夏目漱石にとって俳句とは何だったのか。


宮沢賢治にとって早苗とは何だったのか。


川端康成にとって孤高とは何だったのか。


志賀直哉にとって鯉幟とは何だったのか。


安部公房にとって牛後とは何だったのか。

畳を歩く雀の足音を知っている


あらえばシロくなるアシのうら


底が抜けた柄杓で水を飲まうとした


仏にひまをもらって洗濯をする


春の山うしろから煙が出だした




＊一時間目の放哉と六時を参照して下さい。

病めば梅干しのあかさ
下剋上超個哉


なるほど信濃の月が出ている
下馬評募る


わけ入ってもわけ入っても青い山
下駄箱あれ


あるけばかっこういそげばかっこう
下界みたく


やっぱりひとりがよろしいざっそう
下はいやな

どうしようもない私が歩いている


ふみいれば人の声あるふゆのやま


しぐるるやしぐるる山へ歩み入る


歩きつづける彼岸花咲きつづける





種田山頭火の場合。

春の夜の仏壇見ゆる燈かな


御仏も扉を開けて涼みかな


蟋蟀の仏壇の中に鳴出しぬ


仏壇の菓子美しき冬至かな




子規の四季の形而上学は深いだろうと践んでの試みでしたが如何でしたでしょうか？
尚ここでは、あのゼノンのパラドックスへの関心があるのでなければならない。

尾崎放哉の場所‥‥咳をしても一人かと存す

荻原愛桜の場所‥‥井泉水という軽みの自覚

永井龍男の場所‥‥我と我が虚空へ落つ感覚

芥川我鬼の場所‥‥将来への漠然とした不安



＊「出世間法」むしろ「無重力」というキーワードがヒントになります。

ほ、市場は土と決まっている。


しぶぅ、劇場は水と決まっている。


ゆーの、種族は火と決まっている。


チーキーン、洞窟は気と決まっている。

枕辺や星別れんとする晨
枕許浦島草を活けてけり


能もなき渋柿どもや門の内
渋柿は馬鹿の薬になるまいか


温泉や水滑らかに去年の垢
温泉の町を取巻く柿の小山かな


御隠れになった後から鶏頭哉
鶏頭の黒きにそそぐ時雨かな