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from: わかさん
2011/05/25 05:32:20
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翻った!?
筆洗
2011年5月24日
例えば、どこかの組織で不祥事が起きる。そういう際の釈明のコメントで頻出するのが「あってはならないこと」という台詞(せりふ)だ
▼まったく想定外の出来事だ、と強調する表現だが、その意識こそが不都合な事象を隠す、いや、見ないようにさせてしまう面がある。人は「存在してはいけない」ものは存在していない、と思いたがる
▼愛知県の女子高生の自殺をめぐる損害賠償訴訟で、名古屋地裁が最近、彼女が中学時代に受けたいじめと、四年後の自殺との因果関係を認める判断を示した。それを訴え続けてきた原告の母親の思いが実った形である
▼判決は、いじめの事実を認め、学校側がそれを「いたずら」としか見ていなかったとすれば、いじめ問題に対する認識不足だと断じた。中学校側は控訴したが、あらゆる学校に、いじめなど「あってはならない」の意識が強いのは確かだ。その“呪縛”が見えなくさせているかもしれぬ悲劇を思う
▼原発にも通じる。原発推進の旗の下、地震や津波で電源が喪失し、炉心溶融が起こるといった想定は不都合の極みだ。「あってはならない」の意識が、あり得るはずの危険性を見ないようにさせてきた気がする
▼もし、福島の事故のような危険性が“見えて”いたら、原発推進の前提など翻(ひるがえ)っただろう。そして、それは「あるかもしれない」という目で見ていたら見えたはずだ。
ひる‐がえ・す【翻す/飜す】 [動サ五(四)] 1 さっと裏返しにする。「手のひらを―・す」
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