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神話読書会〜女神さまがみてる〜

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  • from: エリスさん

    2008年10月31日 14時49分55秒

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    「泉が銀色に輝く・43」
     「シニアポネーをですって!? だめよ!! 許さないわ!」
     「そうはいきませんよ、姉上。あのことを表沙汰にしたくはないでしょう」
     恐ろしいことを言われて、声も出せないでいると、アポローンは尚も続けた。
     「姉上をお慕いしてから、もうどれぐらいになるのか。数えるのも虚しくなってきました。あなたを手に入れることができないのなら、せめて身代わりになれる娘をと探していたのですが、まさにあの娘は打ってつけ。姉上、シニアポネーを譲っていただけますね」
     「でも、でもあの娘は……」
     「一年前から、カナトスの泉の番人が気狂いになっているそうですね」
     アルテミスの表情から、血の気が引いていく……。
     「カナトスの泉と言えば、王后が持っている泉の中でも特に神秘の泉。中に入ったものを純潔に戻すとか。王后が何度も若返っているのは、それのおかげだそうですよ」
     「だから……なんだと言うの?」
     「カナトスの泉の番人は、王后の末娘。自分の愛しい娘を狂わせた者が誰だか分かれば、あの御気性ですから。……ねェ? 姉上」
     「……私を脅すの? 自分だって同罪でしょう!!」
     「あの娘を、いえ、あなたを手に入れるためなら、どんな罪だって被りますよ。……明日、迎えの者を寄越します。支度をさせておいてください」
     アポローンが立ち去ろうとすると、アルテミスは慌てて呼び止めた。
     「シニアは……あの子は!」
     「父と娘の結婚……昔はざらにあったことですよ」
     そこまで気付いていながら、それでもシニアポネーを……アルテミスは絶望感を覚えて、床に膝を付いた。
     しかし、これが最善の策なのかもしれない。アポローンは自分のことを諦めてくれるだろうし、シニアポネーにとっても男神の正妻になれれば、この先なんの不自由もないのだ。
     『でも、シニアの気持ちも考えてやらなくては……いいえ。これは主君の命令として、シニアには受け入れなければならない義務がある。そういうことよ。そういうことにしてしまうのよ!』
     アルテミスは強くそう思いながら突然、思い出した。
     「我が妹を――マリーターを、元に戻してくれ」
     先刻の宴で、エリス女神に言われた言葉だ。彼女は二人きりになれるようにと、アルテミスを庭先に連れ出して、そう言ったのである。
     「私を誤魔化そうとしても無駄だ。覚えているだろう? 私は、以前あなたに手を貸している。だから分かったのだ。マリーターをあんなにした犯人も、その経緯も」
     アルテミスはその時、何も言い返せなかった。
     「誰にも悟られないように、アルゴス社殿に来てくれ。そして、人知れずマリーターを元に戻してくれればいい。あとは、私がどうとでもするから」
     「……それは……できません」
     そう答えると、エリスはアルテミスの肩を強く握ってきた。
     「わかっているのか? 私はいざとなったら、このことを王后陛下に申し上げることもできるのだぞ。それでもそれをしなかったのは、表沙汰になれば、私たちの大切な友人が傷つくことになるからだッ」
     それが誰なのか、アルテミスにも良くわかっている。
     「マリーターは私にとって、命を賭けて愛した妻の妹であり、養子縁組によって更に姉妹となった、大事な者なのだ。その者が苦しんでいるのに、それでもあなたのことを庇っているのだ。それを分かってくれ」
     そう言って大広間へと戻っていくエリスを見送ったアルテミスは、彼女が戻ってきたことで笑顔を見せた精霊を、見ることができた。
     銀髪の精霊――シニアポネー。自分はいつも、この娘を見る時、複雑な思いにかられてしまう。
     それもこれも、すべては……。
     アルテミスは、気が狂ったように慟哭する自分を、どうすることもできなかった。


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  • from: エリスさん

    2008年10月31日 14時16分41秒

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    「泉が銀色に輝く・42」


     宴が終わり、そのままエペソス社殿で宿直となるミレウーサは、シニアポネーが帰る際に、明日の昼食を弁当にして届けてくれるように頼んだ。そして、向こうの方でケレーンが馬上の人となっているのに気づくと、妹の耳元でこう囁いた。
     「今夜はほどほどにね」
     「もう、姉さんったら……」
     シニアポネーは、エリスが口笛で呼び寄せた馬で、途中まで送ってもらうことになった。その後ろをケレーンが離れて着いてきた。
     エウボイア島の近くまで来たところで、他の神々の馬車もいなくなったことを確認して、エリスはシニアポネーをケレーンに託した。二人は女神に重々お礼を言って、同じ馬に乗って帰った。
     二人はようやく、馬上で唇を交わした。そのままケレーンはシニアポネーをしっかりと自分にしがみつかせると、馬の速度を上げた。
     シニアポネーの家に着くと、馬を小屋に入れて、二人は川へと行って身を清めることにした。月夜ということもあって、辺りは暗くとも何も見えないということはなかった。
     服を脱いだ恋人を見て、ケレーンはやっぱり心配になった。最後に会った時より、確実に痩せてしまって、腕を上げると肋骨が見えるぐらいだったのだ。
     「ねえ、やっぱり病気か何かしただろう? その痩せ方、変だよ」
     するとシニアポネーは楽しそうに笑って、川の中へ駆けて行き、振り返った。
     「良く見て。もっと他のこと、気付かない?」
     両腕を広げて見せるシニアポネーは、月に照らされて、本当に綺麗だった。そのまま見惚れてしまいそうだったが、ケレーンはある事に気づいた。
     他の魂の波動がある。彼女の内部に、何かいる……丸く、白色の光を放っているように見える。
     それがなんなのか気づいた彼は、彼女のもとへ駆け寄ると、しっかりと抱きしめた。
     「本当に!? 本当に、僕たちの?」
     「ええ、あなた! あなたの子供よ!」
     「シニア! シニア!」
     ケレーンは嬉しさのあまり、シニアポネーを抱きかかえたまま、グルグルと回った。しかしこれは危ないので、シニアポネーがすぐにやめさせた。それでも、二人とも笑いがなかなか止まらなかった。
     一息つくと、ケレーンは言った。
     「君様に……アポローン様に、お願いしてみるよ。君様とアルテミス様はご姉弟だから、きっとお許しをもらえると思う。大丈夫、君様は理解がある方なんだ」
     「ヘーラー様も、任せてくれとおっしゃってくださったわ。私、こんなにも守られてばかりで、本当にいいのかしら」
     「それだけ、みんなが君のことを好きなんだよ。誇りに思っていい」
     「うん……そうね」
     二人は、月が雲に隠れたのを合図にしたかのように、互いに抱きしめあった。


     一方、エペソス社殿ではアポローンが泊まりに来ていた。アルテミスはいつもより多くの護衛を部屋の周りに付けて、弟と会った。
     「あなたの寝室は他に用意したのだから、話が終わったら、そちらへ行ってね」
     「わかってますよ、姉上。……話というのは、以前から申し入れていた、姉上の精霊をいただく話なのですが」
     「お決まりになったの?」
     「はい。あの銀髪の精霊を」
     女神は驚いて、手に持っていた杯を落としてしまった。

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  • from: エリスさん

    2008年10月30日 19時25分21秒

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    「Re:2サークル共通 「ただいまです!」」
     病院から帰ってきた後、今は兄と一緒に「げんしけん」を見ながら夕飯を終えたところです。

     なんで病院に行ったか。
     覚えてます? 去年の今頃。我が家の猫が兄弟喧嘩を始めて、仲裁に入った私が大怪我したこと。

     「どうしたんですか、それ!?」

     治療のために包帯を巻かれ、しかもその上に、薬剤が染みだしてこないようにと綿の入ったシートを貼られ、上着の袖が通せないぐらい分厚くなってしまった私の腕を見て、さすがのあの人も絶句したもんだった。

     この時、破傷風の予防接種を受けた。
     飼い猫だから細菌は持っていないだろうけど、予防のために、ということで。
     接種は三回受けなければならず、今日がそのラストの三回目だったわけだ。
     私が予防接種を受けに行くことを、兄に言ったところ、兄は公太を捕まえて、

     「もう公ちゃんは、どうしてお姉ちゃんに噛み付いたりしたの!」(公太は母が、私の弟に、と拾ってきた猫です)
     「まあまあ、お兄ちゃん。それも今回で完璧に治るんだから」
     本当は公太の歯形が残ってるんだけど……。

     あれから公太と福は、二度と喧嘩をしないようにと、同じ時間にケージ(猫小屋)から出さないようにしてます。
     その後、公太は姫と結婚し、赤ちゃんが生まれて大家族になって――なんだかんだで、もう一年経ったんですね。
     二度とあんな大怪我はしたくないものです。

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  • from: エリスさん

    2008年10月30日 14時23分45秒

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    2サークル共通 「聖徳太子はいなかった!?って、本当ですか! エリスさん!」

     最近職場の同僚から聞かれた言葉を、そのままタイトルにしてみました。

     というわけで、小説アップは予定通り明日やりますが、今日は病院に行くことになっていて、午後の診察時間まで時間が空いてしまったのでネットカフェで時間をつぶしております。
     その間、この質問に対する答えを書いておきましょう。
     まあ、ネットで『ウィキペディア(Wikipedia)』を見ればすぐに分かることなんですが、それじゃ同僚たちは納得しないでしょうから。そいでもって、みんなこのサークル見てるし(^_^;)

     その問いが出されたとき、私は、
     「まあ、その解釈は間違いじゃないんだよね」
     と答えました。当然「なんで!?」と聞き返されました。
     私と一歳しか違わない人は「お札の顔って言ったら<聖徳太子>って答えるぐらい、私たちにとったら身近な人物が、実在しないってことがあっていいの????」と驚いていました。――まあ、無理はない。

     最近はこの問題が書籍にもなっていて、私が見ているテレビ番組でも「ただいま調査中!」と予告している。最終的にどうゆう答えが出されるか分りませんが、とりあえず今の時点で私が説明できることは、以下の通りです。


     聖徳太子の本名は厩戸皇子(うまやどのみこ)。その名が命名された理由として伝わっている話としては、母親の穴穂部間人皇女(あなほべのはしひとのひめみこ)が厩(馬小屋)の前で産気づいたからだ、という、なんともイエス・キリストの生誕伝説そっくりな話が伝わっています。――ここから発展して、実は聖徳太子はクリスチャンだったんじゃないかっていう憶測まで飛んでいます。
     そしてまたの名を上宮王(かみつみやのみこ)ともいいます。これは皇居の中の「上宮(かみつみや)」と呼ばれるところで独身時代を過ごしていたかららしいですね。
     あとは豊聡耳皇子(とよとみみのみこ)。「十人が同時にしゃべった言葉をすべて聞き取った」という伝説は、おそらくこの名からきています。
     いろいろな別名を持っている厩戸皇子ですが、実は生前「聖徳太子」と呼ばれていたことは一度もありません。これは死後につけられた、いわば愛称だったんです。平安時代にはもう定着していた愛称ですが、奈良時代より前ぐらいならまだ「上宮王」のが一般的でした。

     つまり、愛称をつけられた厩戸皇子自身はまったく知らない名なので、
     「聖徳太子はいなかった、という解釈は間違いではない」
     と、私は答えたんです。
     実際、今の歴史の教科書では同様の理由から、それまで「聖徳太子」と記載していたところを「厩戸皇子(聖徳太子)」という記載に変えているそうです。
     また、歴史研究家の人たちが調べたところによると、日本書紀に書かれている聖徳太子の実績は、そのまますべて「厩戸皇子の実績」にはならないらしい。日本書紀を編纂した藤原不比等や、それ以前に「国の歴史書」の編纂を命じた歴代の天皇の思惑により、飛鳥時代のヒーローを作り出さなければならなくなったらしく、そのモデルとして厩戸皇子を使った――ということらしい。まだまだ憶測の域を出ない話なんだけどね。
     
      厩戸皇子は間違いなく実在する。
      けれど、私たちが知っている超天才の聖徳太子は、厩戸皇子をモデルとして格好よく色づけされた偶像。
      ゆえに「聖徳太子は実在しなかった」という言い方もできる。

     これが今の私に言える解説です。
     

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  • from: エリスさん

    2008年10月24日 13時43分08秒

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    「泉が銀色に輝く・41」
     催しもひと段落ついたころ、普通の体ではないシニアポネーは酒に当てられたのか、頬が火照っててきてしまった。
     「どうした? シニア。気分が悪くなったのか?」
     事情を知っているエリスが声をかけると、
     「いいえ、大丈夫です」
     「無理をするな。母君も心配そうにしていらっしゃる」
     見ると、ゼウスと共に玉座にいるヘーラーが、じっとこちらを見ていた。
     「風にあたりに行こう。私も少し疲れた」
     「はい、エリス様」
     エリスはシニアポネーの肩に手を置いて、庭園へと連れ出した。途中、彼女たちのことを見ていたケレーンと目が合って、エリスは微笑んで見せると、ついて来いと目配せをした。
     「さあ、ここがよい。アイガイアの海(エーゲ海)がよく見える」
     エリスはそう言って、両手で自身の髪を後ろに払った――夜風に靡いて、一瞬であたりがラベンダーの匂いに包まれた。
     それだけで、シニアポネーの気分も楽になった。
     「ありがとうございます、エリス様」
     シニアポネーが言うと、エリスは微笑み、
     「あとは彼に任せるとするかな」
     と、後ろを振り返った。
     ケレーンがいた。エリスは彼の方へ行くと、背中を押して、シニアポネーの方へ行かせた。そして自身はそのまま、社殿へも戻らずに、どこかへ行ってしまった。
     二人はそんな女神の背中に、お辞儀をして見送った。
     「……久しぶり」
     「お久しぶりです、あなた」
     二人は、誰が見ているか分らないので、握手するだけにとどめた。
     「少し、痩せた?」
     とケレーンが聞くと、シニアポネーはクスクスッと笑って、言った。
     「そのうち、嫌でも太るわ」
     「え?」
     「詳しいことは、後で話してあげる」
     「じゃあ、今晩行っても、いいの?」
     「大丈夫よ。姉は今晩、エペソス社殿に宿直だから、私だけだもの」
     「そう! ……じゃあ、また後でね」
     「ええ、また」
     ケレーンが社殿へ戻って行くと、入れ違いにエリスが木の茂みから出てきた。どうやら二人の邪魔にならないように、見張りをしてくれていたらしい。
     「もういいのか?」
     とエリスが聞くと、
     「ええ。今夜、会う約束を致しました」
     「そうか。じゃあ、私たちも戻るとしよう」
     自分は守られている。それはとても有難いことだけれども、恐れ多いことだった。こんなに甘えていては、いつか罰が下るのではないかと、シニアポネーはふと不安に思った。


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  • from: エリスさん

    2008年10月24日 12時30分34秒

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    「泉が銀色に輝く・40」
     アルゴス社殿でヘーラー達と合流し、ヘーラーの馬車にみんなで乗って、オリュンポス山頂へと向かう。
     宴はもう始まっていた。オリュンポス十二柱はもちろん、冥界の神々、水域の神々も招かれての、盛大なものだった。
     ケレーンも当然来ていたが、ラリウスと一緒にアポローンに付き従っていて、お互い気がついても声も掛けられなかった。
     そして、舞楽が始まった。
     ヘーラーの姫御子の中でも舞踊の名手であるヘーベーが、艶やかに舞ってみせる。
     けれどシニアポネーには、キタラを弾いているケレーンしか見えてはいなかった。ケレーンも、少しでも愛しい人に聞こえるように、と思いながら弾いていた。
     アポローンは自分の指導の成果に満足して、ウンウンと頷きながら、楽隊から客たちの方へと視線を向けた。
     その時、一際(ひときわ)目立つ銀髪の娘を見つけた。
     そこに、ある人の面影を見出す。
     『まさか、あの娘は……』
     そばにはエリスやエイレイテュイアがいて、その娘に親しげに話しかけ、娘もそれに答えている。王后陛下の末娘は病だと聞いているから、それではあるまい。
     舞楽が終わってから、アポローンは異母兄弟であるアレースとヘーパイストスのところへ行って、真相を確かめた。
     「君たちの姉君と一緒にいる、去年の宴で王后陛下が着ていたキトンを着ているあね娘は誰だい? 見たこともない女神だが」
     なのでアレースは、
     「女神じゃないよ、精霊(ニンフ)だ」と答えた。
     「精霊? そうは見えないが」
     「本人にそう言っちゃ駄目だよ」と、ヘーパイストスも言った。「だいぶそのことを気にしているみたいだから」
     「君、本当に彼女のことを知らないの?」
     と、アレースは言った。「彼女――シニアポネーは、君の姉君の乳母子(めのとご)だよ」
     「え!?」
     「もっとも、森の番人だけどね」と、ヘーパイストスも言った。「滅多にエペソス社殿にも上がらないと言ってたな。森の管理と、アルテミス殿が狩りに出るときにお供をしているそうだ」
     「へェ………そう……」
     アポローンは改めて銀髪の娘――シニアポネーのことを眺めた。
     『姉上の乳母――メルクーターが産んだもう一人の娘とは、あの子のことだったのか。……なるほどな……』

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  • from: エリスさん

    2008年10月17日 16時04分06秒

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    「泉が銀色に輝く・39」
     シニアポネーも家事を終え、日課である森の見回りも済ませると、夕方ぐらいから出掛ける支度を始めた。
     ヘーラーから下賜された空色のキトンを纏い、それにあったフィビュラを肩に留める。そして薄く化粧をすると、女神と見まごう程に綺麗になった。実際、自分から精霊だと名乗らなければ、誰もが誤解するだろう。
     エリスが迎えにきたのは、すっかり支度を終えた時だった。
     「母君の馬車で、みんな一緒に乗って行くのだ。そなたもな」
     エリスの馬に一緒に乗って、アルゴス社殿まで行く途中、シニアポネーはヘーラーの真意を聞いた。
     「マリーターが病にかかったことで、そなたの招待も危ぶまれたが、母君はそれを強引に押し通してしまった。なぜだか分かるか? 母君は、宴や公式行事には、必ず姫御子たちと一緒に出席するようにしている。養女である私も含めてな。そして今年からはマリーターも加わるはずだった……のに、出られなくなった」
     「だから……私を?」
     「マリーターと同じ年頃で、背格好も似ているそなたを、代わりに連れて行くことで、世間の者たちに〈自分の娘はもう一人いる〉ということをアピールしておきたいのだ。……悪く思わないでやってくれ。きっとそなたなら、そんな思惑も許してくれるだろうと思ってのことだ。そなたは、マリーターとは友人でもあるし」
     「悪く思うなどと……。私でお役に立てるなら、いくらでも使ってください。……では、今日はマリーターは一人で御屋に?」
     「いや。私の子供たちが一緒に留守番をしてくれる。最近は、私の子供たちのことも見分けてくれるようになってな」
     「まあ!」
     「私と同じ匂いをしている、と言って。特に長女のレーテーは顔もそっくりだからな」
     「このラベンダーの匂いですね。私も先ほどから、眠くなってしまいそうに、気持ちが落ち着いているのです」
     「私の一族は皆、この匂いなのだ。人々を眠りへ誘う“夜”の一族だからな。……そなたの匂いは、ヒアシンスに似ているな」
     「はい。自分では分からないのですが、そう言われます……この匂いと、同じ匂いを持つ者が、マリーターをあんな風にしたのですね」
     「……」
     それからエリスは、黙ってしまった。きっとマリーターのことを思うと、悲しくなるのだろうとシニアポネーは察した。

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  • from: エリスさん

    2008年10月17日 15時39分38秒

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    「泉が銀色に輝く・38」
     「それより聞いたか? 君様がアルテミス様付きの精霊をお召しになるって」
     「聞いた。吟味している最中だと仰られていたけど、ご正妻ならもっと身分の高い方をお選びになればよろしいのに」
     アルテミスの従者――ケレーンが不安を覚えるのも当然だろう。シニアポネーはあれほどに美しく、銀髪が目を引く。アポローンの目に留まる可能性は十分あるのだ。
     しかし、シニアポネーはアルテミスの乳母子(めのとご)。ヘーラー王后の申し入れも断り続け、しかも、今まで公式の場にはシニアポネーを同行させたりしないで、森の番人などという、乳母子の立場にしては地味な職務に就かせている。まるで、彼女を目立たせないようにしているような……。
     それだけアルテミスはシニアポネーが可愛いのだろう。だからきっと、弟に「譲ってくれ」と頼まれても、承諾はしないはずだ。――と、ケレーンは無理にでも思うようにしていた。


     そうして迎えた、誕生祭の日。
     宴は夜からだが、賑やかさはもう朝から始まっていた。ミレウーサも朝早くからエペソスにあるアルテミスの社殿へ行って、祝いの品が全部揃っているか、最終チェックに行かなければならなかった。
     「それじゃ、シニア。くれぐれも遅刻しないように行くのよ、いいわね」
     「大丈夫よ、姉さん」
     と、シニアポネーは朝食の後片付けをしながら答えた。血色もすっかり良くなって、悪阻も落ち着いている。ミレウーサも事情を聞いて、複雑な心境である。
     「でもホント、あなたは王后陛下に愛されてるわね。昨日のこともそうだけど、今日だって、私はアルテミス様のお供で行くのに、あなたは王后陛下の招待客ですものね」
     するとシニアポネーは、表情を暗くして、「うん……」と答えるだけだった。
     「……どうかしたの?」
     「ヘーラー様が私を招待してくださったのは、アルテミス様が私を連れて行ってはくれないから……幼い頃はそれも当然と思っていたけど、十七歳になった今でもそうだから……。それをお知りになって、ヘーラー様は神王陛下にわざわざお許しをもらってまで、私のような一介の精霊を招待してくださったのよ」
     「ああ……そうだったわね」
     「アルテミス様は、私のことはいつも、人目に付く所へは連れて行ってはくださらない。姉さんと同じく、母さんの娘なのに……。きっと、こんな背の高い精霊を従者にしているなんて、みっともなくて恥ずかしいのだろうなって、思って」
     それを聞いて、ミレウーサは妹の傍へ寄ると、服が濡れるのも構わずに、相手の手を取って握りしめた。
     「あなたは綺麗だわ。何よりも優しいわ。だから私はあなたが大好き。自慢の妹よ」
     「姉さん……」
     「じゃあ、行ってくるわね」
     ミレウーサはニコッと笑いかけてから、出掛けていった。

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  • from: エリスさん

    2008年10月17日 15時16分10秒

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    「Re:惑星組曲 を、せっかくだから読みやすいようにすると。」
     元校正係の私が直すと、こうゆう見た目になるんです。

     今後、小説をネットに載せようと思っている皆さん、参考にしてみてくださいね。



     ――雪が降る……。
     ――冬が来る……。
     ……そうしたら……。

     ドアの角に付けられたベルが、客が出て行ってもまだ微かにチリチリいっていた。
     冷めたコーヒーが少し残されたカップを片手に、テーブルを拭く。
     窓の外はどんよりと灰色で重苦しく、それでいて鋭い空気を感じさせた。
     和美が手を止め窓に目を向けた時、
     「もうすぐ冬だね。」
     いつの間にか背後に立った親友の仁美が声をかけた。
     一瞬ポカンとしたが、すぐにその意図を解し、和美は微笑んで答える。
     「うん…そうだね。」
     冬が来る……。
     雪が降る……。
     ……そうしたら……。


     ――美しい星にしよう。
     ――優しい国にしよう。
     緑溢れ 清い水が流れ
     生き物全てが愛し合う……。
     持ち得る力がこの望みに届くならば
     私は私の全てをこの星と
     そこに生きる全ての命の為に捧げよう。

     汝 宇宙の子
     汝 星の王
     汝 地上に生きる者
     汝 祈り 守り 闘う者
     努々忘れるなかれ
     美しく 悲しい 孤独の神よ……。






     かなり読みやすくなったはずです。
     自由な文体で小説を書くのもいいのですが、読み手の気持ちになって、句読点(、や。)や改行・段落(文章の初めは1マス下げ、文章の終わりには改行をする)、間を空けるための二倍ダッシュ(――)や二倍三点リーダー(……)を入れてもらいたいと思います。

     私が出版社の人によく言われる言葉の第一位は、
     「校正する必要がないぐらい、読みやすい文章ですね」
     でした。(^v^)
     まあ、内容の面白さは別問題なんですけどね orz

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  • from: エリスさん

    2008年10月17日 13時32分28秒

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    2サークル共通カキコ 静岡県まで墓参り


     というわけで、昨日は墓参りに行ってました。

     かなり天気が良くて、今日こそは富士山が見られるかな、っと期待していたのですが......。

     雲が多くて、隠れてしまっていました。
     雲がなければ、この写真のように、綺麗にみえるのですが――ちなみにこの写真は、母の納骨の時に撮影したものです。


     東名高速が集中工事をしていた関係で、ちょっとだけ道が混んでいたのですが、なんとか夕方の7時には帰ってこれました。すでにもみじマークの父が運転する車で日帰りするのですから、私も兄も足腰に疲労が残ったまま、兄は仕事に行き、私はこうしてネット小説の更新をしています。
     途中、パーキングエリアでいつものようにご当地キティを買い(^.^) 職場のみんなにお土産も買ったのですが、

     「いつも、静岡名物だからって<抹茶もの>を買うのは、芸がないかなァ.......」

     と思いつつ、やっぱり抹茶味のお菓子を買っちゃいました――飽きた、とか言わないでね、みんな(-.-)


     次は桜の花が咲くころに来たい、と父が言ってましたが、その頃まで父が車を運転できるかどうかが不安。年も年だし、今回だって、霊園につくまで何度も道に迷ってるんですもの。

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