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神話読書会〜女神さまがみてる〜

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from: エリスさん

2006年11月23日 16時05分44秒

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女神の食卓・1

神話には時折「生け贄」というものが登場する。戦勝祈願の場合が多いが、他にも、常日頃の守護に感謝してのことだったり、雨乞い、豊穣祈願、旅の無事故祈願、な

神話には時折「生け贄」というものが登場する。
戦勝祈願の場合が多いが、他にも、常日頃の守護に感謝してのことだったり、雨乞い、豊穣祈願、旅の無事故祈願、などなど。中には「めずらしい動物だったから」という理由で生け贄にされたりもする。
とにかく「神様にお願いしたいことがあったら生け贄を捧げる」という、現代の人間からは想像できない発想が当時にはあったのだ。

ここアルゴス社殿にも、そういった供物が届けられた。社殿の主人・ヘーラーはこういう時、自身の姫御子(娘)はもちろん、独立した養女のアテーナーも招いて、皆に振る舞うことにしていた。なぜなら、当時は冷蔵保存する技術がなかった為、せっかくの供物が数日で傷んでしまうからだ。
「願いの為に命を落としてくれたのだ。無駄にしては申し訳ない」というのが、ヘーラーの考え方だった。
今年は不和女神のエリスが養女として加わった。その分、傷んで捨てられる量も減るだろうと、ヘーラーは喜んでいた。

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from: エリスさん

2006年11月25日 14時18分07秒

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「女神の食卓・5」
ヘーラーは、肉を一切れ切って、料理長に差し出した。
「食べてご覧」
「は? しかし……」
「私が許可しているのです。お食べなさい」
「はい。では失礼して……」
料理長はヘーラーの手からフォークに刺さった肉を受け取り、食べた。途端、物凄い形相になって、思わず肉を吐き出していた。
料理長はすぐさま土下座した。
「申し訳ございませぬゥ!」
「いいえ、そなたのせいではありません。そなたは人間だから、たとえ味見であっても、神に献上されたものを口にできぬことは知っています。それでもいつもはとても美味しい料理を作ってくれるのに、このような不味さ。これは、そなたの落ち度ではなく、肉が悪いのです」
「はっ……そう言っていただけると……」
「それにしても」とエリスは言った「子山羊は初めて食べましたが、人間はこんな不味い肉を食っているのか?」
「いいえ、とんでもございません」と料理長は言った「子山羊はそんなに不味いものではございません。それなのにこんな味になったのは、きっとこの子山羊だけが粗悪品だったのでございます。珍しい毛色をしておりましたから、どんな味に仕上がるかと期待しておったのですが……」
料理長の言葉に、エイレイテュイアが言った「まったくの期待はずれだったのね」
「はい、まことに」
「まあ、そんな訳ですから料理長。この料理は下げて、新しい料理を作っておくれ」
ヘーラーの言葉に、料理長は即座に立ち上がると、皆のお皿を下げるのだった。
新しい料理が来る間、手持ち無沙汰になってしまった女神たちは、仕方なく果物をちょびちょび食べ始めた。
「こんなことがあると」と、ヘーラーは言った「しばらく子山羊は勘弁してもらいたいものだな」
するとエイレイテュイアが言った「アルゴス王に頼んでおきましょうか?」
「そうするしかあるまい。できれば鹿肉にしてくれ、と伝えておこう」
「あ、母君」と、エリスはヘーラーに言った。
「なんです? エリス」
「アルゴス王のお抱えの狩人は、罠とかも使いますか?」
「さあ……なにか欲しいものでもあるのですか?」
「はい。以前、アレースから貰ったものがありまして、それから病み付きになってしまいまして」
「おやまあ。食にこだわらないそなたが、珍しい。なんです? それは」
「はい、実は……」

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