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弥生の河に言の葉が流れる

弥生の河に言の葉が流れる>掲示板

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  • from: yumiさん

    2012年03月24日 10時02分09秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・138・

     ようやく着替え終わった友梨(ゆうり)と昌獅(まさし)が合流して、そして、全員がゆっくりと階段を上っていた。

    「………。」
    「……おい、友梨。」

     急に昌獅に声を掛けられた友梨は不思議そうな顔をする。

    「……お前具合が悪いだろう。」
    「……。」

     友梨は昌獅の言葉に思わず、舌打ちをしそうになった。

    「…ずぶ濡れだったからな。」
    「大丈夫よ。」

     微笑む友梨に昌獅は眉を寄せる。

    「何処が大丈夫何だよ。」
    「大丈夫だから、大丈夫。」
    「……。」

     昌獅は、友梨は気づいていないのかと、毒づきたくなった。
     そう、友梨は気づいていないのだが、彼女の顔は紙のように真っ白になっている。それは今にも倒れてしまいそうなほどだった。

    「……。」

     友梨の顔色には全員気づいているが、こうやって言うのは昌獅だけだった、皆分かっているのだ。いくら止めても友梨は絶対に止めない事を――。

    「……分かった。」

     そう言うと何故か昌獅は友梨に背を向け、腰を落とした。

    「昌獅?」
    「背中に乗れ。」
    「えっ!」

     友梨はこれ以上ない程目を大きく見開いた。

    「友梨、乗れ。」
    「私重いから。」
    「重くてもかまわない。」
    「……何か…それ失礼じゃない?」
    「知るか、乗れよ。」

     何とも情緒のない言葉に友梨は不機嫌になりつつも、昌獅の背をじっと見た。

    「………だけど。」
    「前にあいつの…勇真(ゆうま)の背には乗れたのに、俺のは乗れないというのか?」
    「いや…そういう訳じゃ…。」
    「ならなんだよ。」
    「…あの時とは事情が異なるし……。」
    「……。」

     確かにあの時、友梨は怪我を負っていた。

    「あん時は怪我だが、今回だって十分背負われても可笑しくない。」
    「だけど…。」
    「さっさと乗らねぇと横抱きだぞ。」
    「……………大人しく乗ります。」

     友梨は自分が俗に言う「お姫様抱っこ」をされる想像をしてしまい、そちらの方が昌獅の負担に考え、大人しく彼の背に乗った。

    「疲れたら言ってね。」
    「お前一人どうって事ない。」
    「……。」

     昌獅の言葉に友梨は嘘だと思ったが、それでも彼の気持ちを汲んで黙り込んだ。

    「ごめんね。」
    「こういう時はありがとうだろ。」
    「……うん、ありがとう。」

     友梨は昌獅の呼吸を聞きながら目を瞑った。

    「お前はもっと俺を頼れよな。」
    「……。」

     昌獅の言葉に友梨は頷く事はなかった。何故なら彼女は疲れと、昌獅の温もりのお陰で眠ってしまったのだ。

    あとがき:三月二十七日は友梨ちゃんの誕生日ですね。その日に載せられるか分からないので、早めに言っておきます。
    「友梨ちゃんっ!誕生日おめでとうっ!」
    それでは今日はこの辺で。

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  • from: yumiさん

    2012年03月17日 10時37分49秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・137・

    「友梨(ゆうり)。」

     昌獅(まさし)が声を掛けると友梨は顔を上げた。

    「ほら、少しでも拭け。」
    「えっ、でも…。」

     友梨はタオルに書かれている文字を読み、顔を顰める。

    「大丈夫だ、お勘定はちゃんと済ましているそうだ。」
    「……。」

     友梨は胡乱な目つきで昌獅を見て、続いて、智里(ちさと)を見た瞬間、彼女の顔は青ざめた。

    「う、うん…。ありがとう。」

     昌獅は友梨が何を見たのか悟り、大人しくタオルと袋を渡した。

    「……うーん。」

     友梨は困ったような顔をして、そして、智里に向かって手招きをした。

    「何かしら、お姉ちゃんわたしを呼びつけるなんて、いい度胸をしているわね。」

     不機嫌全開の智里に友梨は引きつった笑みを浮かべる。

    「わ、私ちょっとトイレで着替えてくる。」
    「ああ、そういう事ね、まぁ、お姉ちゃんの肌なんて誰も見たくはないと思うけど、見苦しいものを見せられるよりはマシよね。」
    「……。」

     あまりにも酷い言葉に友梨は怒りを通り越して、呆れた。

    「あんた、本当に私が嫌いなのね。」

     友梨は苦笑をして立ち上がった。

    「別にお姉ちゃんが嫌いなわけじゃないんだけどね。」

     智里の呟きはあまりにも小さく誰の耳にも届く事はなかった。

    「それにしても、本当にお姉ちゃんたちは濡れ鼠ね。」
    「仕方のない事だよ。」

     智里の呟きに反応したのは勇真(ゆうま)だった。

    「まあ、お姉ちゃんがどじだからあんな甲冑お化けに突き飛ばされたんですけどね。」
    「手厳しいね。」
    「当然じゃありません?そうじゃなければあのヘタレだけが濡れていたのにも関わらず、自分まで濡れる事はありませんから。」
    「……。」

     勇真は友梨の性格上そうなるのはまずないな、と考えていた。そして、それを表情から読み取った智里は肩を竦める。

    「確かに、勇真さんが思うようにお姉ちゃんは自分から飛び込んだでしょうね。」
    「……そうだよね。」

     智里の言葉に勇真は頷く。

    「本当に黙ってみてればいいんですけど、馬鹿みたいに動き回るんですよね。」
    「…馬鹿って。」
    「当然じゃありません、黙っていても大差ない事をあの姉は自ら手を出して、毎回、毎回お姉ちゃんの行動で迷惑を被るのはこっちですから。」
    「迷惑ってほどじゃないけど。」
    「甘いです。」

     智里は冷めた目で勇真を睨んだ。

    「勇真さんはお姉ちゃんを知らないからそんな暢気な事を言えるんです。」
    「……。」
    「掃除を手伝えば、部屋の角にゴミが残っているし、徹底して食器を洗ってもご飯粒が残っているし。」
    「……。」

     勇真は智里の言葉にそれはあまりにも日常的な事過ぎて、今回みたいな大雑把にやっても大丈夫な事には当てはまらないと思われた。

    「友梨ちゃんも頑張っているんだし、これ以上言うのは酷だと思うよ。」
    「あら、わたしは真実を言ったまでです、それに誰が注意をしないとあの姉はいつまでも自分の悪い所を把握しませんから。」
    「……。」

     誰もが欠点を持っている、それを注意するのは確かに大変であるのだが…、智里の場合何かが違うように思われた。

    「……ああ、小姑みたいなものかな。」

     少し考えて口に出た言葉が智里の耳にも届いたのか、智里はジロリと勇真を睨んだ。

    「何か言いましたか?」
    「いや…なんでも……。」
    「……。」

     言葉を濁す勇真に智里は胡乱な目つきで彼を見ていたのだが、すぐに興が冷めたのか、空を見上げる。

    「それにしても、ずいぶん時間がかかったわね。」
    「そうだね。」

     空を見上げれば、もう一番星が出るほど、薄暗くなろうとしていた。

    「これが終わる頃には完全に夜になっているわ。」
    「……。」

     智里の言葉に勇真は苦笑した。

    「何でこんなにも面倒くさい事をわたしがやらなければならないのかしら。」

     智里の最もな呟きは風に乗って消えた。

    あとがき:明さん、リクエスト、お願いします。ホワイトデーをかなりすぎてしまって、ちょっとやばいかな〜。とか思っているのですが…何かいいネタください。何せ、ここに載せているキャラが多すぎて、なかなかプレゼントに出来る話が思い浮かびませんので…はい。失礼します。

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  • from: yumiさん

    2012年03月16日 10時49分44秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・136・

     友梨(ゆうり)と昌獅(まさし)はようやく水の中から脱出していて、友梨はあまりの寒さからかがたがたと震えていた。

    「大丈夫じゃねぇよな。」
    「大丈夫よ……。」

     気丈にも微笑む友梨だが、昌獅にとってはかなり痛々しいものがあった。

    「無理するな。」
    「してないわよ。」
    「……。」

     昌獅は自分の服が濡れていなければ友梨に渡すのだけれど、と思った。

    「はぁ、それにしても、私たちって水難の相でも出てるのかな?」
    「何だよ、急に。」
    「だってさ、あの日も雨が降っていてずぶ濡れだったし、前の爆弾事件だって昌獅ずぶ濡れで、今だって二人揃ってずぶ濡れだから。」
    「………。」

     偶然と必然が入り混じって、昌獅は複雑そうな顔をした。

    「はぁ、それにしても、智里(ちさと)たち遅いね。」
    「そうだな。」

     昌獅が相槌を打っていると、突然言い争う声が聞こえた。

    「えっ、この声。」
    「……。」

     段々近づく怒声に友梨は驚き、昌獅は心底嫌そうに顔を歪めた。

    「ねぇ、昌獅…。」
    「……なんだよ。」
    「何かあの子たちの間に入りにくい…。」
    「安心しろ、俺もだ。」
    「……。」

     昌獅の言葉に友梨は安心するどころか不安そうな顔をした。

    「全然大丈夫なように思わないんですけど。」
    「涼太(りょうた)と高田(たかだ)妹その二の喧嘩なら何とかなりそうだか…まさか、高田妹その一と勇真(ゆうま)なんてな…。」
    「本当に……。」

     怒鳴りあう美波たちと違い、智里たちの喧嘩はにこやかにやられ、どこか恐ろしく感じるものがあった。

    「……なんか凄まじいわね、このメンバーって。」
    「そうだな……。」

     改めて周りを見れば、こんなちぐはぐな面々で良くぞここまでやってこれたのだと感心した。

    「くしゅっ!」
    「……はぁ。」

     友梨の小さなくしゃみを聞き、昌獅はガシガシと後ろ髪を掻き、行きたくないが、ある人物の元へと足を向けた。

    「おい、高田妹その一。」
    「何かしら、ずぶ濡れヘタレ。」
    「……。」

     昌獅は震える拳で今にも智里に殴りそうだが、ギリギリのところで耐える。

    「…何か…何か拭くもんとかあるか?」

     怒りを押し殺しそう智里に尋ねると彼女はクスリと笑った。

    「あら、それが人にものを頼む態度?」
    「……。」

     絶対に自分をからかって楽しんでいると分かっていても、今ここで友梨に風邪を引かせるわけにもいかないので、自分のプライドを押し殺す。

    「持っていたら、貸してくれ。」
    「……。」

     智里は呆れた顔をし、そして、昌獅に袋を二つとタオルを二枚投げた。

    「……お前、それ、どこから。」
    「ちゃんとお金を払って貰って来たわ。」
    「……。」

     よくよく見れば服はこのテーマパークの袋に入っていた。

    「つまり…これって。」
    「だから、お金をちゃんと払ったといったじゃない、普通の価格よりも半額以下ですけど。」
    「……。」

     昌獅は少し前の自分よりよっぽど性質が悪いのではないかと考える。

    「で、使うの?使わないの?」
    「……。」

     昌獅はまた友梨が怒ると思ったが、今来ている服よりも何倍もマシだと考え、その袋とタオルを友梨の元に運んだ。

    あとがき:ダークネスの話を打ち始めてかなりの時間が経ったのに、話の中はゆっくりとしかすすんでいませんね。本来なら友梨ちゃん大学二年に上がるはずなのに……。遅いですよね〜。

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  • from: yumiさん

    2012年03月14日 10時41分48秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・135・

    「……友梨(ゆうり)先輩たち大丈夫かな?」
    「大丈夫よ。」

     涼太(りょうた)の言葉に智里(ちさと)が反応する。

    「……。」

     何でそんな事が言い切れるのかと、涼太が怪訝な顔をすると、智里は鼻で笑った。

    「こんな手を込んだ事をして、どちらかといえば、最後に何か大きな仕掛けをする方があの変態らしいと思うけど?」
    「……。」
    「違うかしら?」

     智里の言葉はもっともな言葉で、涼太は思わず納得してしまいそうになった。

    「だけど、最後の仕掛けって何だよ。」
    「何でしょうね。」
    「……。」

     智里の言葉に涼太は脱力した。

    「分からないのかよ。」
    「分からないわよ。」
    「……。」
    「あの変態が何を考えているかなんて知りたくもないし、知る気もないわ。」

     智里の言葉に近くで会話を聞いていた勇真(ゆうま)が苦笑する。

    「まあ、智里ちゃん落ち着いて。」
    「あら、わたしは十分すぎるほど落ち着いているわ。」
    「ははは……。」

     勇真は乾いた笑いを浮かべ、友梨たちのいる方を見た。

    「昌獅(まさし)が側にいるから大丈夫だと思うけど、心配だね。」
    「そうかしら?」
    「本当は智里ちゃんだって、心配なんだろう?」
    「誰が?」

     智里はやや苛立った目つきで、勇真を睨んだ。

    「智里ちゃんの愛情は屈折しているからね。」
    「愛情なんてものは持ち合わせていないわ。」
    「ははは、そうかな?」
    「……。」

     涼太は二人の会話から少しでも遠ざかるために歩調を緩めた。

    「なんつー会話をしているんだよ、この二人……。」
    「リョウくん。」
    「ん?」

     服を軽く引っ張られ、涼太は声のする方に顔を向けた。

    「美波(みなみ)?」
    「勇真さんって、あんな性格だったけ?」
    「……。」

     どうやら鈍い美波でさえ、気づくくらいに変化し始めている勇真に涼太は苦笑する。

    「まぁ、そうだな……。」
    「う〜ん?」

     適当にはぐらかす涼太に美波は小首を傾げた。

    「美波。」
    「何?」
    「お前ただでさえ、歩くのが遅いんだから、喋らず歩けば?」
    「――っ!リョウくん、酷いっ!」
    「酷くねぇよ。本当の事だろ。」
    「ぶ〜。」

     子どものように頬を膨らませる美波に涼太は微苦笑を浮かべる。

    「ほら。」

     涼太は美波に手を差し出すが、美波はそれを睨んだだけだった。

    「何よ。」
    「手を出せよ。」
    「だから、何で。」
    「手を引いてやるよ。」
    「あたしより、背の低い人に手を貸してもらわなくても大丈夫です。」

     美波の言葉に涼太の額に青筋が浮かぶ。

    「てめぇの身長とオレの身長はそんなに差がねぇだろうがっ!」
    「三センチ違うもん。」
    「三センチなんてあっという間だっ!」

     珍しく声を荒げる二人はだったが、早足で目的地にちゃんと向かっていたのはさすがだろう。

    あとがき:本日はホワイトデーなのですが、何も出来なかった…。うーん、去年の私は凄いと思います。よくイベント小説を書けた。
    この先がどうなるかなんて分かりませんが、色々頑張っていきたいです。

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  • from: yumiさん

    2012年03月10日 11時02分35秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・134・

    「――っ!……〜〜〜〜〜〜っ!」

     息が出来ないのか、友梨(ゆうり)は昌獅(まさし)の胸を押すが、彼は気づいていないのか、そのままだ。
     等々、友梨は我慢の限界なのか昌獅の頭を殴った。

    「ぐっ!」

     うめき声を上げ、昌獅はようやく友梨を手放し、友梨は肩で息をする。

    「はぁ…はぁ…私を殺す気っ!」
    「い、いや…つーか、鼻で呼吸しろよ。」
    「こんな長いのは初めてよっ!」
    「…つまり、息をずっと止めていたのか、そりゃ、苦しいはずだ。」
    「馬鹿、馬鹿っ!」

     顔を真っ赤にして怒鳴る友梨に昌獅は呆れる。

    「お前、もっと手加減しろよ。」
    「無理。」
    「……。」

     友梨の言葉に昌獅は顔を顰める。

    「何で無理なんだよ。」
    「だって、昌獅が変な事をする限りは私だって恥ずかしくってこうなるわよっ!」
    「……。」

     いつか友梨がこういった事になれる事を切に願うが、残念ながら友梨のそういったところはマシにはなるのだが、どんなに年を重ねてもなくなる事はないのは、今の昌獅が知る由もない。

    「はぁ……。」
    「溜息を吐きたいのはこっちよっ!」

     怒鳴る友梨に昌獅はどうしたものかと、頭を掻いた。

    「友梨。」
    「もっと、こういった事には興味ないって、感じだと思ったのに……なんでこんな人なのよ……。」
    「……。」

     嘆く友梨に昌獅はとうとうかける言葉が思いつかず、黙り込んだ。

    「……。」
    「はぁ、もう、何でよ……。」
    「……。」
    「絶対に、清いお付き合いから始めるものよね……、交換日記とかさ……、せめて、手を繋ぐにしても…一ヶ月……キスだったら一年くらいかけてさ……。」

     何とも古風な考え方をする友梨に昌獅は頭が痛くなった。

    「お前な…。」
    「いや…キスだって、結婚前までしてはいけないような……。」

     呆れてものが言えない昌獅に友梨はぶつぶつと呟き続ける。

    「……いい加減にしろっ!」
    「へっ?」
    「お前な、そんなんじゃ、俺の理性がもつわけないだろうがっ!」
    「な、何よ、理性ってっ!」
    「俺はお前が欲しいんだよ。」
    「――っ!」

     何とも直球な言葉に友梨は顔を真っ赤にさせる。

    「変な意味じゃないが、それでも、好きな奴に触りたいと思うのは自然な事だろうがっ!」
    「……。」

     ジトリと睨む友梨に昌獅は己の発言を少し悔いた。

    「はぁ……、お前は古風すぎだ。」
    「結婚前の女性は純潔を護らないといけないのは当たり前でしょ。」
    「……。」

     昌獅は本気で自分は結婚するまで、友梨に触れる事ができないのかと、頭を抱えた。

    「まぁ、結婚前、とは言わないけど、責任が持てるまでは絶対に純潔は護りたいと思っているよ。」
    「責任って?」
    「うーん、大学卒業?」
    「…せめて、高校卒業。」
    「分かった、百歩譲って成人まで。」
    「って、お前の誕生日は完全に成人式終わってからじゃねぇかっ!」
    「そうよ。」

     胸を張る友梨に昌獅はそこまで自分の理性が保つのか、怪しく思った。

    あとがき:昌獅頑張れ…、多分友梨は手ごわいぞ。
    そういえば、最近受けた簿記の3級の試験合格しました。
    さくらさくメールというので得点を見たら百点中九十六点でした。すごく嬉しかったんですけど、前に一度受けたので、少し悔しく思いました。

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  • from: yumiさん

    2012年03月08日 11時09分53秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・133・

     昌獅(まさし)は自分が一体なんで水中に潜らないといけないのかと眉間に皺を寄せた。
     少し前も、友梨(ゆうり)を助けるために暗い水底に向かって潜っていった。そして、今回は唯一つのガラクタを拾うために潜っている。

    (……何でだろうな…。)

     前回はかなり必死になったが、今はそれほど必死ではなかった。
     そして、昌獅は赤い珠を見つけ、それに手を伸ばした。

    (…ああ、友梨が危険に晒されていないからか……。)

     自分の必死さが違うのは友梨が今元気で自分の側にいるからの安堵からのもので、前回は友梨が側にいない上に彼女の命は危険に晒されていたのだ。
     だから、真剣さが全く異なるのは当たり前だ。

    (…あいつはもっと真面目にとか、いいそうだけど、俺が必死になれるのはきっと、お前の所為なんだよ…。)

     昌獅は自分が必死になるような状況になるのはもう二度とない事を心から願った。

     友梨が傷つくのはもう二度と見たくない。

     友梨が悲しむのはもう二度と見たくない。

     友梨が崩れるのはもう二度と見たくない。

     昌獅はそう思いながら水面から顔を出した。

    「昌獅?」

     顔を出した昌獅の顔がどこか悲しそうで、友梨は心配そうな顔をした。

    「大丈夫だ。」
    「……疲れたんなら、休む。」
    「いや、これで、終わるんだ。」
    「そうだけど。」

     友梨はどこか無理をしているように見える昌獅を心配するが、昌獅は微笑むだけで、首を横に振る。

    「急がないと、お前の妹が煩いだろ?」
    「……私が側にいるから。」
    「……。」
    「側にいるから…、一人で抱え込まないで…。」

     友梨の言葉に昌獅は涙が出そうなほど嬉しく感じたが、今はそんな時じゃないので必死でポーカーフェイスを作る。

    「大丈夫だ。」
    「……。」

     昌獅は友梨の手を引いた。

    「行くぞ。」

     まだ、友梨は昌獅が心配だったが、これ以上何を言っても彼は聴いてくれないと思い、仕方なく頷いた。

    「馬鹿…昌獅。」

     友梨の呟かれた言葉は昌獅の耳にも届いていたが、何もいう気がならなかった。

    「……友梨。」
    「何?」

     しばらく泳いでいると、ようやく昌獅が話し出す。

    「お前は俺が護るから。」
    「……。」
    「だから…。」

     友梨は思わず、昌獅の頬を殴った。

    「なっ!」
    「馬鹿昌獅っ!私だってあんたを支えたいのよ、護られるだけじゃ嫌よ。」
    「友梨?」
    「あんたは私なんかで本当にいいのっ!もっと護るのにふさわしい子だっているかもしれないのにっ!」

     何を急に言い出すのかと昌獅は目を丸くさせた。

    「私なんて可愛くないし、意地っ張りだし、全然、昌獅にふさわしくないんだよ。」
    「…誰がそんな事言った。」
    「誰も言わないけど、私はそう思うのよっ!」
    「お前を選んだのは他ではなくて、俺だ。」
    「それが気の迷いなのよっ!」
    「何処がだよっ!」
    「私なんかっ!」
    「――っ!」

     昌獅は唇を噛み、そして、噛み付くように友梨の唇を奪った。

    あとがき:はぁ、火曜日辺りから花粉症の所為か鼻水やくしゃみが止まりません…つらいです…はぁ。

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    2012年03月04日 11時12分05秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・132・

    「おい、高田(たかだ)妹その一。」
    「何かしらヘタレ一号。」
    「………お前らはさっさとあの場所に言っとけ。」
    「あら、珠はいいの?」
    「さっき、落ちた時偶然だが赤い珠が水の底にあった。」
    「そう、分かったわ。」

     友梨(ゆうり)は昌獅(まさし)に抱えられながら、顔を上げた。

    「本当に?」
    「ああ、お前は見なかったのか?」
    「……誰かさんが自分の胸に押し込んでいたので、見えませんでしたが?」
    「ああ、そうか。」

     さらりと聞き流す昌獅に友梨は頬を膨らませる。

    「ちょっとは悪いと思ってよ。」
    「何でだよ。」
    「呼吸できなくてかなり苦しかったんだよ。」
    「それは悪かったな。」
    「気持ちが篭ってない。」

     イチャモンをつける友梨に昌獅は溜息を吐いた。

    「これ以上どうすればいいんだよ。」
    「もっと誠意を持って謝ってよね。」
    「誠意ね……。」

     昌獅は半眼になり、友梨を見下ろす。

    「……もう、いい、離して。」
    「やだ。」
    「何でよっ!さっさと珠を取りに行かないと駄目でしょ?」
    「……お前おぼれないか?」
    「……何よそれ。」

     怒りでふるふると震える友梨に昌獅は溜息を吐いた。

    「ここ、かなり深いからな。」
    「平気よ、私だって泳げるわよ。」
    「ふーん、てっきり俺にしがみついているから怖いのかと思った。」
    「違うわよ。」

     友梨は昌獅を睨み、そして、思いっきり突き放す。

    「――っ!」

     思ったよりも痛みを覚えた昌獅は思わず顔を顰めた。

    「あんたが悪いんだからね。さっさと取りに行ったらどう?」
    「……はぁ、分かったよ。」

     昌獅は溜息を一つ吐き、そのまま水中に潜っていった。
     友梨はそれを見送り、自己嫌悪に陥る。

    「本当に…我ながら可愛くない……。」

     何で素直にありがとう、と感謝の言葉を言えなかったのか。

    「……こんなんじゃ、いつか愛想つかされる。」

     友梨は肩を落とし、水中にいる昌獅が早く戻ってくる事を願った。

    「そういえば……泳ぐのはまあ、苦手じゃないけど…こんな深いところにいるなんて小さい頃で浮き輪を使っていた時以来だよね……。」

     友梨はようやくここで昌獅の気遣いに気づく事が出来た。
     彼は普通のプールでも足がつくところが多いので、友梨がそういった経験が少なければパニックを起こすのではないのかと危惧していたのだ。

    「……本当に私にはもったいない人だな。」

     友梨の胸にほんの少し闇が落ちるが、それは消える事の出来ない闇。
     闇は一生彼女に付き纏う、それを消す事が出来ないのだ。
     彼女が自分を蔑む限り、闇は付き纏う、それは彼女の愛する人でも消せない闇……。

    あとがき:そういえば、昨日はひな祭りでしたね。今年は人形すら出さなかったので、忘れていました。
    ダークネスは本当に何処までいくんでしょうね…。そろそろ終わってもいいのに。

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  • from: yumiさん

    2012年03月03日 10時55分14秒

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    「ダークネス・ゲーム」
    〜第十一章〜・131・

     友梨(ゆうり)と昌獅(まさし)は何とか敵を倒しきり、橋の上にいた。

    「どう?」
    「……確実に入ってみないと分からないな。」
    「そうか……。」

     友梨は橋の縁から身を乗り出すが、昌獅がそれを止める。

    「昌獅?」
    「お前、何をしでかす気だ?」
    「えっ?あははは。」
    「この水の中に入ろうとしただろう。」
    「えへへ。」
    「えへへ、じゃねぇ、さっきから何度も言うが、お前は大人しくここで待っていろ。」
    「……私も何度も言っているけど。私だって手伝いたいのよ。」

     真剣な表情で友梨は昌獅を睨んだ。

    「お前の気持ちも分かるが、お前貧血で倒れただろう。」
    「貧血と水に入るのは別問題よ。」
    「お前なっ!」

     この時友梨と昌獅は完全に油断していた敵を全て倒したと思ったのだが、残念ながら一体だけ生き残っていた。
     その一体はゆっくりと友梨と昌獅に近づき……。

    「友梨先輩危ないっ!」

     丁度戻ってきた涼太(りょうた)が叫ぶがすでに遅く、甲冑は友梨を橋の上から突き落とした。

    「友梨っ!」

     昌獅は友梨の後を追うように自ら橋の上から飛び降り、すぐに友梨を捕まえ彼女を抱え込む。
     昌獅は水の中に沈み、すぐに空気を吸うために顔を水面から出す。

    「……はぁ、はぁ、友梨大丈夫か?」
    「ごほっ、ごほっ…大丈夫。」

     どうやら水を飲んでしまった友梨は咳き込みながら返事をする。

    「……まずいな。」
    「どうしたの?」
    「どうやって上に戻るか…。」

     周りを見渡すと残念ながら上に戻れるような場所はなかった。

    「友梨先輩っ!昌獅っ!大丈夫か!」

     上から声がして、上を見ると橋の縁から身を乗り出す涼太がそこにいた。

    「大丈夫だ。」
    「涼太くん、そっちに残っていたあの甲冑の人形は?」
    「……智里(ちさと)先輩が投げたトリモチ弾が聞いて身動き一つとらない。」
    「「……。」」

     友梨と昌獅は同時に顔を見合わせ、自分たちが努力したあの出来事は何だったのかと、肩を落とした。

    「お姉ちゃん、生きているかしら?」
    「生きているわよ。」
    「…ちっ。」

     上から舌打ちする音が聞こえ、友梨は純粋に自分を心配してくれる姉妹は美波(みなみ)くらいしかいないのではないかと思った。

    「智里…もっという事はないの?」
    「そうね、このままその北に行けば上がる場所があるみたいよ。」
    「…そうなんだ。」
    「まぁ、自力で頑張ってね。」

     珍しくいい情報をくれる智里に友梨は少し感動を覚える。

    「それにしても、お姉ちゃんはどじね。」
    「……。」
    「あんな殺気だらけの敵に遅れをとるなんて。」
    「……。」

     友梨は小さく肩を落とす。

    「あんたは優しい言葉一つかけてくれないのね。」
    「それがわたしでしょ?」
    「……。」

     よー―――く、友梨も理解していたが、それでも、友梨は実の妹の言葉に落ち込んだのだった。

    あとがき:三月にはいりましたね〜。早いです。
    さてさて、私がやっているもう一つのサイトで「風の舞姫」という話が完結しました。よければ見に来てください。

    https://sites.google.com/site/mishengnocangqiong/home

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