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神話読書会〜女神さまがみてる〜

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from: エリスさん

2007年04月08日 14時41分18秒

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異形の証(いぎょう の あかし)・1

いつからか、僕がお母様の子供ではないことは、気づいていた。お母様とは全然似ていないし、どちらかって言うと従兄弟のリーモスやポノスとの方が似ていて――で

 いつからか、僕がお母様の子供ではないことは、気づいていた。
 お母様とは全然似ていないし、どちらかって言うと従兄弟のリーモスやポノスとの方が似ていて――でもその従兄弟は、正確には「従兄弟」ではなくて……。
 だから、叫んでしまった。
 「僕の本当の母親は誰なんですか!」
 お母様が悲しむ顔を見るのは辛いけど……でもどうしようもなかった、あの時。
 僕の成長が十五歳で止まってしまったのも、お母様が道ならぬ恋に奔(はし)った所為だと、だから僕が呪われてしまったのだと、そう思い込んでいた。
 「恥ずかしくないのですか。女同士で愛し合うなど、汚らわしい!」
 本当は汚らわしいなんて思ってない。お母様が本当に愛している人なら、祝福してあげたかったんだ。
 でも、あの頃の僕には、できなかった。
 気づいてしまったから……。
 僕の背中にある翼――それこそが、僕の本当の母親が「あの人」である証であると、分かってしまって。
 素直になれない自分を、僕はどうすることもできず……。
 「教えてください、お母様。どうして僕に、Eris(エリス)叔母様と一字違いのEros(エロース)を与えたのですか!」
 そんな問いに、お母様が答えられるはずがないのは、分かっていたのに……。
 「お母様の血だけを引いていれば、僕が《異形の神》として生まれるはずがないんだ!!」

 言葉ではどんなに反発しても、
 本当は、
 エイレイテュイアお母様も
 エリス叔母様も
 大好きなのに……

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from: エリスさん

2007年04月25日 13時21分47秒

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「異形の証(いぎょう の あかし)・7」
 そしてあの日……僕がお母様を問い詰めて、本当のことを聞きだそうとした時、エリス叔母様が話しに割って入ってきて、お母様を弁護した。――僕はエイレイテュイアの正当な息子であって、断じて不和の女神である自分の子供ではないと。
 だから僕は叫んでしまった。
 「僕がお母様の血だけを継いでいれば、異形の神になるはずがないんだ!」
 そのときの叔母様の表情は、今でも忘れられない。悲しいのに、必死に平静を保とうとしている、そんな表情――あの時、気づいたんだ。僕がこんな体で生まれてきたことを、一番気にしていたのは叔母様――実の母君だったんだって。僕は言ってはならないことを口走ってしまったんだ。
 居た堪れなくなって、部屋から――社殿から飛び出した僕を、探しに来てたくれたのは、もう一人の叔母・ヘーベーだった。
 ヘーベー叔母様は、僕が生まれた経緯を詳しく教えてくれた。
 エイレイテュイアお母様がエリス叔母様を愛しすぎたあまり、懐妊中の叔母様の寝室に忍び込んで、僕を奪い取ったこと。そうまでして愛する人の子供を産みたがっていたこと。胎内から僕を奪い取られて、どんなにエリス叔母様が悲しみ、苦しんだかということ。そして、僕が生まれたとき、僕の背に「夜の女神の血筋の証」があることを知って、エリス叔母様が嘆き悲しんだことを。それでも、僕が生まれてエイレイテュイアお母様は本当に喜んでいたと、ヘーベー叔母様は切々と教えてくれた。
 「だからね、エロース。二人のお母様を恨まないであげて。二人とも、あなたを心から愛しているのよ」
 ヘーベー叔母様の話を聞いて、僕は少し吹っ切れた――教えてもらえて良かった。知らないままだったら、僕は今でも二人を嫌いになろうと――嫌いになれるわけがないのに、それでも無理やり嫌いになろうと苦しんでいたはずだから。
 ――それからしばらくして、エリス叔母様――母君は、刑に服するために冥界の奥にあるという精進潔斎の場へと入って行かれ、僕たちとは会えなくなった。最終的には人間界に降りて、人間として罪を償うのだと聞いている。

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