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  • from: わかさん

    2011/06/12 05:40:30

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    おりづるの会@和歌山転載

    ライファーズ 償いと回復の道標 3
    サンディエゴ 1.
    坂上 香(さかがみ かおり)津田塾大 准教授、映画監督。

    月刊「みすず」2011年5月号 p.34〜46
    から抜粋。本文は 買って読んでください。315円。
    そのうち1年ほど経ったら この連載は 本になると思います。

    ★社会の監獄化
    前回紹介したTC(治療共同体、回復共同体)のアミティが、
    カリフォルニア州サンディエゴ市の刑務所内で行っているプロ
    グラムを1996年に訪れた。州立R・J・ドノバソ刑務所だった。

    ドノバン刑務所の受刑者数はおよそ5000人。最大収容者数が
    2200であるから、二倍を優に超える収容率だ。
    カリフォルニア州は、監獄化のトップランナーだ。矯正施設の
    規模は群を抜いており、常に全米で一、二を争う。
    過去30年で、刑務所の数は三倍に増えた。
     
    米国は確実に「監獄大国」となった。実際、刑務所や拘置所と
    いった矯正施設に収容されている受刑者数も、その人口比率も世界一だ。
     
    米国では「犯罪には厳しく」というスローガンのもと、70年代
    半ばから厳罰化政策が打ち出され、それが80年代から90年代に
    かけての刑務所ブームともいえる状況を生み出した。
    社会学者のロイック・ヴァカンは、刑罰国家の急激な肥大化の
    背景として、1970年代半ばから顕著になった福祉「改革」と
    自己責任論をあげ、貧困層の犯罪化が進んだと指摘する。

     この監獄化の状況を批判的に受け止めてきた研究者や活動家
    らは、「産獄(刑務所産業)複合体」という用語を使って説明する。
    民間企業の利益や国家の利潤追求に基づいたしくみで、監獄の
    建築を押し進め、収監者を補充し、安価な労働を確保する
    ために、厳罰化政策を拡大してきたのだと。
    こういった状況のなかで桁はずれに多い黒人男性が拘禁され
    (20歳〜34歳の黒人男性では九人に一人が被拘禁者)、
    「産獄複合体」は別名「現代の奴隷制度」と呼ばれている
    こともうなずける。
     ただし、監獄人口が激増したからといって、犯罪が激増して
    いるわけではないことを強調しておきたい。

     そもそも犯罪とは、社会や時代によって規定されるものだ。
    同じ行為でも、ある社会では犯罪になり、違う社会では犯罪
    扱いされないということが起こり、時代によっても異なる。
    刑罰もしかりだ。

     メディアと監獄化の関係も見逃せない。テレビ、映画、ゲーム、
    マンガといったポピュラーカルチャーのなかで、これほど
    刑務所や刑罰が頻繁に登場する文化はないのではないか。

     ★刑務所プロジェクトの始まり
     アミティが刑務所内で活動し始めたのは、このような社会の
    監獄化の初期ともいえる1980年代初頭のことだった。アリゾナ州
    のツーソン郊外で、薬物やアルコール依存者を対象としたTCを
    始めて間もない頃だった。その開設当初から、創設者のナヤ・
    アーピターやロッド・ムレン等は、他の機関が引き受けたがら
    ない人々を、率先して引き受けていた。
    ただし、当時は米国でもまだ刑務所内のTC自体が稀だったため、
    まずはその必要性を訴えるために地元ツーソンの判事を初めと
    する司法関係者に働きかけた。ある判事は反対さえしなかった
    が「薬物依存者には何をやっても無駄だ。この先 三年間で一人
    としてクリーン(薬物を使わない状態)を出すことはあり
    得ない」と断言したという。

     結局、1983年から87年までの四年間、司法省からの資金援助を
    受けて、アミティは「ピマ郡立拘置所プロジェクト」を運営する
    ことになった。そのスタッフの一人としてナヤが選んだ一人に、
    14年間アリゾナ州立刑務所に服役したことのあるファンという
    ラテン系の男性がいた。
    ヘロインの所持と売買、公文書偽造、窃盗等で、20回近くの
    逮捕歴があり、最後の判決には「社会復帰困難者のため、なる
    べく満期出所で」と受刑期間の長期化が示唆されている。二度
    も脱走を試み、その結果、服役期間のほとんどを独房で過ごし
    た。しかも十四年の間、一度として面会や手紙を受け取ったこ
    とがなく、完全に社会から孤立していた。
     ある日ナヤは、黙ったままで誰とも交流しようとしないファ
    ンが、野良猫に話しかける姿を見かけた。数日後オフィスに彼
    を呼び、「この子猫は、あなたが面倒をみなければ死んでしま
    う」とだけ言って子猫を渡した。以降、子猫に関することで
    二人は言葉を交わすようになる。そのうち彼は、猫以外のことで
    もナヤに質問をするようになった。ナヤは一つ質問に応える
    たぴに、ファンにも一つ質問させてもらうという条件を出した。
    ナヤはファンを、ファンはナヤについて知ることとなった。
    こうして、全く社会から孤立していたファンは、ナヤという一人
    の他者とつながり、それをきっかけに、プログラムにも積極的
    に参加するようになり、他のレジデントから信頼される存在へ
    と成長していった。
     その後ファンは、前述の拘置所プログラムのデモンストレー
    ターに抜擢される。

     ファンが築いた拘置所プログラムでは、四年間で男女411人が
    プログラムに参加し、再犯率が40パーセントも減少した。
    そして、この拘置所プロジェクトの成果は連邦司法省の目に
    止まり、カリフォルニァ州のR・J・ドノバン刑務所プロジェクト
    ヘとつながっていった。それはまた、カリフォルニァ州や、
    米国全体の処遇の文化を変えていく力になり、やがて、日本へ
    もつながっていった。
     
     ★監獄の中のサンクチュアリ
    1991年、アミティは全米薬物乱用研究機構の実験的プロ
    ジェクトに選ばれ、200人の薬物依存者を対象に、R・J・
    ドノバン刑務所内で活動を開始した。カリフォルニアでは罪
    の重さによって施設の警備の基準がレベル1からⅣと分けられ
    ているが、ここは最重警備のⅣにあたり、深刻な重犯罪者を
    対象としている。

     刑務所という場に、サンクチュアリ(安全な場)をいかに
    創るか。
    ナヤを始めとするアミティのデモンストレーターたちが、刑
    務所プログラムを開設するにあたって掲げた問いである。
    サンクチュアリは ここでは、問題を抱えた人々が成長する
    ために欠かせない物理的および精神的な安全を併せ持った
    「安全な場所」を意味する。

    サンクチュアリの維持のために ライファーーズ(無期刑受刑者)
    との関係が重視される。
    刑務所に最も長く服役し、受刑者から慕われているライファーズは
    刑務所というコミュニティにおける影響力がある。 

    「墓場にまで持っていくつもりのことを話せなければ、本音を
    話したことにはならない」。被害体験であれ、加害体験であれ、
    体験の詳細と、それに伴う感情を、徹底的に、何度も語るという
    のがアミティの特徴だ。
    まずは、幼児期まで記憶を遡らせ、自分の身に起こった出来事や
    感情を詳細にわたって語っていく。自分の身に何が起こり それを
    どのように感じていたのかを言語化し、自らが受けることからしか、
    サンクチュアリの創造は始まらないと考えられている。

    アリス・ミラーも指摘しているように、辛い記憶に蓋をして、
    被害自体をなかったことにしたり、自分のためを思って親は自分を
    殴ってくれたと、歪んだ解釈をしたり、もしくは子ども時代を
    完全に美化したりして生き延びてきている人が多いことに、
    ここではいつも驚かされる。

    1998年に この刑務所を訪れた時に 30歳代のアフリカ系男性、
    アンソニーが 気にかかった。。
    自らが抱える問題行動につながったと思われる出来事を 順番に
    語っていくという課題がだされ、彼は 幼い頃の出来事を 淡々と語った。
    その後、アンソニーを祝福する人が 絶えなかった。
     現場では気づかず、何年も後になってからそこで起きていた
    ことの意味に気づくということが多々ある。この時の体験もそう
    だった。当時、私は、アンソニーが辛い体験を語れたことと、
    彼を取り巻く暖かい反応のつながりを意識するのではなく、
    ただ目の前で展開するいくつもの出来事に感動していた。しかし、
    彼が語ることができたのは、まさに私を感動させた周囲の反応に
    見られる、彼を語りに導く環境(サンクチュアリ)がそこに存在
    していたからである。


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