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神話読書会〜女神さまがみてる〜

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from: エリスさん

2006年09月17日 17時43分58秒

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約束・1

アテーナイにそびえ建つ社殿、その名も処女神宮(パルテノーン)アルテミス(当時4歳)は、初めてそれを見て、あまりの立派さに、しばし見惚れてしまった。一

アテーナイにそびえ建つ社殿、その名も処女神宮(パルテノーン)
アルテミス(当時4歳)は、初めてそれを見て、あまりの立派さに、しばし見惚れてしまった。
一緒に付いてきた乳母のメルクーターも、
「凄いところでございますねェ」
と言ったきり、口をあんぐりと開けてしまった。
「……帰ろうか?」
つい、アルテミスの口から出た言葉に、
「そうですね」とメルクーターが簡単に言ってしまったのも、そんなわけで心ここにあらずだったからだ。
しかし我に返ったメルクーターは、首を勢い良く左右に振って、言った。
「いけません、君様(「主人」のこと。きみさま)。せっかくのアテーナー様からのご招待なんですから!」
「うん……そうだよね」
先日、4歳にして、オリュンポス社殿デビュー(社交界デビューだと思ってください)したアルテミスは、そこで異母姉にあたるアテーナーと知り合って、こう言われたのだ。
「私の社殿にいらっしゃいな。お近付きの印に、いいものをあげる」
とっても綺麗なお姉様! お優しいお姉様! だから、もっと仲良くしてもらいたくて、今日の招待をお受けしたのだが。
「こんな立派な社殿に住んでいるなんて、思わなかったのよ」
「さすがに、神王陛下の御長女なだけありますね。気後れする気持ちはわかりますが……」

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from: エリスさん

2006年10月29日 14時36分59秒

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「約束・27」
「なにを突然!?」と、アテーナーは驚いた。
「真剣な話です。私は、長くは生きられません。私の母が私を産んだときのように、私もこの子を産むときは、命と引き換えになるでしょう」
確かにそうかもしれないが……アテーナーは反論できなかった。
「そうなった時、誰が生まれてきた子を養育してくださるのでしょう。祖母はもう高齢ですし、ヘーパイストス様は危険なお仕事をなさっています。仕事場に子供を連れて行くわけにはいきません。同じ理由でキュクロープスのお二方も無理……ヘーパイストス様が他の女性をお傍に置かないかぎり、この子を養育してくれる方はいないのです。だからと言って、あのヘーパイストス様が他の女性などお傍に置くと思いますか?」
「……無理でしょうね」
おそらくガイアを恋人にしたのだって、アテーナーの面影を求めてのことに違いない。それはガイア自身も百も承知なのだ。だからガイアがいなくなってしまったら、ヘーパイストスはまた寂しい独身生活に戻るのだろう。そうなったら……。
「ですから、パラス様にお願いしたいのです。あなた様なら、この子をちゃんと養育してくださる。そうでございましょう? この子は、ヘーパイストス様の御子でもあるのですから」
愛する男性の子供----それだけでも、引き取って育てる価値はある。そのうえアテーナーは、ガイアのことをもう他人とは思えなくなっていた。
そう、このまま誰か違う女が引き取って育てる、などという話が持ち上がりでもしたら、自分は絶対にそれを阻止することだろう。
「わかったわ」と、アテーナーは言った「万が一、あなたがこの子を置いて冥府へ旅立つことがあったら、私がこの子を養育します。これは、処女神宮の守護神パラス・アテーネーが生涯をかけて誓った約束です」
「処女神宮……では、あなたは……」
ガイアはその時はじめて、「パラス」が「アテーナー」だと知った。----ヘーパイストスとの別離も納得がいったのである。
「でも、ガイア、忘れないでね」
アテーナーはガイアの右手をしっかりと握り締めながら、言った。
「子供は無事に生んで、あなたが育てるのよ。それが一番いいのだから、先ず、あなた自身が丈夫になることを考えてね」

----それから、三ヶ月がたっていたのである。

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