六甲山ホテル事件9
午後4時、僕達は六甲山へ向けてバスで出発した。バスは神戸港をはるか眼下に望みながら、山上へと上って行った。山上に近づくにつれ、林のあちらこちらに赤や青や緑のバンガローが見え隠れした。バスが六甲山ホテルの前に止まると、僕はリュックを持って降りた。フロントでキーを受け取ると、エレベーターで部屋へ向かった。部屋はきちんと整頓されていて、たいそう気にいった。南側には大きな窓があり、涼しそうな水色のカーテンがかかっていた。夕食の時間までにはまだ少し時間があったので、僕はベッドに寝そべると、シムノンの『オランダの犯罪』を読むことにした。すると、ドアをノックする音がして、益岡さんが入って来た。