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from: わかさん
2011/05/21 05:24:04
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電力を選ぶ時代へ
【社説】
エネルギー政策を考える 電力を選ぶ時代へ
2011年5月20日 東京新聞・抜粋
脱原発依存の次は、電力会社が独占していた発電と送電事業を分離する。菅直人首相の言葉は、耳に心地よい。だが、新しい時代を開く気概はあるか。
発送電を分離する。首相は、その意味を本当に理解した上で発言しているのだろうか。
それは、十電力事業者の地域独占状態を切り崩し、本格的な電力自由化に移行するということだ。つまり、まず東京電力を解体しなければならない。だとすれば、東電の存続を前提にした福島第一原発事故の被害者賠償案と矛盾する。
◆電力の“地産地消”へ
風力や太陽光はまさしく天候頼みで不安定、個々の出力にも限りがあり、電力の“質”が保てない、従って主流にはなり得ない、というのが、電力会社のかねての主張である。それを克服できそうな方策がないわけではない。例えば、小規模電力の分散配置、電力の“地産地消”は有力だ。
日本にも豊富な地熱や小水力を開発し、都市部には出力一万キロワット程度の小規模液化天然ガス(LNG)火力を分散配置した上で、電力と温排水の同時供給網を張り巡らせて、再生可能エネルギーの弱点をカバーする-。
名古屋大大学院環境学研究科の竹内恒夫教授は「十年かけて小規模地域分散の電力網を張り巡らせれば、原発ゼロでも大都市圏の電力は十分賄えて、温室効果ガスも大幅に削減できる」と指摘する。
このような電力の地産地消、電力事業者の新規参入を阻んできたのが、発送電、そして配電の網を一手に握ってきた十電力の地域独占体制だ。
これまでにも電力自由化を求める動きは何度も起きた。しかし、既存の大電力会社の送配電網が使えない以上、どうしても新規参入の割高感は強くなり、その上に、さまざまな制約をかけられて“不自由”に陥った。新エネルギーが見つからないわけである。
欧州では一九九〇年に英国で始まった発送電分離の波が、欧州連合(EU)全体に広がった。それは、需要者、消費者が、電力を選べるようになったということだ。自由でなければ、料金は上がり続けたことだろう。自由化は原発でつくった電気を買わない自由も生んだ。電力種別という選択肢ができれば、政府が目標を掲げなくても、省エネや節電に身が入るはずである。
◆腰砕けは許されない
「電気には色がつけられないから、選べない」。そんな不満をよく耳にする。発送電を分離し、自由化の時代を開くということは、電気に色をつけるということでもある。どんな電気を、どのように使いこなすかは、国民自身が決めるということだ。電力網からこの国の形は変わる。政策の腰砕けは許されない。
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