菅家さんが直接尋問、元検事は謝罪拒否　足利事件再審公判
(1月23日 05:00)下野新聞
　１９９０年５月に足利市の松田真実ちゃん（４）が殺害された足利事件で無期懲役刑となり服役中、ＤＮＡ型鑑定の不一致で２００９年６月に釈放された菅家利和さん（63）の第５回再審公判が22日、宇都宮地裁（佐藤正信裁判長）で開かれた。取り調べと一審公判を担当した宇都宮地検の森川大司元検事（62）の証人尋問を実施。菅家さんが直接「謝ってください」と何度も求めたが、森川元検事は最後まで謝罪に応じなかった。

　午後の公判の冒頭、菅家さんが厳しい視線を向けながら「無実の罪を着せたことを謝ってください」と問いただすと、森川元検事は「新たなＤＮＡ型鑑定で犯人でないと伺い、深刻に受け止めている」とだけ答えた。

　弁護団が逮捕の決め手だったＤＮＡ型鑑定の評価を問うと、「有力な証拠と思った」と説明。公判中に行った任意の取り調べで菅家さんが「本当はやっていない」と「否認」に転じていたが、「罪を免れるための虚偽供述と思った」などと証言した。

　再審公判で再生された取り調べ録音テープは、独自の判断で録音、保存したと説明。その理由を「別の女児殺害事件を調べる際に証拠が薄く、（菅家さんが）どう供述するのか検討した方がいいと思った」などとした。

　黙秘権や任意聴取を拒否できる権利の告知の有無を追及されると「言っていない」と明かした。

　一方、午前中の公判は、一審公判中の92年12月８日の取り調べを録音したテープが再生された。

　前日の12月７日の取り調べでは、菅家さんが足利事件と別の女児殺害事件２件を「否認」していたため、森川元検事は「君から変なことを聴いたんで来た」と切り出した。そして、「ＤＮＡ型鑑定で君と一致する精液があるんだよ」など、一転して強い口調で詰め寄った。

　菅家さんは否認をしていたが、最終的には「勘弁してください」と号泣して再度、「自白」に追い込まれた。

　閉廷後に記者会見した菅家さんは「（元検事に）絶対謝ってもらいたかったが、謝らなかった。一生許さない」と述べた。

　この日の公判で予定されていた審理は終了した。２月12日に論告、弁論が行われ結審する予定。３月26日には無罪判決が言い渡される。