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神話読書会〜女神さまがみてる〜

神話読書会〜女神さまがみてる〜>掲示板

公開 メンバー数:11人

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  • from: エリスさん

    2010年06月25日 13時29分40秒

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    「ヘーラクレースの冒険・56」
     「アドーニス様」と、ケルベロスは口を開いた。「察するに、あなた様はこの者の道案内をしているようですが……なぜにあなた様が? それにこの者は死人ではないような」
     「そうさ。彼はまだ死んではいないよ。なんでも、君に用があるんだって」
     「わたしに?」
     「はい、そうなのです」と、ヘーラクレースはここへ来た経緯を説明した。するとケルベロスは言った。
     「事情は分かったが、わたしは冥界の王に仕える身。主の許しなく冥界を離れることはできぬ」
     「だったら、お父様にお許しをいただきに行こうよ。ヘーラクレースさん、僕が居城まで案内します」
     とアドーニスが言ったので、ケルベロスは言った。
     「アドーニス様が行かれるのであれば、わたしもお供します。途中の道には無礼な亡者たちもおりますから」
     「いいけど……ここの見張りはどうするの?」
     「問題ございません。今ちょうど、わたしの弟が来ておりますので、代わりにやらせます」
     ケルベロスはそういうと、遠くの闇に向かって遠吠えをした。すると、そこから懸命に駆けてくる獣の足音が聞こえた。
     「お呼びですか、兄さん!」
     闇の中から出てきたのは、頭が二つある犬だった――その犬に、ヘーラクレースは見覚えがあった。
     「ん? おまえは……」
     「ああ!?!?!?」
     頭が二つある犬は、両方の頭で怖れおののきながら後ずさった。
     「へ、へ、ヘーラクレースゥ〜〜!」
     「兄さん! こいつですよ! 俺たちを殴り殺したのは!」
     「どうか仇を取ってください、兄さん!」
     「あなたが本当の姿に戻れば、こんな人間……兄さん?」
     頭が二つある犬は、兄と呼ぶケルベロスが険しい表情をしているのに気付いて、口を閉じた。
     静かになったところで、ケルベロスは言った。
     「だからわたしが何度も言っていただろう? オルトロス。心正しき主に仕えないと、ろくな死に方はしないぞ、と。おまえが仕えていた魔物は、近隣住民を苦しめていた。だから成敗された。おまえが巻き添えを食って死んだところで、それがおまえの選んだことなのだから仕方ないだろう」
     そこまで聞いてヘーラクレースは思い出した。
     「そうか! おまえ、ゲリュオンのところで牛の番をしていた犬か!」
     「そうだ。貴様に殴り殺されたオルトロスだ! おかげで今は冥界にいる」
     オルトロスと名乗った犬の右側の頭が答えると、ケルベロスが口をはさんだ。
     「主人に選んだ男が悪かったのですよ。だから、次の転生ではちゃんとした主に仕えることができるように、しばらくわたしの仕事を手伝わせながら修業させているのです」
     「そうなんだ」とアドーニスが言った。「今度は優しいご主人様にお仕えできるといいね」
     「はい、まったくです……」
     そんなわけで、その場はオルトロスに任せて、ヘーラクレースとアドーニス、ケルベロスは冥界の王の居城へ向かったのだった。
     歩きながら、ヘーラクレースは気になっていたことがあったので、アドーニスに聞いた。
     「先刻のオルトロスには人格が二つあったようですが、ケルベロス殿には人格が一つしかないのですね。頭は三つもあるのに」
     「そうだよ。実は、左右の頭は飾りでしかないんだ。実際の頭は真ん中のものだけ――もっと突き詰めると、実はこの姿も作りものなんだよね。本当のケロちゃんはもっとカッコイイんだよ。まるで銀色の狼みたいなんだ」
     「銀色の狼? それは見てみたいですね」
     「ここでは駄目だよ……っていうか、僕たち家族にしか見せられないんだ。ケロちゃんは仕事のために見た目を恐ろしくしているんだ。亡者がここから逃げ出そうと思わないように、脅かしているんだよ。だから、あそこから離れてからケロちゃんはしゃべっていないでしょ?」
     「はい、確かに」
     「言葉が話せると分かってしまうと、意思の疎通ができるなら、なんとか説き伏せて見逃してもらおうと思う輩がでてくるかもしれない。だから、犬語しかしゃべれないことになっているんだ」
     「なるほど……」
     それから居城までの道のりで、彼らは幾人もの亡霊に話しかけられた。だいたいは無視して歩いたが、その中の一人があまりにも必死にヘーラクレースにすがりつくので、彼は足を止めてしまった。
     「わたしはメレアグロスと言う。非業の死を遂げてここへ来たが、わたしの死後、残してきた妹が心配でならない。あなたはあの有名なヘーラクレース殿でいらっしゃいましょう。どうか、我が妹デイアネイラを妻に娶ってはくれないか」
     「妹御(いもうとご)のことが心配なのは分かるが、結婚はお互いの意思が決めるもの。妹御がわたしを気に入ってくれ、わたしも妹御を妻にしてもいいと思えたら、その時は必ず結婚しよう」
     「そうか……ではせめて、妹の様子だけでも見てきてくれ。妹によこしまな思いを描いていた河の神がいた。妹が望んでもいないのに、かなり強引に求婚してきて……わたしが居なくなって、そいつが妹に悪さをしないかと、気が気ではないのだ」
     「分かった、そういうことなら。地上へ出たらすぐに妹御の様子を見に行こう」

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  • from: エリスさん

    2010年06月18日 11時40分47秒

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    「ヘーラクレースの冒険・55」
     無事に一ヶ月間の潔斎を終わらせたヘーラクレースは、巫女の手によって「生きながら冥界へ旅立てる秘術」を施してもらえた。
     「道案内は彼がしてくれます」
     巫女は礼拝堂の隅の暗闇の方へ手を向けた――そこに、老人が一人立っていた……足が地に着いていない老人が。
     「彼は夕べ亡くなったばかりなのです。冥界への道筋は、彼が本能で見つけだすことでしょう」
     つまり幽霊と連れだって行け、ということなのだが、ヘーラクレースは恐れもせずに老人の幽霊の方へ近づいた。
     「よろしくお願いします、おじいさん」
     「こちらこそ」と老人は言った。「一人で寂しく行くよりも、連れがいてくれた方が助かりますでな」
     ヘーラクレースと老人はさっそく出かけることにした。道すがら老人が旅の話を聞かせてほしいと頼むので、ヘーラクレースは快く語って聞かせた。二人が楽しく語らいながら歩いていると、いつのまにか海岸沿いに来ていた。
     冥界への入口は、海岸沿いに並ぶ大きな岩の裏にあった。表から見た時は何もわからなかったが、裏に回ると、突然そこに穴が開いたのである。その穴の深さなら、岩の表にも突き抜けていなければおかしいところなのだが。
     「なるほど、ここからは異世界――つまり冥界につながっているということなのか」
     「ほんに不思議ですなァ」
     二人はなんのためらいもなく、穴の奥の暗闇に入って行った。
     しばらく歩いて行くと、洞窟の途中に小さな明かりがいくつか灯るようになっていった。
     「いよいよそれっぽくなってきましたね」
     ヘーラクレースが言うと、隣を歩いていた老人が言った。
     「本当ですね」
     ……老人のはずなのだが、声が少し若返っていた。不審に思って見ると、実際に老人が中年ぐらいに若返っていた。
     「あの……おじいさんですよね? 一緒にここまで来た」
     「ええ、そうですよ」
     次の明りにたどり着いたとき、老人の姿は青年になっていた。
     「どうやら冥界に入ると、死者は若いころの自分に戻るようですね」
     次の明かりがあるところまで、老人は話しながら歩いた。ヘーラクレースも置いて行かれないようについて歩いていくと、その声がどんどん若返っていくのが分かった。
     「どうやら記憶も戻るみたいです。僕がこの姿になる前の……前世の僕が……戻ってくる……」
     二人は大きな明りがある所――冥界の門の前にたどり着いた。
     そこに、ヘーラクレースが目指していたものがいた。冥界の番犬・ケルベロスである。恐ろしい形相をした三つの頭を持つ犬……のはずだが、ケルベロスは二人の姿を見ると、嬉しそうな顔をして駆け寄ってきた。
     「ワホンワホン!」
     ケルベロスは、今や少年にまで若返った老人にまとわりついた。
     「久しぶり! ケロちゃん! 元気にしてたかい?」
     それを聞いて「け、ケロちゃん?」とついヘーラクレースは聞いてしまった。
     「そう、ケロちゃん。僕とケルベロスは友達なんだ。八十八年ぶりの再会なんだよ」
     「へえ……つまり、前世で仲良くなったと?」
     「前世って言うか、僕、生まれ変わるの五回目なんだ。だから相当前からの友達だよ」
     「いったい、あなたは……」
     ヘーラクレースが訳が分からなくなっていると、突然ケルベロスが口を開いた。
     「コラ、下郎! 王子に向かって失礼なるぞ!」
     「え!?」
     ケルベロスが人間語を喋るのにも驚いたが、そのケルベロスが老人――もとい少年のことを「王子」と呼んだのにも驚いた。
     「こちらの御方は、冥界の王ハーデース様と、お妃のペルセポネー様の御養子・アドーニス王子様なるぞ!」
     「ええ!?」
     ヘーラクレースにとってはすでに伝説の彼方に消えた人物である。美の女神アプロディーテーの愛人であり、幼少時代はペルセポネーに育てられたという。アドーニスの所有権をこの二人の女神が争ったことは有名で、伝説ではアプロディーテーが勝った形になっている。しかし、実際のアドーニスがこうして「冥界の王の養子」になっているところを見ると、どこかで伝説がゆがめられて伝わっているらしい。
     ヘーラクレースがそんなことを考えていることを察したアドーニスは、少年らしい愛らしさでニコッと笑った。
     「実際は伝説とはかなり違うよ。僕は確かにアプロディーテーの愛人にはなっていたけど、花になんかならずに、こうして何度も生まれ変わって、いつかはハーデースお父様とペルセポネーお母様の実子として生まれ変われるよう、修行の旅をしているのさ」
     「人間から神へ……かなり大変そうですね」
     「でもいろいろなことを勉強できて、楽しいよ」

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  • from: エリスさん

    2010年06月18日 10時40分16秒

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    祝40万!

     このサークルの総アクセス数も、とうとう40万アクセスを超えました。

     ありがとうございます。これもひとえに読者の皆様のおかげです。

     最近は体調不良のせいで更新がかなりノロノロの亀さんですが、どうか長い目で見てやってください。

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  • from: エリスさん

    2010年06月11日 11時41分05秒

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    「夜中に目が覚めて 後日談」
     とりあえず、病院に通わなくてもよくなりました。


     完璧に治ったのか? と、問われると「う〜ん?」と頭を捻るところですが。
     通っていた内科の先生には「喉の専門のお医者さんに診てもらった方がいい」と言われたのですが、その同じ病院内の喉の専門の医者というのが、週に一回の午前中にしかいない――しかも私が通えない曜日に。それじゃちょっと困る(-_-;)
     実は同じ理由で右腕の筋肉痛も診てもらえない状況で、もう一ヶ月も湿布のお世話になっている。まあ、こっちはうちの父が帰ってくれば診てもらえるからいいんですが.....(うちの父は新潟県で整体師をやっています。月に一回、一週間だけ東京に帰ってくる)
     かと言って他に病院を探すのも難しく、とにかく夜中に目が覚めることさえなければ、仕事には影響が出ないからと、いろいろと試した結果、

     「寝る前にうがい薬をつかって、うがいをする」

     それだけで夜中に目が覚めることがなくなりました。
     私が夜中に目を覚ましてしまう理由は、喉に痰が絡まって、呼吸をするたびにピューピューと音を鳴らし、息苦しくなってしまうからでした。だから、痰さえできなければ眠れるんです。
     これで、病院から「喉を拡張させる薬」をもらわなくてもよくなったので、病院に通うのをやめました。


     しかし、約一ヶ月間の闘病生活はちょっと大変でした。
     先ず、夜に眠れないから昼間が眠い......仕事中にぼうっとしていることもあったと思います。実際、会社の方に、
     「ストアのレジをやっていた人が、あまりにやる気がなさそうだったので、前売り券を買うのをやめました」
     と、苦情のお手紙がきたとか.........ああ! それ、絶対わたしだ!
     そのことを上司から聞かされて(誰がそうだった、という追及はありませんでしたが)、今後はそういうことがないように、休日であまり体調が良くない日は昼寝をするようにしていました(3時間ぐらい)
     その影響もあって、困ったこと2番目――見たい映画をいくつか見逃した。
     「アリスインワンダーランド 2D版 日本語吹替」をとうとう見逃してしまったぁぁぁぁぁぁ! まだ体調完璧じゃないから3Dは見られないというのに!(3D映画は体調が万全の時に見ないと、乗り物酔いと同じ症状が出るタイプなんです、私)。あと、このままでいくと「RAILWAYS」も見逃す可能性が......。「超電王トリロジー エピソード・レッド」も、もう一度見たかったのにちょっと無理そう。
     でも一番困っているのは、医療費が異様にかかってしまったこと。以前もお話ししたかと思いますが、うちの映画館は今、「平日のみ閑散期」に入っているので、平日だけ人員削減をしているんです。その結果、私の出勤時間が短くなり、その結果、来月のお給料がかなり少なくなっているはずなんです。
     来月のことを考えればお小遣いを節約しなければならないのに、医療費にかなり持ってかれてしまいました。なので、仕方なく、次のことを諦めました。

     ・今年の夏は新しい服を買わない
     ・6月18日の「スイートトリップイベント」は不参加


     そんなわけで......
     秋葉原の姉妹カフェ「スイートトリップ」で再会を待ちわびておりましたお姉様方と、店鳥さま、そしてぴよちゃん(このお店ではメイドのことをこう呼ぶ)達、ごめんあそばしませ。今回、私――エリスはイベントに参加することができません。とても残念ですがお許しくださいませ。またの機会を心待ちにしておりますわ!


     と、スイトリの常連さんじゃないと分らないと思いますが、きっと皆さんが読んでくださっていると信じて、ここに書かせてもらいます。
     とにかくこの一ヶ月は、健康って本当に大事なんだなァっと、つくづく実感させられました。読者の皆様も体調にお気を付けください。

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  • from: エリスさん

    2010年06月05日 01時09分12秒

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    夜中に目が覚めて またしても

     治ったと思ってたのに、またぶり返した。
     薬を使用しなくなった二日後ぐらいに、また具合が悪くなる――この繰り返しだ。
     いつになったら治るのだろう……月曜日にまた病院に行かなきゃorz

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  • from: エリスさん

    2010年06月04日 14時02分53秒

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    「ヘーラクレースの冒険・54」


           第12の試練 冥界の番犬ケルベロスを連れてくること


     ヘスペリデスから帰ってきたヘーラクレースを、エウリュステウスは三日間休養させから、最後の試練を申しつけた。
     「十二番目、最後の試練は、冥界へ行ってきてほしい」
     「冥界?」と思わずヘーラクレースは聞き返した。「あの、死者が行く世界ですか?」
     「そうだ。そこにいる番犬ケルベロスを連れて帰ってくるのだ……最後の試練に相応しい、難題であろう?」
     「はい……冥界へは、死ななければ行けませんから」
     ヘーラクレースがいつになく自信がなさそうに言うので、エウリュステウスは笑った。
     「まさか、わたしがそなたに“死ね”と言うと思っているのか?」
     「いいえ!? そんなこと……」
     万が一にもそんなことは有り得ない。これまで培ってきた二人の関係は、主従を超えて友人と呼べなくもないと、互いに思っているのだから。
     ……そうなると?
     「生きながらにして、冥界へ行く方法があるのですか?」
     ヘーラクレースの言葉を聞いて、エウリュステウスは満足げに微笑んだ。
     「冥界の王ハーデース様の妃は、豊穣の女神デーメーテール様の一人娘であるペルセポネー様だ。そのつながりで、デーメーテール信仰の篤(あつ)いエレウシースの民の中に、冥界への安全な旅ができる秘儀を行える者がいると聞く。先ずはその者たちを探すのだ」
     ヘーラクレースはそれを聞くと、すぐにもエレウシースへと旅立った。そこで聞き込みをすると、ヘーラクレースの評判がすでにこの町にも流れていて、そのおかげで秘儀を行える者をすぐに見つけ出すことができた。
     「冥界へ生きたまま行くためには、先ず一ヶ月間の禊(みそぎ)が必要となります。しばらくこの地に滞在なされて、精進潔斎をなさってください」
     こうして、ヘーラクレースは汚れを祓うための精進潔斎を受けるために、エレウシースに一ヶ月間滞在することになったのだった。

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