こうして、ウォーカー中将が期待していた錦江の防御は、14日から16日にかけて相次いで崩壊し、北朝鮮軍はついに大田に迫った。

僕とデイジーは半長靴のリニアモーターを駆動させた。そのスピードは驚くばかりだ。デイジーの家からダッチハーバーまで、わずかな時間しかかからなかった。ダッチハーバーにはアメリカ太平洋艦隊が集結していた。イージス艦3隻、空母10隻、駆逐艦50隻、巡洋艦50隻である。空母にはFA18ホーネットとステルス戦闘機F22ラプター、B2ステルス爆撃機、B1爆撃機、B52爆撃機が搭載されていた。ざっと数えただけでも700機はある。これらの艦船と戦闘機を目の前にすると、攻撃をして帰りたいという誘惑にかられた。しかし残念ながら、武器も爆薬も持っていなかった。僕とデイジーは、波動モーターのスイッチを入れ、海に飛び込んだ。

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オーナー
劇団員一同

だが北朝鮮軍は、正面からの射撃で米軍を牽制する間に、側背から歩兵部隊を奇襲渡河させて後方に進出して来た。

デイジーは着替えるため、隣の部屋へ行った。しばらくすると、ステルス戦闘服に身を包んだデイジーが現れた。「胸の赤いボタンを押してください。するとステルス機能が働いて見えなくなります。また半長靴の横のボタンを押すと、リニアモーターが動きます。戦闘服の背中には波動モーターが装備されていますので、ベルトのボタンを押すと、波動モーターが働いて、水中を早く泳ぐことが出来ます。わかりますか？」「はい」二人は赤いステルスボタンを押した。お互いの姿が見えなくなった。しかし、声は普通に聞こえる。「それじゃ、デイジー、行きましょう」

僕と王妃はステルス潜水艦かぐやに戻ると、ワープルームへ行った。ワープルームは地球の形をしたカプセル状の部屋だった。僕はステルス戦闘服を着ると、バッグを持ってワープルームに入った。バッグの中にはデージーのステルス戦闘服が入っていた。王妃はワープルームのメインスイッチを入れた。僕は一瞬自分の身体が圧縮されるような感覚を覚えた。次の瞬間、僕はデイジーの家にいた。デイジーはびっくりしていた。「デイジー、迎えに来ました。すぐにこのステルス戦闘服を着て、僕と一緒に来て下さい」「わかりました」

「ワープルームを使えば、ダッチハーバーへ行くことは簡単だけれど、どうやってアッツ島に帰って来るの？」「ステルス戦闘服を着て、泳いで帰るしかないですね」「2000km以上あるのよ」「そうですね。かぐやがダッチハーバーへ向かう途中、僕とデイジーを拾い上げてください」「わかったわ。でも、二人がうまく見つかるかしら？」「大丈夫です。GPSを携帯して行きますから、スパイ衛星で探してください」話し合いの結果、ワープするしか方法がなさそうだった。そうと決まれば、決行は早い方がいい。僕と王妃はジーナの家を後にした。

7月13日、大邱に指令部を開設した米軍のウォーカー中将は、指揮権を発動した。だが、地上では北朝鮮軍の進撃が続いていた。米軍は錦江に架かる橋を爆破し、発見した川舟はすべて焼却した。

「難しいですね」「今夜かぐやでダッチハーバーへ救助に向かうためには、皇帝の許可がいるわ」「おそらく、皇帝は許可しないと思います。かぐやがアメリカの沿岸警備隊に発見されると、ダッチハーバーへの空爆が失敗する恐れがありますから」「そうね。どうしたらいいかしら」「王妃、かぐやのワープルームを使って、僕がデイジーの所へ行きます」

届きそだった未来
崩れゆく現実
綺麗な残像の中で
唇 噛みしめた
居心地良かったその全てが
数秒後
消えてしまう事なんて良くある
綺麗な物たちは
一瞬にして白黒となり
時など
止まる筈は無い
ｾﾋﾟｱ色の残り物たちを
何故か こんなに
愛惜しく掴む
掴み続ける
何が現実で
何を いま
失ったのかも記憶出来ない
呆気に取られ
止まった【時計】だけを睨む
数秒後
周り全ては
何ら変わらないと知る
伸ばしても
無駄と確信したのは
いつ？ だったのかすら
見えない錯覚
ｷﾗｷﾗ舞い散る現実
つい さっきまで
私は 私を見てた
見た筈だった
死んだ【時計】が
ｶﾁｯ
と
鈍い音を発したその時
二つ目の時が動き出す
気づいたのは
いつ？ だったろう
つい今さっきまでの
綺麗で鮮やかな残像の数々
頭の中で
鈍く 音を立てながら
過去と今
未来すらも
崩れ散る
何ひとつ 記憶出来ない機能だけが
この先を
ぼんやりと照らす