｢空挺部隊の黄昏時の出撃を見届けたとき、裕子はやっぱりこの人たちの降りる瞬間をみとどけなくてはいけないなって思ったの。そこで、エイヤーっと時空間にジャンプしてみると、調度グライダーの3機編隊が眼の前にいたわ。イギリスの第6空挺師団の分遣隊みたいなの。スウォード海岸の後背地にあるオルヌ川の橋の近くに来た時、急に降下を始めたので、裕子もそのままついていくことにしたわ。｣

｢そして彼らはたそがれの空へ消えていったわ。１番機が飛び立った17：00ごろは百夜のせいかまだ真昼のようだったけど、約３時間後に最後のC47スカイトレインが飛び立ったときでもまだ黄昏時のような感じだったわ。でもイギリス海峡を越える頃はきっと真っ暗闇になってるでしょうね。真夜中に飛行機から飛び出して、みんなこの暗闇のなかに降下するのね。しかも嵐のような吹き降りの中を。｣

｢そして、昼下がりから夕方にかけて、彼らはノルマンディを目指して飛び立っていったの。約30名の隊員を載せたＣ７ダコタ輸送機1機が約1000機、イギリスの各地に散った空軍基地から飛び立っていったのよ。ジープや歩兵砲を載せたグライダーも沢山舞い上がったわ。｣

｢彼らは遂に飛行機へ乗り込んだは。だけど装備が重いから、一人じゃ起き上がれないし、ステップを上がるのも大変なの。主席小隊長のウインタース少尉が自分の小隊員を一人一人腕をとって起き上がらせてたわ。そしてお互い尻を押したりして飛行機へ詰め込んでたわ。映画で見るように颯爽と乗り込むってわけにはいかないのね。裕子も一緒に行きたいって言ったら、ウインタース少尉に遊びに行くんじゃないんだからって怒られちゃった。隊員の人たちは大歓迎だって言ってくれたけど、機内はぎゅうぎゅう詰めなんで、今回は遠慮することにしたわ。｣