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  • from: 千田さん

    2017年07月04日 22時11分04秒

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    ヘルメス文書「ポイマンドレース(日本語訳)」

    「ポイマンドレース」として知られる第ニ書 (1)
    かつて無い程に
    私の想いが《もの》へと
    強く駆り立てられた時、
    私の洞察は昂まっていった。
    それはまるで
    酷く眠気を催した時や、
    食事のあと食欲が満たされた時や、
    重労働で疲れた時のように、
    私の身体全体の感覚はすっかり停止したのだった。
    すると、度外れて大きな身の丈の、
    巨大で偉大な神像が現れ、
    私を名指して呼んで、こんな話を始めた。
    「お前は何を聞き、何を観たいのか?
    そして何を悟り、学び、何を認識したいのか!」
    それで私は聞いた。
    「貴方は誰ですか?」
    「私は・・・」
    彼の曰く
    「ポイマンドレース、叡智の偉大な支配者。
    最も力強き絶対の皇帝なり。
    お前の想いの程を私は分かっている。
    私は何時も、お前と共にあるのだから。」
    私はこう言った。
    「私は学びたいのです。《もの》の何たるかを。
    そして識りたいのです。自然界の万物を。
    そして神を認識したいのです。」
    「いかにしてか?」と彼は言う。
    私は答えた。
    「貴方が教えて下されば、
    どんなに嬉しい事でしょう。」
    すると彼は
    「お前の学びたい事を、
    お前の叡智の中に、しっかりと保つのだ。
    私がお前に、教えてあげよう。」

    (2)-1

    こう言うや否や、彼は忽ち形姿を変えた。
    すると、一直線に、瞬く間に、
    全てのものが私の前に開けてきたのである。
    私の前には、途轍もない光景があった。
    全てのものは輝いており、
    甘美で、とても晴れやかであった。
    その眺めに、私は素晴らしく喜んだ。
    けれども、しばらくするとそこには、
    ところどころ暗黒が現れ始め、曲りくねって崩れ、
    恐ろしく醜悪なものに変わっていった。
    私にはそれが、ある種湿ったどろどろの自然の、
    何とも言えず不安をかきたてるものに思えた。
    それは、炎でも燃えているかのように、
    もうもうと煙を吐いた。
    さらにそこからは、
    言葉にならない声が酷くもの悲しく、
    もれ聞こえていた。
    しかしそこには、
    はっきりとは聞こえないが、別の声もあった。
    それはどうやら、光の中からやってくるらしい。
    するとその光から、
    ある神聖な言葉がやってきて自然物と結びついた。
    純粋無垢の炎が、
    湿ったどろどろの自然からほとばしり出た。
    「火」はとても軽やかで、
    光を凌ぐ程に、鋭く活発な動きを見せた。
    「風」は、これもまた軽快であったので、
    火の精霊の後からついていった。
    「地」と「水」より生じて昇ったので、
    それは「火」に引っ掛かって
    それを頼っているようだった。
    一方で「地」と「水」は、
    お互いに混ざり合ってそこに留まっており、
    「地」は「水」と見分けがつかなかった。
    けれども、それらは動いていた。
    精霊の言葉がそれらを運んでいた。
    その時ポイマンドレースが私に言った。
    「この有様が何だか分かるか? 
    その意味する所が?」
    「ええ、認識したいのです。」
    すると彼はこう言った。
    「私はあの光なのだ。
    即ち叡智であり、お前の神であるともいえる。
    あの、暗黒から現れた、
    湿ったどろどろの自然よりも前から在る者で、
    叡智より出でし輝く光の言葉は、神の息子なのだ。」
    「それはいったい、どういう事ですか?」と私は言った。
    「そうさな」
    彼は応えて
    「かく理解せよ。
    お前の中で観そして聞く事は、
    絶対君主の言葉であり、
    お前の中の叡智は、父なる神である。
    どちらも互いに分かたれることはない。
    これらの和合こそは、生命である。」
    「あなたに感謝いたします。」
    ポイマンドレースは
    「けれども、
    お前の叡智の光をよくよくとらえて、
    それをこそ認識せよ。」と言う。
    彼はこのように言い、
    長い事断固とした凝視を私に投げかけた。
    それで私は彼の偉大なる形姿を前に
    身震いする思いだった。
    しかし彼が頷いたので、
    私は自らの叡智の中に観相した。
    群れつどう光そして、
    じつに広大無辺に広がる世界の有様。
    そして「火」は、
    もっとも偉大な力の中に包括されて制御され、
    自分の位置を保つように導かれていた。
    ポイマンドレースの言葉の通りに、
    こういうものを認識し、私は大いに驚愕した。
    彼は再び私に言う。
    「お前はその叡智の中に、
    原形のかたちを観たのだ。
    それは遥か太古以前、
    無限の始まりよりも前のものだ。」
    ポイマンドレースは
    このように私に言ったのである。
    「しかし、どこから」
    私は問うた
    「または何者から、
    自然の元素は造られたのですか?」
    ポイマンドレースの言うには、
    「神の意志と熟慮によってである。
    意志はことばを受けて、
    理想界の美しき世界を見ては
    これを模倣したのだ。
    元素即ち生命の種子。
    あるいは、自らの霊魂によって。
    かくして世界は造られた。
    また、叡智たる神は、
    男でも女でもあり生命そして光であるが故に、
    言葉によって、
    もう一つの叡智たる造物主を生み出したのだ。
    それは「火」と「霊」の神であり、
    七人の統治者を形成した。
    彼らはその丸い領域の中に
    実体的な世界を包んでいる。
    それぞれの支配の及ぶ所は、
    破滅の運命、あるいは神意の必然性と呼ばれる。
    神のことばは、産まれるや否や直ちに
    深みに沈む神の諸元素より飛び出してゆき、
    純粋無垢の自然物質へと入っていった。
    そして同質であるが故に、叡智たる造物主と結びついた。
    かくして、堕ちてゆく自然の諸元素の方は、捨て置かれた。
    存在のただ一つの原動力である道義が、
    そこには無かった為である。
    しかし、言葉と共に在る叡智、
    即ち造物主は、世界の円環を支配下に置きつつ
    己が周囲に回転させて、
    自らのつくりだしたものたちを、
    車輪のごとくに丸く輪転させ、
    そして永劫の初めより無限の終末まで、
    回り続けるままにした。
    それらは常に、
    終わりよりまた始まる永劫回帰なのである。
    そしてこれらの循環と経巡りは、
    叡智の意図するままに、
    下層から生まれた諸元素から、
    道義の与えられない、
    分別なき獣のようなものども、
    即ち「空」には飛ぶものを、
    即ち「水」には泳ぐものを、齎した。
    一方で、「地」と「水」は
    互いに分かたれて、
    叡智の意図するままに、
    「地」はそれ自身が
    胎内に宿していた生き物を産み出した。
    四足の獣、地を這うもの、
    獰猛な野生、従順な家畜などがそれである。

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