ユーラはふわりと空中へ浮き上がると、ミッソー中佐の背中にしがみついた。「ユーラ、よせよ。ミサの言うことをよく聞いているのか？」ミッソー中佐は満更でもなさそうな表情を浮かべて言った。「うん。聞いてるよ」「二人は見舞いに来たんだな」「そうだよ。ミッソー中佐殿も見舞いなの？」「ああ」ミッソー中佐はエントランスでユーラを下ろすと、ミサに言った。「ミサ、アンナに注意しろ。イージス艦あたごが攻撃されたのは、やはりアンナのマインド・ウェポンによるものだった」「本当なの？」「ああ。間違いない。当直士官の話では、突然舵が動かなくなったそうだ」

長野での任務を終えたミッソー中佐は、AH-64Dアパッチ・ロングボウヘリで自衛隊病院へ向かった。聖ピアス教団のヘリの攻撃を受け負傷した四人に会うためだった。弘人、麻里子、麻里子の兄、ハンネの森神社の神主の四人は、朝霞駐屯地の中の衛生隊で応急処置を受けた後、自衛隊病院へ搬送されていた。ミッソー中佐が自衛隊病院のヘリポートへ着陸して、病院のエントランスへ向かって歩いて行くと、駐車場からミサとユーラが歩いて来た。ユーラはミッソー中佐を見付けると、走り寄って来た。

1999年から調達を開始した、陸上自衛隊最新の自走榴弾砲。主砲口径は75式自走155mm榴弾砲と同じだが、砲身長は52口径となり、射程も延びている。また砲弾と装薬の装填が完全に自動化され、乗員数が75式の6名から4名にまで省力化されている。射撃統制装置は新野戦特科射撃指揮装置【新FADAC】とリンクできる高度なものとなっている。
●全備重量：40.0t●主要寸法：11.3×3.2×4.3m●最大速度：49.6km／h●エンジン：水冷4サイクル直列6気筒ディーゼル・出力600馬力●武装：155mm榴弾砲×1、12.7mm重機関銃M2×1●乗員：4名

「うギャア！」腕を撃ち抜かれた男の苦悶の叫びが上がった。「ダダッ！」ミッソー中佐はもう片方の腕も撃ち抜いた。チベット支援者グループと中国人留学生の乱闘は、たちまち収まった。彼らは天を仰いだ。ハンググライダーに乗ったミッソー中佐が、89式小銃を構えて、彼らの方へ飛んで来た。群衆は我先に逃げ出していた。ミッソー中佐は物足りないという表情を浮かべると、空へ向かって威嚇射撃を行った。聖火リレーを妨害した6人が警察官によって逮捕されたが、全員腕を撃ち抜かれていた。

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オーナー
劇団員一同

事件は卓球の福原 愛選手が走っている時に起こった。沿道にいた男が聖火に向かって突進して来た。男は「フリー チベット！フリー セックス！」と叫んだが、たちまち警察官に取り押さえられ、黙らせるために口の中に【キビ団子】を押し込まれた。男はチベット亡命政府の高官だった。その時、チベット支援グループの男が中国人留学生を殴り始めた。留学生の額は割れ、鮮血が飛び散った。ハンググライダーで飛行していたミッソー中佐は、その状況を見て取ると、89式小銃を構え、殴りかかった男の腕を撃ち抜いた。

「やはりそう思うか」善光寺中佐が言った。「インドにチベットの亡命政府があるのを見ても、ダライ・ラマはチベット独立をあきらめてはいないのは明白だ。国連の安全保障理事会では国連軍をチベットへ派遣することを検討しているらしいが、日本の自衛隊が行くべきだろうな」ミッソー中佐が言った「自衛隊が？ミッソー中佐、なぜなんだ？」善光寺中佐は目を丸くした。「それは日本も同じ仏教国だったからだ。チベット仏教のラサにキリスト教のアメリカ軍が行って見ろ。イラクと同じようになる」

イギリス、ドイツ、イタリアで共同開発された牽引式榴弾砲。日本では1983年からライセンス生産し、479門が調達されている。主に北部方面隊以外の各師団、旅団、混成団の特科連隊、特科隊、特科大隊に配備されている。砲架には補助動力装置を備えており、短距離なら自走できる。ロケット推進の噴進弾を使えば、射程は30kmに達する。
●全備重量：9.6t●全長：9.8m（移動時）、12.4m（射撃時）●砲身長：6.022m（39口径）●操作人員：9名

長野市内ではオリンピックの聖火ランナーが走り続けていた。ミッソー中佐は前日、AH-64Dアパッチ・ロングボウで長野駐屯地へ着陸すると、その夜は駐屯地内の幹部隊舎に宿泊することにした。長野駐屯地にはミッソー中佐と同期入隊の善光寺中佐がいた。二人は駐屯地内にある将校クラブで会った。「ミッソー中佐、久しぶりだな」「善光寺中佐も元気そうだな」「ミッソー中佐は今回のチベットのラサの暴動をどう見る？」「あれは独立運動だよ。ダライ・ラマを排除しないかぎり抵抗運動は終わらないだろう」

ミッソー中佐（防衛省テロ特命課のエース隊員。バリ島から帰国後、聖ピアス教団の潜入を命じられる）

ミサ（ミッソー中佐の恋人。ミッソー中佐が龍に飲まれて死亡したと思っている）

ユキ（ミサの妹。現在は二児の母親である）

押田天光（イリュージョニスト。ミッソー中佐に頼まれて龍神池でミッソー中佐が龍に飲まれるイリュージョンをミサに見せる）

工藤大将（防衛省大臣。ミッソー中佐に聖ピアス教団へ潜入を命じる。タカ派の国会議員で工藤派の代表）

南大尉（ミッソー中佐の教え子で女性自衛官ワック隊長）

橘警部（公安警察の警部で工藤大臣の運転手。トーマスに内部情報を漏らす）

綾瀬菜緒（公安警察の警部。聖ピアス教団に潜入するが行方不明になる）

加藤中佐（埼玉入間基地司令）

トーマス（聖ピアス教団の教祖。国家テロを計画していて、アルカイダとも関係を持つ。催眠術を使う）

アンナ（教団のナンバー2でトーマスの姉。超能力者）

ユーラ（ハンネの森の番人。アンナの部下で、まだ小学生の女の子だが、不思議な魔法を使う。両親を教団に殺害される）

林プラント長（毒ガス製造の責任者）

森プラント長（炭そ菌製造の責任者）

弘人（現在のミサの恋人）

純子（ミサに聖ピアス教団へ入ることを熱心にすすめる）

隆志（純子の恋人。二人はラブラブ）

麻里子（トーマスの命令でミサの食事に薬物を混入する）

デビル中佐（横須賀にある自衛隊少年学校校長。ミッソー中佐とは同期入隊である。いじめをした生徒を受け入れる）

西大佐（かもめ島の指揮官。ハッカー達に死のサバイバルツアーを体験させる）

隼大佐（朝霞駐屯地司令）

みう（毎時新聞の女性記者）

ケンジ（東軍のリーダー）

京子（西軍のリーダー）

西島軍曹（スクール・アーミー。京子とラブラブになる）

ダンディ中佐（防衛研究所所長）

エイジ（東軍ケンジの斥候）

セイジ（東軍ケンジの第2斥候）

陽子（西軍京子の斥候）

みさき（若い女性信者。弘人に飛行船のある場所を教える）

透（トンネルの入口を警備している信者。みさきの恋人）

アパッチ少尉（戦闘ヘリアパッチの操縦士）

入江少佐(陸上自衛隊朝霞駐屯地の第1中隊長)


鬼道大佐（陸上自衛隊朝霞駐屯地の連隊長）

緑豆大臣（環境大臣及び鯨肉愛好会会長）

犬塚少佐（陸上自衛隊朝霞駐屯地の第2中隊長）

槍草【やりぐさ】議員（最大野党、横槍党の次期防衛大臣）

貫通党首（横槍党の党首）

暗闇少尉（あたごの当直士官）