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配偶者からの暴力(DV)問題

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  • from: 21世紀さん

    2009/11/16 22:27:06

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    時代の風:権力関係と「暴力」=精神科医・斎藤環

     ◇自らを警戒する謙虚さを
     10月19日、愛知県美浜町の訓練施設・戸塚ヨットスクールの寮で、18歳の女子寮生が屋上から飛び降りて自殺した。事件について戸塚宏校長は「突発的で防ぎきれなかった」と釈明をしている。

     同スクールは、ヨット訓練を通じて生徒の人格を矯正することを目的とした施設だ。戸塚校長による独自の「脳幹論」によれば、この手法は不登校から家庭内暴力、ひきこもりなどの解決に幅広く有効であるという。

     しかし同校では、1980年から82年にかけ、激しい体罰を含むスパルタ式のヨット訓練で訓練生2人が死亡し、2人が行方不明となる事件が起きている。戸塚校長らは傷害致死罪で服役し、2006年に刑期を終えて出所したばかりだった。

     スクールが再開された直後の同年10月にも寮生が自殺しており、今回は2回目だ。いずれの自殺も背景がはっきりせず、今後もきちんと検証されることはないだろう。

     私はこのニュースから、近年大きく報道された二つの事件を連想した。

     一つは、06年4月、名古屋市内にあるひきこもりの若者の「支援」施設「アイメンタルスクール」で、26歳の男性が外傷性ショックにより死亡した事件である。この男性は、突然自宅を訪れた「支援者」らによって拉致され暴行を受け、施設の一室に監禁されていた。施設の責任者とスタッフは、監禁致死容疑で逮捕された。

     これは民間の施設で起きた事件だが、いまひとつは公的機関である少年院で起きた事件である。

     09年6月9日、広島少年院で収容中の少年に暴行したとして、同少年院の法務教官ら4人の職員が逮捕された。私が最もショックを受けたのは、同事件に関連して、8月11日に元首席専門官の向井義被告が逮捕されたことだった。

     向井被告は発達障害に配慮した矯正教育の実践で高い評価を受けていた。欧米の発達障害研究の成果を取り入れて独自に開発された教育プログラムは「宇治方式」と呼ばれ、宇治少年院や広島少年院での実践は、再入院率ゼロという画期的な成果を上げたとされている(品川裕香「心からのごめんなさいへ」中央法規出版)。伝え聞く人物像も、温厚で篤実な人格者という印象だった。

     しかし起訴状によれば、向井被告は05年9月に、当時16歳の少年の首をシーツで絞めて遺書を書くよう迫り、拒んだ少年の顔に有毒ガスを詰めた袋を近づけ「これを吸ったら死ねるぞ」などと脅したとされている。事実とすればあきらかに虐待行為であり、少年を善導する職員にあるまじき所業だ。

     戸塚ヨットスクールやアイメンタルスクールにおける「指導」の理論的な基盤は、素朴な経験主義に基づいたもので学問的根拠に乏しい。しかし向井被告の理論は、発達障害に独特の認知障害のありようを的確にふまえたものとして、精神科医にも学ぶところが大きかった。

     つまり、理論や立場の正当性にもかかわらず、まったく同種の「暴力」が起きてしまったという事実が、私にはショッキングだったのである。

     向井被告は犯行を否認しており、私もそれを信じたい。しかしその一方で、ヨットスクールの自殺と同様、その背景になんらかの暴力的な要因があったのではという疑いも捨てきれない。

     なぜならこれは、構造的な問題であるからだ。

     71年、スタンフォード大学で一つの心理実験が行われた。健康なアルバイト学生約20人を募集し、コイントスで囚人役と看守役に分け、「刑務所ごっこ」をさせたのである。

     囚人役の学生は、裸で身体検査を受けた後に囚人服を着せられ、実験室に監禁された。看守役は制服や警棒が与えられ、交代で囚人の監視をさせられた。囚人は常に番号で呼ばれ、睡眠、食事、トイレなど、あらゆる面で厳重に管理され、違反者にはペナルティーが加えられた。

     実験開始から2日後、囚人役は卑屈な態度に変わり、看守に盲従するようになった。逆に看守役は、残忍で権威的な態度に変わり、深夜に囚人役をたたき起こして無意味に点呼をとる、といった虐待行為を繰り返すようになった。

     実験はわずか6日目に中止され、以後この種の実験は禁止された。心理学史に名を残す「スタンフォード監獄実験」のあらましである。

     この実験の教訓はなんだろうか。

     非対称的な権力関係は、いかなる場合でも「暴力」につながりうる、ということ。それは人格や意図、理論的な正当性とは無関係に起こりうる、ということ。そう、学校で、職場で、家庭で、そうした暴力は日常的に起きている。

     人を教え導くことは、時として人に命じ、従わせることでもある。そのような立場に立つものにとって欠かせない資質は「謙虚さ」だ。必要とあらば自らの行為を衆目にさらし、時には第三者の批判を受け入れつつ、自らの「暴力性」を警戒し続けるような「謙虚さ」。私たちがその資質の重要さを認めない限り、同じ悲劇がまた繰り返されることになるだろう。
    11/15
    毎日新聞

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