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神話読書会〜女神さまがみてる〜

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  • from: エリスさん

    2011年04月22日 15時38分48秒

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    「双面邪裂剣(ふたおもて やみを さく つき)・10」
     図書室へ行くと、いつも利用している文学の棚――日本文学の本が並んでいるところへ入る。
     誰もいない――だから、思いっきり泣けた。声だけは押し殺して、むごい仕打ちの憂さを晴らす。紫水晶に手を掛け、自分が悪いのだから、と言い聞かせる。
     「俺をモデルにしたって言う小説、読ませてもらうたびに思うんだ。あれは俺じゃない。他の誰かが隠れてる」
     あの人は枝実子にそういった。
     「身代わりなんかごめんだ!!」
     『分かってるわよ、何もかも私が悪いって。私が弱すぎたから……だからって何もあそこまで……他の人を利用してまでッ』
     「一人だなんて思わないで」
     枝実子は、章一の言った言葉を思い出していた。
     「これは失恋じゃないんだ。時間が必要だったんだよ。あのころより大人になって、感情に押し流されないようになるまで」
     『……乃木君……』
     紫水晶を握る手に、力がこもる。
     『もっと早く気づけば良かった……あなたが私のことを大切に思ってくれているって』
     そうすれば、他の男に恋を仕掛けることなどなかったのに。
     しばらくそうしていた。――授業が始まっているということもあって、室内は静かで……枝実子は、棚に寄りかかったまま、大きなため息をついた。
     『落ち着いた』
     落ち着いて、考えてみる――これからどうしよう。
     『今から教室戻るのも、みっともないし』
     麗子が心配しているだろうことは、容易に考えられる。
     『彼女には悪いけど、ここで卒業制作のネタを考えてよ』
     枝実子は、万葉集を手に取った。



     大友皇子を愛し、彼のそばにいるだけで安らげる十市皇女の気持ち――これは良く分かる。大友の優しさ、教養の深さ、哲学・美学、それらに引かれる十市の気持ちは、枝実子もそんな男が好きだから理解できる。
     後の持統天皇・讃良皇女の、次々と愛する弟を失ってしまう悲しみも、夫である大海人皇子の片腕として生きようとする姿勢も、わからなくはない。夫の良き理解者でありたいと思うのは、言うなれば女の本能である。
     だが、父親を始めとする一族すべてを皆殺しにされ、自分自身は力ずくで相手のものにされた倭姫王が、殺したいほど憎かったであろうその中大兄皇子をなぜ愛せたのか。その心理が分からなかった。
     万葉集に残された彼女の歌は、どれも中大兄への想いを歌ったものだ。彼女が彼を愛していたのは、歴史的にちゃんと証拠が残っている。そして、父・古人大兄皇子が中大兄の手によって滅ぼされたことも公式記録として残されている。
     中大兄皇子は一般に冷血なイメージが強い。政治のためとはいえ、兄、従兄弟、舅と身近な人たちを殺しているからだ。
     そんな男を、なぜ愛せる?
     『駄目だッ』
     枝実子は本を閉じた。
     どうしても分からない、倭姫の心が。
     ――愛するがゆえに憎悪し、憎悪しながらも愛する――
     なぜそんな感情が芽生えるのか、理解しがたい。いくら史実であっても。
     本棚に寄りかかりながら考える――エミリ・ブロンテなら、こんなに悩まずに書けただろうか?
     そこへ。あいつは突然やってきた。
     「大層お困りのようですね」
     ラベンダーの香りが近づいて来た――見ると、藤色の和服を着た、あの時の美人が立っている。
     一瞬、接待用に出す自分の声を聞いたかと思った。声質が枝実子と似ているのだ。
     「あなたは?」
     枝実子の問いに、和服美人は笑って答えない。
     「自分の体験した恋しか語れないとは、言語芸術家を名乗る御身(おんみ)としては、情けないばかりでございましょう」
     「なっ……」
     いきなりの言葉に、むっときたのは当然である。
     「初対面でよくもそんなッ」
     「悔しいですか? 悔しがれるほどの自尊心があるとは、随分と生意気なこと」
     信じられない。何故ここまでコケにされなくてはなにらないのか。まだ真田の仕打ちの方がマシだ。
     「まあ、御身には一生分かりますまい。愛するがゆえに憎悪する恋情など。御身の場合は、自分の過ちを忘れたいがゆえに相手を憎んでいるだけですものね」
     「なぜあなたがそんなことを知っているのよッ。どんな理由があって私を侮辱するの! それに、あなたいったい!!」
     枝実子が抗議し終わる前に、相手の手が枝実子の額に伸びてきた。
     「なにをッ」という暇もなかった。次の瞬間、頭に劇痛が走った。
     『この感覚は、あの時にも!?』
     枝実子は、膝を突いてうずくまった。
     「また、つまらぬ物を書いたのですね。己が罪(おのがつみ)にかこつけて」
     「さっきからなんなのよ!」
     大声を出すと頭に響くのだが、このさい我慢する。「あんたいったい何者! なぜ私しか知らないようなことを知っているのッ。何か恨みでもあるの!!」
     「何か恨みですって、白々しい。御身が犯した罪を、よもやお忘れか?――人の心を醜く汚しておきながら……」
     その言葉で、瞬時に眞紀子のことを思い出す――この女、眞紀子の関係者!?
     「誰よ、あんた。いったい何者ッ」
     枝実子の言葉に、いづれまた、と言って和服美人は立ち去ろうとする。
     「待ってッ。私の質問に……!?」
     去ろうとする和服美人の背中を見て、驚く。
     藤色の一つ紋――その紋には見覚えがあった、ありすぎた。
     「……その家紋は……」
     すると和服美人は振り返りもせず、背中を見せたまま言った。
     「近江守護職・佐々木家から分かれ、後に上杉家に仕えた越後武家・片桐家の家紋ですわね」
     「なぜ……あんたがそれを……」
     「分からぬのですか? そんなだから、男の一人も射止められぬのです。愚か者めが」
     鼻で笑い、女は上品そうな足取りで去っていく……枝実子は、追いかける気も失せてしまっていた。


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  • from: エリスさん

    2011年04月10日 15時27分23秒

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    「双面邪裂剣(ふたおもて やみを さく つき)・9」
     「羽柴さん、帰ったのね」
     枝実子が言うと、恥ずかしそうに少し笑いながら麗子は、
     「用があるんですって。三十分も話せなかったわ」
     「それでも会いにきてくれるなんて、愛されてるわねぇ」
     「ええ!? そんなことなァい!?」
     などと言いつつ、顔は喜んでいた。
     「エミリーさんも、いい人みつければ」
     「今のところは不自由してないから。小説の中の男の子だけで十分よ」
     「それって、暗い」
     はっきり言わないでほしかった。
     「本当にいいんだ、今は。これを持ってからね、ボーイフレンドが欲しいなんて考えなくなったの」
     そういって、紫水晶のペンダントを見せる。
     「一人じゃないって、教えてくれたから」
     「……だからなの?」
     麗子の言葉に、顔を上げる。
     「瑞樹さんにも言ったことあるんだけど……どうして近頃、真田さんと会わないの?」
     聞かれたくなかった。が、麗子は何も知らないのだから仕方がない。
     「誠さん(羽柴)とか、みんなも言ってるのよ。この頃、急に二人がよそよそしいって」
     「……真田さんには、あんなに可愛らしい彼女がいらっしゃるでしょ」
     「あんなの、ただミニスカートで色使いケバケバしいだけの、大したことない女よ。真田さんもなんであんな子と付き合ってるのか、訳がわからないけど……でも、あの女が原因じゃないでしょ? あなた、真田さんに彼女がいっぱいいたって、それは仕方のないことだって言ってたじゃない。それだけ人に慕われる、魅力的な人なんだって、むしろ褒めてたわ。それに、真田さんが今まで付き合ってきた人は、どれも彼自身は本気じゃないって、エミリーさんも知ってるはずよ」
     「知ってるわ。あの人、自分からそう言ってるし……見ていてもわかる」
     「それに……言いたくはないけど、振られたんだとしても、友達づきあいはできるでしょ。お互い、才能とか認め合ってるんだもの」
     「あなたのように?」
     枝実子は言ってしまった後、手で口を覆った。麗子も複雑な表情を見せている。
     「……ごめんなさい」
     「いいわよ、事実だもの。確かに、私は真田さんの元彼女だけど、振られたおかげで誠さんの存在に気づいたんだし……私としては、良かったのよ」
     麗子の微笑みに、安堵しながらも罪悪感が残る。枝美子は、少しだけ本当のことを話す気になった。
     「振られたのは確かなんだけど、恨んでいるのは向こうなの。あの人のプライドを傷つけてしまって……乃木章一って人のこと、聞いたことない?」
     「確か、高校時代の、エミリーさんの好きな人」
     「そう。このペンダント、彼とペアなの」
     なんとなくわかって、ああ、と麗子はつぶやく。
     『エミリーさんから心変わりしたのか。いつも一方的に振ってる真田さんにとっては、確かにプライドが傷ついたわね』
     チャイムが鳴る。
     それを合図にしたように、枝実子は身体だけ前に向けて、先生が来るのを待った。
     生徒たちがぞくぞくと入ってくる。
     そして、枝美子はハッとした――ドアから、真田とそのガールフレンドが入ってきて、こっちに向かっていた。
     隣の席にはバッグが二つ……。
     『まさかッ!?』
     枝実子も麗子もそう思った。
     真田の後ろをついてきた彼女は、枝実子を見て、小さな声だったが、はっきりと言った。
     「ええ、やだァ」
     その途端、枝実子の心に影がさす。
     真田は枝実子の隣の二つのバッグを取ると、彼女を連れて、そのまま部屋を出て行ってしまった。
     まるで、真田が先にとっていた席を、枝実子が横取りしたような、そんな反応の仕方だった――枝実子の方が先にいたのに。
     『あてつけるように、それも授業を欠席までして……!!』
     これも復讐なのか? しかも、いま付き合っている彼女だっていい気持ちはしないのに。まさか、このためだけに彼女まで利用したのか。
     『なんてひどい……』
     枝実子は、スッと立ち上がった。
     「エミリーさん?」
     麗子が気遣うように声をかける。
     「図書室、行ってる」
     枝美子は……ベランダから教室を飛び出した。

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  • from: エリスさん

    2011年04月08日 18時37分58秒

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    「Re:先日、変なメールが届きました」
     小説アップは明後日する予定です。


     例の迷惑メールですが、着信拒否にしても、ドメインを変えてまた来るので、DoCoMoの迷惑メール対策設定を最強にしてみました。

     そしたら来なくなったのですが…………TSUTAYAのお知らせメールも来なくなってしまったような? たまたまかな?

     他のジャニヲタの皆さんのところにも届いてるんですよね? 皆さんはどうゆう対策をとりました?

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