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弥生の河に言の葉が流れる

弥生の河に言の葉が流れる>掲示板

公開 メンバー数:7人

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  • from: yumiさん

    2011年11月30日 11時38分06秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・118・

    「いちゃついているとこ悪いけど。」
    「きゃっ!」
    「……お前なもっと空気読めよ。」

     突然現れた、と言ってもはじめからそこに涼太(りょうた)はいたのだが……。

    「空気を読むのはてめぇだろ、馬鹿獅の所為で美波(みなみ)は可哀想なほど顔を真っ赤にさせているんだっ!」

     涼太の怒鳴った言葉に、友梨(ゆうり)は不思議に思い美波を見ると確かに彼女は熟れたトマトのように真っ赤だった。

    「珍しい。」

     恋愛……だけではないが、それでもそっちの方面だと特に鈍感な美波がこうやって顔を真っ赤にさせるほど自分たちがイチャついていたのかと思うと、友梨は顔から火を吐くかと思うくらいその顔を真っ赤に染めた。

    「う〜〜〜〜〜。」
    「今更照れる事もないと思うがな。」
    「あんたはそうかもしれないどけど、私は嫌よ。」

     昌獅を睨む友梨の顔からは全くと言うほど赤みは引いていなかった。

    「言い争うのは後でにしてくれ……。」

     唸るように言う涼太は友梨がいると言うのに、地に近い言葉を使った。

    「んなことやってる場合じゃねぇだろうが。」
    「うっ…。」
    「……。」
    「友梨先輩も昌獅の相手なんか常にしなくてもいいんですから。」
    「ご、ごめん。」
    「昌獅は友梨先輩にちょっかいを出すな。」
    「無理だな。」
    「……。」

     即答する昌獅に涼太は何か言いたそうな顔をするが、涼太は時間の無駄だと思ったのか怒りを抑えながら美波の手を引いた。

    「美波、行くぞ。」
    「ふえっ。」

     突然手を引かれた美波は目を白黒させて涼太に連れて行かれた。

    「りょ、リョウくんっ!」
    「……ふふふ、本当に涼太くんは良い子ね。」
    「何処が、あんなガキ。」
    「確かに年齢は私たちよりもずっとしたよ、だけど、見るものはちゃんと見ているわ。」
    「……。」
    「でも、まだまだ青いわね。」
    「だな。」

     友梨の言葉に昌獅は同意の言葉を漏らした。

    「分かっていても実際はうまく行動できない。」
    「あいつも分かっているだろうが、そんな説教は今更だしな。」
    「今更だからこそ、智里(ちさと)はよっぽどじゃない限り私たちを放っておくものね。」
    「あいつもだ。」
    「あいつって勇真(ゆうま)さん?」

     友梨の口から出た言葉に昌獅は顔を顰めた。

    「それ以外に誰がいるんだよ。」
    「さあ、思いつかないわ。」
    「……。」

     何もかも分かっているというように笑う友梨に昌獅はむっとしたが、流石に彼女に八つ当たりをする気がないのか、そっぽを向くだけだった。

    「昌獅。」
    「何だよ。」
    「後二つ、頑張ろうね。」
    「ああ。」

     友梨の言葉に昌獅はニヤリと笑い、そして、二人は同時に地面を蹴ったのだった。

    あとがき:リクエストが中々進みませんね〜。と苦笑しております。頑張っていこうとは思っているんですけど、時間がかかると思います。

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  • from: yumiさん

    2011年11月27日 12時07分04秒

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    「『さよなら』のかわりに―紅葉を―」
    「秀香(しゅうか)、今日の晩飯は?」
    「肉じゃが。」
    「おっ、いいな。」

     秀香は手洗いを済ませ、エプロンをつけて台所に立つ。

    「お兄ちゃん、ちゃんと手を洗ってよね。」
    「わーてる、子どもじゃないんだからな。」

     子どもよりも性質の悪い兄に秀香は悪態を吐きたくなるが、仕方なく冷蔵庫から必要な食材を取り出し始める。

    「……おい、本城(ほんじょう)。」
    「行き成り呼び捨てかよ、辻(つじ)。」
    「はっ、お前なんか呼び捨てで十分だ。」

     何処となく自分の知人たちや弟と同じにおいを感じ、征義(まさよし)は苦笑を漏らす。

    「まっ、別にいいけどな。」
    「確かに。」
    「お前、秀香に近づいて何を考えてんだ?」
    「気に入ったんだよ。」

     簡潔な言葉に秀香の兄は嫌そうに顔を顰めた。

    「初対面の奴によくこうなれなれしく出来るな。」

     感心する征義に秀香の兄は眉を吊り上げた。

    「おれだって初対面でこうやって堂々と家に上がりこむ奴を始めてみたぜ。」
    「お前が誘ったのにか?」

     くつくつと笑う征義に秀香の兄もニヤリと笑った。

    「お互い様か?」
    「そうだな。」
    「で、本題だ。」

     急に人が変わったように真剣な顔をする秀香の兄に征義もまた真剣な表情を浮かべた。

    「秀香、妹の身に何があった。」
    「どいつかは分からねぇが、あいつの下靴をボロボロにして焼却一歩手前だな。」
    「……。」
    「しかも、初めてじゃないみたいだ。」
    「やっぱりか……。」

     苦々しそうに顔を歪める秀香の兄に征義は意外そうな顔をする。

    「気づいているのに、何もやっていないのか?」
    「出来ないんだよ、あいつ普段はボケ〜、っとしているけど、妙な所で勘がいいのか、勝手に動いたら怒るんだよ。」
    「……成程な。」

     納得する征義はチラリと台所にいる少女を見た。

    「確かにあの強情ぷりは初めてだな。」
    「だろ、あいつの強情さの右に出るもんなんかいないさ。」
    「言いすぎだろ?」
    「いいや、本当に一度譲らないと決めたらあいつは本当に信じられないほど、一途なんだ。」
    「……。」
    「たとえ、自分を殺そうとしている人でも、その人を信じてたら決して逃げないような奴だよ。」

     遠い目をする秀香の兄に征義は不思議そうな顔をした。

    「何かあったのか、あいつの過去に。」
    「ああ、たっぷりな。」

     即答された征義は絶句する。平凡な人生を送っているようにしか見えない少女にどんな過去があったのか、征義は知りたいと思うが、それは本人の意思を尊重してじゃないと聞けない事だと思った。

    「お兄ちゃんっ!」
    「あっ?」

     鋭い声が聞こえ、征義は顔を上げるとそこには怒りで眉を吊り上げている秀香の姿があった。

    「手、洗ってないでしょっ!本城先生もっ!」
    「「……。」」

     確かに二人は話に夢中で秀香の先ほど言った言葉を無視してそのまま話し続けていた。

    「駄目じゃないっ、子どもじゃないんだから、ほら、さっさと行動する。」

     まるで小さな子ども扱う母親のように、秀香は二人を急かす。

    「そんなんだから、胸が大きくならないんだよな。」
    「なっ!」

     兄の言葉に秀香は顔を真っ赤にさせて絶句する。

    「は〜、こんなのを嫁に貰う奴なんていないぞ。」
    「俺が貰ってやるから安心しろ。」
    「……何冗談言っているんですか。」

     征義の言葉に秀香は盛大に顔を顰めた。

    「……。」
    「……ぷはは。」

     黙りこむ征義に対し、急に兄に秀香は不思議そうな顔をした。

    「何か変な事言った?」
    「ははは、あ〜、腹いてぇ。」
    「…笑いすぎだボケっ!」

     急に征義は秀香の兄を足蹴りするが、それでも秀香の兄はけらけらと笑い続けていた。

    「あ〜、本当に鈍感な妹を持っていると苦労するな。」
    「はっ、鈍感な奴を貰おうとするこっちが苦労するだろうがっ!」

     征義の言葉に秀香の兄は鼻で笑い、にやりと笑った。

    「てめぇ見たいな遊び人にはちょうどいいかも知れねぇな。」
    「俺は遊んだことねぇ。」
    「嘘だろ?」
    「マジだ。」

     妙に仲がよくなった二人に秀香は唖然としていたが、すぐに自分の目的を思い出し、息を吸った。

    「いい加減にしなさいっ!」

     秀香の怒鳴り声が辻家に響いた。

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  • from: yumiさん

    2011年11月27日 12時03分16秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・117・

    「昌獅(まさし)。」
    「何だよ。」

     どこか刺々しい友梨(ゆうり)の言葉に昌獅は眉間に皺を寄せた。

    「どうして、智里(ちさと)と睨み合うのよ。」
    「知るかよ、馬が合わないんだ馬が。」
    「……。」

     友梨は胡乱な顔つきで昌獅を睨んだ。

    「その顔信じていないのかよ。」
    「私の妹なんだよ。」
    「知っている。」
    「まあ、気が早いかもしれないけど、もしも、私たちが結婚すれば、智里が必然的にあんたの義妹になるんだよ。」
    「……。」

     本気でそんな事を考えたのか、昌獅は眉を寄せ心底嫌そうな顔をした。

    「しょうがないでしょ、あの子は私の妹なんだし。」
    「確かにそうかもしれないが…。」
    「諦めるか、別れるかはっきりして。」

     なんという選択をチョイスした友梨に対して昌獅は呆れたような顔をした。

    「……お前な。」
    「……。」
    「俺はお前と別れるつもりはさらさらないぞ。」

     昌獅の真剣な顔に友梨はじっと彼を見た。

    「お前を手放すなんて馬鹿な事は絶対にしない。」
    「でも、智里とは仲が悪いじゃない。」
    「はっ、本当の兄弟でも仲の悪い奴らだっているさ、それなのに、義理の兄弟だからって仲良くする事もねぇだろ。」
    「……。」

     昌獅の言葉に友梨は唇を尖らせた。

    「昌獅の場合は仲の良い姉弟じゃない。」
    「……。」

     確かに自分は姉とあまり喧嘩しなかったというか…、反発はしても、姉には逆らえなかったのだ。

    「しょうがないわね。」
    「……。」
    「あんたの智里嫌いは今に始まった事じゃないわよね。」
    「言っておくが、お前以外の人間はほぼ嫌いだぞ。」
    「……。」

     ここまで堂々と言う昌獅に友梨は呆れてものが言えなかった。

    「お前以外の人間はマジでウザク感じるからな。」
    「もう……。」

     友梨は眉間に皺を寄せるが、昌獅は逆に穏やかな笑みを浮かべた。

    「お前に会う前までは全ての人間が大嫌いだったがな。」
    「私に出会ってすぐもどう考えても貴方は私を嫌っていましたけど。」

     当時といってもついこの間の事を思い出しながら、友梨は唇を尖らせるが、昌獅は笑ってそれを受け流した。

    「嫌おうとしていたさ、でも結局嫌えなかった。」
    「……。」
    「言っておくが嘘じゃないさ、何せ最初は自分が変わっていくのが分かって、すぐに自己防衛の為にお前を嫌おうとしたけど、いつの間にか、俺はお前を欲していた。」
    「……。」
    「だから、今の俺はお前を手放せない。」
    「……。」

     出会ったばかりの昌獅では考えられない言葉が彼の口から漏れ、それをいつの間にか慣れてきている自分に友梨は苦笑した。

    「あんたに感化されたのかな?」
    「ん?」
    「何でもないわ。まあ、色々将来は大変だと思うけど、よろしくね。」
    「ああ。絶対に幸せになるからな。」
    「普通、幸せにするんじゃない?」
    「まあ、お前が幸せであるように努力はするが、お前が側にいたら俺は幸せだからな。」
    「……。」

     昌獅の言葉に友梨は驚き目を見張るが、すぐに顔を真っ赤にさせ、そっぽを向いたのだった。

    あとがき:久方ぶりの更新ですね…、全然ダークネスの話が見えてこないので多分スローペースか、うまく何日か続いても長いこと間が空く可能性がありますね。

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  • from: yumiさん

    2011年11月23日 12時34分28秒

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    「お誕生日リクエスト」
    1《金の斧、銀の斧》

    「……は〜、面倒くさい。」

     顔を顰めている昌獅(まさし)は伐りにくくなった斧を一瞥し、溜息を吐く。

    「つか、何で俺がこの話でこの役なんだよ、勇真(ゆうま)とか涼太(りょうた)の方が適任じゃねぇか。」

     一人愚痴る昌獅だが、仕方なさそうに己のとるべき行動をとりる為湖に近寄りながら、この後の展開を期待するのだった。

    「さ〜て、頼んだぜ。」

     昌獅は持っていた伐りにくくなった斧を湖にボチャリと落とした。

    「……。」

     斧を落とした水面から人影が見え始め、昌獅は期待するのだが――。

    「貴方が落としたのは――。」
    「ちょっと待てっ!」

     せっかくの台詞の途中に昌獅が割って入り、女神…智里(ちさと)は心底嫌そうな顔をしたのだった。

    「何かしら、わたしは忙しいのよ?」
    「だから、何でてめぇなんだっ!普通はあいつだろ!」
    「……ふんっ、知らないわよ、作者に訊いて頂戴よ。」
    「あ〜っ!クソっ、友梨(ゆうり)が出ると聞いたからこうやって面倒臭くてもやっているのに、何でだよっ!」
    「ふん、どうでもいいけど、貴方が落としたのは、このメッキの加工がされた全く伐れない斧?それともコケやら何やらが生えた今にも崩れそうなこの斧?」
    「……俺が言うのもなんだが、これは「金の斧、銀の斧」の話だよな?」
    「ええ、だから、こうして二本の斧があるんじゃない。」
    「……。」

     昌獅は絶句する中、智里は苛立ちを露にする。

    「さっさと答えて、この二つをさっさと処分したいの。」
    「俺はゴミ箱かよっ!」
    「ゴミ箱の方がマシよ。」

     いがみ合う二人だが、昌獅はどうにかこの二本の斧を貰わずにすむ方法を考えるが、全く浮かばない。

    「早くしなさいよね、まだまだわたしの出番はあるんだから。」
    「知るかよっ!」

     さっさとこんな茶番を終わらせたい智里は昌獅に詰め寄った。

    「早くしなさいっ!」
    「はっ、ゴミ箱になってたまるか。」

     さらにいがみ合う二人にとうとう一人の少女が痺れを切らして、水底からやってきた。

    「いい加減にしなさいよっ!」
    「お姉ちゃん。」
    「友梨っ!」

     友梨の登場に二人はそれぞれの反応を示した。智里は頭が痛むのか額を押さえ、友梨は待ち望んでいた存在に顔いっぱいに喜色を浮かべた。

    「そんじゃ、その斧と俺自身の持っていた斧もいらねぇから、これ貰っていく。」
    「へっ。」
    「あっ!」

     昌獅は言うのが早いか、友梨の手を掴み一目散に逃げていった。

    「あの馬鹿……。」

     智里は手に持っていた斧をワナワナと震わせた。

    ***

    「昌獅っ!話が。」
    「いいんだよ、つーか、あんなおんぼろの斧を貰った方が話的には変じゃねぇか。」
    「……。」

     確かにあの斧は流石にないんじゃないかな、と友梨も思いがそれとこれとは話が別だった。

    「だからって、何で私な訳っ!」
    「だって、良いもんを貰えるんなら、お前がいいじゃねぇか。」
    「私は物じゃないわよっ!」
    「はいはい、それじゃ、お前が俺の嫁になって、はい、めでたし、めでたし。」
    「全然めでたくないわよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」

     嘆く友梨だが、残念ながら昌獅の言った事が現実となる。
     友梨はこの後家に連れて行かれ、昌獅の嫁となり、昌獅はなくした斧の代わりに新しい斧を買い、二人は幸せに暮らしたのだった。

    End……?


    「ちょっと、これ何よっ!」
    「まあまあ。」

     友梨をなだめる昌獅だったが、彼女の怒りの矛先は見事に彼に向けられた。

    「あんたが余計な事をしでかすから、話が逸れたじゃないっ!」
    「キャストミスなんだから、別にいいじゃねぇか。」
    「どうせ、私が女神でも同じ事をやったでしょっ!?」
    「ん?お前もあの使えない斧を持っているのか?」
    「そんな訳ないでしょ、普通に金の斧、銀の斧を持っているわよっ!」
    「……。」

     つまんね〜、と顔に書かれている昌獅に友梨はぶち切れそうになる。

    「あんたっていう人はっ!」
    「さ〜て、次だ、次。」
    「話を逸らすな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」

     絶叫する友梨の声は最後まで持つ事が出来るだろうか……。

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    マナ

  • from: yumiさん

    2011年11月23日 12時32分31秒

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    お誕生日リクエスト

    明さんに贈ります。《名(?)場面童話パロディ》

    演目
    1.金の斧、銀の斧
    男:昌獅
    女神:智里
    (秘密ゲスト有り)

    2.桃太郎
    桃太郎:勇真
    犬:美波
    猿:涼太
    雉:智里
    鬼:昌獅

    3.マッチ売りの少女(?)
    少女:涼太

    4.赤ずきんちゃん
    赤ずきん:美波
    猟師:涼太
    狼:昌獅
    おばあさん:友梨

    5.眠り姫
    姫:智里
    王子:勇真
    悪い魔女:友梨
    良い魔女:美波

    6.シンデレラ
    シンデレラ:友梨
    王子:昌獅
    継母:智里
    姉(?):美波
    姉(?):涼太

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  • from: yumiさん

    2011年11月23日 12時31分33秒

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    「『さよなら』のかわりに―紅葉を―」
    「……なんでこうなるのかな……。」

     秀香(しゅうか)は溜息を吐きながら、横にいる征義(まさよし)を睨み付けるように見る。

    「何だ?不満があるのか?」
    「……。」

     秀香は何でこんな事になったのかと眉を寄せながら回想を始めた。

    『もう、遅い、俺が送る。』
    『結構です。』
    『そういうな、女だからな、変なのが出たらどうするんだ。』
    『……。』

     目の前に十分変な人がいるんですけど、と秀香は思うが、それを決して口にはしない。

    『安心しろ、何もしないからな。』
    『……。』

     信用できないのだが、結局秀香は征義に押し切られてしまったのだ。しかも、選択肢が無い質問で。

    『それじゃ、仕方ない、俺の車に乗って大人しく送られないんなら、お前のその下靴をそんな事にしたヤツラを退学させるぞ。』
    『なっ!』

     秀香が他人を思いやる心が人並みか、それよりも少なかったら、こんな脅しは脅しではなかっただろうが、秀香は異常なほどお人よしであったために、結局頷く事しかできなかった。

    『それじゃ、裏門でな。』
    『はい……。』

     肩を落とす秀香に気付いていないのか、それとも気付いていてワザと気付いていない振りをしているのか、多分後者だろうが、征義は己の車を取りにいった。
     回想を終えた秀香は溜息を吐き、見覚えのある道を見ながら指示を飛ばす。

    「この先右の瓦の屋根です。」
    「ああ。」
    「……。」

     本音は今すぐにでもこの車から降りたかったが、絶対に無理だろう。

    「どうして、私なのでしょう?」
    「秀香?」
    「私意外にも…他の人には失礼ですけど、地味な人はいっぱいいると思いますけど。」
    「……分かっていないな。」

     そう言うと、征義は車を止めた。

    「俺はその澄んだ目に惹かれたんだ。」
    「…何処が澄んでいるのかしら?」
    「十分澄んでいるさ、俺の知っている奴でそんな目をしている奴は滅多にいない。」
    「いるんなら、その人と付き合えばいいじゃないですか…。」

     秀香の言葉に征義は苦笑する。

    「残念ながらその目を持っているやつは実の弟か俺の男の友人たち後は、従弟…まあ、それも男だな。」
    「……。」

     秀香は本気でその男友達が女だったらと真剣に思った。

    「…本当に分かりやすいな、お前。」
    「えっ?」

     秀香が二、三回瞬きをして、征義を見ると彼は楽しげに笑っていた。

    「お前、俺の男友達が女だったら良かったのに、とか思っただろ?」
    「……。」

     図星を突かれた秀香は俯くが、征義はそれを許さなかった。
     征義は秀香の顎を捕まえ、己の顔を近づける。

    「いやっ!」

     秀香は両手を突き出し、征義を引き剥がそうとするが、残念ながら少女の力では彼を引き剥がす事は出来なかった。

    「……秀香?」
    「いや…いや…。」

     ガタガタと震える秀香に征義は悪ふざけが過ぎたかと思ったが、それだけではなさそうだ……。

    「ごめんなさい…ごめんなさい……。」

     震える秀香は誰に対して謝っているのか分からないが、何度も何度も同じ言葉を壊れた人形のように繰り返した。

    「秀香……。」
    「……ごめんなさい…ごめんなさい。」
    「――っ!」

     あまりにも痛々しい姿に征義は秀香の肩を掴んだ。

    「秀香っ!俺を見ろっ!」
    「――っ!」

     秀香の目が大きく見開かれ、その瞳に征義の姿が映った。

    「…本城…先生……。」
    「……悪い、お前を傷つける気なんかないんだ……。」

     ようやく安心したのか、征義は秀香の肩に己の額を押し付けた。

    「悪い…。」

     自由奔放で自分の事しか考えない人なのだと、秀香は勝手に思い込んでいたが、実際はちゃんと人を思いやる心を持っているのかもしれない、その表し方が下手で何処をどう見ても他人を虐めているようにしか見えなくとも……。

    「先生はどうして、私なんですか?」
    「……多分、お前と俺は近くて遠い存在なんだ……。」
    「先生?」
    「そこに惹かれた。俺と同じ様に人を…他人を怖れている所があるのに、それなのに…お前は傷つける人間すらも包み込んでしまう、そんな所があるが、俺にはない……。」

     征義はふと見えた、秀香の髪を纏めているゴムを引っ張った。

    「あっ!」

     しんみりしている雰囲気で秀香は警戒心を解いていた所為で、その行為に気付いたのは己の髪がふわりと舞ったところだった。

    「綺麗な髪だな…括っているなんてもったいない…。」
    「先生……。」

     秀香の握りこぶしが小刻みに震えているが、征義はそれに気づいているというのに、わざと無視して、彼女の髪を撫でた。

    「本当に、もったいないな…。」
    「いい加減に――っ!」

     秀香が叫ぼうとした瞬間、征義の知らない男が窓ガラスを叩いていた。

    「んあ?」

     人の悪い顔をする征義だが、秀香はその人の顔を見てさっと顔を青くさせた。

    「お、お兄ちゃん…。」
    「秀香、何やっているんだよ?」

     声は流石に聞こえなかったが、口の動きでそれを読んだ。

    「せ、先生っ!ここで十分ですっ!」
    「はぁ?」

     間抜けな顔をする征義を無視して秀香は慌ててドアを開き、外に飛び出した。

    「な、何でお兄ちゃんが…。」
    「バイトの帰り。」

     そっけない返事に秀香は兄が激怒している事に気づく。

    「秀香。」
    「はい……。」
    「そいつ誰だ。」

     兄の登場にすっかり頭から抜け落ちていたが、さっきまでいた車の中にはまだ征義がそこにいるのだ。
     そして、車の中でも誰かを睨み殺せそうな顔がそこにあった。
     二人の視線に体を震わせながら、秀香は簡潔に説明する。

    「お兄ちゃん、こちらは教育実習の先生で本城先生。」
    「はじめまして、本城です。」
    「本城先生、こちらが兄です。」
    「どうも、妹が世話になってます。」

     お互いに爽やかに挨拶を交わしているのに薄ら寒いものを感じた。

    「妹さんを送るつもりだったんですけど、その様子じゃ、大丈夫ですね。」
    「……妹に何かあったのか?」
    「ええ、そうですね、下種どもが彼女の下靴をボロボロにしたんですよ。」
    「……成るほど。」

     兄はニヤリと笑い、そして、征義もまた不敵に笑っていた。

    「よければ、家に来ませんか?」
    「いいんですか?」
    「ええ、妹を送ってくれた礼をしないといけませんからね。」
    「それじゃ、お言葉に甘えて。」

     互いに顔を見合わせ、笑いあう二人は第三者の目から見れば仲のよい友人同士に見えるのだが、ある意味当事者である秀香にとっては恐ろしいものとして、その目に映っていた。

    「それじゃ、車に乗ってください。」
    「ああ、ありがとう、ほら、秀香も乗れよ。」
    「……。」

     逆らう事の出来ない秀香は渋々と再び車に乗り込んだ。

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  • from: yumiさん

    2011年11月23日 12時20分28秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・116・

    「で、友梨(ゆうり)先輩。」

     涼太(りょうた)が唐突に話の内容を変えようしたので、友梨は不思議そうに顔を傾けた。

    「何かな?」
    「あの二人何とかしないといけませんよね。」
    「あっ……。」

     すっかりと友梨の頭から抜け落ちていた二人、昌獅(まさし)と智里(ちさと)は未だにいがみ合っている。

    「……うわっ〜、物凄く面倒臭い感じがする。」
    「ですよね。」

     青白い火花を散らす二人に、友梨は腹を括ろうとするが、その腹がキリキリと痛み、顔を顰める。

    「友梨先輩?」
    「大丈夫、この状況にお腹が痛くなっただけだから。」

     本当はそれだけじゃないと思いながらも、友梨は必死で笑顔を作り、涼太を安心させようとした。

    「大丈夫だよ。」

     そう言う声が聞こえた瞬間、友梨の肩に暖かな温もりを感じた。

    「勇真(ゆうま)さん?」
    「おれに任せて。」

     その声とともに、温もりはなくなった。
     勇真は友梨のすぐ側を通り、そして、静かな戦いを繰り広げている昌獅と智里の側に近寄った。

    「二人とも、その辺にしないと。」
    「……。」
    「ふん。」

     二人は勇真の登場により、互いに視線を逸らした。
     昌獅は興がそれたのか、そっぽを向き、友梨の方に足を向け。
     智里は鼻を鳴らし、そのまま外へと足を向けた。

    「本当に二人とも素直じゃないね。」

     苦笑を浮かべ、勇真は智里の後を追った。

    「智里ちゃん。」
    「何かしら?」

     つっけんどんな智里に勇真はそっと笑みを浮かべた。

    「昌獅は悪い子じゃないよ。」
    「分かっています。」

     ぼそりと呟かれた言葉に勇真は目を細めた。

    「本当に智里ちゃんは良い子だね。」

     唐突に何を言い出すのか、というような目をする智里は、その口から呆れたような声を出した。

    「そんな事を言うのは貴方だけですよ。」
    「そうかな?」
    「そうですよ、他の面々にはわたしは恐れられていますから。」
    「……。」

     確かに智里は怖いところもあるが、それを除けば十分普通の少女のように思う。ただし、その怖い部分は彼女の大半を占めているので、誰も勇真の意見に賛同できないのだ。

    「智里ちゃんはこのままでいいの?」
    「何がですか?」
    「このままだったら、間違いなくギクシャクした関係が築かれる。」
    「……。」
    「だから、もう少しあの二人に対する態度を緩和できないかな?」
    「……何度も言っていると思いますが、それはあの二人次第です。」
    「……。」

     勇真は智里の言葉に苦笑を浮かべた。

    「……う〜ん、これは長期戦かな?」

     分かっていた事だが、実際言葉にするとそれは重く勇真に圧し掛かってきた。

    あとがき:本日は明さんの誕生日ですね。おめでとうございます。
    私の誕生日は春なのでまだありますね…。嬉しいけど、悲しいです。

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  • from: yumiさん

    2011年11月22日 10時24分12秒

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    「『さよなら』のかわりに―貝殻を―」
    「すまないっ!」

     公衆の面前で沙梨を抱きしめた広人は力いっぱい彼女に謝った。

    「いえ、少し恥ずかしかっただけなので……。」
    「……。」

     微かに頬を染めている沙梨に広人は心のそこから申し訳なく思った。

    「ねぇ、広人さん。」
    「何かな?」
    「あの賭けはまだ続いていますよね?」
    「えっ?」

     はにかむように微笑んだ沙梨に広人は目を見張った。

    「広人さんの勝ちです。」
    「それって。」
    「不束者ですが、よろしくお願いします。」

     丁寧に頭を下げる沙梨に広人はまた抱きしめそうになるが、流石に二回目になると人の目が気になり、諦めた。

    「沙梨さん…。」
    「もう、逃げる理由がありません、だから、これからもよろしくお願いします。」
    「こちらこそ、こんな男だけど、よろしくな。」
    「はい。」

     ようやく二人は繋がった、それは長くて短い期間だった。
     沙梨の鞄につけられていたあの日貰った貝殻のキーホルダーが二人を祝福するようにゆれていた。



    おまけ

    「そういえば、何でこの学校に?」
    「第一志望なんです。」
    「それじゃ…。」
    「うまくいけば、先輩、後輩ですね。」
    「そうだな。」
    「…まさか、同じ地域だとは全然知りませんでした。」
    「だな、運命だったのかな?」
    「ふふふ、そうかもしれませんね。」
    「……。」

     冗談で言ったのだが沙梨はそう思っていないのかクスクスと笑っていた。

    「何か見えない糸が繋いでくれたお陰で、こうして出会えたんでしょうね。」
    「……沙梨さん。」
    「はい?」
    「好きだよ。」
    「……。」

     沙梨は顔を赤く染め、小さく頷いた。

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    マナ

  • from: yumiさん

    2011年11月22日 10時22分20秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・115・

    「勇真(ゆうま)さんたちが着いたら、さっさと次の場所にいきましょうか。」
    「ああ、そうだな。」
    「次は……どっちにする?」
    「…何処と何処だった?」
    「昌獅(まさし)、忘れちゃったの?」

     友梨(ゆうり)は眉を寄せ、軽く溜息を吐く。

    「残りの場所は――。」
    「「夕日橋」と「桔梗写真館」よ。」

     冷めた声に友梨と昌獅は同時に振り返り、友梨は微苦笑を浮かべ、昌獅はムスっとした顔で智里(ちさと)を睨んだ。

    「どっから湧いて出たんだ。」
    「あら、変な事を言わないで欲しいわね。」
    「…はっ、本気でそう思うんだから仕方ねぇだろ。」
    「わたしとしては貴方の存在自体がどっから湧いて出てのかが不思議で仕方ないわ。」
    「……。」

     静かに睨み合う二人に友梨は肩を竦め智里の後ろにいる勇真(ゆうま)、涼太(りょうた)、美波(みなみ)を順に見つめた。

    「勇真さん。」
    「ああ、ほら、今回の功労賞の涼太。」

     勇真は自分の持っているコインを渡した。

    「サンキュー。」

     涼太は素直に勇真からコインを受け取り、そして、そのコインを握り締め、昌獅と智里の横を通り過ぎた。
     コインを入れる穴にコインを入れ、そして、下の口から目当てのものが落ちてきた。

    「これか……。」

     下の口から涼太はそれを取り出し、その手にしっかりと収める。

    「やったね、リョウくん。」

     ニッコリと微笑んでいる美波に涼太は張り詰めていた気持ちを和らげる。

    「ああ。」
    「残りは二つだね。」
    「……。」
    「楽勝だね。」
    「……。」

     気楽な美波の言葉に涼太は彼女のように暢気に考えられず、黙り込んでしまった。

    「美波。」

     優しく強い声に涼太と美波が顔を上げた。

    「お姉ちゃん。」
    「油断してたら足元を掬われるわよ。」
    「……。」

     友梨の言葉に落ち込む美波に、友梨は苦笑を浮かべた。

    「別に浮かれるのはいいけど、それでも、残りは二つじゃなくて、まだ二つある、と考えてた方がいいと思うの。」
    「うん…。」
    「あの変態が何をするのか、私にだって分からないけど、それでも気を抜いたらいけないと思うの。」
    「そうだね。」

     気合を入れなおした美波はニッコリと友梨に微笑む。

    「よしっ!頑張るぞ。」

     拳を振り上げる美波に友梨は苦笑しながら、涼太を見た。

    「ごめんね、涼太くん。」
    「いえ、ああでもしないとあいつ間違いなく自滅していたと思うから。」
    「そう。」

     気を緩め過ぎていた美波に言ったのはいいが、それでもこんなにも元気になりすぎたのは予想外で、きっとこの美波をフォローに回らなければいけない涼太に友梨は申し訳なく思ったが、涼太はあっさりとした返事を返した。

    「ええ、きっと楽勝とか思って、こけたり、滑ったり、もう、何か自滅している光景がありありと浮かぶんで。」
    「……。」
    「別にあいつのフォローに回るのは嫌じゃないんで。」

     涼太のその言葉に友梨は頬を緩めた。

    「そう言ってくれるとありがたいわ。」
    「友梨先輩は前を向いていてください、後方はオレたちに任せてください。」
    「ええ、頼んだわ。」

     友梨は涼太の言葉に力強く頷いた。

    あとがき:明日は明さんの誕生日です。一応打ち始めて入るんですが…、物凄く自分の首を絞めていることをやっているので、苦笑が漏れます。それでも楽しいのだから仕方ありませんけど。
    明さんUPの方が少し遅くなるかもしれませんが、必ず載せますっ!?

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  • from: yumiさん

    2011年11月21日 10時12分55秒

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    「『さよなら』のかわりに―貝殻を―」
    「広人(ひろと)〜。金貸してくれ。」

     男友だちの第一声に広人は顔を顰めた。

    「お前な、会って行き成り金の話かよ。」
    「だってさ、おれの彼女がくるんだけど、持ち合わせがねぇんだもん。」
    「……なんで金が要るんだ?今日は大学祭じゃなく、オープンキャンパスじゃねぇか。」
    「帰りに絶対近くの雑貨に寄ってあれこれ強請られるからだ。」
    「……。」

     自身満々に答える友だちに広人は肩を落とし、財布から札を数枚抜き取った。

    「ほらよ。」
    「サンキュー、今度何か奢るよ。」
    「…奢るより先に借金を返せよな。」
    「……覚えてやがったか…。」
    「当たり前だ、一年前に貸した千円、三ヶ月に貸した五千円、きっちり利子つけて返してもらうからな。」
    「……因みに利子は?」
    「一月に一パーセントだ。」
    「……うげ…妙に現実的な金額だな。」
    「当たり前だろ、こっちだって苦学生だ。」

     広人はそう言いつつも相手が絶対に返してくれないと、冷静な部分で考えている事を彼は気づいていなかった。

    「苦学生が何で今回のオープンキャンパスに出てんだ?」
    「バイト代が出るんだよ。」
    「安っぽい?」
    「…しょうがないだろう、図書カードでも何でも貰えるんならその方がいいからな。」
    「……。」

     彼は肩を竦めた。

    「…お前時間はいいのか?」
    「ん?」

     何となく思いついた言葉を口にした広人だったが、その言葉に友人は助けられたような、急かされたような微妙なものになった。

    「あっ…。」

     漏れた声に続いて彼の顔が可哀想なほど真っ青になった。

    「やべっ、殴られるっ!」
    「……。」

     どんな凶暴な彼女だと心中で呟き、広人は彼の背を押した。

    「んな、叫んでいる場合か?それなら、さっさと足を動かした方がよっぽど現実的だろう。」
    「そ、そうだな。」

     彼は硬直からようやく抜け出し、走り出そうとして、急に足を止めた。

    「……?」

     広人は彼が立ち止まった理由が分からず、首を傾げた。

    「サンキュー、マジで金返すし、何か奢るからな。」
    「……。」

     広人は声を殺し、微かに笑った。

    「ああ、期待せず待っとくさ。」
    「んじゃ、またな。」
    「ああ。」

     軽く手を振り、彼を見送った広人は空を見上げた。

    「沙梨(さり)さん、元気かな?」

     見上げた空は青く、どこまでも続いていていた。
     この空は何処かにいる沙梨にもきっと続いているはずだが、それでも、広人はそれだけじゃ満足していなかった。

    「……逢いたい。」

     そんな言葉を呟いた瞬間、背後から微かな音が聞こえ、振り返ると二人の女子高生高校生がいた。

    「「えっ。」」

     片方の女子高生と広人の声が重なった。

    「沙梨さん…。」
    「広人さん……。」

     この出会いは偶然なのか必然なのか分からなかったが、それでも、今の広人には関係なかった。

    「会いたかった。」

     広人は人の目など全く考えず、沙梨を力いっぱい抱きしめた。

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