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神話読書会〜女神さまがみてる〜

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  • from: エリスさん

    2015年03月20日 14時28分34秒

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    悠久の時をあなたと・5

    それからのことは、レイアーはまたテイアーから聞いた。
    ガイアのもとにウーラノスが訪れた夜、ウーラノスは一瞬で自分の服を脱ぎ、ガイアの服も乱暴に剥いで、今まさに彼女に覆いかぶさろうとした時、ベッドの影に隠れていたクロノスが現れ、手に持った大鎌でウーラノスの男根を切り落とした。その時にウーラノスの血が窓から外へと飛び、大地に落ちて巨人ギガスと、三人の復讐の女神・エリーニュエス(単身の時は「エリーニュース」と呼ぶ)が生まれた。
    ウーラノスは逃げ帰る際にクロノスに、
    「おまえもいつか、我が子に裏切られて、むごたらしい死にざまを晒すことになるだろう!」
    と、呪いの言葉を吐いたという。
    「それじゃ、お父様は生きているのね?」
    レイアーが言うと、テイアーは、
    「そうみたいね。でも、どこへ行ってしまったのか全然わからないそうよ」
    翌日、ガイアによってレイアー達は呼び集められた。
    話題は当然の如く、ウーラノスの跡を誰が継ぐのか、ということだった。
    「クロノスは末子とは言え、今回の功労者である。次の統治者にはクロノスがなるべきと思うが、異存のある者はおるか?」
    ガイアの言葉に、誰も逆らえる者はいなかった。長男のオーケアノスも、
    「異存ございません、母上。次の統治者にはクロノスこそ相応しいと思います」
    と言ったので、他の兄弟たちもそれぞれに頷いてみせた。
    「よろしい、ではクロノスに統治権を授ける」
    ガイアは玉座から降りると、代わりにクロノスを座らせた。
    「母上と兄上たちの期待に応えられるよう、全力で勤めさせていただきます」
    クロノスがそう挨拶をすると、ガイアは笑顔で頷いて、言った。
    「統治者、すなわち神々の王となったからには、妃が必要だな」
    するとクロノスは「え?」と頬を赤らめた――王になったとはいえ、彼はまだ12歳の少年である。(体の成長はすでに17歳ぐらいだが)
    「実際、そなたの仕事を助ける立場の女神は必要なのだ。とは言ってもまだこの世界には神自体が少ない。選ぶとなると、そなたには叔母にあたる私の姉妹か、私の娘たちしかおらぬ。誰が良い?」
    「誰が良いと言われましても......叔母上たちはご遠慮申し上げたいです」
    「では、我が娘――そなたの姉たちから選ぶが良い」
    「は......はあ......」
    クロノスは困っていた。思ってもみなかった展開に、頭が付いて行かないのである。
    そしてレイアーは、自分の胸が高鳴って苦しささえ感じていた。クロノスが誰かと結婚する――そんなことになったら、もう生きてはいられない、とまで思った。
    『クロノス、あなたは誰を選ぶの? つい最近仲良くなった私なんて、選んでくれるはずがない。他の姉妹とはもっと前から交流があったかもしれないもの......』
    レイアーが思っていると、姉妹の一人であるポイベーが言った。
    「歳の順からいったら、テイアーお姉様が一番先にお嫁に行くべきよね」
    「え!?」と、クロノスとテイアーは同時に驚いた。
    「ちょっと待ってよ!」と、テイアーは言った。「なにを勝手なことを」
    「あらだって、そうじゃありません?」
    「歳の順なんて関係ないでしょ!」
    そこでヒュペリーオーンも口を開いた。「わたしも、クロノスを補佐するなら姉上が適任だと思いますが?」
    「やめてよ、ヒュペリーオーン! あなたがそんなことを言うなんて!」
    「しかし、姉上」
    「もうやめて! ヒュペリーオーンの意地悪!」
    テイアーが今にも泣き出しそうな表情を見せるので、レイアーは察した。
    『お姉様、ヒュペリーオーンが好きなのね?』
    そう言えば今まで、テイアーがレイアーに教えてくれた話と言うのは、ほとんどがヒュペリーオーンから聞いた話である。ヒュペリーオーンに会いたいテイアーは、なにかと用事を作って彼のもとを訪ねていたのだろう。
    このままではテイアーが悲しい目に遭い、また、自分にとっても不幸なことになってしまう。しかしレイアーには、自分から妃に立候補する度胸はない。
    レイアーも泣きそうになっているのを、クロノスは気付いた。そこで彼は意を決した。
    「分かりました! 妃を選びます!」
    クロノスは玉座から降りると、まっすぐにレイアーの前まで行った。そして彼女の手を取ると、言った。
    「レイアー姉上、僕の妃になってください」
    「クロノス!」
    レイアーは一瞬で幸福の笑みを浮かべた。「私でいいの?」
    レイアーのその嬉しそうな表情に、求婚していた兄弟たちは落胆を拭いきれなかった。
    「姉上がいいのです。プロンテースとステロペースを助け出した後、二人の様子を見に来てくれたのは、姉上だけでした。あなたのその優しさに、僕は引かれ始めていたのです」
    「ああ、クロノス! 私もよ」
    レイアーはクロノスに抱きついた。「父を倒すことよりも、弟たちを助けたいと言ったあなたの優しさに、私は引かれ始めていたの」
    「姉上......」
    「もう、姉上じゃないわ」と、レイアーはクロノスから離れた。「レイアーと呼んで!」
    するとクロノスは恥ずかしそうに頬赤らめて、
    「レイアー......」
    と言った。そして、彼女と一緒に玉座に登ったのだった。
    こうして新しい王と王妃が誕生し――しばらくは、平穏な日々が続いたのである。

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