透はまもなく山道でマイクロバスを発見した。「いたぞ！弘人！覚悟しろ！」透はBGM-71Aミサイルを発射した。ミサイルはマイクロバスをかすめて山肌を深くえぐった。マイクロバスはガードレールに激突して停止した。マイクロバスを先導していた麻里子の兄は、それを見てジープを急停車させた。そしてマイクロバスに駆け寄った。「みんな！早く逃げて！」麻里子は、すっかり目を覚ました子供達を誘導して、ドアから外へ逃がした。子供達は恐怖の叫び声を上げながら、山道を走った。「逃がすものか」透は上空でホバリング態勢を維持しながら、20ミリガトリング砲を子供達に向け乱射した。

透は超低空でヘリを操縦して、マイクロバスを追跡した。余り高く飛行すると、マイクロバスを見逃す恐れがあったからだ。ハンネの森を抜け、神社の上空を飛び越すと山道へ出た。平地の国道までは曲がりくねった山道を進まなければならない。キャンプ場までは操縦に注意を払わなければならなかった。一方、朝霞駐屯地から戦闘ヘリAH-64Dアパッチ・ロングボウが二機、ハンネの森を目指して飛び立った。アパッチは最大速度365kmで救援に向かった。だがアパッチの操縦士は、教団のヘリがマイクロバスを追跡しているのを知らなかった。どちらが先にマイクロバスを発見するか、時間との戦いだった。

「当然、隆志の所が先だよね。ミサ…」純子が言った。「ミサは私に隆志を助けると約束してくれたはずだわ。隆志はすぐそこにいるのよ。隆志を先に救出するべきだわ。南大尉が言うように、今からマイクロバスを追い掛けてもヘリの方が先に追い付くに決まってるわ。それに子供達を保護するために、朝霞駐屯地から迎えのヘリが来るはずよ」「純子の言う事も一理あるね」ユキが言った。「南大尉、わかりました。隆志さんの救出に向かいましょう」ミサは南大尉に言った。

「おそらくそうでしょうね」南大尉は落ち着き払って言った。「だったら子供達を助けに行かないと」「ミサさん、それは出来ないわ」「どうして？」「まず一番目の理由として、ヘリのスピードに追い付けないという点よ。二番目の理由は、テントにいる隆志を迎えに行かなければならないと言うことよ」「それじゃ子供達を見殺しにするの？」「しかたないわ。朝霞駐屯地から発進した二機のAH-64Dアパッチ・ロングボウが間に合ってくれるといいんだけど」確かに南大尉の言う通りだった。マイクロバスを追い掛けるか隆志の救出に向かうか、ミサは二者択一を求められていた。

皆さんへ
今年も沢山の出会いが有った事でしょう…
2007年、心に残った出会いが有りましたら書き込みお願いします☆
一人に限りません

私は…
音楽ﾗｲﾀｰ鹿野氏
ｽﾀｲﾘｽﾄ森氏
…です
二人とも、まだ具体化はして居ませんが、とても良い出会いでした。
暖かく、優しさ溢れる気さくな方達です

透は国防色のジープが自衛隊の車輌だと認識した。誰が運転しているのからわからなかったが、ミッソー中佐の仲間に違いなかった。発射された20ミリ弾丸はジープのタイヤを貫通していた。南大尉はジープから下りた。上空のヘリはそれ以上攻撃することなく、ハンネの森神社の方角へ飛び去って行った。「みんなもう大丈夫よ。タイヤをやられたわ。スペアタイヤと交換するから手伝ってちょうだい」南大尉は三人に言った。スペアタイヤの交換が終わると、ミサが心配そうに言った。「南大尉、子供達は大丈夫かしら？今のヘリは、子供達の乗っているマイクロバスを追っているのじゃないかしら」

ミッソー中佐（防衛省テロ特命課のエース隊員。バリ島から帰国後、聖ピアス教団の潜入を命じられる）

ミサ（ミッソー中佐の恋人。ミッソー中佐が龍に飲まれて死亡したと思っている）

ユキ（ミサの妹。現在は二児の母親である）

押田天光（イリュージョニスト。ミッソー中佐に頼まれて龍神池でミッソー中佐が龍に飲まれるイリュージョンをミサに見せる）

工藤大将（防衛省大臣。ミッソー中佐に聖ピアス教団へ潜入を命じる。タカ派の国会議員で工藤派の代表）

南大尉（ミッソー中佐の教え子で女性自衛官ワック隊長）

橘警部（公安警察の警部で工藤大臣の運転手。トーマスに内部情報を漏らす）

綾瀬菜緒（公安警察の警部。聖ピアス教団に潜入するが行方不明になる）

加藤中佐（埼玉入間基地司令）

トーマス（聖ピアス教団の教祖。国家テロを計画していて、アルカイダとも関係を持つ。催眠術を使う）

アンナ（教団のナンバー2でトーマスの姉。超能力者）

ユーラ（ハンネの森の番人。アンナの部下で、まだ小学生の女の子だが、不思議な魔法を使う。両親を教団に殺害される）

林プラント長（毒ガス製造の責任者）

森プラント長（炭そ菌製造の責任者）

弘人（現在のミサの恋人）

純子（ミサに聖ピアス教団へ入ることを熱心にすすめる）

隆志（純子の恋人。二人はラブラブ）

麻里子（トーマスの命令でミサの食事に薬物を混入する）

デビル中佐（横須賀にある自衛隊少年学校校長。ミッソー中佐とは同期入隊である。いじめをした生徒を受け入れる）

西大佐（かもめ島の指揮官。ハッカー達に死のサバイバルツアーを体験させる）

隼大佐（朝霞駐屯地司令）

みう（毎時新聞の女性記者）

ケンジ（東軍のリーダー）

京子（西軍のリーダー）

西島軍曹（スクール・アーミー。京子とラブラブになる）

ダンディ中佐（防衛研究所所長）

エイジ（東軍ケンジの斥候）

セイジ（東軍ケンジの第2斥候）

陽子（西軍京子の斥候）

みさき（若い女性信者。弘人に飛行船のある場所を教える）

透（トンネルの入口を警備している信者。みさきの恋人）

「純子！どこにいるんだ！」「隆志！無事だったのね？隆志こそどこにいるの？」「ハンネの森の中のテントだよ。ミッソー中佐が純子がここにいる事を教えてくれたんだ」「メモを見てくれたのね。私はジープの中よ。もうすぐそこへ行くから待っていてね」「わかった。純子、早く会いたい」「隆志、私も早く会いたい。愛してるわ」その時だった。透の乗っている対戦車ヘリAH-1Sの3砲身ガトリングガンが火を噴いて弾丸が発射された。「危ない！」南大尉はあわててハンドルを切った。

隆志はハンネの森をさ迷っていた。真っ暗な森の中をミッソー中佐に教えられた場所を探して、アンナのジープで走り回った。上空を飛んで来るヘリに思わず木陰に身を隠した。「あれは教団のヘリだな。どこへ行くのだろう」ヘリはハンネの森神社の方向へ飛び去って行った。隆志はようやく巧妙に隠蔽されたテントを発見した。ジープを下りテントの中に入った。だがそこには純子の姿はなかった。テーブルの上にメモがあった。それにはみんなと一緒に、純子はハンネの森神社へ行くと書かれていた。隆志は携帯で純子を呼び出した。

「弘人の奴ぶっ殺してやる」透はAH-1Sヒューイコブラを操縦しながら、赤外線モニターによる夜間飛行を実施していた。そのため夜間でも昼間と同じくらいの明るさで飛行する事が出来る。AH-1Sヒューイコブラは元々は二人乗りで、射撃係と操縦士の座席は前後に分かれている。しかし教団のヘリは改造がなされていて、操縦士が射撃も出来るようにしてあった。透がしばらく飛行を続けていると、ハンネの森の中の道路を走って来る国防色のジープに出会った。そのジープには南大尉、ミサ、ユキ、純子の四人が乗っていた。