庭内暴力（ＤＶ）の被害者らに無償で貸し出されている。被害者支援団体は「警察の取り組みは心強い」と歓迎している。【坂根真理】

　貸し出し用の携帯電話型端末は、警察官専用の捜査関連機能は簡略化してあるが、通話機能のほか、全地球測位システム（ＧＰＳ）、緊急通報機能を搭載。最新のハイテク装備で被害者の安全確保を支援する。

　貸し出し期限は３カ月間だが、無期限に更新できる。生活安全企画課によると、県警が導入したＰＩＴ５００台のうち５０台を貸し出し用に確保しており、１５日現在の貸し出し状況は、県内在住の女性５人（ストーカー被害者１人、ＤＶ被害者４人）に計５台。同課は、貸し出しの目安として、相手が凶器を持って脅す場合がある▽裁判所のＤＶ保護命令を無視している▽加害者が暴力団関係者－－など。危険の切迫度を基に判断するという。

　被害者が危険を察知した際は、端末の緊急通報ボタンを押すと、相談を受理した警察署と本人の現在位置を管轄する警察署に通報され、被害者の位置情報と相談内容が各署のパソコン画面で確認できる。そのため、切迫した状況で警察に現在地などを話す時間が省け、迅速な対応が可能になるという。さらに、全国どこからでも通報できるため、県外の警察との連携も容易になる。これまで緊急通報ボタンが使用されたことはないが、同課は「お守りのように、精神的に安心できるのではないか」としている。

　ＤＶ被害者の保護シェルターを運営するＮＰＯ法人「さんかくナビ」の貝原己代子代表は、「ＤＶやストーカーで悩む人が増える中、警察の支援は心強い。携帯電話の貸し出しは非常に喜ばれる取り組みだ」と歓迎している。県警によると、０８年度のＤＶ対応件数は４９３件（前年比４３件増）▽０８年度のストーカー認知件数は２７４件（同６３件増）と増加傾向にある。同課は「一人で悩まず、まずは相談を」と呼びかけている。

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毎日新聞　2009年6月16日　地方版