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神話読書会〜女神さまがみてる〜

神話読書会〜女神さまがみてる〜>掲示板

公開 メンバー数:11人

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  • from: エリスさん

    2008年02月29日 11時03分05秒

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    「禁断の花園・30」
     エリスはつい、両手を握り合わせて、そこに霊気を溜めていた。今にもゼウスに向かって紫の炎の玉となった霊気を、投げつけようとした時だった。
     「落ち着け、エリス! そこはペルセポネー殿の心の世界だッ。そんなところで破壊のオーラを放てば、ペルセポネー殿が死ぬ!」
     そう言われて踏み止まりはしたものの、エリスの全身に沸き起こった怒りを抑えきることはできず、拳の中に炎をみなぎらせたまま、エリスは体を震わせていた。
     「エリス、落ち着くのだ。それは残像だ、過去なのだ。今、おまえが神王を殺しても、ペルセポネー殿に降りかかった不幸は消えない」
     エリスは無理に深呼吸をして、気持ちを落ち着けようと努力する。しばらく時間はかかったものの、目の前の残像が消えてくれたことも手伝って、ようやくエリスは怒りを収めることができた。
     しかし、今の出来事のおかげで、確信できたことがある――この近くに、いる。
     エリスはまた歩き出した……そして。
     「エリス?」
     小鳥のさえずりのように美しい声が、エリスを呼び止めた。
     振り向くとそこに、彼女がいた。


     「嘘よ。悪い冗談なのでしょ? ヘーラー様。あなた様が、そんな……」
     ゼウスの前から姿を消して、三ヶ月。それなのに、ヘーラーの胎内にいる新しい命は、まだ二ヶ月にも達していない。
     つまり、ヘーラーが宿した子供は、夫の子供ではない。
     「誰の……御子ですか? ヘーラー様」
     歩み寄るアテーナーを、ヘスティアーは引き止めた。
     「お願い、見逃して、アテーナー! ヘーラーは悪くないのよ。元はと言えば、すべて……」
     「ええ、分かっていますわ! すべての元凶は神王陛下です! でも、でも……」
     今まで、必死にヘーラーを探してきたのは、母親のいなかった自分を実の子のように世話してくれ、貞節の尊さを優しく厳しく説いてくれたからこそだった。それが、出奔の間にこのような姿になっていようとは……。
     アテーナーが泣き出してしまうのも、無理はない。
     「誰の子供なんですか! ヘーラー様ァ!!」
     その時だった。
     「斎王神(さいおうしん)様に申し上げます」
     背後からの声に振り向くと、そこに、ヘーラー達の母であり、前王后のレイアーが立っていた。
     「神王陛下が末子でありながら、その地位に着いておられるのは、何故だかお分かりですか? 斎王様」
     「それは……前神王を、おばあ様の庇護のもとに倒されて……」
     「そう、この私の庇護のもとにです。そして、さらに正統性を添えるために、前神王と私の嫡女たるこのヘーラーを正妃とすることを許してやったものを……」
     レイアーはその若くて美しい面立ちに、ふつふつと怒りの表情を表した。
     「それを、陛下はなんと心得ておられるのか! 陛下にお伝え下さい。陛下がそれなりの誠意を示さぬうちは、女王はこの母が返しませぬ!!」
     レイアーの怒りに、アテーナーは何も言えなかった。

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  • from: エリスさん

    2008年02月29日 10時42分58秒

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    「禁断の花園・29」



     ヘスティアーが通う場所を突き止めた。
     『これではわからないはずだわ』
     大地の女神ガイアの領地にある、偶然が折り重なって、木々や岩が自然と結界を作ってしまった場所。その一画に、大きな穴が開いた岩があった。見ると穴は地中に掘られた洞穴への入り口になっていた。
     人の手によった物ではない自然にできた結界では、おかしいと感じることはできない。アテーナーは裏をかかれた思いだった。
     自然結界の中に入ると、さらに三柱の女神――大地の女神ガイア、前王后神レイアー、そして前斎王のヘスティアーが結界を張っていた。こんなに頑丈だと、これ以上中へ入れるのは、結界を張った本人たちと、どんな結界をも通り抜けられる斎王のアテーナーだけである。クラリアーを供に連れてきたアテーナーだったが、仕方なく彼女をその場に待たせて、一人で中へ入っていった。
     途中にいくつかの明かりが設置してある。燭台の古さからいって、ここに長く人が住んでいることは間違いない。どんどん進んでいくと、人の話し声が聞こえてきた。
     「今日は果物を持ってきたのよ」
     ヘスティアーの声である。
     奥へ行くにつれて、明かりが強くなっていく。そして行き止まりになったところに……。
     「お探ししました、ヘーラー様」
     驚いた表情をしたのは、ヘスティアーだけだった。
     ヘーラーは驚くどころか、表情がなく、何事かぶつぶつと呟いていた。
     「……ヘーラー様……」
     明らかに正気ではない。そのことだけでもアテーナーにはショックなのに、さらに衝撃的な事実を感じ取ってしまう。
     ヘーラーの胎内から、波動を感じる。
     まだ人の形も成さない、小さな命の波動を。


     闇に、足を踏み入れる。
     ようやく辿り着いた、ペルセポネーの深層意識。ここに、悲しみに捕らわれた彼女の魂がいるはずである。
     エリスは、一歩一歩慎重に歩いていた。
     時折、ペルセポネーの悲痛な叫び声が、こだましてくる。その声に、レーテーは自分も悲しくなって、胸が苦しくなってきた。
     「レーテー、心を落ち着けよ。そなたがそんなでは、エリスが困るのだ」
     伯父に言われ、レーテーは我に返った。
     「すみません、伯父君」
     「さあ、落ち着いて、母君に霊力を送ってあげるのだ」
     レーテーが我に返ってくれたおかげで、エリスも気分が落ち着いてくる。この術はまさに三位一体で行わなければ命取りになる。
     やがて、ペルセポネーの悲鳴が近いものになってきた。
     そして、エリスは見てしまった。
     ペルセポネーの恐怖の記憶――ゼウスに組み敷かれている、まさにその場面。
     ゼウスの顔に、罪悪感はなかった。むしろ、歓喜と悦楽の、この上ない幸福の絶頂、そして、狂気の表情。
     これで怒りを覚えない方がおかしい。
     「ゼウス……貴様ァ―――――――!!」

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  • from: エリスさん

    2008年02月28日 16時01分38秒

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    「禁断の花園・28」



     こんなにまで美しい花園を、エリスはかつて見たことがない。
     その景色のあちこちに、幸せしか知らないペルセポネーの笑顔と、それを嬉しそうに眺めるハーデースの姿があった。
     ペルセポネーとハーデースがどんなに引かれあっているかが分かる。
     いつまでも、そんな光景を見ていたいけれど……。
     花園の向こう、まだまだ辿り着けそうにない奥地に、闇が見える。
     『もしかして、あそこにペルセポネー殿の魂が?』
     エリスが歩を進めようとした時だった。
     「エリス、少し休もう。レーテーが疲れてきている」
     ヒュプノスの声が聞こえてくる。
     すると直ぐに、娘のレーテーの声も聞こえてきた。
     「いいえ、私は大丈夫です、伯父君。続けましょう、母君。まだ、目的地は遥か遠いのですから」
     なので、エリスは優しく諭すように言った。
     「吾子(あこ)よ。急いてはことを仕損じる。道のりが長いからこそ、焦って体を酷使しては、いざという時に何もできぬ。この術がとても危険なものであることは、理解しているな。休息を取ることも必要なのだ」
     「……はい、母君」
     「ではエリス。そこで待機していてくれ」
     ヒュプノスに言われて、エリスはその場に腰を降ろした――柔らかい草が、心地よい。
     ヒュプノスがいったん手を休めたのを察したエイレイテュイアは、二人に食事を運んできた。
     「ありがとうございます、姫御子。いつものようにお願いしますよ」
     「ええ、お安い御用ですわ」
     エイレイテュイアの返事を聞いて、レーテーは恥ずかしそうに、母がいる方とは反対の方を向いた。
     エリスはこの術の間は食事ができないので、誰かが口移しで神酒を飲ませてあげなくてはならない。ヒュプノスは実兄であるし、娘のレーテーがやるわけにもいかず、それで恋人であるエイレイテュイアがその役を任されることになったのだ。レーテーにしてみれば、母と義理の伯母との関係は、それなりに理解はしているものの、やはり直視できるものではない。だからと言って、エイレイテュイアが嫌い、というわけではない。
     エイレイテュイアに神酒を飲ませてもらったエリスは、心なしか頬に赤みが戻ってきた。
     「ありがとう、エイレイテュイア」
     エリスの声は、ちゃんとエイレイテュイアにも届いていた。口を動かしているわけでもないのに。術をかけられている間は、その術者にしかエリスの声は聞こえないはずなのだが、つながりが長いと、人智を超えたこともできるものらしい。
     「今、どうゆうところにいるの? あなた」
     「見渡す限りの花園だ。今、ハーデース様が鬼になって、ペルセポネーと鬼ごっこをしていらっしゃるのを、呑気に眺めさせてもらっている」
     「まァ、叔父様がそんなことを?」
     「冥界の王の威厳はどこへやら、だ。だがそこがいい。やはりペルセポネーは冥王の后としてお生まれになったのだ。あれほどまでに想いあっている二人を、絶対に引き離してはいけない。エイリー、私はゼウスが憎くてたまらない。いつか、あいつに復讐してみせる。キオーネーやペルセポネーの分まで……」
     「……あなた……」
     複雑な思いだった。エリスは妻と母親にしか弱いところを見せない、という哲学を持っている。だから、今こうして本音を話してくれるのは、自分を信頼してくれている証ではあるけれど、その本音の内容が、エイレイテュイアには辛い。
     おそらく、今のエリスはエイレイテュイアがゼウスの娘だということを忘れている。
     忘れてほしい、ただの女として愛してほしいと願っていたぐらいだから、喜ばしいことなのかもしれない。なのに……。
     返事が戻ってこないことで、エリスはようやくそのことに気づいたようだった。
     「すまない、つい……」
     「……いいえ。気にしていないわ、あなた」
     相手の表情は見えないまでも、声の調子でエイレイテュイアが沈み込んでいることがわかる。エリスはそんな彼女に、お願いした。
     「神酒、もう一口くれないか? もう少し力をつけておきたい」
     「ええ、いいわ」
     エイレイテュイアは神酒を口に含むと、エリスに飲ませてあげた。
     その時間が、長い。
     神酒はなくなっても、エイレイテュイアは愛する人と唇を重ねていたかったのだ。


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  • from: エリスさん

    2008年02月28日 15時14分03秒

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    「禁断の花園・27」
     アテーナーはまた途中で言葉を切った――頭の奥で、彼女を呼ぶ声がしたのだ。
     「あの御方がお呼びだわ。戻らないと」
     アテーナーは杯をテーブルに戻そうとして、ちょっと躊躇ってから「おかわり、くれる?」とクラリアーに杯を差し出した。
     クラリアーは軽くため息をつきつつも、アテーナーの杯におかわりを注いであげた。
     《わが巫女よ、なにをしているのです》
     男か女か分からない声が、尚も響いてくる。
     「言われなくても参ります、宇宙(そら)」
     アテーナーはそれでも、神酒を味わって飲んでから、祈りの間へ戻っていった。
     声の主は、別段怒っている様子もなく、祈りの間の中に己の霊気を漂わせていた。
     実体は見えない――いや、既に見える見えないの問題ではない。この世のすべてがその「御方」なのだから。
     《私と語らうよりも、恋しい男から貰った酒を飲む方が大事なのですか、わが巫女よ》
     宇宙の意志の言葉に、アテーナーは微笑みながら答えた。
     「女とはそういうものなのですよ、宇宙(そら)」
     《あなたはただの女ではない。誰よりも清廉で、誰よりも気高い、わたしの巫女殿。あなたが俗世にまみえるのは、あまり良い傾向ではありませんね》
     「そう仰せられながらも、貴方様は私がヘース様に恋焦がれるのをお叱りにはならない。なぜなのです?」
     《あの者が誠実で、なによりもあなたを大切に思っているからですよ》
     「本当にそうでしょうか? 私には、貴方様のお言葉に、もっと深い御心を感じるのですが」
     《深い心とは?》
     「……いいえ、やはり今は、その議論は止めてきましょう」
     と、アテーナーは表情を曇らせた。「もし貴方様が、私が思っている通りのことをお考えなのだと知ってしまったら、それこそ私は、あの方への想いを抑えることができない……」
     すると、彼女の周りに温かい慈悲の心が集まって、優しく包み込んだ。
     《これだけは言っておきましょう、わが巫女よ。その想いを大事にしなさい。人を愛する心を持たぬ者に、世界を守る資格はありません》
     「……宇宙……」
     しばらくアテーナーを慰めた宇宙の意志は、爽やかな風を吹かせた後、元の状態に戻った。
     《王后神の捜索は進んでいますか?》
     「……そのことについて、お聞きしたいことがあります」
     《なんですか?》
     「すべては貴方様の御意志なのではありませんか? お父様がペルセポネーを無理強いたのも、王后陛下が社殿を出るように仕向けたのも」
     宇宙の意志はしばらく黙っていた。だが、その通りらしいのは、アテーナーの周りに立ち込めている霊気の具合で感じられる。
     「何故なのですか? 宇宙よ。何故、わざわざ彼らを苦しめたのです」
     《……必要だったからです》
     「なんのために?」
     《それこそ、今は議論すべきことではありません。あなたも関わらなければならないのですから》
     「……そのうち、分かる――ということ、ですか?」
     《そう……あなたと、もう一人。わたしが次世代に繋ぐ者として選び、今、永き試練を耐えているあの者が、この度のことには深く関わってくるのです。……あの者は、今どうしていますか?》
     「聞かずともご存知でしょう。ペルセポネーの治療に当たっています。命がけで」


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  • from: エリスさん

    2008年02月28日 14時35分01秒

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    「ここらでキャラクター分析・2サークル共通・4」
     「この続きは夕方にでも」

     と、言っておきながら、丸二日経ってしまいました。
     すみません。ちょっと忙しかったんです。知ってる人もいるかと思いますが、足に怪我をしまして。その治療と、私に怪我をさせた猫兄弟の次男坊と折り合いをつけるのに、どうしても時間を割かれてしまうものですから。
     それでも、もう四年も一緒に暮らしている猫ですから、最後まで責任を持って養育するのが飼い主の務めですよね。その子には何度も怪我をさせられて、そのたびに挫けそうになるのですが……。

     「言うことを聞かない時は、理由があります」

     これは近々公開される「犬と私の10の約束」の一文です。うちの子は犬じゃないけど、猫にも言えることだと思います。
     次男坊は、大好きなお兄ちゃんを新入りの女の子に取られて、おまけに子猫まで生まれたので、寂しいのでしょう。そうゆうところを、私がちゃんと理解して労わってあげなかったのがいけないのだと、そう思っています。




     さて、本題に戻りましょう。
     「神話読書会」ではお馴染みのキャラクターと言えば、次は斎王神アテーナーでしょうね。
     「ジューン・ブライド」(夏休みごろに連載しています)を読み返してみたのですが、あれは私なりにはアテーナーらしさを表現できてるなァ、と自画自賛しています。
     一族の長女として生まれたがために、「斎王」という《宇宙の意志》に仕える巫女にならなければいけなかった彼女は、恋する男神がいるのに結婚できず、任を解かれるまでは純潔(処女)を守らなければなりません。
     初めのうちは、それも耐えられたと思うのですが、千年、二千年と経つうちに、アテーナーの我慢も限界に達して、それで、あの台詞が出たんです。

     「私から斎王の資格を奪って!」

     遠まわしにもなってない表現ですね、いやはや(^o^;
     そんな彼女が恋する男神は、鍛冶の神ヘーパイストス。親しい人たちには「ヘース」と呼ばれています。
     ヘーパイストスはアテーナーにとって命の恩人。彼がいなかったら、アテーナーはゼウスの頭部に閉じ込められたまま、ゼウスに融合してしまっていたかもしれません。ヘーパイストスがゼウスの頭部を斧で割り、アテーナーに出口を作ってあげた時、初めて外の景色を見たアテーナーは、目の前の少年に一瞬で恋をします。まるでひな鳥が目の前のものを母鳥と思ってしまうように。
     でもそうゆう恋は強いです。
     ヘーパイストスは決して美男子ではありません。ヘーパイストスのかつての妻・アプロディーテーなどははっきりと「不細工!」と罵っているぐらいです。でもアテーナーはそんなことは問題にもしていませんでした。それは、ヘーパイストスが心底優しいから。それはもう、優しさのお手本であるキュクロープスおじさん達が世話役についていたのですから、優しく育たないわけがない。そして真面目で仕事熱心なところも彼の魅力です。
     アテーナーの立場さえなければ、誰はばかることもなく結婚できたものを。両思いなだけに辛い。
     それでもアテーナーは耐えました。本当は毎日でも彼に会いたいのに、貞節を守って、正統な理由がある時しか会いに行きません。人前で会う時などは、ヘーパイストスのことを「ヘーパイストス殿」と他人行儀に呼ぶようにしています。でもいざ二人っきりになったら、「ヘース様……」と甘えます。
     典型的な「ツンデレ」です。

     アテーナーの貞節なところと、ヘーパイストスにひたすら一途なところは、私にとって「女の理想」です。こうゆう生き方が望ましい――現実は難しいとは思いますが。


     さて、現実の「ヘース様」ですが……最近、人でなしです。
     本当にね、あの両の頬をつねりながら「人でなし!」と怒鳴ってしまいたいぐらいですが、命の恩人にそんなことをしたら罰当たりですから、我慢してます。

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  • from: エリスさん

    2008年02月26日 08時01分10秒

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    「ここらでキャラクター分析・2サークル共通・3」
     私が唯一出版した書籍「罪ゆえに天駆け地に帰す」の主人公・不和女神エリス。
     読者の皆さんの中には、彼女を私の分身のように思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。エリスという名前からしてそうだし――スペルは違いますけど。彼女はErisで、私はEllisです。
     あとは、実物の私を知っている人は、いくつもの共通項を彼女と私の間に見ていると思います。――男っぽい性格と言動。普通じゃない長髪(女神エリスほどじゃないですけど、私の髪は腰まで届きます)、アメジストの指輪を付けていること、あとはなんといっても「女好き」(笑)
     だけど、女神エリスには決定的に私と違うところがあるんです。それは、不実なところ。
     キオーネーが生きていた時は、彼女だけを愛し、妻にしていました。けれどゼウスにキオーネーを殺されてしまった後、エイレイテュイアに恋をした彼女は、苦悩します。何故なら、エイレイテュイアの父親はゼウスだからです。
     妻を殺した男の娘に恋をしてしまった、その苦しみから逃れたいがために、女神エリスはエイレイテュイア以外にも愛人を持つようになります。
     これが唯一、私と違うところであり、彼女の欠点です。
     好きな人がいるのに、他の女とも付き合うなど、絶対に許されることではないし、私だったら絶対しない。そうゆう、私が一番嫌悪する部分を、あえて彼女の設定に加えたのは、そうしないと物語が成立しなかったから。そして、完璧な主人公ではないというところで、女神エリスの悲しみを表現したかった。
     つまりこれは、必要悪。

     女神エリスはその後、人間界での修業も終えて、オリュンポスに戻って、両性神になります。そしてエイレイテュイアを正妃とし、転生したキオーネーを第二妃にします。――どっちか一人に出来なかったんです。最後まで完璧にはなれない主人公でした。

     この続きは夕方にでも。

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  • from: エリスさん

    2008年02月25日 22時02分13秒

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    「ここらでキャラクター分析・2サークル共通・2」
     それじゃ平安時代の女性たちは、どうやって恋文が届くようにしていたのでしょうか?
     これがちょっと姑息な手なんですが、貴族の姫君には必ず「女房」と呼ばれる侍女がいます。その女房たちが、
     「うちの姫君は素敵です。美人で教養もあって、お歌もお琴も上手で……」
     と、噂を流しているんです。
     それは姫君本人が「噂を流しなさい」と命令したわけではなく、女房たちが自分の判断でしていることもあるし、姫君の親が命令していることの方が多いかな。

     この続きはまた明日。

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    2008年02月25日 19時35分17秒

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    ここらでキャラクター分析・2サークル共通・1

     私のサークルの読者は、「神話読書会〜女神さまがみてる〜」と「恋愛小説発表会・改訂版」の両方を読んでくださっているようなので、ここらで共通企画を書いてみようと思います。

     先ずは、「恋愛小説発表会・改訂版」で連載中の『秘めし想いを……』
     この時代の人は、恋愛をするのも難しかったんじゃないかと思う。平安時代以降、女性はあまり外に出ない生活を余儀なくされている。宮廷に仕えでもしない限り出会いがない。まさに籠の鳥状態。
     それじゃどうやって恋をしていたかと言うと――ひたすら待っていた。
     自分の噂話を聞いた男性から、恋文が届くのをひたすら待って、その恋文の文章や書いてある紙のデザイン、恋文を結んだ花のセンスなどで相手を見極めて、気に入ったら、御簾や障子で姿を隠しながら会う。
     こんなんで、理想の相手と出会えたらいいんだけど……難しいよね、絶対。

     忍の君が姉の紫苑に恋してしまったのは、こうゆう背景だから。
     後にもう一つ要因があったことは、物語の後半に出てくるのでここでは述べませんが。忍にとって異性と出会う機会がないうえに、実母亡きあと親身になって自分の世話をしてくれた姉は、まさに女神だったんだろう。
     そんな忍にこの先どんな波乱が待っているのか、乞うご期待。

     続きは数時間後に。

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    2008年02月21日 16時47分10秒

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    「禁断の花園・26」
     「はい……神王陛下は、まだご気分が優れませんようで」
     「また女漁り? しょうもない方」
     ヘーラーが出て行ってからと言うもの、社殿にいるのが嫌なのか、下界へ降りては人間に化けて若い娘をむさぼっていたのである。アテーナーに言わせると全く学習能力がなく、彼を支持する男たちに言わせると、それだけ妻に逃げられて寂しいのである。
     それでも一応、神王としての役目だけはこなしている。
     例のザクレウスの心臓であるが、ゼウスの愛人に体が弱くて子供に恵まれない婦人がいるのだが、彼女の胎内に移植して、ザクレウスの心臓が持つ神力によって五体が再生されるのを待っているところだった。恐らくもう金色のオーラを持って復活するだけのパワーはなくなるだろう。それでも十二柱(オリュンポスで最も力を持つ神のうちの十二人までを言う)に匹敵するだけの力は残されるだろう。また、なによりも子が生めなかった婦人に、出産の喜びを与えることができるのであるから、悪い話ではないだろう。
     そして、ゼウスは己が焼き滅ぼしたティーターンの鬼どもの灰を使って、新しい人種を創り出した。もともとが鬼の灰であるから、低俗で殺戮好きの人種として生まれはしたものの、金色のオーラを持つザクレウスの血肉を食(は)んだのである。やがて知識と慈愛に目覚め、数々の文明を築き、平和こそが人類のあるべき姿と悟ることのできる人種として、成長していくに違いない。
     転んでもただでは起きないのが、ゼウスのゼウスたる所以なのかもしれない。
     「あんな男を父親として持ったのは、私の宿命かもしれないわ」
     アテーナーが言うと、跪いていた侍女は立ち上がり、こう言った。
     「君様、お父上を悪し様に言われるものではございません。人の手本となられる君様が、そのようなことをなさっては、人間たちも親を敬う心を失ってしまいます」
     もっともなことを言われて、嘆息はついたものの、微笑んでみせるアテーナーだった。
     「ありがとう、クラリアー。あなたがいるから、私は悪い女にならずに済むわ」
     「恐れ多いお言葉にございます」
     「本当よ。ヘスティアー伯母様には感謝しているの。私が斎王になった時、前斎王であった伯母様が、ご自身の侍女であるあなたを下賜してくだされた。あなたの支えがあったからこそ、幼かった私が斎王を務めていられたのだわ」
     まあ、恋路は邪魔してくれるけど――という気持ちは抑えて、アテーナーは侍女にニッコリとしてみせた。
     クラリアーと呼ばれた侍女は、その時なにか思い出したのか、ハッとした表情になった。
     「その、ヘスティアー様のことでございますが……」
     「……どうかして?」
     「昔なじみの精霊(ニンフ)と昨日会ったのですが、その者が気になることを申していたのです。このところ、ヘスティアー様が供も連れずに、しかも夜更けにお出掛けになられることがあると。まさか、あの純潔を自らに誓った御方が、どこぞに愛人でもお抱えなのではないかと」
     「まさか! ありえないわ。あの伯母様が愛人だなんて。供も連れずにお出掛けということは、それなりに深いご事情が……」
     そこまで言って、アテーナーは口許に手を持っていった。
     しばらく考える。
     「どこへ出掛けているのかは、わかっているの?」
     「いいえ、そこまでは」
     「調べて。私の考えが合っていれば、きっとそこに……」

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  • from: エリスさん

    2008年02月21日 16時22分06秒

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    「禁断の花園・25」
     「もう一度説明します。先ず、エリス、おまえを眠りにつかせ、ペルセポネー様の深層意識に導く。そこでおまえは、彼女の心を見つけて、連れ戻すのだ。レーテー、おまえも我らと霊波を合わせ、母君に力を送ってやるのだぞ。……皆様、この術は一日やそこらでは終わらぬかもしれませぬ。なるべく意識を集中させるためにも、この部屋を我らだけにしていただきたいのですが……」
     「承知した」と言ったのはハーデースだった。「しかし、何日も掛かるとなると、全く様子を見に行かぬわけにはいくまい。そうっとなら、覗いてもよろしいか」
     「はい。なるべく静かにお願いします」
     「では、姉上、エイレイテュイア、我らは他の部屋へ……」
     ハーデースが他の二人を連れ出してくれ、ニュクスの一族は早速、術を始めるのだった。
     ヒュプノスの呪文に導かれて、エリスは深い眠りに陥った。
     深く、深く、落ちていく。
     その先に、光が見えた。
     ペルセポネーの深層意識の入り口は、一面の花園だった。
     


     王后神ヘーラーの行方は、ようとして知れなかった。
     あれからもう、三ヶ月も過ぎている。
     処女神宮でヘーラーの霊気を追っていたアテーナーも、だいぶ疲労が溜まったのか、祈りの間から出てきて、侍女が差し出した神酒に口をつけて、休んでいた。
     「ヘーパイストス様から、何かご連絡は?」
     アテーナーが聞くと、侍女は恭しく跪きながら、答えた。
     「君様がお籠もりの間に、一度ご様子を見にいらっしゃいまして、祈りの間においでであることを申し上げましたら、邪魔をしてはならぬからと、すぐにお帰りになりました」
     それを聞き、アテーナーはやや怒り気味に言った。
     「どうして!? すぐに知らせてくれなかったの」
     「なにを申されますか、君様。斎王のお勤めの邪魔をしてはならぬと、あの方がご自分でおっしゃられたのですよ。よく分を弁えていらっしゃるではありませんか」
     「……そうかもしれないけど……」
     この侍女は、斎王とは異性との交わりは断って当然、と考えているようで、ヘーパイストスがアテーナーに近づくのを快く思っていない。それでこんな冷徹な行動を取るのである。
     「しかしまあ、そうがっかりなさいますな。君様が今、その手にされている神酒は、ヘーパイストス様からの差し入れでございます。君様のお疲れを癒す薬になるだろうと、今朝早く届けて下されたのですよ」
     「まあ、これが?」
     あの方らしい……と、アテーナーは思った。常にアテーナーのことを考えてくれている。自分を抑えてくれている。
     『あの時、斎王の役目を楯に、あの方の愛を拒んだこの私のために……ヘーパイストス様、そんなだから、私は……』
     愛しさで苦しくなる……。
     長女として生まれてさえこなかったら、誰はばかることなくヘーパイストスの妻になれたものを。愛する人のために衣を織り、食事を作り、日々の疲れを癒して差し上げるのに……。
     自分を外界へ飛び出させてくれた人。彼がいなかったら、今の自分はなかったかもしれない。それぐらい、大きな存在なのに。
     愛している、という言葉さえいえない。
     アテーナーは深いため息をつき、気持ちを落ち着かせてから、再び侍女に言った。
     「お父様は、その後どうなの?」

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