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神話読書会〜女神さまがみてる〜

神話読書会〜女神さまがみてる〜>掲示板

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  • from: エリスさん

    2010年04月30日 15時07分58秒

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    「ヘーラクレースの冒険・51」
     ヘーラクレースがミュケーナイに帰ると、王宮ではテウス王子の内々の成人式を執り行っていた(王子は十五歳になっていた)
     「なぜに大々的にやって差し上げないのです? 王の跡取りでいらっしゃるのに」
     ヘーラクレースが当然の疑問を投げかけると、エウリュステウス王は苦笑いをしながら答えた。
     「王妃がこれでいいと言うのだよ。税金の無駄遣いはしたくないと。国民の中には成人式どころか、誕生日も祝ってもらえない貧しい子供もいるのだからと」
     もちろん言いわけである――ヘーラクレースは知らないことだが、実はこの国では王の子供が何人いるか、何歳になるのかなど、一切公表していなかったのである。後々のために……。
     「さて、次の試練の前に話したいことがある」
     以前クレーテー島で捕まえてきた牡牛だが、アッティケーの野に放たれてから数カ月のちに、また暴れ牛に戻ってしまっていた。
     これはすぐにでもヘーラクレースに退治してもらわねば……とエウリュステウス王が思っていたところ、一人の青年がふらっと現れて、この牛を退治してくれた。
     その青年の名をテーセウスと言った。アテーナイ王アイゲウスと、トロイゼーン王の娘アイトラーとの間に生まれた王子で、アイゲウスにとっては王妃以外の女から生まれた庶子であった。
     テーセウスが父親を訪ねてアテーナイへ来たとき、それをアイゲウスよりも先に見つけたのが新たに王妃となったメーデイア――あのイアーソーンが黄金の羊の毛皮を手に入れる時に手助けをし、のちに彼の妻となったメーデイアである。イアーソーンと別れてアイゲウスと再婚していた彼女は、テーセウスがアイゲウスの息子であるとすぐに見破り、彼が現れては自分の幸せが失われると思って、二人が親子の名乗りをする前にこう持ちかけた。
     「あの男はアテーナイの王位を狙っている不届き者に違いありません。どうしても王に会いたいと言うのであれば、あの暴れ牛を退治して見せよと申し渡すべきです」
     あの暴れ牛に勝てる者など、いるはずがない……とメーデイアは思っていたのだが、テーセウスは難なくそれを退治してしまった。彼はアテーナイへ来る道すがら、何度も化け物退治をしてきていたのである。
     「そうしてテーセウス王子は祝宴の席に招かれて……アイゲウス王は彼が所持していた剣とサンダルで、自分の息子だと気付いたというのだ」
     エウリュステウスが言うと、ヘーラクレースは、
     「それでメーデイアは?」
     「生まれたばかりの王子と、連れ子の男の子二人を連れて、行方をくらましてしまったそうだ」
     その連れ子の男の子というのは、きっとイアーソーンとの間に生まれた子供だろうな。いったいイアーソーンとメーデイアとの間になにがあったんだ? とヘーラクレースは思わずにはいわれなかった。
     「それからテーセウス王子はクレーテー島にも渡ったそうだ。クレーテーとアテーナイとの間には以前戦争があって、アテーナイが敗北したのだが、それからというものアテーナイは三年ごとに男女七人づつ――計十四人の青年を奴隷としてクレーテーに差し出さなければならなくなったのだが、その奴隷というのがどうもただの奴隷ではなかったらしくてな……ヘーラクレース、そなたクレーテー島で迷宮という名の牢獄を見なかったか?」
     「あっ、見ました! かなり大きな建物で……」
     「実はその中に魔物が棲んでいたらしい。奴隷として差し出された青年たちは、その魔物の餌食にされていたそうなんだ。それを知ったテーセウスは、自分がその貢物の奴隷にまぎれて、見事その魔物を退治したそうだよ」
     「すごいですね! わたしもそのテーセウスという英雄に会ってみたいものです!」
     「……うん。そこで話の本題なのだが……次のそなたの試練は、アマゾーンの女王ヒッポリュテーの金の帯を取ってくることなのだが……」
     「あのアマゾーン軍の女王ですか……」
     「そう。そして今回も勇士を募ってもいいとお許しをいただいている。そこでだ……彼を同行させてほしい」
     エウリュステウスが言うと、後ろの扉が開いて、まだ少年ともいえる青年が入ってきた。
     「彼が、アテーナイ国の王子テーセウスだ」

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  • from: エリスさん

    2010年04月30日 11時34分20秒

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    「Re:これからの注目作品」
    >  ....ってほどのものではないけど。


      (中略)

    >  さて、そしてこれはかなり先になりますが――うちで上映するかも決まっていませんが、たぶん配給元が配給元なので、やるんじゃないかと思われるのが「大奥」です。
    >  いつも楽しみに買っている雑誌・メロディーに「よしながふみ先生の大奥が実写映画化」と載っていた時には、本当に仰天しました。
    >  「やるんですか!? これを。やっちゃうんですか!」
    >  って、本屋で声に出しちゃいそうでした――かろうじて声にはなりませんでしたが。
    >  しかもこの間キャストが発表されまして、徳川吉宗役は柴咲コウで、水野祐之進役に嵐の二宮和也って! これまた、
    >  「いいんですか! ジャニーズがそんな役やって!」
    >  って、驚きしかありません。
    >  今ここで書くとネタバレになってしまうかもしれませんが、とりあえず原作の「大奥」がどんなストーリーかと言いますと――
    >
    >  三代将軍家光の時代、日本に疫病がはやった。その疫病は特に男子に罹りやすく、そのため男子の人口が女子の四分の一になってしまった。そこで血筋を絶やさぬために女は男を金で雇い、「種付け」をするようになる。
    >  この背景により、将軍職も男児から女児へと血筋がつながれ、大奥には将軍に仕えるための男子が集められるようになっていた。そして、身分違いのために好きな女性と添い遂げられない苦しみを抱えた水野は、大奥に入ることを決意する。
    >
    >  この水野という男はですね、一言で言えば優しい男なんです。優しいがゆえに、当時は婿を取るのは金持ちの娘だけで、武家であっても貧しい暮らしをしている女は、血筋をつなぐために金で男を買って「種付け」してもらっているって言うのに、彼はそういう女性から一銭も金を取らずに「無料奉仕」してあげてるんですね。
    >  いいんですか! 二宮君がそんな役をやっちゃって! 
    >  この原作のストーリー通りにやると、二宮ファンが泣きを見るような気がするんですが、そこはうまくやるんだろうなぁっと思ってます。
    >  私としては「大奥」は家光・有巧編が好きです。傷ついた者同士が慰めあうように愛し合っていた、そんな家光(千恵)と有巧(お万の方)の姿が切なくていいです。
    >  吉宗・水野編がうまくいったら、そっちも映画化されるのかな? だったら有巧はぜひとも堂本光一で。女装した有巧を綺麗に演じられる俳優は、光一君以外考えられないし。
    >
    >  というわけで、映画談義というよりは、私のジャニオタっぷりが発揮された書き込みになっちゃったかな。


     この書き込みをしてから大分たちましたが、とうとう私が勤務する映画館でも上映することが正式に決定しました。
     前売り券も明日から販売されるそうで.....私は水野の「流水紋裃(かみしも)ストラップ」が欲しいので、買ってしまおうかと野望しています。
     昨日から全キャストが発表され、ポスターも公開になってますが、水野役の二宮君は、やはり水野らしさを表現するために、目に力をこめてましたね。
     どんな作品になるのか、ちょっと楽しみになってきました。

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  • from: エリスさん

    2010年04月23日 12時37分11秒

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    「ヘーラクレースの冒険・50」
     トラーキアから帰還する途中、ヘーラクレースの一行はテッサリアのペライへ立ち寄った。そこの王であるアドメートスとはアルゴー遠征で戦友となった仲であった。その為、自分がアルゴナウタイから外れた後のイアーソーンたちのことも知りたかったのも手伝って、一夜の宿を頼んだのだが……運の悪いことに、ちょうど王妃アルケースティスの葬儀の最中だった。
     それでもアドメートスはヘーラクレースを追い返すことはせず、
     「離れでよければ、疲れを癒して行かれよ。満足な接待はできないが」
     と、自らその離れ屋に案内してくれるのだった。
     こんな日に訪れたのも何かの縁と、ヘーラクレースも葬儀に顔を出してお悔やみしようとしたところ、ヘーラクレースは祭壇に乗せられたアルケーティスがまだ生きていることに気づいた。
     「これはどうしたことだ! なぜ生きている人間の葬儀などしている!」
     ヘーラクレースが友人を問い詰めると、彼は泣きながら告白した――かつてアポローン神が怒りにまかせて、何の罪もないキュクロープス兄弟を殺害してしまったことがあった。そのことでアポローンは奴隷として一年間、人間に仕えなければならなくなった。その奉公先が当時はまだ少年王だったアドメートスのところだった。
     アポローンは名目上は奴隷として仕えながらも、アドメートスのおかげでそれほど辛い思いはせず、無事に一年の刑期を終えることができた。そのことに感謝していたアポローンは、アドメートスが年頃になったとき、思いを寄せていた女性(アルケースティス)と結婚できるように取り計らってあげたのだった。そして二人の結婚式の日、さらにお祝いをしてやろうと運命の女神たち(三人の女神)モイライを呼び寄せたのだった。
     だが、モイライの三人の女神はどうも機嫌が悪かったのか、こんな祝福の言葉を与えた。
     「寿命を教えてやろう。そなたは長生きできない。そう、あと五年で死ぬことになる」
     まったく祝福になっていない言葉だった。アポローンは責任を感じてその祝福の言葉を撤回させようとしたのだが、相手が三人ではとても敵わない。せいぜいアポローンができたことは「緩和」することだけだった。
     「誰かがアドメートス王の代わりに冥界へ行けば、王は助かる」
     ではその時は私が身代りに……と、アドメートスの年老いた両親が言ってくれたので、その場はなんとか納まったのだが……。
     それから五年後。ついにアドメートスの心臓が苦しみ始めた。
     アドメートスは先ず、かなりの賞金をかけて、代わりに死んでくれる人を募集したが、誰も名乗り出なかった。両親もいざとなったら死を恐れてしまう。
     するとアルケースティスがこう言った。
     「それならば私が身代りになりましょう」
     その途端、アルケースティスは意識を失って倒れてしまったのであった。
     ――この話を聞いたヘーラクレースは、友人をなじった。
     「自分さえ生きられれば、愛する人が死んでもいいのか!」
     「いいわけないだろう!」とアドメートスは言った。「妻が意識を失って、それならとわたしはすぐに自殺しようとしたのだ! それなのに、胸を貫こうとした剣は途端に切っ先から曲り、首をつろうにも綱が切れ、頭から水瓶に飛び込んでも弾き飛ばされてしまう。つまり、わたしは死ねない体になってしまったのだ。神のお言葉が成就されるために!」
     泣き崩れるアドメートスの背中をさすってやりながら、その時ヘーラクレースは葬儀場の隅に、人間には姿が見えないようにしていた死の神タナトスを見つけた。(ちなみに運命の女神たちモイライと、死の神タナトスは姉弟であり、不和女神エリスとも姉弟になる)
     タナトスさえ追い返せばアルケースティスは死ななくて済む、と考えたヘーラクレースは、すぐさまタナトスに挑みかかった。だが、こうゆうことには慣れているタナトスは、見かけによらず手ごわい相手だった。大乱闘の騒ぎは冥界にいるハーデースやペルセポネーの耳にまで届いた。
     するとハーデースは言った。
     「もう良い、タナトス。今回のことはそもそもモイライ達の悪ふざけから来たもの。あの三人にはわたしから言っておくから、アルケーティスは連れてこなくても良い」
     こうしてアルケーティスは意識を取り戻し、葬儀も取り止めになったのだった。
     そのあとはヘーラクレースたち旅の一行を招いての酒宴になったことは言うまでもない。そこでようやくヘーラクレースはイアーソーンのその後を聞くことが出来た――コルキスでメーデイアという王女に出会い、彼女の手助けで黄金の羊の毛皮を手に入れられたこと。そしてイアーソーンはメーデイアと結婚して故郷に帰ったと……イアーソーンに不幸が訪れるのは、もう少し先のことになる。

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  • from: エリスさん

    2010年04月16日 14時30分09秒

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    「Re:ヘーラクレースの冒険・49」
     ヘーラクレースが恋人の死を悼み、彼女の墓とともに作った都市、アマルフィー.........ではその恋人とは誰だったのか?


     そもそもこれを追求するために書き始めたのですが...






     男じゃん!
     なにが「女神の報酬」ですか、お付きの少年じゃないか!


     と、資料を読み解いていくうちに私は思いました。
     すると、「マンガ ギリシア神話」を描かれた里中満智子先生がこう書いておられました。
     「ここにもヘラクレスが来て活躍したんだ、ここにも.....という話がどんどん盛り上がり、それで到る所にヘラクレスの物語が残ったのでしょう」
     ――なるほど、じゃあ「アマルフィ」の話は、アブデーロスの話を主軸にした、誰かの創作だと?
     そう思えば角は立たないのかなァっと、今は思っています。

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  • from: エリスさん

    2010年04月16日 14時17分54秒

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    「ヘーラクレースの冒険・49」

     それでは前回宣言したとおり、今日からはストーリーだけを解説します。小説は最後の方の話だけ書きますので。


     エウリュステウスからアルゴナウタイに参加することを許されたヘーラクレースは、一路コルキスへと向かいます。アルゴナウタイのメンバーの中には、詩人のオルフェウスや、後にアキレウスの父となるペーレウス、そしてペーリアス王の息子のアカストスもいました。アカストスは父親の卑劣なやり方に反発して、イアーソーンについてきてしまったようです。
     また後に出てくるテーセウスもこの中に居たようですが、そうなると今後のストーリー展開でつじつまが合わなくなってしまうので、ここでは「居なかった」ということにしておきます。
     コルキスへの旅の途中、一行はキオスに上陸した。飲み水と食料を求めてである。そこで、ヘーラクレースの従者ヒュラースが、その森に棲むニンフに一目ぼれされて、連れさらわれてしまう。ヘーラクレースはアルゴー船を降り、ヒュラースを探し回った――ヘーラクレースがなかなか帰ってこないので、イアーソーンは仕方なく二人を置いて旅立つことにする。
     そしてヘーラクレースがヒュラースを見つけ出すと、ヒュラースは自分に恋してくれたニンフが普段一人ぼっちで、可哀そうだし、自分もこの子が好きになってしまったから、ここに置いていってほしいと懇願する。ヘーヘラクレースはそれを快く承知し、一人でミュケーナイへ帰るのだった。

     ヘーラクレースと別れたイアーソーンは、無事にコルキスに辿り着き、その国の王女メーデイアの手助けを得て、黄金の羊の毛皮を手に入れるのだが、またそのメーデイアのおかげで災難にも見舞われるようになった。その物語はまた別の機会に。


     ヘーラクレースの七番目の試練は、クレーテー島の牡牛を連れてくることだった。
     この牡牛はただの牛ではなかった。そもそもはポセイドーン神が「いずれ生け贄として海中に差し出すように」とクレーテー王のミーノースに約束させて下げ渡した牛だが、ミーノース王はその牛の美しさに目がくらみ、生け贄には別の牛を捧げた。当然ポセイドーン神がそれを見破れぬはずもなく、ミーノースは罰を受けることになった。
     先ず、ミーノースの妃パーシパエーが、神の呪いによりこの牡牛に盲目的な恋をしてしまう。パーシパエーは発明家のダイダロスに頼んで、牝牛そっくりの入れ物を作らせた。そして牡牛がいる牧場にそれを置くと、中に入り、牡牛と契りを結んでしまったのであった。
     その十ヶ月後、パーシパエーは奇妙な子供を産んだ――胴体は人間だが、頭だけが牛の化け物だった。しかもその子は、まだ赤子だというのに大人よりも力が強く、そして倒した人間を食べてしまった。
     ミーノースはダイダロスに命じて、迷路のような牢屋「ラビュリントス」を作らせ、その迷宮の中に化け物――ミーノータウロスを閉じ込めたのだった。
     そして、パーシパエーと通じた牡牛は、我が子が生まれるのを見届けるとすぐに暴れ牛にと変じた。
     ヘーラクレースが退治を頼まれたのは、この暴れ牛だった。ヘーラクレースもエウリュステウスも、この国でそんな忌まわしいことが起こったことも、ミーノータウロスという化け物がいることも知らされなかった。
     ヘーラクレースがこの暴れ牛を捕らえたところ、牛はたちまち暴れるのを止め、おとなしく美しい牛に戻った――どうやらいづれかの神の御心でそうなったらしいのだが、とりあえずヘーラクレースが生け捕りにしてミュケーナイに連れて帰ると、
     「こんなに美しい牛を殺すには忍びない。おとなしくなったのなら、野に放してやりなさい」
     というエウリュステウスの慈悲で、解放された。――後にこの牛はまたアッティケーあたりで暴れ牛になるのだが、新たな英雄であるテーセウスに退治されることになる。
     

     第八の試練はトラーキア王ディオメーデースの馬を捕らえてくる、ということだった。この馬は人を殺して食べる、という噂が流れていたが、前回の暴れ牛も捕まえてみたら大人しくなった、ということから、
     「単に肉食の馬なのかもしれない。ディオメーデース王が悪戯に馬に人肉を食わせているだけなら、その馬が可哀想だから掻っ攫ってくるがよい。だが、本当に自分から人を襲って食っている化け馬なら、遠慮はいらぬ。退治してしまえ」
     と、エウリュステウスはヘーラクレースに命じた。
     このディオメーデースは「自分は軍神アレースの子である」と吹聴し、また剣術も強いことから、周りの人々はそれを信じて、ディオメーデースの悪行に目をつぶることしかできないでいた。
     この時初めてヘーラー女神から同行者を許されたヘーラクレースは、数人の義勇の士をつれてトラーキアへ向かった。
     そしてディオメーデースと対峙し、肉食の馬を三頭とも手に入れたのだが、追手が激しく、仕方なくアプデーロスという少年に馬の番をさせて、追手と応戦した。
     そして戦いの末、追手がディオメーデース一人になったとき、ヘーラクレースは店を仰ぎ見た。
     「軍神アレース様! この者が真にあなた様の息子であるなら、わたしはこの者を殺すことができません。どうか、あなた様が直々にお裁きくださいませ!」
     するとアレースは天から舞い降りてきた。アレースはディオメーデースの額の傷口から血を一掬い指に取ると、それをなめて確かめた。
     「この者は俺の息子ではない。この男の血は完璧に人間のもの。つまり、この男は我が名を騙り、悪行の数々を重ねてきた不埒者だ! 我が弟ヘーラクレースよ、こやつを成敗せよ!」
     「御意!」
     ヘーラクレースは一刀のもとにディオメーデースを斬り殺した。
     そしてアプデーロスのもとへ戻ると、彼はもうすでに肉食の馬に食い殺された後だった。
     ヘーラクレースはエウリュステウスの命のままに馬を退治したのち、その場所にアプデーロスの墓を建て、都市を作った。それがアプデーラ市の始まりである。

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  • from: エリスさん

    2010年04月16日 11時27分52秒

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    タイタンの戦い

     この映画が始まることで、またうちのサークルのアクセス数が上がってきました。

     私の勤務する映画館でも上映しますけどね、3Dで。
     でも、私がこの映画に対して解説することは、何もありません。

     なんでか?

     役者が美少年じゃないんだもん(-_-)
     ペルセウスって言ったら、アンドロメダア王女が一目惚れするぐらいの美少年じゃなきゃ駄目じゃん!!!!!

     ということで、私はこの映画に関しては語る気はないので、あしからず。

     とりあえず補足だけしておきますと、ヘーラクレースはペルセウスの曾孫になります。

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  • from: エリスさん

    2010年04月09日 15時01分54秒

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    もうお気づきとは思いますが

     ここしばらく.......2か月ぐらいかな、「ヘーラクレースの冒険」を連載することに苦痛を感じています。


     どうしてか......私の好きな「女の子同士の話」が書けないから。


     自業自得なんですけどね、自分から連載始めたんですから。
     そもそも「アマルフィ」という映画でヘーラクレースのことが題材になったので、映画館に勤める人間として、これは取り上げるべきかな? と軽い気持ちで書き始めたのですが.......ここまで苦痛になるとは思っていませんでした。


     今後どうするか......ざっと冒険のあらましだけを書いて終わりにしようか、とも考えています。
     ご意見ありましたらお寄せください。

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  • from: エリスさん

    2010年04月09日 12時26分37秒

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    「ヘーラクレースの冒険・48」
     巫女が神託を受ける儀式を始めると……巫女はすぐにそれを止め、ヘーラクレースの方に振り返った。
     「神託は、女神さまが直接お話しなさるそうでございます」
     「直接?」
     「はい。私は席を外しますので、どうぞお気兼ねなくお話をなさってくださりませ」
     巫女はそういうと祭壇を降り、退出していった。
     それと入れ替わるように、天井から光り輝く誰かが舞い降りてきた。その姿を見た途端、そばにいたヒュラースは床に平伏した。
     アテーナー女神だった。
     「そなたを騙すようなことをして、済まなかったのう、我が弟よ」
     アテーナーは親しげに言いながら、ヘーラクレースの顔を上げさせた。
     「でも私も、計画の全貌を知らされたのは、そなたを旅立たせたあとだったのですよ」
     「その計画とは?」
     「イアーソーンを英雄にする計画です。その方がイアーソーンをお気に召して、彼を正当な形で王位に就かせてやろうとしているのですよ」
     「その御方とは、いったいどなたなのですか?」
     「その方はそなたの主君エウリュステウスの守護神でもあらせられる」
     「え!? それでは!」
     自分に試練の数々を与えている張本人――つまり、オリュンポスの王后神ヘーラーのことじゃないか!……と、ヘーラクレースは思った。
     「なぜそんな方が、わたしをイアーソーンの助っ人になどしようとなさるのです。わたしなど目障りにしか思っていらっしゃらないはずです」
     するとアテーナーは優しく首を振った。
     「そうではない。あの方はそなたを目障りに思ってなどいらっしゃらない。ただ、あの方にはご自分が司るものを守るお役目があるから……」
     「お役目、でございますか?」
     「そなたは……いや、人間たちの多くは誤解しておろうな。あの方が夫の愛人に対して、かなりひどいことをなさるから。嫉妬心の強い非情な女神だと、そう思っていよう。でも、それは貞節を守らなかった女と、その子供に対してだけしていることで、たとえば……この私は、あの方にとって先妻の子供だが、我が子のように育てていただいて、とても言葉では語りつくせぬほど感謝している。できることなら、本当の娘になりたかった……」
     その時のアテーナーの切なさが、ヘーラクレースにも伝わってきた。
     アテーナーは尚も続けた。
     「他にも、我らが父ゼウスに暴力で手ごめにされ、それを苦に自殺しようとした娘を助け、その娘が難産で亡くなった時は、生まれてきた子を自らが乳母となって育てている。……あの方は、不倫の果てに子供を作る女を許してはならない立場におられるのだ。だから、夫がいるにもかかわらずゼウスと通じたそなたの母を許せず、そなたにも試練を与えている。だが、その範囲ではない、明らかにゼウスの被害者になっている女はちゃんと助けているのです。そういう方なのですよ」
     本当はヘーラクレースも「ゼウスの被害を受けた女が産んだ子供」にあたるのだが、自分の出生の詳しい話を聞かされていないヘーラクレースは、アテーナーの話に素直に納得した。
     「そもそも、そなたの試練も“罪を償うため”であったはず。そなた自身が起こしてしまった罪と、母親が夫がある身で他の男と通じた罪。この二つを償うために、そなたは試練を与えられている。その試練を乗り越えたとき、そなたは許され、あの方もそなたをお認めになるだろう。むしろ、そなたを認めてあげたいからこそ、この試練を与えているのだと考えておくれ」
     「はい、アテーナー様」
     「さて、それでイアーソーンのことであるが……彼を英雄にするには、先ずはこの後の旅を成功させなくてはならない。それにはどうしても助けがいる。その助っ人に一番ふさわしいのはヘーラクレースだと、あの方は思われたわけだが……そなたに試練を与えている立場上、そなたに頭を下げて頼むわけにはいかない」
     「そんな、頭を下げるなど……」
     「そうだな。頭など下げなくても、命令されればよろしかったものを、そこは謙虚に考えてしまったのだろう。それで、そなたの守護神として認められた私に協力を頼んできたのだ。そなたをイオールコスまで導いてほしいとな」
     「そういうことでしたか」
     「もちろん、そなたの一存で決められないことは分かっている。すぐにエウリュステウスに手紙を書き、相談するがよい。きっと、彼は反対しないであろうよ」
     アテーナーのその言葉に「自分が旅に行きたがっている」ことを見抜かれてしまっているに気づいたヘーラクレースは、苦笑いをした。
     「わかりました。すぐにそう致します」
     ヘーラクレースはアテーナーが天上へ戻ると、すぐに手紙を書いて、ヒュラースの伝書鳩を飛ばしたのだった。

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  • from: エリスさん

    2010年04月02日 15時20分04秒

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    「ヘーラクレースの冒険・47」

     ヘーラクレースが現われたという知らせはすぐにイアーソーンにも伝えられ、彼も港に駆け付けたのだった。
     「我が守護神の導きにより、今、僕のところには49人の勇者が集まっています。我が守護神によれば、あと一人、千人力の英雄が現われると言われました。それはあなたしかありえない!」
     イアーソーンの言葉にアルゴスもうなずいた。
     「我が守護神アテーナー様もおっしゃられた。私が英雄を一人導くから、助けてもらえと」
     「しかし……」とヘーラクレースは言葉を濁した。「わたしは試練の途中であるから」
     それでも彼らが必死に頼み込むので、
     「ではわたしも神託を受けてこよう。しばらく待っていてほしい」
     と、ヒュラースをその場に残して、近くの神殿へと入って行った。

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  • from: エリスさん

    2010年04月02日 14時55分53秒

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    「ヘーラクレースの冒険・46」
     ヘーラクレースがイオールコスに着いたのは、その二日後のことだった。その頃には「悲劇の王子が冒険に出る」噂が町中に広まっていて、ヘーラクレースとヒュラースの耳にもすぐに入ってきた。
     「コルキスまでの旅か……難所がいくつもある、危険な旅になりそうだなァ」
     ヘーラクレースが気の毒そうに言うと、ヒュラースもうなずいた。
     「もしかしたら、この大木を届ける船大工のアルゴスさんが、王子の船を作っているのかもしれませんね」
     「きっとそうだ。そしてこの大木こそ、その船の船首になるのかもしれない」
     二人は船大工のアルゴスを尋ね歩いて、港に辿り着いた。その畔でまさにアルゴスが船を作っていたのである。
     大工の一人に声をかけると、その者はすぐにアルゴスを連れて戻ってきた。
     アルゴスは両手を開いて出迎えた。
     「お待ちしておりました! アテーナー女神の神託により、我等のもとに英雄が現われると。どうぞ我らをお助けください、ヘーラクレース様!」
     「……え?」
     彼らはすっかり、ヘーラクレースも冒険に参加するものと思い込んでいた。

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