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弥生の河に言の葉が流れる

弥生の河に言の葉が流れる>掲示板

公開 メンバー数:7人

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  • from: yumiさん

    2011年05月21日 10時58分30秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・27・

    《やあ、今回の舞台はもう分かっていると思うが遊園地だ。
     そこであるモノを探してもらい、そして、ある場所に向かってもらう。
     健闘を祈る。

     空の橋が君達を導き、空高き場所にて、それを放て。》

    「空の橋は虹。」
    「空高き場所っていうのはこの遊園地の中で一番高い施設、つまり――。」
    「あっ!観覧車!?」
    「……。」
    「……。」

     美波(みなみ)の姉は同時に互いの顔を見合わせ、溜息を同時に吐いた。

    「えっ?えっ?えっ?」

     訳が分からない美波は小首を傾げる。

    「お前、本当にパンフ見てないんだな。」
    「リョウくん?」

     美波に遊園地のパンフレットを渡す涼太(りょうた)は眉間に皺を寄せていた。

    「ほら、見ろよ。」
    「あっ!」

     パンフレットにはご丁寧にも地上からその高さを書かれていて、そして、中央にある城に園内最長の建物、と書かれていた。

    「観覧車よりも高いだろ?」
    「うん、そうだね。」

     ニッコリと微笑む美波に涼太は微かに表情を和らげる。

    「お前って本当に、ボケだな。」
    「なっ!酷い!!」
    「なに、いちゃついているの?」

     低い声を出すのは勿論智里で、涼太は眉間に皺を寄せ彼女を睨んだ。

    「いちゃついてなんていませんよ?」
    「そうかしら?わたしにしたらいちゃついているようにしか見えないわ。」
    「………。」

     涼太はジトリと智里を睨み続けた。

    「智里お姉ちゃん。」

     空気を読んでいるのかいないのか分からない、美波が口を開いた。

    「何かしら、美波?」
    「あたしとリョウくんはいちゃついてないよ?」
    「まあ。」

     智里は驚いた声を出すが、その目は残酷なほど黒い笑みを浮かべていた。その理由は否定された涼太にあった。
     彼は美波に否定され、自分が先ほどまで否定していたというのに、落ち込んでいるのだった。

    「だって、あたしはリョウくんの事「弟」のように思っているのに、いちゃつくはずないじゃない。」
    「……。」

     哀れな涼太に三対の双眸が見詰める。

    「……頼む、美波、これ以上言わないでくれ(精神的ダメージが大きくて…立ち直れないかも…)。」
    「えっ?何で?」
    「……。」

     涼太は本気でこの天然娘をぶん殴りたくなったが、流石に相手は少女でしかも、想い人だから実行はしなかった。

    「美波…。」

     涼太を哀れんだ友梨がようやく口を開いた。

    「何?友梨お姉ちゃん。」
    「(涼太くんの心のためにも)少し黙っててくれる?」
    「えっ?」
    「ほら、この紙に書かれている事を昌獅に教えたいから。」
    「あっ!うん分かった!」

     ニッコリと承諾した美波に友梨と昌獅は互いに視線を交わしあい、同時に溜息を吐いたのだった。

    (涼太くん…ガンバ…。)
    (本当に苦戦しそうだな…、友梨があそこまで天然じゃなくて本当に助かった…。)

    あとがき:え〜と、申し訳ありませんが、当分…まだどのくらいの期間かは分かりませんが、このサークルの更新を止めます…自分がって出すみません。ですが、必ず戻ってきます!!

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  • from: yumiさん

    2011年05月17日 15時30分51秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・26・

    「さてと、そろそろ本題に入りましょうか?」
    「…智里(ちさと)の鬼…。」

     友梨(ゆうり)の呟きに智里は満面の笑みを見せた。

    「あら?失礼ねこんな天使のような――。」
    「何処がよ!」
    「何処がだ!!」

     思わず智里この言葉に突っ込んだのは姉である友梨と彼女に虐げられ続けられている涼太(りょうた)だった。因みに昌獅(まさし)は突っ込みかけたが、突っ込んだら負けのような気がして突っ込まなかった。

    「お姉ちゃん……と負け犬。」

     どこか楽しそうに目を眇める智里に友梨と涼太は顔を引き攣らせた。

    「………何よ。」
    「ふ〜ん、そんな事言うの?」
    「…言ったら何なんだ。」
    「………何にも?」
    「何だよ!その間は!!」

     不気味すぎる間に涼太は本気でびびった。

    「本当に何もないのよ?ただ……、今そんなわたしを侮辱して後々に生き残れるかしらね?まあ、わたしは生き残ってくれなくても構わないんですけどね。」
    「……。」
    「智里!」

     青ざめる涼太を見ながら友梨は叫ぶ。

    「何かしら?」
    「何かしら、じゃないわよ!涼太くん虐めて楽しいの!?」
    「ええ、楽しいわよ。」
    「……。」

     智里の返答に友梨は絶句する。

    「ふふふ、分かってないわね、お姉ちゃん。」
    「な、何がよ……。」
    「後々の争いの芽になるのはさっさと摘んでしまった方がいいのよ?」
    「…争いの芽って…あんた、涼太くんの事どんな目で見ているのよ。」
    「そうね、馬の骨、かしら。」
    「う、馬の骨……。」
    「……。」

     物凄く嫌な例えをする智里に友梨は呆れを通り越し、脱力する。

    「何かしら?まだ何か言いたいの?」
    「もう、いいです。」
    「あら、そう?」

     まだ姉ならば文句を言うだろうと思った智里はあっさりと引いたものだから、肩を竦めた。

    「…おい、いい加減にしろよ。」

     呆れた声を出したのは昌獅で、彼はそっと脱力している友梨の肩を叩いた。

    「何なのかしら?ヘタレ。」
    「……。」

     昌獅は眉間に皺を寄せるが、何とか智里を無視する。

    「このクリア条件の意味分かるのかよ?」
    「まあね。」
    「うん、何となく分かるわよ。」

     何と友梨と智里は同時にそう言ったものだから、昌獅は怪訝な顔をする。

    「友梨、さっきまで理解していなかったようだが?」
    「うん、よくよく考えなくても、単純だから今分かった。」
    「……。」
    「そうね、これは思いっきり単純なものね…ただしがつくけど。」
    「うん、そうよね。」

     智里と友梨は同時に紙に視線を向けた。

    あとがき:このサークルを創ってから今日で丁度一年ですね。
    一年の間に本当にこんなにも載せる事が出来て嬉しいですが…、本当はダークネスは終わらせたかったんですが…無理でしたね〜。
    これからも、弥生の河に言の葉が流れるをよろしくお願いします。

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  • from: yumiさん

    2011年05月16日 14時40分51秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・25・

    「なぁ。」

     唐突に涼太(りょうた)が声を掛けてきたので、友梨(ゆうり)は珍しいと思い、顔をそちらに向けた。

    「どうかしたの?」
    「…これ。」

     涼太は近くに倒れていたピエロを指差し、友梨は訳が分からず、取り敢えず近寄ろうとしたが、昌獅(まさし)に止められた。

    「何やっているんだ。」
    「えっ?見に行くだけだけど?」
    「…危険かもしれない。」
    「もう倒したんだから、大丈夫よ。」

     昌獅は友梨の「大丈夫」という言葉ほど信じられないものはないと思うが、それを言ってしまえば彼女の機嫌を損ねるのでそれは言わなかった。

    「お前はそこで待ってろ。」
    「え〜。」
    「いいな。」

     念を押す昌獅に友梨は小さく肩を竦めた。

    「分かったわよ。」

     昌獅は本当に友梨が近寄らないか確認してから涼太の指差すピエロを見た。
     一見するとただの他に倒れているヤツラと大差ないのだが、よくよく見ると、そのピエロの服の真正面に何か紙が貼られていた。

    「……これは。」

     昌獅はピエロが動き出さないか一応確認し、友梨を手招きする。

    「どうしたの?昌獅?」
    「これを見てみろ。」

     昌獅が指差すものを見た友梨は顔を顰めた。

    「…これって。」
    「ああ、今回のゲームのクリア条件だろうな。」
    「…何とも言えないわ。」
    「同感。」

     二人は紙だけを剥がし取ると仲間の待つ場所まで戻った。

    「どうかしたの?…いえ、何を見たの?」
    「これ。」

     友梨は智里(ちさと)に紙を渡した。
     智里は紙を受け取り、目を走らし、その顔が徐々に怒りで歪んでいく。

    「ふ〜ん、見事な挑戦状ね。」

     クスリと笑う智里は一見楽しげに微笑んでいるが、その中身を知っている友梨たちは智里の隠しきれない怒りにゾッとした。

    「ち、智里さん?」
    「智里お姉ちゃん…恐い。」
    「やばいな…こりゃ…。」
    「誰かどうにかしろよ。」
    「…どうにもならないんじゃないかな?」

     上から順に友梨、美波(みなみ)、昌獅、涼太(りょうた)、勇真(ゆうま)がそれぞれの感想を漏らした。

    「何か最強度が増しているような……。」
    「よう、じゃなく絶対増している。」
    「だよな〜。」
    「リョウくんたち言いすぎだよ。」
    「美波はそう思わないの?」
    「……。」

     美波もそう思っているのか、黙り込み、友梨は思わず、その華奢な肩に手を置いた。

    「ごめん、言えないよね。」
    「うん、言えない。」
    「そうよね、言ったら殺され――。」
    「あら、よ〜く、分かっているようね。」

     一部始終しっかりと聞いていた智里は友梨たちに満面の笑みを見せていた。

    あとがき:車の免許でようやく水曜日に仮免の試験を受けられます。
    …S字が苦手な私…当日合格する事が出来るのか、本当に心配です…。

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  • from: yumiさん

    2011年05月14日 14時44分09秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・24・

    「さて、こんな場合じゃないわね。」
    「…そう思うのなら、こんな事しないでよ。」

     腹を押さえ、憎憎しそうに智里(ちさと)を睨む友梨(ゆうり)は、顔を引き攣らせている。

    「まあ、お姉ちゃん何か文句でも?」
    「………もう、いいです。」

     友梨はこれ以上何か言っても負けっぱなしなようなきがして、肩を落としながら言った。

    「あんたには勝てないもんね。」
    「そうよ、お姉ちゃんがわたしに勝とうなんて一千億年早いのよ?」
    「い、一千億?」
    「ええ、一千億。」
    「……。」

     落ち込む友梨の肩に誰かの手が乗った。

    「こいつには誰にも勝てない。」
    「昌獅(まさし)……。」
    「まあ、本当に失礼な人たちですね。」
    「「……。」」

     昌獅と友梨は互いの顔を見合わせ、仲良く溜息を吐いた。

    「本当に失礼な人たちですね。」

     目が据わっている智里は不機嫌そうな表情を浮かべた。

    「わたしだって勝てない人の一人や二人いますよ?」
    「……どうせ、自分より成績のいい人でしょうが。」
    「俺らは性格で言っているからな。」
    「……。」

     智里はクスリと微笑み、ゾッとするほどのおどろおどろしい笑みを浮かべた。

    「あら、わたしはお母さんに勝てないわ。」
    「……。」
    「……なるほどね。」

     智里の言葉に昌獅は納得していないようだが、友梨は納得したようだった。

    「私からすれば、お母さんの方が何十倍もマシだと思うけど?」
    「本当にそうかしら?」
    「……お母さんも良い性格をしているけど、あんたほどじゃないと思うわ。」
    「まあ、お姉ちゃんはお母さんよりもわたしの方が性格悪いと思っているのね。」
    「ええ、思っているわよ。」

     姉妹喧嘩までに発展しそうな遣り取りに、昌獅は両手を挙げ、この中でまだこの二人を止められそうな勇真(ゆうま)をこっそり見た。

    (おい、こいつらをどうにかしてくれ。)
    (……確かにこのままじゃいけないな。)
    (だろ…頼む。)

     珍しく頭まで下げる昌獅に勇真は苦笑を浮かべ、友梨と智里の間に入った。

    「その辺にしたらどうかな二人とも。」
    「……。」
    「わたしは別に構いませんけど?」

     智里は今にも噛み付きそうになっている姉を一瞥する。

    「でも、そこの姉はどうかしら?」
    「……あんたが自分の性格が最悪だって事を理解してくれたら別に言う事はないわ。
    「あら、わたしの性格は最高でしょ?」
    「……。」
    「そうじゃなきゃ、やってらんないでしょ?こんな馬鹿な事をして、しかも復讐に燃えているんですからね?」
    「……。」

     友梨は智里が自分の性格が普通じゃないとは理解しているようなので、そこで止める事にした。

    「もう、いいです。」
    「お疲れ様。」
    「いえ……、勇真さんも迷惑掛けてごめんなさい。」
    「いや、いいんだよ。」
    「………本当に、すみません。」

     友梨は頭を下げ、勇真は苦笑を浮かべていた。

    あとがき:一年前は影も形もなかったダークネスシリーズでしたが、今では一人ひとりのキャラが出来上がっていますね…。
    始めの頃は勇真さんが動かし辛かったですけど、今は何かサポーター化していますね。

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  • from: yumiさん

    2011年05月12日 09時37分18秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・23・

    「え、えげつない……。」

     昌獅(まさし)は先ほどの遣り取りを見てそう言った。

    「ま・さ・し〜。」

     昌獅の言葉を聞いていた友梨(ゆうり)は不機嫌そうに顔を歪ませた。

    「これは言っておくけど、私の所為じゃ――。」
    「どう見てもお前も一役買ってるだろうが。」

     呆れるように言う昌獅に友梨は軽く睨んだ。

    「だって〜。」
    「本当に小さな親切大きなお世話だな〜。」
    「……どうせよ。」

     いじける友梨に昌獅は苦笑する。

    「悪かった、だから拗ねんな。」
    「拗ねてなんていませ〜ん。」
    「何処からどう見ても、拗ねているだろうが。」

     呆れ口調の昌獅はそっと友梨の頭を叩く。

    「ほら、機嫌直せよ。」
    「無理。」
    「………。」

     そっぽを向く友梨に昌獅は力ずくでどうにかしようかと考え始めるが、不意におぞましい気配を感じ、口を噤む。

    「バカップルいい加減にしたらどうかしら?」

     青筋を浮かべる智里(ちさと)に昌獅は冷や汗を流す。

    「ば、バカップルってなによ。」
    「お姉ちゃんたちの事。」

     智里は意味を本気で訊いていると思っているのか、それともワザとすっ呆けているのか、多分後者であるだろうが、そう答えた。

    「違うわよ!」
    「あら、違ったの?」

     智里の目は冷めている、しかし、それに気付くほど友梨は冷静ではいなかった。

    「違うって言っているでしょ!この馬鹿智里!!」
    「馬鹿?」

     智里は満面の笑みを浮かべながら、友梨に近付く。

    「ふ〜ん、言うに事欠いてそんな事を言うのね。」
    「あっ……。」

     友梨はようやく智里の機嫌は思いっきり悪い事に気付き、いつもならそんなに怒らない言葉でさえ切れてしまった事実に凍りつく。

    「お姉ちゃんって本当に空気を読まないわね?」
    「あの…智里…さん…。」
    「そんなお姉ちゃんに二つのうちどちらかを選んでくださいね?」
    「いっ、いったい何を……?」
    「一つ、このわたしの鉄拳をその身に受けるか……。」
    「……ち、ちさ――。」
    「もう一つはわたしのこの試験物体をその身に受けるか。」

     智里はポケットから何か黒い塊を抜き取り、友梨に見せる。

    「…それは一体……?」
    「あら、訊きたいの?」

     クスクスと笑う智里は天使のようだが、友梨にとっては閻魔様でもはだしで逃げ出したくなるほどおどろおどろしいものだった。

    「……て、鉄拳で。」

     訳の分からないモノで死にたくはない友梨は無難な答えを出した。

    「あら、残念ね。」

     智里は本当に残念そうにそう言うと、その黒い塊をポケットにしまいなおした。

    「じゃ、遠慮なく。」

     智里は容赦なく拳を友梨の腹にめり込ませた。

    「ぐっ…。」

     友梨は智里の攻撃を喰らう前にうまく避けようと考えたのだが、残念ながら智里がそんな暇をつくるはずがなく、友梨は膝を着く。

    「これでも手加減したのだから、いいでしょ?」
    「どこが…よ。」

     友梨の声は低く、本当に痛そうな声だった。

    あとがき:本日二本目、そういえば、トータル数が7万5千人を突破しました〜。嬉しいです。

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  • from: yumiさん

    2011年05月12日 09時33分58秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・22・

    「リョウくん!大丈夫!!」

     駆けつけてきた美波(みなみ)はすぐさま涼太(りょうた)の顔を覗き込んだのだった。

    「みな…み。」

     涼太は今にも薄れていく意識を現実に繋ぎとめる。
    「大丈夫?リョウくん?」
    「……平気だ…。」

     涼太は無理矢理笑みを作り、美波を安心させようとした。

    「……馬鹿。」

     美波は目元に涙を溜め、涼太を軽く睨んだ。

    「どうして、そんな傷付くのよ……。」
    「しゃーねーだろうが…。」

     涼太は比較的飄々として言った。

    「オレと勇真(ゆうま)しか戦う奴がいなかったんだからな…、俺が傷ついてもしょうがねぇだろ?」
    「…リョウくんの馬鹿…。」

     美波の声に涼太は顔をゆっくりと上げた。

    「本当に、本当にリョウくんの馬鹿!」
    「馬鹿、馬鹿煩い……。」

     涼太は耳元で叫ばれているからか本当に嫌々そうに顔を顰めた。

    「煩いって!」
    「オレは一応怪我人だぞ。」
    「リョウくんが無茶するからでしょうが。」
    「それでも耳元で叫ぶのか……非常識だな。」
    「非常識はリョウくんだよ!」
    「……。」
    「ほ〜ら、美波、その辺にしときなさいよ。」

     涼太が顔を顔を顰めていると、友梨(ゆうり)が苦笑しながら美波の肩にそっと手を置いたのだった。

    「友梨お姉ちゃん。」
    「涼太くんは怪我をしているんだよ、そんなに叫んでたら絶対に怪我に響くわよ。」

     友梨はそっと涼太の怪我の具合を診始めた。

    「…骨に異常はなさそうね。」
    「そうですか。」
    「まあ、打ち身に…切り傷…はしょうがないわね……。」
    「そりゃ、こんなにやられてたら仕方ないだろう。」
    「手当をする?」
    「…いや、時間が――。」
    「そう言うと思った。」

     苦笑する友梨は顔を上げ、いつの間にか近寄っていた智里(ちさと)を見遣った。

    「智里傷薬持っている?」
    「勿論よ。」

     智里はどこからか傷薬を取り出して、そっと友梨の掌にそれをのせた。

    「ありがとう。」
    「ちょっ…友梨先輩?」

     異様な気配を纏う友梨は涼太の傷口に薬を掛けた。

    「っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
    「…智里〜、よりによってこの薬?」
    「これが効くのよ。」
    「でも、涼太くんが頑張ってくれたのに、この仕打ちはないんじゃないかな?」
    「あら、かけたのはお姉ちゃんよ?」
    「……。」

     友梨は半眼になりながら、智里を睨んだ。

    「私は痛い薬を渡せなんか言ってないわ。」
    「ふっ。」

     笑う智里に友梨はじろりと睨んだ。

    「ごめん、本当にごめんね、涼太くん。」
    「……いえ、全てはそこの……。」

     涼太だって友梨が親切心からやってくれた事を知っていたので、涼太は顔を歪めながらも友梨に怒鳴ることはなかった。

    あとがき:智里が痛い薬を用意するなんて事は簡単に分かっただろうに…。友梨ちゃん疲れているのかな?
    まあ、戦い続きだからね〜。

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  • from: yumiさん

    2011年05月10日 14時53分33秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・21・

     勇真(ゆうま)は助っ人として入った昌獅(まさし)と友梨(ゆうり)の姿を見つけ、ホッと息を吐いた。
     先ほどまで集中的に狙われていた涼太(りょうた)は傷と友梨の言葉のダメージによりぐったりとしているが、先ほどの直視できない光景よりはずっとマシだった。
     なにせ、涼太を助けたくても、彼に近付こうとすれば、智里(ちさと)や美波(みなみ)の防御が薄くなるし、それに勇真の武器は弓矢でいくら腕に自信がある勇真でも涼太に矢が刺さらないとは断言できない。

    「遅かったわね。」

     冷たい言葉に勇真が振り返ると、言葉と同じほど冷たい目がそこにあった。

    「智里ちゃん?」
    「後一分でも遅かったら、これでも投げてみようかと思ったのにね…本当に残念のような、残念じゃないような……。」

     クスクスと笑う智里だが、その目は決して笑っていない。

    「……それは?」

     勇真は智里の手にあるモノに目を奪われる。一見すればボールのようにも見えるのだが、勇真の直感ではボールじゃないと告げる。

    「これ?」
    「……。」
    「これはね?小麦粉爆弾。」
    「へっ?」

     勇真は訳が分からないのだが、それがとんでもなく嫌なものだと分かっているので、顔を引き攣らせる。

    「小麦粉と水…まあ、色々なものを混ぜたもので、一応対人間だったら、目くらましは出来ると思うけどね。」
    「……。」
    「まあ、あの変なピエロたちに対してこれが効くかは全く予想がつかないけどね。」

     智里は小さく肩を竦め、そっと小麦粉爆弾を鞄の中にしまう。

    「智里ちゃん……。」
    「何かしら?」
    「もしかして、他にもあるの?」
    「ええ、胡椒爆弾でしょ、それに玉葱…他には…。」

     まだまだ名前を挙げていきそうな智里に勇真は顔を真っ青にさせながら、首を横に振った。

    「リョウくん!」

     行き成り美波がそう言いながら走り出し、勇真が視線を向けるといつの間にか全ての敵を薙ぎ払ったようで、どこにも敵の姿がなかった。

    「さすが、戦闘員ね。」
    「……。」

     まるで、チェスかなんかの駒のようにあっさりと言い捨てる智里に勇真は苦笑を漏らす。

    「智里ちゃん。」
    「何かしら?」
    「これ以上昌獅や涼太を苛めない方が良いよ。」
    「あら、虐めているんじゃなくて、教育してあげているだけです。」
    「……。」

     勇真は哀れみの篭った視線を二人にやる。

    「あのぼんやりとした愚姉、愚妹をもって行こうとしているんですからね、これくらいしてもお釣りがくると思うわ。」

     勇真は智里でも姉妹愛というものがあると思った――のだが……。

    「まあ、それは三分の二ってところで、残りの三分の一はあの二人を選んだ物好きを虐めるのが楽しいだけどね。」
    「……。」

     不憫な、と勇真は思わず涙がでそうになる。

    「さてさて、これからどうなる事かしらね〜。」

     クスクスと笑う智里は本当に悪魔のようで、勇真は彼女の姉と妹を好きになった二人の無事を心から祈ったのだった。

    あとがき:本日は午前中だけだったのでストックもあることだし、二本載せさせていただきました〜。ふう、さっさとダークネスを終わらせたい…、本当は一年くらいですむかな〜とか思ってたんですけど、中々うまくいっていませんね…。

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  • from: yumiさん

    2011年05月10日 14時50分05秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・20・

    (やべ……意識が……。)

     どのくらい攻撃を受けたのか分からないが、涼太(りょうた)は意識を飛ばしかけ、眉間に皺を寄せた。
     少し離れたところで美波(みなみ)の姿が映った。彼女はいつの間にか姉である智里(ちさと)の腕に掴まって、何か叫んでいた。

    (ああ…やべ…耳いかれたか?)

     涼太は苦笑し、どうにかならないかと考え始めた。
     しかし、そんな涼太の考えなど知らないのか、敵は容赦なく涼太を蹴る。

    (……情けねぇ……。)

     涼太は今物凄く格好悪い、と呟き、次の瞬間、何故か攻撃が来なかった。

    「………?」

     鈍くなった思考を何とか正常に動かしながら、顔を上げるとそこには救世主が二人いた。

    「情けないな。」
    「昌獅(まさし)!」

     一人は何故か柄の長い箒を持っており、もう一人は相方を怒鳴り、涼太を起こす。

    「大丈夫?ごめんね、遅くなって。」

     柔らかな体に包まれ、涼太はようやく自分が助けられた事を悟った。

    「…………昌獅。」
    「ん?」
    「徹底的に潰して。」
    「……友梨さん、顔恐いですけど?」
    「ふふふ……。」

     笑う友梨はかなり智里に似た笑みを浮かべていた。

    「当然でしょ?美波の(未来の)恋人を虐めるなんて、可哀想じゃない。ただでさえ智里に虐められて可哀想なのに。」
    「……。」
    「……友梨とどめさしてどうするんだ?」

     撃沈する涼太に昌獅は同情を送る。

    「だって、本当に不憫だもの!」
    「……。」
    「美波に気持ちが伝わらないし!」
    「うっ…。」
    「智里には虐められているし!」
    「うぐっ…。」
    「それにそれに……。」
    「友梨そこまでにしろ。」

     友梨の一言に地面にめり込む涼太を見ている事ができず、昌獅は友梨の言葉を止めようとした。

    「えっ、何で?」

     全く涼太の様子に気付いていない友梨は本当に不思議そうな顔で首を傾げた。

    「……無自覚か?……性質が悪いな。」
    「何がよ!」

     不満を漏らす友梨に昌獅は静かに半分屍になっている涼太を指差した。

    「あっ!涼太君ごめん!!」
    「……本当にお前って残酷だよな…。」
    「だ、だって………」

     口ごもる友梨に昌獅は溜息を漏らした。

    「お前ってそういうところ妹その一と被る。」
    「やめて〜!」

     本気で嫌がっている友梨に昌獅はまた溜息を吐く。

    「んで、天然の所は妹その二と同じだ。」
    「……天然じゃないと思うけど?」
    「そう思っている奴に限って天然なんだよ!」

     昌獅は口を動かしなら、自分たちに襲い掛かる敵を確実に伸していった。

    あとがき:友梨ちゃんは三姉妹の中でまだマシな方なんだけど…それでも、やっぱり二人と血が繋がっている思われる部分が大いにありますね。

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  • from: yumiさん

    2011年05月08日 11時31分22秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・19・

    「恐ぇ……。」

     涼太(りょうた)は必死で傍らにいる少女を守るようにナイフを構えていた。

    「リョウくん?」
    「ああ、何でもねぇよ……多分。」

     涼太はここまで智里の殺気を感じない美波(みなみ)の鈍感さを羨ましいと思うのだが、ここまで鈍感すぎるのも問題があるな、と冷静な面では突っ込んでいた。

    「本当に?」
    「本当にだ。」

     首を傾げる美波に涼太は肩を落す。

    (こいつって、本当に鈍いのか鋭いのか分かんなくなる……。)
    「何か失礼な事を考えなかった?」
    「あっ?本当の事なら考えたけどな。」
    「む〜……。」

     頬を膨らます美波に涼太は溜息と共に、襲ってきたピエロを叩きのめした。

    「うひゃっ!」
    「変な悲鳴…もっと女らしいの上げられないのかよ。」
    「な、何よ…。」
    「は〜、何でこいつなんだろうな……。」

     肩を落す涼太の言葉など耳に入っていないのか、何も突っ込まない美波は恐怖からか顔を強張らせていた。

    「…一体何でだろうな……。」

     気づいた時には気になっていた。それは上の方から転がされた雪玉のように転がるたびに大きくなって、もう止まらない。
     涼太は溜息を一つ吐き、頭を切り替える。

    「こんな事考えても、永遠に答えなんかでないよな。」

     涼太の瞳が持っているナイフのように鋭くなった。

    「さて……いっちょやるか。」

     好戦的な目付きになった涼太は近くにいた敵を容赦なく切りつける。

    「こいつの毛一本たりとも触れさせねぇよ。」

     ニヤリと笑う涼太はある意味昌獅(まさし)にも似ていた。
     もし、それを言ったら涼太も昌獅もどちらとも嫌な顔をするだろうが……。

    「はっ!」

     涼太は美波から出来るだけ離れず、自分のテリトリー内に入った敵だけを集中して倒していった。
     しばらくして十数体目を倒した頃になると涼太は肩で息をし始めるようになった。

    「だ、大丈夫?」
    「……だま…っとけ。」

     心配そうな顔をする美波に涼太は顔を顰める。
     額から流れる汗を拭い、涼太は敵を睨む。

    (……まだ、十体以上残ってやがる。)

     体力の限界が近い事に涼太は気付き、舌打ちをする。

    (体力つけないといけないのかよ……くそっ、友梨(ゆうり)先輩と一緒に体力つけるか……。)

     似たような悩みを持つ友梨の姿を思い浮かべ、そんな事を思ったが、次の瞬間殺気の篭った視線を送る存在を思い出し、げんなりする。

    (あ〜、二人っきりだったら、間違いなくあの嫉妬深いあいつはオレを攻撃してくるだろうな……。)

     容易に想像が出来てしまい、涼太はほんの少しばかり油断した。
     その油断を敵は逃さなかった。

    「リョウくん!」

     美波の叫びと共に、涼太は意識を現実に戻したのだが、既に遅かった。

    「やべっ!」

     涼太の顔に焦りが浮かび、そして、敵は容赦なく涼太にタックルしてきた。

    「うぐっ…。」
    「リョウくん!」

     倒れる寸前に受身を取ったが、痛みだけは和らげる事は出来なかった。

    「くそっ……。」

     涼太は体を起そうとしたが、それよりも早く敵が涼太を蹴り、彼は地面にうつ伏す。

    (くそったれ……。)

     涼太は内心で吐き捨てるが、現状をどうす事も出来なかった。

    あとがき:今日は珍しく二つ載せましたね〜。
    理由は昨日から自動車教室に通うことになりました〜(苦笑)。
    情けない事にいまだ就職活動中のこの私…。自動車の免許を取る事になり、出来れば一ヶ月程度で取りたいと思っているので、少々こちらに来る機会が減ってしまいます。ですので、こうして、出来れば一日二作品ずつ載せていきたいと思います。

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  • from: yumiさん

    2011年05月08日 11時24分41秒

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    「星色の王国」
    ・29・

    「本当に面倒事ばかりが続くわね、ユーマ。」

     チサトは凍りつくような冷たい目家臣を見る。

    「そうかもしれませんが、アルテッドの方々が来られたのは面倒ではないと思いますが?」
    「あら、十分に面倒よ?」

     クスリと笑うチサトは悪女のようだとユーマ以外の家臣は思った。

    「だって、もし怪我の一つでもさせてみれば、こちらの所為ですからね。後々の交易などで不利になるわ。」
    「……。」
    「まあ、あの武力をほんの少しばかりお借りできると思えば、ほんの少し助かりますが、それでもね……。」

     憂いた目をするチサトにユーマは苦笑する。

    「チサト様、そんなに難しく考えなくとも。」
    「いいえ、わたしが考えなければあの愚姉、愚妹が動かないんですからね。」
    「……。」
    「それにしても、何でわたしの姉や妹なのにあんなにもボケボケとしているのかしら。」
    「……。」
    「まあ、百歩譲ってお姉様は武力で役立ってくれるとしても、あの天然娘はね。」

     苛立ちの篭った瞳を一人の家臣に向ける。

    「ひっ!」
    「……。」

     まるで蛇に睨まれた蛙ような家臣に他の家臣は同情の念の篭った視線をやる。

    「さてさて、どんな仕掛けがあるのかしらね?」
    「……。」
    「ユーマ以外はしっかりと聞いておきなさい。」
    「……。」
    「近々、敵が攻めて来るでしょう。その時、わたくし、お姉様、ミナミはとある用事のためこの城からいなくなります。」
    「えっ。」
    「どうしてですか?」
    「……わたくしたち王族の「王女」が捕虜になれば、この国は滅亡する。それだけは言っておくわ。」
    「――っ!」
    「何でですか。」
    「貴方がたが知らないこの国の言い伝えとでも言っておきましょうか。」
    「……。」

     チサトが何を知っていて、自分たちが何を知らないのかと家臣は皆怯えた目で、自分よりも一回り以上幼い少女を見ている。

    「わたくしが信じるのは自分と家族のみ。もし、わたくしの信頼を勝ち取りたかったら行動をしなさいな。」

     チサトの鋭い視線に射抜かれる家臣を哀れみの目で見ているユーマは溜息とともに言葉を発した。

    「一つよろしいでしょうか?」
    「あら、何かしら?」
    「なぜ、おれ以外なのですか?」
    「……。」

     チサトは何が可笑しいのか、クスリと微笑み、妖艶の笑みを浮かべた。

    「分からないの?」
    「全く見当もつきません。」
    「わたくしは一応家族以外に信頼している方がいるわ。その中の一人なのよ、貴方は。」
    「………。」

     光栄なような光栄じゃないようなチサトの言葉にユーマはこっそりと苦笑を漏らす。

    「おれはどうすればいいんですか?」
    「さあ、自分で考えなさい。」

     冷たく離すような言い方をするチサトにユーマは顔を引き攣らせる。

    「まあ、貴方の知り合いのあの体力馬鹿と話し合えば良いんじゃなくて?」
    「…マサシと?」
    「これ以上はヒントも何もないわ。」

     身を翻すチサトは扉の前に立つと優雅に振り返る。

    「それでは解散です。皆さん先ほどわたくしが言った言葉を忘れないで下さいね。」

     最後に見せた笑みは黒く、背後には般若の面が見えた。

    「……。」
    「……あの方を次の王位継承者としていいものか……。」

     思わず呟かれた言葉にユーマは非難の眼差しをその男にやった。

    「あっ…いや…。」

     さすがに失言だと思ったのか男は言いつくろうとしたが、言葉がでない。

    「あの方以上に国を思いやっている方はいらっしゃらない。」
    「……。」
    「あの方は確かにおれたちを振り回すような言動をしていらっしゃるが、それでも、あの方の中心は王家の方々と、この国なのだから。」
    「……。」
    「おれはあの方よりもこの国を思いやっている人を知らない。」

     ユーマは胸の内でこっそりとこう呟いた「あの方よりもではないが、同等にこの国を愛し、そして、守って生きたいと思っている方がいる事を知っているがな。」と。

    「………そうだな。」
    「……ですね。」

     ユーマの言葉に同意する同僚にユーマはホッと息を吐く。

    「それでは、お先に失礼します。」

     ユーマは頭を下げ、部屋から出て行った。

    「さてと、マサシは何処にいるんだろうな。」

     ユーマは頭を掻き、周りを見渡す。

    「……それにしても、何が起ころうとしているんだろうな。」

     何か自分の言葉に引っかかりを覚えたユーマは自分の言葉をもう一度頭の中で繰り返し、思わず否定の言葉が出た。

    「………いや違うな。」

     ユーマは顔を顰め、じっと前を睨んだ。

    「起ころうとしているんじゃない、もうすでに何かが起こっているんだ。」

     ユーマはこの先に一体何が起ころうとしているかなんか、全くといっていいほど分からなかった。

    「………取り敢えず、マサシに会わないと意味が無い。」

     そう言って、一歩踏み出した時、鳥の鳴く声が聞こえた。

    「えっ?」

     振り返ると一匹の鷹がこちらを見ていた。

    「こいつは…。」

     見覚えのある鷹にユーマは手を伸ばす。
     鷹はなれた動作で、ユーマの腕に止まった。

    「お前はあの子どもの鷹か?」

     鷹は肯定するかのように鳴く。

    「一体、何の為に?」

     ユーマはその答えを示している手紙を鷹の足からそっと外し、その真っ白な紙に書かれた黒い字を見た。

    あとがき:さてさて、起承転結の「起」で止まっていますね〜。早く「承」にうつりたいものです。

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