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  • from: 庵主さん

    2026/03/11 18:27:25

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    日本文化のキーワード 第十二回 「縁」


    「良縁に恵まれる」「ご縁がなかった」「縁を切る/結ぶ」...。

    ぼくたちが漠然と、運や出会いのようなものと考えている「縁」。今回の日本文化のキーワードでは、「縁」について歴史や仏教思想からひもといていきたい思います。

    1. 縁の定義

    ・由来

    縁という漢字は、糸篇に彖(タン)という音符から成り立っています。もともとは織物の「ふち」を意味していた言葉で、そこから転じて、「よる」という意味をもつようになりました。

    ・読み方:

    音読み: エン

    訓読み: ふち、へり、よる、えにし、ゆかり、よすが(寄す処の意から)

    ・意味

    (1) つながり・関係性

    人と人、物と物、事と事の間の関連性を指します。偶然や必然、見えない力による結びつきを表すことが多いです。

    (2) きっかけ

    物事が始まる原因や理由、機会を意味します。

    (3) 物の端・へり

    物の周りの部分や境界線を指します。例えば、「縁側」や「皿の縁」などです。

    ・ことわざ

    金の切れ目が縁の切れ目

    釣り合わぬは不縁の基

    躓く石も縁の端

    袖振り合うも他生の縁

    縁は異なもの

    縁と月日の末を待て

    一樹の陰一河の流れも他生の縁

    木に縁りて魚を求む

    縁は異なもの味なもの

    縁の下の舞

    縁なき衆生は度し難し

    縁の下の力持ち

    2. 仏教の「縁」


    さて以上は、辞書にみられる一般的な語義ですが、ぼくたちが普段感じている「ご縁」の定義は仏教由来のものが多いのです。

    仏教における「縁」とは、物事が生じるための間接的な条件やきっかけを指す言葉です。すべての現象は、直接的な原因である「因」と、それを助ける「縁」が合わさって結果として現れるという「因縁生起(いんねんしょうき)→略語が縁起」という考え方が根底にあります。

    ・因と縁

    (1) 因と縁の関係

    結果(果)が生じるには、種(因)だけでなく、水や光のような助けとなる条件(縁)が必要です。

    例えば、あなたの成功は、才能(因)だけでなく、指導者や仲間、環境(縁)があって初めて成り立ちます。

    (2) 縁の広がり

    「縁」は人とのつながりだけでなく、すべての物事のつながりにも使われる東洋的な考え方です。

    私たちが今存在していることも、両親という「因」と、空気、水、食べ物、そし多くの出会いや出来事という「縁」の集合体であるとされます。

    私たちの人生は、無限の縁の網目に支えられていると考えることもできるのです。

    ・人と縁

    人には縁の深い人と浅い人がいます。

    愛する人だけでなく、苦手な人や敵対する人も、実は深い縁で結ばれているとされます。

    「袖触れ合うも他生の縁」ということわざがあるように、偶然の出会いも、過去からの深い縁があると考えられています。

    ・縁への気づき

    私たちは多くの縁に恵まれていながら、それに気づいていないことが多いかもしれません。特定の人や事柄に執着しすぎると、身近な新しい縁に気づけなくなる可能性もあります。

    「良い縁」「悪い縁」と区別するのではなく、自分を取り巻くすべての事柄が「縁」そのものであると理解することが大切です。

    ・釈迦の縁

    仏教の根本的な教えである「縁起」も、「因縁生起」の略であり、すべての物事には原因があり、つながりがあるという考え方です。

    (1) 縁起の思想

    お釈迦様が悟りを開かれた内容の一つであり、この世の現象は原因や条件が相互に関係し合って生まれるという真理です。すべての存在が互いに関わり合って存在していることを示します。

    (2) 十二因縁

    人間の苦しみや迷いの原因を12の段階で追究した釈迦仏の基本的な教えです。無明(根本的な無知)がすべての苦悩の根本原因となり、それが次の段階の縁となって次々と繋がっていくとされます。

    3. 歎異抄の縁


    それでは歴史上の偉人たちが、「縁」をどのようにとらえていたかを、以下にその著書・言葉からご紹介していきましょう。まずは、親鸞の『歎異抄』から「業縁」がどのように抗いがたく人を動かすかを見てみたいと思います。

    第十三条

    故親鸞聖人は、

    「兎や羊の毛先についた塵のような罪も、宿業によらないものはありません」

    と、おっしゃいました。

    またある時聖人が、

    「唯円房は、私のいうことを信じますか」

    と、おっしゃったので、

    「信じております」

    と、お答えしたところ、

    「それでは、私のいうことに違うことはあるまいな」

    と、念をおされました。慎んでうけたまわりますと、

    「それでは人を千人殺してほしい。しかればおまえの往生は決定しましょう」

    と、おっしゃったのです。

    「仰せではございますが、わたくしの器量では千人はおろか、ひとりの人も殺せようとはとても思えません」

    「ならばなぜ、親鸞のいうことに違わない、といったのですか」

    「これでわかるはずです。

    なにごともわが心のままになるのであれば、往生のために千人殺せ、といわれればためらわずに殺せましょう。しかし、たったひとりでも、殺す業縁※がなければ殺すことはできません。

    自らの良心に従って殺さないのではなく、また、殺すまい、と思っても百人、千人の人をも殺してしまうものなのです」

    と、おっしゃられたのは、私たちが自らの良心を良いと思い、悪心を悪いと思って、本願の不思議によって救われることを弁えていないからなのです。

    (『現代語訳 歎異抄』親鸞(唯円著)水野聡訳 PHPエディターズ・グループ 2008)

    ※業縁とは

    「業」とは私たちの生活行為のことです。身体的動作や言語活動や意思のはたらきをいいます。そして、それはすべて縁に随って起こっているので「業縁」といいます。さまざまな行為が縁のなかにあるのですから、私たちのことを「業縁的存在」といいます。

    (宮本亮環(新潟県 榮恩寺)ラジオ東本願寺の時間より)

    4. 世阿弥の「因果」


    因とその結果である果について、世阿弥は「因果の花」という秘伝を『風姿花伝』で説きました。因と果を結び付ける縁を、ここでは「時の運」、「男時・女時」とたとえ、舞台の成否の謎を解明しようとしています。同書より、以下本文を抜粋してご案内します。

    因果の花 (第七別紙口伝)

    一. 因果の花を知ることすなわち極意である。すべてのものみな因果である。初心からの芸能の数々は因である。能を極め、名を得ることは果である。されば稽古にあたる因をおろそかにすれば、果を得ることは難しい。これをよくよくわきまえること。

    また時の運とは恐るべきもの。去年、盛りであれば、今年花がないことを悟るべし。時には男時、女時というものがある。どのようにしても能にはよい時があれば、必ずまた悪い時もある。これは人智の及ばぬ因果というものだ。これを心得て、さほど重要ではない申楽の立合い勝負に、あまり主張も立てず骨も折らず勝負に負けようとも心にかけず、手も束ねて、少な少なと能をする。観客もこれはどうしたことかと興醒めでいる所へ、大事の申楽の当日、やり方を変え十八番の能を、精一杯力を入れてやって見せるのだ。これで観客に意外の気持ちが生まれ肝要の立ち合い、大事の勝負に必ず勝てるというわけだ。これが珍しさの大きな効果である。前回悪かったという因果が、今度はよい方に廻るのだ。

    さて男時、女時とはすべての勝負に必ずどちらか一方が色めいて、いい感じになるときがある。これを男時と心得る。勝負の回数が多く長くなれば、双方へ移り変わり、移り変わりするものである。ものの本には「勝負神といって勝つ神様、負ける神様それぞれがご自分の勝つ部屋、負ける部屋を定め守っておられる。弓矢の道ではこれを第一の秘事となす」とある。敵方の申楽がよく出で来れば、勝つ神様はあちらにいらっしゃると心得、まず畏まるべきだ。これは時の間の因果を司る二神にてましませば、双方へ移り変わり、移り変わりなさるのである。

    (『現代語訳 風姿花伝』水野聡訳 PHPエディターズ・グループ 2005年)

    5. 親子は一世 夫婦は二世


    「親子は一世、夫婦は二世」ということわざがあります。これは人と人とのご縁、つながりの深さを表したもの。親子は現世だけのつながりのため一世、夫婦は前世と今生、あるいは今生と来世にわたる二世の縁で結ばれている、とする信仰です。

    そもそも血縁のない夫婦が、親子よりも深い縁でつながっている、とみたのは、他人ゆえより深く信頼し、互いに支えあう長きにわたる関係からきたものかもしれません。中国やアジアの「赤い糸伝説」も同様の民間伝承です。

    さてこの「夫婦二世」の強いきずなは人間だけではなく、鳥類にもみられるという逸話があります。ある寺で起きたキジの夫婦の悲しい物語です。

    以下、臨黄ネットホームページのブログよりご紹介します。

    ・キジの儀式

    先頃、『朝日新聞』の「こころ」の欄 (昭和62年3月25日夕刊)に千葉県仏母寺の住職、安井玉峰さんの随筆が紹介されていました。

    「ある日、お寺の壁にドスンと雄のキジがぶつかり、ひん死の重傷を負ってしまいました。キジの雌がコーコーと鳴いて雄の周りを回っているんです。雄は必死に首を上げようとするんですが、ついに力尽きてしまいました。

    痛ましさに胸がいっぱいになり、キジのそばにしゃがみ込みました。が、あんなに警戒心の強い雌キジが、今はもう私のことなど意識になく彼の周りを回っています。そのうち彼女は彼のくちばしの付け根を軽くコツコツとつつき始めました。

    コーコー。「起きなさい」といわんばかりです。それでも、なんの反応もないと、こんどはトサカやほおの毛をくちばしでくわえて持ち上げようとするではありませんか。

    が、黒いひとみは閉じられたままです。ついに、彼女は彼の体に駆かけ上がり、必死にコーコーと鳴きながら、ひとしきり激しく頭をくわえてひっぱりました。キジの情愛とはこれほどのものかと、彼女の姿が涙で見えなくなりました。

    ......彼女はやっと事の次第を納得したのか、離れては近寄り、それを数回繰り返して、去って行きました。放心して見つめる私が、なきがらを始末してやろうとすると、彼女が戻って来たのです。3メートルほど離れてじっとこちらを見ています。

    と、今度は決心したかのように、彼のそばにつかつかと力強い足取りで近づき、二度、三度、彼のくちばしをつつき、声も出さず、振り返りもせず、去って行き、戻ってきませんでした。

    ...この夫婦は今生の別離をしたのです。はかなかった、短い一生の...。彼女は真心をささげて、別れのあいさつをしたのです。命がけで」

    (臨黄ネット「年年歳歳花相似 歳歳年年人不同 (唐詩選)」2005.04.01)

    https://rinnou.net/language/619/

    ■言の葉庵HP【日本文化のキーワード】バックナンバーリンク

    第十一回 読み人知らず

    http://kotonohaan.cocolog-nifty.com/blog/2024/08/index.html

    第十回 鬼

    https://blog.goo.ne.jp/kotonoha-anshu/e/56b63fb1822682dcb79c04bc6c67803c

    第九回 歌 ~古今和歌集 仮名序にみる和歌の世界

    http://nobunsha.jp/blog/post_233.html

    第八回 仕舞い
    http://nobunsha.jp/blog/post_224.html

    第七回 間
    http://nobunsha.jp/blog/post_206.html

    2017年02月25日

    第六回 切腹

    http://nobunsha.jp/blog/post_135.html

    2013年01月21日 16:00

    第五回 位
    http://nobunsha.jp/blog/post_122.html

    第四回 さび
    http://nobunsha.jp/blog/post_92.html

    第三回 幽玄
    http://nobunsha.jp/blog/post_50.html

    第二回 風狂
    http://nobunsha.jp/blog/post_46.html

    第一回 もののあはれ
    http://nobunsha.jp/blog/post_42.html

    ※「侘び」については以下別稿参照

    [目利きと目利かず 第三回]
    http://nobunsha.jp/blog/post_25.html

    [目利きと目利かず 第四回]

    http://nobunsha.jp/blog/post_28.html

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