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from: わかさん
2010/06/22 05:15:09
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見えるのと見えない
筆洗
2010年6月19日 東京新聞
何かの脅威が存在する時、それが「見える」のと、「見えない」のとでは対処の難しさに大変な違いがある
▼中国の『史記』に、楚の将軍だったころの項羽が秦軍への攻撃を進言するのを上級の将軍が「眼前の敵は討てても、真の敵は討てない」と退ける場面がある。その時のたとえが<牛の虻(あぶ)を搏(う)つは、以(もっ)て〓蝨(きしつ)を破る可(べ)からず>
▼体の表面にとまる虻は打てても体毛の中に潜むシラミは殺せない、と。今、われわれは宮崎県の口蹄疫禍(こうていえきか)で、牛や豚にとりつく、シラミなんかよりずっと小さい「見えない敵」、ウイルスの怖さを思い知らされている
▼知事の非常事態宣言から一カ月が過ぎた。一時は下火になるかとも思われたが、「見えない炎」が燃え広がるように、新たな自治体にも飛び火、一向に終息が見えてこない。手塩にかけた牛や豚を失う畜産農家はもとより、観光業などに広がる打撃も深刻化している
▼思えば、世界保健機関(WHO)が新型インフルエンザのパンデミック(世界的大流行)を宣言したのは一年前の六月。被害は予想ほどでなく「過剰反応だった」の批判もあると聞く
▼だが、ウイルスという敵が敵だ。初動の対処は「大げさ」ぐらいでちょうどいいのではないか。そうしたとは到底言い難い今回の口蹄疫への対応の結果が、今の惨状だ。二つの「見えない敵」との戦いが示す教訓かと思う。
フォト:ルピナス
本日青年が来足ですね!
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