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神話読書会〜女神さまがみてる〜

神話読書会〜女神さまがみてる〜>掲示板

公開 メンバー数:11人

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  • from: エリスさん

    2011年10月28日 13時56分45秒

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    「双面邪裂剣(ふたおもて やみを さく つき)・28」


     お昼を抜いていただけに、夕飯がおいしい。それでも決してがっつかないのは、他人の家だからかもしれない。
     「タケル君はおとなしいのねェ」
     章一の母親に言われ、枝実子は照れ笑いをするしかなかった。
     章一の父親、姉とも同席していたので、ハッキリ言って緊張もしていた。
     「片桐君はクラブはどこにいたのかな」
     父親に聞かれ、枝実子は、
     「音楽部でした」
     「男子部にも音楽部があったの。普通は女子部だけとかだよ、母さん」
     枝実子も章一もそれを聞いて、喉につかえそうになった。だが、
     「あの高校は少し変わってますからね。歌舞伎研究部があったくらいだから。ねェ?」
     と母親が言ってくれたので、枝実子は、
     「そうなんですよォ〜」
     と言ってごまかすのだった。
     食事も終わって、二人は部屋へ戻って、揃ってため息をついた。
     「頼むよエミリー。発言には気をつけて」
     「それより、胸が苦しいんだけど、なんとかなんない?」
     「駄目だよ、タオル外したらバレる」
     「男役は演劇で慣れてるはずなのになァ」
     第一日目にして、すでに弱気な二人である。
     「なんか、迷惑のかけどおしだな」
     「……迷惑ぐらい、かけてくれた方がいいな」
     章一の言葉に、目線を向ける。
     「いつも自分を犠牲にしてたところがあったから、迷惑かけてもらった方が安心する」
     「……悪いな」
     「謝るなって。それより、明日の打ち合わせをしよう」
     枝実子はうなずくと、バックの中からバインダーを取り出して、その中に挟んである時間割を見せた。
     「あいつのことだ、俺になりきる為にも、時間割は俺が組んだものを使っているはずだ」
     「自分で時間割が組めるの?」
     「中学や高校と違ってな。うちの学校は就職活動でも短大扱いになってるし……あいつのおかげで就活も遅れそうだな」
     「そんなことは後で悩んで。それで?」
     「それで、明日は一限目しか授業がないから、とりあえずおまえに如月の顔を見てもらうことと、友人たちの様子を見るだけにとどめたい。授業が終わったら如月もさっさと帰るだろうし」
     「君の家の様子は見なくていいの?」
     「それは危険だ、やめた方がいい――心配なのもあるけど」
     「景虎ちゃんだっけ? 妹みたいに可愛がってる猫」
     「うん。景虎は猫だから如月の魔力は効いていないんだ。だから、如月に懐かないで邪険にされてるかもしれない」
     「見に行こうよ。どうせ電車も同じ線で下車できるし。君の家、K駅にあるんだろ」
     「そこからバスで二十分、歩けば三十五分だ」
     もはや最寄り駅とは言いがたい。
     「いいよ、景虎のことはまたの機会だ。あの子も如月に逆らうような、そんな無茶はしていないだろう。兄貴もいるし」
     いまいち自信の持てない言葉である。
     「如月が何かことを起こすとすれば、明後日の土曜日、四限目まで授業があって詩ゼミもある日だな」
     「その時は、場合によっては俺一人で行ってみよう。もちろん変装して」
     「その時は重々気をつけて」
     「わかってる」
     そこへ母親がドアの向こうから声をかけてきた。
     「お風呂わいてますから、タケル君どうぞ」
     「あっ、すいません」
     枝実子はそう答えてから、ハッとした。
     着替えもないけど、脱いだ下着を見られたらどうしよう。
     「おまえの家って、お風呂の後すぐに洗濯する家? 俺の家はそうなんだけど」
     「いや、洗濯機の中には入れとくけど」
     「それって誰が入れるの? お母さん?」
     「自分で」
     それなら、誰かが入浴中に脱衣所にさえ来なければ平気である。
     「乃木君、頼みがあるんだけど」
     「ん?」
     かくして章一は……枝実子の入浴中、見張りをすることになったのである。



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  • from: エリスさん

    2011年10月28日 11時47分36秒

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    ブログを始めました

     すでにご存知の皆さんも多いかとは思いますが、下記でブログを始めました。併せてお楽しみください。


      「淮莉須部琉の隠れ家」ae11607@circle



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  • from: エリスさん

    2011年10月21日 14時29分41秒

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    「双面邪裂剣(ふたおもて やみを さく つき)・27」
     「話さなければいけないことは分かってる。何故、如月が現れたのか、その要因を。でも、まだ駄目だ」
     章一はそれを聞くと、微笑んでから、部屋の隅の壁に飾ってある写真パネルを降ろして、枝実子に見せた。
     「懐かしいでしょう」
     「おお、綺麗だなァ」
     それは、高校の三年間、歌舞伎研究部で女形をつとめた章一の最後の舞台写真だった。
     双面水照月(ふたおもて みずに てる つき)――時は春、隅田川が舞台。しのぶ売り姿のお組が渡し場に来ると、お組に瓜二つの娘が現れる・それは、かつてお組に恋をしつつ死んだ法界坊(ほうかいぼう)の死霊。法界坊の霊は叶わなかった恋の恨みを晴らそうと、お組とそっくり同じ姿で散々苦しめるが……。
     章一が演じたのは法界坊だった。舞台はすべて踊りで表現される(所作事という)
     「双面(ふたおもて)ってどうゆう意味か知ってた?」
     「一人の人物に二つの人格が宿ること……だっけ?」
     「惜しい。正確には、二人の人物が全く同じ姿形で現れて、周囲を惑わして、最後に一方が亡霊である正体を現す――っていう、歌舞伎の表現方法のことを言うんだよ」
     「歌舞伎の技法なんだ……心理的な言葉なのかと思ってた」
     「そういう解釈をしてみたくなるよね、今のエミリーなら……俺もそう感じたから」
     「……俺と如月が、そんな感じなんじゃないかって?」
     「うん。まだ如月がどんな人物か見ていないから、はっきりとしたことは言えないけど、イメージとして、似て非なる二人の人物が相対しているように思えるよ、俺には」
     「うん……そんな感じだよ。実際、元は一人の人間なんだから」
     それから章一は、去年の秋からどんなことをしていたのか話してくれた。劇場通いはしばらくやめていて、今は気功術の学校に通っているという。枝実子同様、神話の研究も細々ではあるが続けているそうだ。たまには旅行にも行き、その土地の伝説を聞いてきたり、できれば外国にも行ってみたいらしい。
     「今一番行きたいのは、インドかな」
     「仏教の国だね。仏像でも眺める気?」
     「美術の勉強に行くわけじゃないんだよ。その土地の人々の生活を垣間見るのもいいと思って」
     「相変わらず勉強家なんだ」
     「エミリーこそ。小説書くためにいろんな書物読んでんだろ。去年は日本史に懲りだしたって言ってたけど」
     「今でもこってるさ。卒業制作は飛鳥時代を舞台にしているよ。おかげで、日本書紀とか万葉集ばっかり最近は読んでる」
     「日本書紀に書かれていることなんか信じてるの?」
     「全部が全部じゃないけど。題材としてはおもしろい。神代のころは特に」
     「エミリーは多神教派だからなァ。未だにヘーラー女神が一番好きなの?」
     「ああ、尊敬してるよ。いつかギリシアへ行って、女神の神殿で跪(ひざまず)くのが夢だ」
     「ハハハ……俺たちって、普通しないような会話ばっかり」
     「俺のはおまえに感化されたんだからな」
     「よく言うよ。しっかり論文にしてたじゃないか」
     「悪かったな。あの時は題材が無かったんだよ(高校の自由研究で、宗教論を並べ立てた)」
     しばらくそうやって、二人は懐かしい雰囲気に時間を費やしていた。



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  • from: エリスさん

    2011年10月14日 14時58分29秒

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    「双面邪裂剣(ふたおもて やみを さく つき)・26」
     枝実子は順を追って如月のことを話し始めた。自分の作品が盗作されたことや、いきなり彼が現れて、自分と入れ替わろうとしていること、声を取られたこと、周りの人間の記憶が操作されていることなど。
     「如月はきっと、俺の潜在意識が作り出した魔物だと思う。何か、俺のことを俺自身が知らないことまで知っているみたいで……気味が悪いだろう?」
     「いや、そういうことは、あってもおかしくない世の中だよ」
     「信じてくれるのか?」
     「不可思議なことなら慣れっこになってる。図書室でよく話しただろ」
     「これは霊体験とは大分違うぞ」
     「似たようなもんだ」
     「どっちでもいいけど……良かった、信じてもらえて」
     「エミリーが俺に嘘ついたことないからね。――で、これからどうする?」
     「如月をどうにかしたい。でも、俺一人じゃやっぱり無理だし、おまえなら力になってくれると思って。とりあえず、身を隠すところが欲しい。どこかないか?」
     「じゃあ、俺ん家来れば?」
     「女の友達なんか、親が許さないだろ」
     「さすがに女の子を泊めたことはないけど、男の友達なら何度か泊めたことあるから。それに、俺ん家にいたほうが安全だろるその如月って奴も俺のことまで気が回らなかったくらいだし」
     「そりゃそうだけど」
     枝実子はしばらく考え込んだ。
     親がなんだと言っていられる時ではないのだが、章一の親なだけに、後で問題を起こしたくない。なにせ章一は……親友の約束をした間柄だ。
     さしたる問題として、女でなければいいのだ。
     「わかった、男に化けよう」
     「うん、それがいい」
     枝実子の無茶な考えに簡単に賛成してしまう章一だった。
     胸をタオルできつく巻いて潰す。服装は元より男っぽい。腰までの髪は……。
     「できれば切りたくないんだが」
     「大丈夫だよ。最近は髪の長い男が多いから。その代わり纏めて」
     「まあ、結わくぐらいは譲歩しよう……それより、いきなり行って泊めてくれるか? 一日や二日じゃないし」
     「それは平気。俺の気まぐれには両親も姉貴も慣れてるよ」
     章一の言ったとおり、母親は快く枝実子を家へ上げてくれた。
     「同じ高校だったの。クラスも一緒?」
     「いいえ、クラスは違いますけど、委員会が一緒でした」
     「ああ、図書委員会で。この子、ちゃんと仕事してました?」
     「それはもう、委員長でしたから」
     「そうなんですってね。この子が委員長とか部長とか出来る子だとは思わなかったんだけど。でも、図書委員会の方はもう一人委員長がいて、その子がほとんどやっていたそうね」
     「実はそうなんです」
     枝実子が笑いながら言うと、章一は、
     「お母さん、そうやって質問攻めにしないでよ。エ……片桐君だって困るだろ」
     「はいはい。ところで、下のお名前はなんて言うの?」
     「え!?」
     章一が一瞬ドキッとして聞き返した。
     「下の名前よ。片桐、なんていうの?」
     「えっと、それは……」
     すると枝実子は平然と言った。
     「タケルって言います」
     章一は、ハ? と思ってしまったが、それが母親にバレないようにしていた。
     「片桐建です。しばらくお世話になります、おば様」


     章一は枝実子を自分の部屋に案内した。その時、部屋の鍵についていたものに枝実子の目が止まった。
     「あっ、それ」
     紫水晶――あの時、枝実子とペアで買ったものだ。
     「男がペンダント下げるなんて、変だろ?」
     「それで……持ち歩いてくれてたのか」
     「君も、それは今日だけじゃないだろ」
     「もちろんだ。たまには他のをつけろって、友人たちにも言われてる」
     鍵を開けて、枝実子を先に中へ入れる。そして、後ろ手にドアを閉めた章一は、言った。
     「エミリー、タケルって誰?」
     「ん?」
     「すぐに出てくるような名前だから、何か特別な名前だろ」
     枝実子はキョトンとした表情をした。
     「小説のキャラクターの名前とか、変な言い訳しないで、正直に……」
     「おまえ、忘れたのか?」
     「何が」
     「一度会わせただろう? 兄貴だよ」
     「は?」
     章一は記憶の奥にあった、ほとんど忘れかけていたことを思い出した――昨年の秋、枝実子の専門学校の文化祭で初めて会って、枝実子が紹介してくれた人物。
     「私のお兄ちゃん。建設の建って書いてタケルって言うの」
     すっかり思い出した章一は、顔を赤らめた。「ごめん、忘れてた」
     枝実子はそれを聞いて、少しだけ笑った。
     「嫉妬してるみたいだな」
     「違うよ。なんのためらいもなく男の名前なんか出すから、俺に隠してる男がいるのかと思って……」
     『だから、それが嫉妬でしょ?』と枝実子は思ったが、そこは言葉にしないで、こう言った。
     「おまえには何も隠してない。真田さんのことだって話しただろ」
     そして、枝実子は表情を曇らせた。
     そうなのだ、そのことも話さなければならない。眞紀子のことも……話すのは辛いけど。

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  • from: エリスさん

    2011年10月07日 14時32分22秒

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    「双面邪裂剣(ふたおもて やみを さく つき)・25」


     枝実子はある友人の家の近くまで来ていた。もうお昼をとっくに回っている。初めて来る家なだけに散々歩き回って、やっとここまで来たのである。
     友人の家がどこにあるかを確かめて、その曲がり角にある電話ボックスに入る――いきなり訪ねてもびっくりさせるだけなので、先ずは電話。
     『家にいればいいけど……俺のことが分かればいいけど』
     おそるおそるテレホンカードを入れて、番号をプッシュする。コールしている間、緊張感が募る。忘れていないでほしい、自分のことが分かりますように……そんなことを思いながら待っていると、母親らしい人が電話に出た。
     「はい、お待たせいたしました、乃木でございます」
     「あの、高校時代の友人の片桐と言いますが、章一君はご在宅でしょうか」
     「はい、少々お待ちください」
     保留にするためのオルゴールの音が聞こえてくる(当時、電話自体に保留音が付いていなかったころ、電話用のオルゴールがあった。フックの付いたオルゴールの上に受話器を置くと音楽が流れるのである)――こんな時は男の声で良かったと胸をなでおろす。
     問題は、章一が出てからだ。
     オルゴールの音が止む。
     「はい、章一です」
     懐かしい声。……なんて切り出していいか分からない。
     「もしもし、電話代わりましたけど」
     「……乃木君、俺のこと分かる?」
     「え?」
     「わけがあってこんな声をしてるけど、俺……あの……」
     信じてもらえるわけないか……と思いながら話していると、向こうもおそるおそる小さな声で言った。
     「エミリー?」
     枝実子はそれを聞いて、つい嬉しくなって、
     「俺のこと分かるの!?」
     「だって、片桐って言ってたし、それに、なんとなく君じゃないかって……何かあったの?」
     「電話じゃちょっと無理なんだ。今、君の家のすぐ近くまで来てるんだ。出てこれない?」
     「いいよ、どこにいるの」
     「君の家のすぐそばの電話ボックス」
     「だったら直接来ればいいのに」
     「事情を説明してからでないと無理だったんだ」
     「分かった。そこで待ってて」
     電話が切れる。
     あとは顔を見てもらって、本当に自分が枝実子だと分かるかどうか……それが一番問題なのだ。声だけではまだはっきりと分からない。顔のイメージとかは如月を記憶しているかもしれない。
     足音が聞こえてくる。
     枝実子は反射的に電話ボックスから飛び出した。
     章一は枝実子をしっかりと見て確かめてから、彼女のことを呼んだ。
     「エミリー!」
     「本当に俺のことが分かるのか? 俺がエミリーだって認めてもらえるんだな?」
     「あたりまえだろ。それに、もし君が変わってしまっていたとしても、君が醸し出す周りの空気で分かるよ」
     枝実子はやっと本当の意味で安堵した。
     「何ヶ月ぶりかな、乃木君」
     「去年の秋に会ったきりだったからね。良かった、元気そうで」
     「俺は殺したって死なないよ」
     「言えてる」
     久しぶり笑えた。
     「何か、言葉遣いが以前より男っぽい」
     章一に言われ、
     「いろいろとあったんだ」と枝実子は答えた。
     「話を聞いてくれるか? 長くなるけど」
     「そのために来たんだろ。近くに公園があるんだ、そこへ行こう」
     「悪いな、迷惑かけて」
     「何言ってるの。俺と君の仲だろう」
     歩き出しながらそう言う章一に、枝実子は『あれ?』と思った。
     「一人称、変わった」
     「ん?」
     「以前は自分のこと“僕”って言ってたのに。そういや、髪形も変えたな」
     「そりゃ、多少は変わるよ。エミリーだって少し痩せたよ」
     「そうか? 以前より太ってるかと思ったけどな」
     「アハハ、その劣等感は相変わらずなんだ」
     「わァ〜るかったなァ〜」
     「その凄み方も図書委員のころから変わってない」
     「俺にそういう言い方ができる男は、君だけだ」
     「なに? 未だになの?」
     「なにが」
     「他に彼氏はいないのかってこと。いい加減につくりなよ」
     「できたら苦労しないよ」
     そんな会話をしながら目的地へ着く。こんな時に大分ふざけた会話をしていたが、枝実子の表情を一目見て切羽詰っていることを悟った章一の心遣いであり、そのことに枝実子自身も気づいていた。

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