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弥生の河に言の葉が流れる

弥生の河に言の葉が流れる>掲示板

公開 メンバー数:7人

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  • from: yumiさん

    2011年04月30日 11時19分36秒

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    「7万人突破記念」

    マナさんかなり遅れましたが、正月ネタの三姉妹です。
    本当ならば6万人あたりに載せるつもりでしたが、うまくいきませんでしたね…(苦笑)。
    絵を描くのは嫌いじゃないので、そっちの方のリクエストもまだまだ募集中です。ただ、腕前がかなりいまいちなのでうまく描けませんけど……。
    マナさんいつも本当にありがとうございます!!

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  • from: yumiさん

    2011年04月30日 11時14分30秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・14・

    「ねえ、友梨(ゆうり)お姉ちゃん。」
    「えっ?何美波(みなみ)?」

     名を呼ばれた友梨は首を傾げ、美波を見た。

    「そこってお化け屋敷あるかな?」
    「……ああ、あんた苦手だもんね?で、智里(ちさと)どうなの?」
    「…自分で調べなさいよ。」

     眉間に皺を寄せる智里に友梨は苦笑する。

    「だって〜、智里の方が近いでしょ?」
    「……もう。」

     智里は文句を言いながら紙を睨み付けるようにして見た。

    「…あるみたいよ。」
    「えっ?」
    「ふえ?」
    「お化け屋敷。」

     智里の淡々とした声音に友梨は口角を引き攣らせ、美波は可哀想な程顔を真っ青にさせる。

    「マジっすか?」
    「マジよ。」
    「美波…大丈夫?」
    「……。」

     友梨は美波に声をかけるが、美波は一切反応を示さない。

    「…可哀想に……。」
    「あら、苦手克服に丁度良いんじゃないの?」

     人の不幸は蜜の味、というような智里の笑みを見ながら、友梨はぐったりとしたように彼女を見た。

    「あんたはさ、本当に人の不幸が好きね。」
    「そんな事はないわよ。わたしだって可愛い、可愛い、妹が本気で泣くのなら考えるけどね、ふふふ……。」
    「……………あんたの性格なんか理解したくないな…。」
    「あら、十分理解しているんじゃないの?」

     友梨は本気で嫌そうな顔をした。

    「………してない…はず。」

     友梨は物心ついた頃からいる少女から、無理矢理視線を外した。

    「まあ、お姉ちゃんが否定するのなら、それでも構わないんですけどね。それでも、真実は真実ですから、ちゃんと現実を見たほうが良いわよ?」
    「……あんた、やっぱり嫌い。」
    「まあ、酷いわね。」

     嫌いとはっきり言われているのに、智里はクスクスと笑っている。

    「……何でこんなのが妹なの…。」

     友梨が呻いていると、その肩に大きな手が乗せられる。

    「友梨、気持ち、分かるぞ。」
    「昌獅(まさし)……。」
    「あんなのが、お前の妹だなんてな。」
    「…うん、はぁ、アレって本当に私の妹?私あんなに腹黒くないし。」
    「あら、わたしが腹黒い?」

     ばっちり友梨の言葉を聞く、智里はニヤリと笑った。

    「真っ黒の間違いじゃなくて?」
    「……。」
    「……。」
    「あ〜〜〜〜〜〜〜っ!もう、本当になんでこんな奴が妹なの〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

     荒れる友梨に昌獅は必死で宥めようとするが、彼女は落ち着かない。

    「ふふふ、こんな馬鹿姉放って置いて行きましょうか?」

     友梨を見て笑う智里は一人でさっさと先を進んだ。

    「いいのか?」
    「……取り敢えず、友梨ちゃんは昌獅に任せよう。」
    「……だな。」

     苦労性の男性二人はそう言いながら智里の後ろを歩いた。

    「ほら、美波、行くぞ。」
    「ふえっ、待ってよ。」

     涼太(りょうた)は美波の手を取って歩いた。

    あとがき:智里さんって苦手だと言いつつも、絶対に「苦手だ」って顔に出しそうもありませんから…恐いですね〜。

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  • from: yumiさん

    2011年04月29日 11時23分48秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・13・

    「智里(ちさと)お姉ちゃんよく分かったね。」
    「これくらい、当然でしょ?」
    「すごいよ!」
    「………………褒めるのは良いけど、そろそろ行こうよ。」

     友梨(ゆうり)は肩を竦め、遊園地を指差す。

    「そうね、さっさと終わらせたいしね。」
    「だな。」
    「ん。」

     珍しく智里の意見に涼太(りょうた)と昌獅(まさし)が同意する。

    「友梨。」
    「何?」
    「お前って苦手なものは?」
    「……。」

     唐突な質問に友梨は顔を顰める。

    「何よ、唐突に?」
    「あ〜、あの変態の事だから罠とかありそうだからな、だから、お前が苦手な所は避けたいからな。」
    「……昌獅。」
    「それはなんと、お優しいことでしょうね。」
    「智里…。」

     芝居がかかった口調の智里に友梨はうんざりとしたような顔をした。

    「あら、何かしらお姉ちゃん。」
    「何でもない。」
    「そう、まあ、言いたくても言えないでしょうけどね?」
    「……。」

     絶対分かっていっている智里に友梨はかなりうんざりとしているようで、表情がいつもより暗い。

    「あんた絶対あの変態と対等に渡り合えるわよ。」
    「あら、対等?」

     何が面白いのか、智里はクスクスと笑っている。

    「対等じゃなく、わたしが有利なのではないかしら?」
    「……。」
    「な〜んてね、冗談よ、冗談。」
    「……。」

     友梨は智里が冗談で言っているのか、本気で分からなくなってしまい、顔を顰めた。

    「あんたの冗談は冗談に聞こえないから嫌よ。」
    「あら、そんな事ないわよ?」
    「どうかしらね。」

     友梨は溜息を吐いて、昌獅を一瞥した。

    「さっきの答え。」
    「ん?」
    「智里の所為で一瞬抜けてしまったけど、私の苦手なものはジェットコースターみたいな乗り物。」
    「…そうなのか?」
    「ええ、小学生の頃どうして自分がジェットコースターみたいな乗り物が嫌いなのか分からずに、ためしに乗ってみて悲惨な目にあったわ。」
    「ふ〜ん。」
    「ポケットに入れていたハンカチは飛びそうになるわ、靴が脱げるかと思ったし、それに、風圧で首がいたくなったわ。」
    「…………。」

     げんなりした友梨の顔を見て、本当に彼女はジェットコースターが嫌いなのだと昌獅は理解した。

    「それって、小学校の修学旅行のあそこか?」
    「えっ?何で――、ああ、昌獅も同じ学校だったもんね。」

     知っていても当たり前の事を思い出し友梨はクスリと笑った。

    「すっかり忘れるわね。」
    「だな、俺ら小学校からずっと一緒なのに全然知らなかった事が信じられないな。」
    「しょうがないわよ、私なんて男子生徒の名前なんて全くと言っていいほど知らないもの。」
    「まあ、そうだな、俺も女子生徒なんか全く知らん。」
    「そうだよね。」

     友好関係が狭い二人は笑っている。
     そんな二人の会話を聞いている智里は「馬鹿」と呟いたのだった。

    あとがき:友梨ちゃんの話は実は作者の実話だったりします。小学校の時、父と一生にあるテーマパークにいきまして、そちらの人気アトラクションに思い切って乗ってしまい…。友梨ちゃんが言ったとの同じ思いをしました。
    そちらのアトラクションは足が宙ぶらりんで、本当にもう二度と乗りたくないと思いました。

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  • from: yumiさん

    2011年04月28日 15時44分42秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・12・

    「ついた〜!!」
    「お姉ちゃん煩い。」
    「……もう、水を差さないでよ!!」

     背伸びをする友梨(ゆうり)に智里(ちさと)は冷めた目で見てくる。

    「なあ、友梨。」
    「何よ!!」
    「俺に当たるなよ……。」

     友梨に睨まれた昌獅(まさし)の腰がやや引けているのは気のせいか……。

    「まあまあ、友梨ちゃん、落ち着いて。」
    「う〜……。」

     このメンバーの中で最年長の勇真(ゆうま)の言葉に友梨は落ち着きを取り戻す。

    「……今回ばかりはサンキュウ。」
    「…いや、このくらいは平気さ。」

     珍しく礼を述べる昌獅に勇真は一瞬目を見開くが、すぐに笑みを浮かべる。

    「これも、彼女の御陰かな?」
    「何か言ったか?」
    「いや、何でもないよ。」
    「……。」

     釈然としないのか、昌獅は片眉を吊り上げる。
     本当に昌獅は変わった。彼自身それに気付いているのかは分からないが、彼の纏う空気は柔らかくなっている。
     昔は近寄るものに殺気を投げつけていた昌獅だが、友梨が現れてから本当に優しくなった。

    「さて、どっちに行くべきかな?」
    「さあ、って言いたいけど、あそこのようね。」

     勇真の言葉に智里があっさりと観覧車のある方角を指差す。

    「えっ、どうして?」
    「……。」
    「どういう意味だ、智里先輩。」
    「どうして?どうして??」

     首を傾げる四人に智里は溜息を漏らす。

    「分からないの?」
    「まあ、うん。」
    「馬鹿?」
    「…何でそうなるの?」
    「それとも観察眼が無いのかしらね?」

     哀れむような目で見られた友梨はムカッと顔を顰める。

    「何でそんな目で見る訳?」
    「それはお姉ちゃんが十分理解しているんでしょ?」
    「………………。」
    「まあ、まあ、友梨ちゃん。」

     これ以上険悪なムードになってもと思ったのか、勇真が間に入って来た。

    「智里ちゃん、どうしてかな?」
    「……。」

     智里は冷めた目で勇真を一瞥すると、駅のチラシ置き場を指差した。

    「……あっ。」
    「なるほど。」
    「……悪趣味だな。」
    「……まあ、あの変態だしな。」
    「えっ?えっ?えっ?」

     四人は理解したようだが、美波(みなみ)だけが首を傾げている。

    「……チラシを良く見て。」

     友梨は一枚チラシを抜き取り、美波に手渡す。
     チラシには遊園地のキャラクターと大まかなマップが載っており、美波は何となくそのキャラクターに見え覚えがある気がした。

    「これって?」
    「…お前鈍いな。」

     呆れた声音に美波が顔を向けると、涼太(りょうた)が肩を竦めていた。

    「どういう意味?」
    「さっき電車ん中で見ただろうが。」
    「あっ。」

     ようやく思い出したのか、美波は目を見張っていた。

    「鈍すぎお前。」

     涼太は小さく溜息を吐いて、頭を掻いた。

    あとがき:中々進みませんね〜。今回のゲーム内容は一体どんなんでしょうね〜…。まあ、イベントはいくつか考えていますが…。

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  • from: yumiさん

    2011年04月27日 09時09分02秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・11・

     残る一体を潰すのにそれほど時間はかからなかった。
     友梨(ゆうり)と昌獅(まさし)が互いに視線を交わした次の瞬間、二人は走り出し、援護するように勇真(ゆうま)が弓を放った。

    「昌獅っ!」
    「分かってる!」

     友梨がネズミの着ぐるみの目の前に立ち、対面する。

    「さて、どう料理しようかしら?」

     笑みを浮かべる友梨だが、その笑みはどこか黒かった。
     ネズミはそんな友梨に対し、恐れを抱いていないのか手元にあった武器を振り下ろそうとする。

    「……ふ〜ん。」

     易々と武器を受け止める友梨は満面の笑みを浮かべる。

    「面白いわね…、一体一体力加減、速さ、そして、反射神経が違うようね。」

     友梨は力いっぱいに武器を跳ね上げ、そして、何故か後ろに飛んだ。
     ネズミは友梨に武器を跳ね上げられた衝撃でバランスを崩し、無様に倒れこむ。

    「最後だ。」

     昌獅はネズミの首元に刀を落とした。

    「……。」
    「動かないわね〜。」
    「終わったな。」

     暢気な会話をする友梨と昌獅はそれぞれ顔を見合わせて笑いあった。

    「これで本当に終わればいいんだけどね。」
    「まあな。」

     友梨と昌獅はこれが今回のステージの終わりだとは思ってもいなかった。前回が前回で大変な目に遭ったのだから、今回も簡単には終わらないだろうと、二人は理解していたのだった。

    「はぁ……今回は一体なんなんだろう。」
    「さあな、でも、大変じゃないことを祈るしかないだろう。」
    「……。」

     昌獅は友梨に近付き手を差し伸べる。

    「ありがとう。」

     友梨は昌獅の手を借りて立ち上がり、ごろごろと転がる物体を見て顔を顰める。

    「かなり異様な光景ね。」
    「だな。」
    「それにしても、何処まで――っ!」
    「ぶみゃっ!」

     急発進したために、友梨はバランスを崩し、昌獅の胸に凭れかかる。

    「いたたた…、思いっきり鼻ぶつけた。」
    「大丈夫か?」
    「一応。」

     鼻を押さえながら友梨は顔を上げ、苦笑を浮かべる。

    「ドン臭いわね、お姉ちゃん。」
    「……仕方ないよ、智里(ちさと)ちゃん。」

     智里の言葉に勇真(ゆうま)がフォローを入れる。

    「美波(みなみ)大丈夫か?」

     心配そうな涼太(りょうた)の声に友梨たちが視線を向けると、床に思いっきり顔をぶつける美波の姿が映った。
     涼太の手が微妙な位置にあるので、彼は一応彼女に対して助けようとしたらしい、しかし、間に会わなかったようだ。

    「さっきの「みぎゃっ!」という悲鳴は美波だったのね。」
    「「みぎゃっ!」じゃなくて、「ぶみゃっ!」よ、お姉ちゃん。」
     どっちでも良いような事を突っ込む智里に友梨は肩を竦める。
    「心配しないの?」
    「お姉ちゃんこそ。」
    「私は心配しているわよ?」
    「どうだか。」

     智里が小さく肩を竦め、友梨は溜息を吐いた。

    「心配しても、しなくても、あの子は平気でしょ?」
    「まあね。」
    「涼太くんがいるもんね。」
    「過保護すぎるけど。」

     二人は妹の世話を妹より一つ下の少年に任せ、自分たちは話しに夢中になる。

    あとがき:ダークネス本当に終わりませんね…。
    章で言えば残りはこの章を合わせ、3・4章なんですけどね〜。中々うまくいきません。
    もう、4月も終わりに近付いていますね。早いものです。

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  • from: yumiさん

    2011年04月26日 11時16分29秒

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    「ダークネス・ゲーム〜外伝〜」
    『その手に掴む温かなモノ』《後編》

    「リョウくん!!」

     美波(みなみ)に手を引かれながら、涼太(りょうた)は苦笑する。

    「こけるんじゃないぞ!」
    「そんな訳――。」

     一体何度その遣り取りをしたのかはもう忘れてしまったが、それでも、美波はお約束どおり、涼太が注意した途端何かに躓き前へとこけそうになる。

    「……お前な…オレまで巻き込むな」
    「えへへ…。」

     手を繋いでいたからと、最近涼太の筋肉がついてきたために、美波は涼太に反対側に引っ張られる事で難を逃れた。

    「ありがとう。」
    「ん。」

     美波は満面の笑みを浮かべ、涼太はそれを見て、やや頬を赤らめながら頷いた。

    「それにしても、友梨(ゆうり)お姉ちゃんも災難だね〜。」
    「…だな。」

     先ほどの出来事を思い出した涼太は顔を引き攣らせる。
     よりによって何故子ども(涼太にしたらメチャクチャ不本意な言葉だが…)である自分たちを連れた友梨をナンパしたのか。
     相手の方にしたら、多分弱いヤツラばかりだと思ったのかもしれないが、それは大きな間違いだった。

    「あの馬鹿どもも災難といや、災難だな。」
    「そうだね〜、何せ相手が昌獅(まさし)さんだもんね。」
    「ああ。」

     剣道、格闘技などをやっており、最近までは得体の知れない敵ばかりを相手にしてきた昌獅だ、ただの人間が敵うはずが無い。

    「美波、迷路は二人一緒に入るか?」
    「え〜、面白くないよ〜。」

     不満そうな顔をする美波だが、涼太は心配事が一つあった。

    「お前、トラブルを起こさないと言いきれるのか?」
    「……多分、大丈夫?」

     可愛らしく小首を傾げる美波だが、どう見たって大丈夫には見えない。

    「はぁ〜……。」

     涼太は頭を掻いた。

    「一緒に入ろう、お前絶対、中で迷子になるとか、変なヤツに絡まれたりしそうだ。」
    「え〜。」
    「いいな、二人一緒だからな。」

     強く言う涼太に美波はしぶしぶと頷いた。
     もし、友梨と昌獅が一緒ならばじゃんけんなどをしてペアをつくって別々の入り口から入っただろうが、ここには友梨も昌獅もいない。
     涼太は溜息を最後に吐き、美波の手をしっかりと握った。

    「絶対にオレから離れるなよ。」
    「ぶ〜。」

     頬を膨らませ、口を尖らせる美波はどう見たって、仏頂面の涼太よりも幼く見えた。
     不機嫌な少女と仏頂面の少年はそのまま迷路の入り口に向かった。

    「…え〜と、二人ではいるの?」

     どう見ても幼い二人に迷路担当のお姉さんが困ったような顔をした。

    「ああ。」
    「……。」
    「えっ…と、お母さんとかは?」

     どうやらお姉さんは二人が迷子なのだと思い、そう声をかけてきた。

    「お母さんは家かな〜。」

     お姉さんの意図をちゃんと把握していない美波はボケた答えを言う。

    「「……。」」

     お姉さんはどうやら、美波とでは話しが進まないと判断をしたのか、涼太の方を見た。

    「……こいつの姉さんとその彼氏と来たんです。」
    「……。」

     お姉さんは何と判断したのか、苦笑を浮かべた。

    「フリーパスポートか券を見せてください。」
    「はい。」
    「ん。」

     二人は迷路の中に入っていった。通常ならば二十分もかからずに出られる迷路なのだが、どこをどう間違えたのか、二人は四十五分近くまでかかった。
     その原因は多分彼女だ……。

    「リョウくん!こっちだよ!」
    「おい、こら、美波そっちは――。」

     という会話や――。

    「ふあっ!行き止まりだ。」
    「……だから、言っただろうが…。」

     などや――。

    「うわああん、出口が無い〜〜。」
    「……違う、お前が方向音痴の所為だ。」

     という風に、美波が涼太を引っ張りまわした結果だった。
     因みにどのように出てきたかというと、それは涼太の御陰だ。
     涼太は自分が進んだ方向や、出口がある方向を見失わないようにしていたので、美波が迷った時間よりも早く出口に導いたのだった。

    「難しかった〜。」
    「……。」

     ぐったりとした涼太は顔を上げ、時計を見た。

    「マジかよ…こんなアトラクションで四十五分??」
    「ふみゃっ!」
    「……。」

     奇声を発する美波に対し、冷たい視線を向ける涼太は頭をガリガリと掻いた。

    「当然だよな……。」

     うまく時間を活用すれば、二つのアトラクションは乗れただろう。何故か今日はかなり人が少ないのだから。

    「もしもし?」
    『あっ、美波?今何処?』

     さっき美波が奇声を発した原因はポシェットに入れていた携帯電話が震えたからで、その電話をかけてきたのは友梨だった。

    「今?迷路のゴール前。」
    『……。』

     友梨はどうやら、美波の所為で時間がかなり潰れたのだと悟ったようだ。

    『え…と、涼太くんに代わってくれる?』
    「えっ?リョウくんに代わるの?」
    『うん。』
    「リョウくん、はい。」
    「ん。」

     涼太は素直に電話を受けとり、その耳に当てる。

    『涼太くん?』
    「友梨先輩。」
    『…………その様子じゃ、やっぱり駄目?』
    「……。」

     黙りこんだ涼太に友梨は苦笑を漏らす。

    『まあ、美波だしね。頑張って。』
    「友梨先輩の方は終わったんですか?」
    『うん、一応こってり昌獅を叱ってやったし、大丈夫でしょう。』
    「それで、どうします。」
    『う〜ん、まだ日が高いけど、帰りの電車が込むのは避けたいから、ラストの観覧車にいく?』
    「別にオレはいいですけど、美波は、大丈夫ですか?」
    『大丈夫よ、多分。』

     友梨のぼそりと呟かれた言葉に涼太はやや不安になるが、友梨が一応大丈夫だというので信じる事にする。

    『それじゃ、観覧車前にね。』
    「はい。ほら、美波。」
    「もういいの?」

     電話を終えた涼太は美波に携帯を渡した。

    「ん、観覧車だってさ、待ち合わせ場所。」
    「そうなんだ、もう終わり?」
    「電車込むのは避けたいそうだ。」
    「そっか〜、それじゃ、行こう。」

     ニッコリと微笑む美波は涼太に手を差し出す。

    「ん。」

     涼太は美波が迷子にならないように、という意味でその手をしっかりとに握った。



     観覧車の前で友梨と昌獅と合流した美波たちは四人で一つのゴンドラに乗った。

    「うわっ…綺麗。」
    「本当に、これなら高い所でも平気なのね。」

     感嘆の声を上げる美波を見ながら、友梨は目を細めた。

    「……何で最後までお前らに邪魔されなきゃならん。」
    「しょうがねぇだろ、昌獅のスケベ心を友梨先輩に読まれているんだから。」
    「…普通だろ。」
    「どうだか。」

     文句を零す昌獅に涼太は小さく肩を竦める。

    「……絶対リベンジする。」
    「あっそ、頑張れよ。」
    「…今度は邪魔すんじゃねぇぞ。」
    「さあな、昌獅が変な事を考えて友梨先輩を恐がらせなかったらこんな事にはならんと思うがな。」
    「てめぇ……。」

     握り拳を作る昌獅に涼太は鼻で笑った。

    「そういや、その頬の赤いもみじ友梨先輩がつけたのか?」
    「……。」
    「そりゃ、昌獅がいけないよな、折角のデートを自分で台無しにしたんだからな〜。」

     昌獅は眉間に皺を寄せ、思いっきり涼太を睨んだ。

    「余計な事を……。」
    「まあ、今回は感謝してやってもいいぞ。」

     涼太は上から目線で昌獅に言った。

    「御陰で美波と一緒に入れたからな。」
    「……。」
    「昌獅、涼太くんそろそろ下に着くわよ。」
    「ああ。」
    「はい。」

     友梨の一言で二人の会話は終わった。
     下についたとき、昌獅は友梨に手を貸し、涼太もまた美波に自分の手を貸した。

    「ありがとう。」

     ニッコリと微笑む美波を見ながら、涼太はこの笑みをずっと守っていきたいと強く思った。
     美波の温かな手を、自分の小さな手でしっかりと握った。
    その手に掴む温かなモノはとても大切なもので、決して壊したくないガラス細工のように綿で包み込んで守っていきたい。
     大切だから……、好きだから。

    あとがき:マナさんリクエストいただきありがとうございます!!
    さて、中身といえば…涼太くん報われたんでしょうか?
    ……比較的ましとは言えそうですが、報われたかは少し疑問が残りますね…。
    涼太くんがマシな分何故か、昌獅さんが酷い目にあっているような…。気のせいですよね?
    本当に何万人記念の時のものかはちょっと忘れかけていますが、本当にありがとうございます。

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  • from: yumiさん

    2011年04月25日 14時08分36秒

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    「ダークネス・ゲーム〜外伝〜」
    『その手に掴む温かなモノ』《中編》

    「楽しい!」
    「「「……。」」」

     小さなカフェテリアの一角で一人喜ぶ少女に残る三人はげんなりしていた。
     それもそうだろう、高校三年にしてメリーゴーランド……と友梨(ゆうり)は思い、残る二人は男とのプライドを捨てないと乗れないものだった。
     因みに、男二人はそれぞれの想い人もしくは恋人の頼みだったので、自分のちっぽけなプライドを砕いても何とか乗ったのだった。

    「…次、何にする?」
    「ジェットコースターはどうだ?」
    「……あんた本気で言っているの?」

     オレンジジュースのカップを持ち、うんざりしたような顔をする友梨に昌獅はニヤリと笑った。

    「冗談だよ。」
    「そうじゃないと困る。」
    「お前と確か高田(たかだ)妹その二はジェットコースターやお化け屋敷は駄目だったけか?」
    「うん、私は最近お化け屋敷は平気だけど、美波は未だに駄目だよね?」
    「うん。」

     美波はやや表情を曇らせ友梨の言葉に同意する。

    「そうか、そんじゃ、何が残ってる?」
    「ミラーハウス、小さな急流すべりもどき、観覧車に…期間限定の迷路かな?」
    「あっ、私ミラーハウスと迷路に行きたい!」
    「ん、涼太たちは?」

     友梨の意見に同意を示し、昌獅は涼太たちを見る。

    「ん〜、どうしようか…。」
    「急流すべりに行ってみたいかも。」
    「大丈夫か?」
    「うん、確か友だちに聞いたけど、全然高くもないし、濡れないって言ってたもん。」
    「そうか。」

     涼太は頷き、マップを見る。

    「ここからだと、迷路、急流すべり…という順番がいいか。」
    「うん!」
    「そんじゃ、その後は観覧車前で集合な。」
    「そうね、その後で買い物で十分ね。」
    「だな。」

     美波も涼太も友梨たとの意見に同意を示すようにゆっくりと立ち上がる。

    「昌獅、お会計よろしくね?」
    「…わーたよ、ああ、あんな約束すんじゃなかった。」
    「もう、そこまで言うんなら、私の分だけ払おうか?」
    「……。」

     友梨は鞄から財布を取り出そうとするが、昌獅の左手が止める。

    「何?」
    「払うから出すな。」
    「もう、変な意地ね……。」

     友梨は呆れるが、それでも、そんな昌獅が嫌いじゃなかったので自然と笑みを見せた。

    「涼太くん、美波、先に外に出てようか?」
    「うん。」
    「そうですね。」

     三人は外に出ていき、昌獅を待つ三人にどう見ても柄の悪い男たちが近寄ってくる。

    「お姉さん。」
    「おれたちと遊ばないか?」
    「そんなガキどもは放って置いてさ。」
    「「……。」」

     友梨と涼太は同時に顔を顰めた。その姿は本当の妹である美波よりよっぽど姉弟のように思えるほどだ。

    「連れがいるので。」
    「どうせ、そいつもガキなんだろ?」
    「別に良いじゃねぇか。」
    「止めとけよ。」

     友梨に詰め寄る男たちの間に小柄な少年、涼太が割り込む。

    「殺されるぞ。」
    「お前にか?」
    「ははは、そりゃ傑作だ。」
    「……。」

     涼太は呆れたような目で男たちを見た。

    「馬鹿ばっかり。」
    「……同感。」

     友梨の吐き捨てるように言った一言に、涼太も同意の言葉を漏らす。

    「……あ〜…やってしまったようね。」
    「……ですね。」

     最近特に緊迫した状況にいた二人は気配に鋭くなっていた。しかも、相手は味方だったらどんな気配でも直ぐにわかるだろう。

    「やってしまったわね。」
    「ええ、でも、丁度良いですけどね。」

     ゆっくりと自分たちに近付く只一人の気配は殺気を帯びている。

    「半殺し?」
    「せめて、骨か歯の一本くらいじゃ?」
    「どうかしらね……。」

     涼太と友梨は同時に溜息を吐く。

    「どちらにしても。」
    「無事じゃすまないな。」
    「ふぇ??」

     友梨と涼太が諦めの境地に入り、只一人訳が分からない美波を放って置いて、殺気の元凶が姿を表した。

    「おい、そいつは俺のだ。」
    「……馬鹿昌獅。」

     友梨は昌獅のストレートの言葉に顔を赤く染める。

    「んあ?」
    「誰だよ。」
    「この姉ちゃんはおれたちと遊ぶんだぞ。」
    「きゃっ!」

     急に手を引かれた友梨は嫌悪の篭った目で、男たちを睨んだ。

    「はな――。」

     友梨が怒鳴ろうとした瞬間、友梨を掴んだ男が文字通りぶっ飛んだ。

    「………あ〜〜〜〜〜〜〜。」
    「……オレ知らねぇ……。」
    「ふぁ、すごく遠くに飛んだね〜。」

     暢気な声に友梨は思わず頭を抱えたくなったが、それよりも、昌獅が一番不味かった。
     昌獅の目は据わっており、殺気だけで人を殺せそうな勢いで、しかも、容赦なく一人の男の胸倉を掴んでいる。

    「……ふぅ。」
    「友梨先輩?」
    「ごめんね、少し席を外すわ。」
    「えっ?」

     唐突にいなくなる友梨に涼太は目を丸くさせるが、次の瞬間、意識は昌獅に向けられる。
     バキッ、という嫌な音が聞こえ、そして、次の瞬間、物凄く痛そうに悶える声、どうやら昌獅は男の一人の骨を折ったようだ。

    「やべぇ…。」

     涼太が顔を真っ青にしているその時。

    「ストップ!」

     いつの間にか、柄の長い箒を手にした友梨が昌獅の繰り出した拳を受け止めた。

    「友梨?」
    「…………昌獅?」

     友梨は笑みを浮かべるが、その目は笑っていない。

    「……。」
    「自分が何をしたかよ〜く分かってる?」
    「……悪い。」
    「…ふ〜ん、涼太くん、美波。」
    「はっ、はい!」
    「ふえ?」
    「二人は遊んでいらっしゃい、私はこの馬鹿を説教するから。」

     優しい声なのに有無を言わせぬ迫力があり、涼太は冷や汗を流す。

    「は、はい…。」
    「気をつけてね?」
    「うん、行ってきます。リョウくん、行こう。」

     美波もここにいてはいけないと分かっているのか、珍しく走り出す。

    「ふふふ、さ〜て、昌獅。」
    「……。」
    「何でよりによって、初デートで問題を起こすのよ!!!」
    「悪い…。」
    「許す訳ないでしょうが!!!!」

     友梨の怒声は遊園地中をかけた。
     そして、友梨たちは見世物化していたのだが、本人達は全く気付いていなかった。

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  • from: yumiさん

    2011年04月24日 11時34分14秒

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    「ダークネス・ゲーム〜外伝〜」
    リクエスト(涼太の報われる話)
    『その手に掴む温かなモノ』《前編》

    『あ、もしもし涼太(りょうた)くん?』

     唐突に聞こえた声に涼太は目を見張った。

    「友梨(ゆうり)先輩?」
    『ええ、ちょっと良いかな?』
    「……何かあったんですか?」
    『う〜ん、あったと言えばあったんだけどね……。』

     言葉を濁す友梨に涼太は首を傾げた。

    「……一体なんなんですか?」
    『あのね……、ダブルデートして欲しいの。』
    「……………………………………………………はあ!?」

     言葉の認識に時間を掛けた涼太は素っ頓狂な声を出した。

    『…ごめんね、行き成り変な事を言って。』
    「い…え……。」
    『昌獅(まさし)が遊園地に行こうって誘ってきてくれたんだけど…、私デートなんて今まで一度もやった事がなかったから…。』
    「……。」

     納得はした。涼太だが何で自分がそんな事をしなくてはならないのか、と溜息を吐きたくなったが、相手が友梨なのでそんな事は出来ない。

    『それに…昌獅がしょっぱなから変な事しないか…不安で……。』
    「あ〜……。」

     確かに昌獅なら隙あらば友梨を喰らうだろう…、涼太はそんな事を考え、友梨にはかなりの貸しがあるので承諾するしか道はなかった。

    「分かりました。」
    『ありがとう。』

     電話の向こうで笑みを浮かべている友梨を思い浮かべ、涼太は苦笑した。

    「で、オレの相手は誰なんですか?」

     ダブルデートと言うくらいだから、間違いなく相手役の少女がいるだろうと思い、涼太は諦めた感じで言った。

    『美波(みなみ)よ。』
    「――っ!」

     涼太は一瞬心を読まれたのかと思い、危うく携帯電話を落しかけた。

    『ふふふ、涼太くんは本当に美波が好きなのね。』
    「……。」

     涼太は自分の頬に熱が集まる事を感じ、ここに友梨がいなくてよかったと思った。

    『涼太くんに美波以外の女の子とデートさせるなんて、恩を仇で返すようなものだからね。』
    「友梨…先輩。」
    『私は涼太くんと美波が付き合うのは大賛成よ?』
    「……。」

     涼太は自分の周りが敵だらけじゃないと分かり、ホッと息を吐いた。

    『今回のデートの費用は一応昌獅持ちなんだけど、一応お金を持ってきて、美波に何かプレゼントしたらどうかしら?』
    「友梨先輩……。」

     涼太は目を閉じゆっくりと口を開く。

    「ありがとうございます。」
    『…いいのよ、私だって涼太くんにはたくさん迷惑掛けているからね。まあ、正しく言えば私たち姉妹がね。』
    「……。」

     涼太は小さく苦笑を浮かべ、高田家の三姉妹を思い浮かべた。
     長女の友梨は何かと涼太を助けてくれるが、昌獅が関連すると何故か被害が涼太の元にやってくるのだ。
     次女は次女で妹を思うが故か、それとも只単に気が会わないのか、涼太を虐める……。
     三女で彼の想い人である美波といえば、涼太がどんなにも彼女を思っていても、まったく気付かない。それどころか、第三者にばかり知られていき、彼は最近哀れんだ目で見られる気がしてならなかった。
     そういう訳で、涼太は高田三姉妹からかなりの苦労をかけられていた。

    『涼太くん。』
    「何ですか?」
    『今週の日曜日、十時に駅前に集合ね?』
    「分かりました。」
    『必要なら、逸れてあげようか?』
    「えっ?」
    『最後の方は美波と一緒にいられるようにはかった方がいいかな〜、と思ってるの。』

     涼太は絶句する。智里もそうだが友梨も時々爆弾を落す。
     それは、涼太にとって嬉しいものもあるが、たまにとんでもなく大きいダメージを与えるものを落すのだ。

    「い、いりません!」
    『……ふふふ。』

     電話の向こうで友梨は笑う。

    『うん、そう言うと思った。涼太くんだって行き成り、美波と一緒にいる事になっても困るもんね。でも、二人っきりなりたかったら、教えてね?』
    「……。」

     涼太は脱力でその場に座り込みになりそうになった。

    「友梨…先輩。」
    『あはは、ごめん、ごめん、それじゃ、当日よろしくね?』
    「分かりました。」
    『それじゃ、ありがとうね?』
    「いえ……。」

     電話を切った涼太はやや疲れている表情をしているが、その顔にほんの少しの喜びが浮かんだ。

    「…………これって棚から牡丹餅?…いや、少し違う気が……。」

     涼太は本気で悩んでいるのか眉間に皺を寄せ、その場に倒れこむ。

    「……まあ、あの姉の方がいないんだから、最悪な事態には……ああ…伏兵がいた……。」

     涼太は頭を抱え、その場で嘆く。

    「あの…天然娘……、あいつがどう出るか……。」

     涼太は何度もあの天然娘である美波が何度も涼太を持ち上げ、そして、容赦なく何度も落としてきたのだった。
     何度も「男」として見られていない、しかも、「男」と見られたとしても「弟」、つまり、家族愛の延長線上だ。
     今回のデートで少しでも意識させられればと淡い期待を抱きそうになるが、涼太は頭を振ってその考えを振り払う。

    「駄目だ…あいつは何か知らんが、簡単に逃れる…つーか…オレにダメージを与えてどっかに行く……。」

     今までの経験上涼太はあまり期待しない事を心掛けたのだった。



     時間は過ぎ、等々約束の日曜日……。

    「何でテメェがいるんだよ。」
    「友梨先輩に呼ばれたんだ、仕方ないだろう。」
    「……ちっ。」

     メチャクチャ不機嫌そうな昌獅は舌打ちをした。どうやら、昌獅の方にはダブルデートだと言う事は伝わっていなかったようで、彼はただいま不機嫌の絶頂だった。

    「うわっ、珍しい。」
    「おはよう、リョウくん、昌獅さん。」
    「…友梨。」
    「よう、美波。おはようございます、友梨先輩。」
    「おはよう、涼太くん、今日はありがとうね?」
    「いえ…でも、何で昌獅には知らせてなかったんですか?」
    「おい…テメェら。」
    「だって、教えたら何が何でも涼太くんか美波に用事を作って追い出しそうだもの。」
    「……確かに。」

     友梨の言い分に涼太は納得をする。

    「おい、聴けよ。」
    「何?昌獅。」

     ようやく友梨が口を聞いてくれた事に昌獅はホッとするが、自分が怒っても言い立場であると思い出し、眉間に皺を寄せた。

    「友梨、お前な。」
    「昌獅がいけないんでしょ、誘ってきた当初の言葉を忘れた訳?」

     いつも以上に冷めた目付きに昌獅は思わず怯んだ。

    「確か…「覚悟しとけよ。」だったかしら?警戒して何が悪いの???」

     クスクスと黒い笑みを浮かべる友梨はまるで彼女の妹の最悪、最凶のあの人を彷彿させた。

    「ぐっ…。」
    「私はね、初めてなのよ、男の人と付き合うのも、こうして、出掛ける事も。」
    「……。」
    「だから、こうして、涼太くんを呼んだの、それくらい許してよね。」
    「分かったよ、呼んじまったもんはしょうがないしな。」
    「ありがとう、昌獅。」

     ニッコリと微笑む友梨の笑みを見て昌獅はようやく彼女の本当の笑みが見れた事に安堵する。

    「そんじゃ、時間も惜しいから行くか。」
    「そうね、美波、逸れないように手を繋いでなさいよ。」
    「は〜い、迷子にならないでねリョウくん。」
    「……オレは迷子に何ねぇよ!」
    「え〜?」

     不満そうな声を上げる美波に涼太は頭痛を覚えた。

    「……迷子になるのは美波だろうが……。」
    「何か言った?」

     あまりに小さく呟かれた言葉だったため幸いにも美波の耳には届かなかったようだ。

    「何でもねぇよ。」

     涼太は美波の手を掴み、改札の方へと足を向ける。

    「ほら、さっさと歩けよ。」
    「待ってよ。」
    「何もない所でこけんなよ。」
    「こけないよ〜。」
    「どうだか。」
    「何でそんな意地――っ!」

     言っているそばから美波は履きなれない靴を履いていたためかこけかけるが、それを見越していた涼太が支える。

    「言ってるそばからこれかよ。」
    「たまたまだもん!」
    「どうだかな。」

     肩を竦める涼太を睨みつけた美波は軽く頬を膨らませる。

    「リョウくんの――。」
    「んじゃ、行くぞ、今日はデートだからな。」

     美波が「馬鹿」と叫びだす前に、涼太はさっさと美波を引っ張り出す。

    「ふえっ……。」
    「折角の友梨先輩たちの好意だ、喧嘩なんかしたら失礼だろ?」
    「……。」

     耳打ちされ、美波はキョトンと目を見開いた。

    「そうだね。」
    「だろ、行こうな。」
    「うんっ!」

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  • from: yumiさん

    2011年04月23日 10時18分59秒

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    「特別企画!?」
    誕生日:勇真

    「あっ!勇真(ゆうま)さん!!」

     元気欲手を振っているのは、昔付き合っていた彼女の弟の恋人で、仲間である高田友梨(たかだゆうり)だった。

    「お誕生日、おめでとうございます。」

     満面の笑みを浮かべる少女に勇真は微笑み返す。

    「ありがとう。」
    「あの、これ、私と妹たちからのプレゼントです。」

     友梨はそう言って小さな包み紙を渡す。

    「いいのかい?」
    「はい、勇真さんにはいつもお世話になっていますから。」
    「ありはとうね、友梨ちゃん。」
    「いいえ、お礼の言葉は妹にも言っておきますね。」
    「ああ、頼むね。」

     言葉を聞いていなければ間違いなく仲睦まじい恋人同士に見えるので、彼女たちの関係を知らない人たちは勘違いを起こしているようだ。

    「なあ、あれって三村(みむら)じゃねぇか?」
    「何時の間に彼女なんかつくったんだ?」
    「へぇ、結構可愛いな。」
    「……。」

     その会話を横で聞いていた、とある人物はワザと音を立て、大声を出す。

    「友梨!」
    「あっ、昌獅(まさし)。」
    「お前も今日学校だったんだな。」

     二人はのんびりと微笑み、音を立てた昌獅を見た。

    「…………友梨、こっちに来い。」
    「えっ?」

     訳の分からない友梨は首を傾げているが、勇真は何か感づいたのか苦笑している。

    「ほら、友梨ちゃん行っておいで。」
    「あ、あの、勇真さん、私もう授業がないので、よければ、一緒に言って欲しい所があるんです。」
    「えっ?昌獅は?」
    「昌獅とは一緒に行けない場所なんです。」
    「……。」

     勇真は不思議に思ったが、友梨の真剣な目を見て断れなかった。

    「分かった、おれもこの後用事がないから、構わないよ。」
    「ありがとうございます。」

     友梨は頭を下げ、昌獅の元に向かった。
     昌獅は文句を友梨に言うが、友梨は微笑んで、それをかわしていた。



    「友梨ちゃん。」
    「勇真さん。」

     友梨と昌獅が向かった場所は墓地だった。

    「ここは……。」
    「ごめんなさい、勇真さんも心に傷を負っているとは分かっているんですけど、それでも、私場所を知らなかったので……。」
    「いや、久し振りにナツに会っても構わないから…。」
    「優しいですね。」

     友梨は目を細める。その顔は一人の大人の女性のもののように思えた。

    「奈津美(なつみ)さん、こんにちは。」

     まるで友梨は奈津美を知っているような口調なので、勇真はほんの少し目を見張った。

    「ありがとうございます。私は貴女がいてくれたから、今の昌獅と出会う事が出来たと思います。それに、勇真さんともで会わせていただきありがとうございます。」
    「友梨ちゃん。」
    「私はこの二人と出会えて、本当に幸せです。だから、安心してください。」

     友梨は穏やかな笑みを浮かべた。

    「昌獅は私が守ります。」
    「……。」
    「勇真さんや皆も守ります。だから、奈津美さん、安心してください。私は貴女が守りたかったもの、大切にしたかったものを守ります。」
    「……友梨ちゃん。」

     出会った頃はまだ少女のようだった友梨も成長しているような気がして、勇真はほんの少しばかり寂しく思った。

    ――ありがとう、友梨ちゃん。

     ふっと風が吹き、奈津美の声が二人の耳に届いた気がした。

    ――勇真、誕生日おめでとう。幸せになってね。

    「ナツ?」

    ――友梨ちゃん、昌獅と勇真をよろしくね。

    「はい。」

     友梨は不思議に思わないのか笑みを浮かべ、幻聴にも近い奈津美声を受け止めていた。

    「………私が出来る限りの事をいたします。」
    「………友梨ちゃん。」

     勇真の声が震えているが、友梨は気付かない振りをした。

    「何ですか、勇真さん?」
    「ありがとう……。」
    「いいえ、私は勇真さんに無理を言って連れてきてもらったのですから、お礼を言うのは私の方ですよ。」
    「……昌獅は本当に良い彼女を持ったね。」

     友梨は一瞬目を見開いたが、すぐに笑みを浮かべた。

    「昌獅が良い彼女を持ったんじゃなくて、私が良い彼氏を持ったんですよ?勇真さん。」
    「……そうかな?」
    「そうですよ。」

     立ち上がった友梨はスカートについた砂を払う。

    「多分、昌獅が私に告白しなければ、私は自分の気持ちに気付かなかった。だから、私は自分にはもったないない程素敵な彼氏が出来たんです。」

     のろける友梨に勇真は笑みを深くする。

    「友梨ちゃん、君は今幸せかい?」

     勇真の質問に友梨は今まで見せた笑みの中で一番綺麗で、そして、幸せそうな笑みを浮かべたのだった。

    「勿論です。私の側に色々な人が居て笑ってくれている。そんな私が不幸せのはずがありませんよ。」
    「そうか。」

     勇真は目を細める。

    「ねえ、勇真さん。」
    「何かな?」
    「勇真さんは今幸せですか?」

     友梨に同じ質問をされ、勇真は言葉を詰まらせる。
     今までの自分ならば、きっと「幸せになってはいけない」と思っていただろう。
     だけど、今は違った……。

    「ああ、幸せだよ。」
    「よかった。」

     友梨は本当に嬉しそうに目を細め、そっと蒼穹を見上げた。

    「奈津美さん、いつか必ず、昌獅とここに来ますね。その時には私と昌獅の子どもがいても、驚かないで下さいね。」

     勇真は友梨の言葉に目を見張った。
     季節は必ず移り変わる。
     そして、人は変わる。
     いつかきっと、奈津美と過ごした思い出が、笑って思い出す時が必ず来るような気がした。

    あとがき:勇真さんの誕生日で一応この特別企画(?)を終わらせていただきます。
    もし、イベント事で何か見たいものがありましたら、リクエストとして載せるかもしれません。
    五月に入ればこのサークルも丁度一年なので、感慨深いです。

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    2011年04月21日 11時51分02秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・10・

    「何で、潰れないんだよ……。」

     昌獅(まさし)は取り敢えずかすり傷一つない状態だったが、息は徐々に上がり始めていた。

    「…友梨(ゆうり)は?」

     自分でさえこんなに苦戦しているのだから、友梨の方はどうだと思った。
     そして、彼女の姿を捕らえた眼を思わず疑った。

    「うそ…だろ?」

     友梨は何と一人で二体目の着ぐるみを潰していた。
     容赦なく繰り出される蹴りに猫の頭が飛んだ。

    「……。」
    「よしっ!」

     握り拳を作って喜ぶ友梨に昌獅は知らず知らずのうちに青ざめた。
     嬉嬉として着ぐるみの頭をぶっ飛ばす少女が本当に好きなのかと、昌獅は己の事ながら不安になった。

    「昌獅?」

     友梨が笑顔で振り返った瞬間、その顔は青ざめた。

    「昌獅!!」

     友梨の叫びの御陰で昌獅は反射的に後ろに飛び、片手を着いて更に遠くに飛び、着地する。

    「……。」
    「良かった。」

     胸を撫で下ろす友梨と自分の先程までたっていた位置を交互に見る昌獅は、間一髪の所を助けられたのだと悟った。

    「友梨。」
    「ドジね。」

     友梨はニヤリと不敵に微笑みそして、床を蹴った。

    「昌獅の仇!」
    「おい、俺は死んでねぇぞ。」

     半眼になり、昌獅は突っ込むが友梨の耳には届かず、友梨は昌獅が先程戦っていたアライグマのような形をした着ぐるみと対峙する。
     アライグマの武器はどうやら鋤のようだった。因みに先程友梨が倒した猫の手には鍬が握られていた。
     友梨は鋤を受け止め、一瞬力を抜く。

    「おいっ!」

     昌獅は青ざめた顔で叫ぶ、それもそうだろう、彼の立ち位置では友梨が力負けしているように見えたのだった。
     しかし、それは友梨の作戦であった。
     バランスを崩したように見えた友梨はしっかりとバランスを持ちこたえ、一方急に力が緩んだ事で着ぐるみのバランスが崩れたのだった。

    「はあっ!」

     友梨は容赦ない蹴りを入れ、そして、アライグマの頭をナイフで切り落とす。

    「……残りは一体だけ!」
    「……。」

     友梨の鮮やかな手つきに昌獅は呆れた。

    「お前……段々凶暴になっているぞ。」
    「放っといてよ!!」

     昌獅が思わず漏らした言葉を聞き取った友梨は目くじらを立てた。

    「誰の所為でこうなったと思うの!」
    「そりゃ……。」
    「「あの変態。」」
    「昌獅さん。」
    「????」
    「……。」

     「変態」と答えたのは、昌獅と涼太(りょうた)、「昌獅」と言ったのは智里(ちさと)、「?」を浮かべるのは美波(みなみ)、そして、黙り込むは勇真(ゆうま)だった。

    「……。」

     友梨は頭痛を覚えるが、これ以上何か言っても混乱するだけだと思って黙り込む。
     残る一体残っているのにこんなにも暢気でいていいのか、と気合を入れなおし、友梨は残る一体に向かってナイフを構えた。

    あとがき:久し振りのダークネスです。
    今日7万人突破しました!!
    嬉しいです。5月17日で丁度一周年記念のこのサイト、かなりの人がきてくれたのだと実感します。
    …よくよく考えると、5万人記念のものが終わってませんね…。すみません、もう少し時間がかかります。
    リクエスト募集中なので、よろしくお願いします!!

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