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恋愛小説発表会〜時にはノンジャンルで〜

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  • from: エリスさん

    2009年01月30日 15時12分02秒

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    「箱庭・54」
     「愛してる」という言葉は、絶対に言ってはならない。それは、相手を苦しめるだけ。この言葉だけは、一生封印しなければならないと、あの日誓ったのに……。
     どうしてそんなことを言うの? 喬志さん。
     杏子がとうとう大石と別れられなくなったから?
     私が、あなたを汚した張本人だから?
     それとも、私のことを哀れんでいるの?
     何故、私の決心を揺るがすようなことを言うのよ!
     「何度でも言うよ……結婚しよう」
     「……やめて……」
     「沙耶さん」
     「そんなこと言わないで!」
     私の叫びに驚いて、膝の上にいた飛蝶はビクッと体を起こした。
     「飛蝶、悪いけど、自分の部屋にいて」
     私がそう言うと、彼は何度も振り返りながら、自分の部屋へと行き、アスレチックの上に飛び乗った――眠る気はないらしい。私は構わず、襖を閉めた。
     「……沙耶さん……」
     「そう言えば……」と、私は冷ややかな声で言った。「私が喜ぶとでも思った?」
     「俺だって考えたんだ。生まれてくる子供のためにも、その方がいいって」
     「杏子さんと同じことをしようと言うのね。さすがに相思相愛でいらっしゃること」
     「こっち向いて、ちゃんと聞いてくれよ」
     「聞きたくないわ! 私を侮らないで!」
     私は怒っているのだろうか――いいえ、悲しんでいるんだわ。彼がこんな選択をしたことに。
     「私と結婚するですって? 良くもそんなことが言えたね。愛してもいない女に! 子供のためですって? 私たちが結婚すれば、一番不幸になるのはこの子なのよ」
     「どうしてそうなるんだよ! 片親の方が幸せだとでも言うの?」
     「そうよ。愛し合っていない両親ならね。子供はね、感じるのよ。敏感に察するの、自分の両親が愛し合っているか、そうでないか。そして憎み合っていると知った時、考えるのよ。それなら、どうして自分は生まれてきたんだろうって。獣みたいに、何の信頼もなく、生まれながらにして汚れた子供なんじゃないかって、ずうっと悩み続けるのよ。あなた知らないでしょ? そんな風に育った人間の気持ちなんか……」
     「……沙耶さん……」
     「それとも、私のこと愛せる自信、ある? 無理よね。あなたには来目さんがいる。絶対に忘れることのできない人が存在している限り――いいえ、例え彼女が死んでも! あなたが私を好きになることなんてないのよ。私にこの子を授けてくれたのだって、愛じゃない!! 慈悲の心よ。言い換えれば同情だわ」
     「そんなの!」と彼も叫んだ。「……初めから、わかってたことじゃないか」
     「……そうよ。だから、この子には……この子だけには、私たち姉弟妹(きょうだい)と同じ思いはさせたくないの!!」

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  • from: エリスさん

    2009年01月30日 11時27分59秒

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    「誰も守ってくれない」を見て

     「感想はネットの方に書くね」

     そう同僚に約束して、もう三日も経ってしまった。
     この映画はテーマがテーマなだけに、同僚たちも見るのに二の足を踏んでいるのだろう。だからこそ、私からの感想を聞いてから見るか見ないか決めようと思っているらしいのだが。

     正直、私もこの作品を見るのには勇気がいった。
     見れば絶対いやなことを思い出す。悲しくなること請け合いだ。
     それでも見るべきかもしれない――あの時の「先生」の気持ちを理解するために。

     私には12年間、音楽を教えてもらった先生がいる。某音楽教室の講師だ。音楽に関することにはかなり厳しい先生で、私のように大した才能もない生徒は、いつも先生を困らせてばかりいた。私がその音楽教室で唯一認められたのは、歌唱力だけだった。(楽器はほぼ全滅)
     そしてとうとう、右の手首を故障して楽器を扱うには耐えられなくなったことを切っ掛けに、私は音楽教室を辞めることになった。その最後の発表会を目前に控えてのこと。
     先生が珍しく受講生全員に食事をご馳走する、と言い出した。
     あいにく私はその日、他にも習いごとがあったので帰らなくてはならなくて、先生にそのことを伝えて丁重にお断りした。
     それから間もなくして、先生から手紙が届いた。次のレッスンから新しい先生に変わります、今までありがとうございました...と。
     発表会を目前にして先生が辞める、という不自然さに、誰もが驚き詮索した。先生にいったい何があったのかと。
     私はその答えを数日後に知ることになった。以前、同じ音楽教室にいた生徒さんのお母さんが、買い物途中のうちの母とばったり会って、こう言ったのだそうだ。
     「あなた、ワイドショー見た!? あの事件の犯人、先生の息子さんだったのよ!」
     当時騒がせた「コンクリート詰め殺人事件」の犯人グループのリーダーが、なんと先生の息子だったのだ。ワイドショーには実名は出なかったものの、「犯人の自宅」が映し出され、それが音楽教室の受講生だったら誰でも知っている先生の自宅だったのだ。
     犯罪者の家族になってしまった先生は、ご近所から嫌がらせを受けて、その地から逃げるしかなかったのだ。
     そのことを知らされるまでの私は、先生に見捨てられた気持ちでいっぱいだった。12年間も私のことを見てきてくれた人が、最後の舞台を見ずに、私の前から消えてしまった。それはきっと、私だけではなく他の受講生にとっても同じだったろう。
     だけどその事実を知って、私は先生の行動は正しかったことを知った。
     先生には娘さんもいたのだ。犯人の妹になる。
     あの事件は、今でも2ちゃんねるにスレッドが立っているぐらい衝撃的な――残酷な事件だった。スレッドの住人達の多くは、被害者の友人と、その人たちの思いに共感した人たちなのだろう。
     「こんな残酷な事件を、絶対に風化なんかさせない!」
     ときどきこんな文面が載せられていた。
     被害者の女性が受けた非情な虐待の内容を聞けば、誰もが怒りを覚えないわけにはいかない。私だって、そんな犯人は生きているべきではないと思う。
     でも、犯人の家族にまでその罰を与えなくてもいいと思う。
     先生と娘さんに降りかかった誹謗中傷がどんなものだったか、想像するだに恐ろしい。だからこそ先生は、娘さんを連れて逃げるしかなかったのだ。
     娘さんが被害者と同じ目にあわされる可能性は、十分にあった。


     「誰も守ってくれない」の中でも、犯人の家族になってしまった志田未来演じるシオリは、かなりな誹謗中傷を受ける。佐々木蔵之介演じる新聞記者が言った、
     「犯人の家族も罪を償うべきだと思ってる。死んで償うべきだと」
     という台詞は、被害者の家族なら一度は思うことだろう。
     「犯人はいつか町に帰ってくるが、うちの子は帰ってこない!」
     子供を殺された父親である柳葉敏郎が言った台詞。これも当たり前の心情だと思う。
     被害者の気持ちも痛いほど分かるから、本当は犯人の家族になんか同情しちゃいけないのかもしれない。
     でも私は音楽教室の先生とその娘さんのことを知っているから、家族だけは許してあげて、と言いたい。
     映画を見ている間中、ずっと私には志田未来が先生の娘さんとダブってしまって、泣きながら見てしまっていた。きっと周りにいた人たちは、
     「こいつ、感情移入しすぎ...」
     と呆れただろう。
     とにかく考えさせられる作品でした。


     まあ、そうゆうことだから。
     同僚の皆さん、これを読んで見るか見ないかは自分で決めてネ。

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  • from: エリスさん

    2009年01月30日 10時44分30秒

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    「箱庭・53」
     入浴を終えた彼が話してくれたことは、こうだった。――今日の朝方、産気づいた杏子は産院へ運ばれ、そこで夕暮れ時に男の子を出産した。その知らせは大石から本社社長である彼の伯父に伝わり、社内にも伝令が回ったのだ。夢占の通り帝王切開だった。
     「大石と結婚するって言われた時……」
     彼は俯いたまま話し出した。「やめろって、言ったんだよ。そんなの、自分が不幸になるだけだからって。好きでもないのに……。けど、自分には殺せないって――堕ろせないって、子供は」
     「クリスチャンですからね。宗教上、堕胎は許されていないんです」
     「うん……そうだけど、でも……自分の意思でそうなったわけでもないのに」
     私は思い切って言ってみた。
     「力づくだったんですか?」
     私らしくないことを言ったものだから、彼は驚いて顔を上げた。
     「私の母が、凌辱で私たちを生んでますから、そんなこともあるだろうって、思ったんです……そうなのね?」
     「まいったな……」
     喬志は前髪を掻き上げながら、ため息をついた。
     「君に言われると、いやでも思い出す……」
     「……え?」
     「いや、こっちのこと」
     喬志はそう言って、また溜息をついた。「杏子さん、俺に告白する二日ぐらい前に、病院で検査してもらったんだって。そしたら、まだ一ヶ月にも満たないけど妊娠していることが分かって……だから、もう俺とは駄目だって……あんな奴の子供、俺に育てさせたくないって言ってた。だから、あいつに責任を取らせるって……」
     やっぱり、杏子は喬志を愛している。愛しているからこそ、汚れた自分を彼の傍に置いておきたくなかった。憎悪して余りある男の子供を、彼に抱かせたくはなかったのだ。
     そんな彼女に、私はなんてひどいことを……。
     彼女がクリスチャンでさえなかったら――その前に、大石が東京に来さえしなければ、二人が引き裂かれることはなかった。
     私たちはしばらく沈黙を分かち合った。エアコンの風が時折、彼の髪を靡かせている――以前より伸びているせいか、俯き加減の彼がますます女っぽく見える。そんな彼に、掛けてあげる言葉が見つからない。
     口にしたい想いはいっぱいあるのに……。
     静かにしていると、脱衣場の乾燥機が止まる合図が聞こえてきた。
     「服、乾いたみたいね……今日はどうする?」
     明日も仕事だが、こんな憔悴しきった彼に出勤はできそうもない。だが、彼は「帰る」と言った。
     「少し、考えたいことがあるんだ……今度来る時までに、答えを出しておくよ」
     「……そう」
     泊まってほしいと思っているわけではないけれど、こんな気持ちのまま一人にされるのは寂しい。
     それでも、乾いた服を手渡して、私は彼が着替え終わるのを飛蝶の部屋で待っていた。飛蝶は私が入っていくと、黙ったまま寝床から顔を上げた――眠ってはいなかったらしい。そんな彼の頭をそっと撫でる。すると、飛蝶は声を細めて鳴いた。
     『私は大丈夫よ、飛蝶……辛いのは、喬志さんの方なの』
     私が思っていることを、この子は読み取ってくれるかしら?
     「沙耶さん……もう、いいよ」
     呼ばれて、居間へと戻る。
     そのまま、また沈黙に包まれて立ち止まる。
     「……帰るのでしょう?」
     「……ごめん……押しかけたの、俺の方なのに」
     「気にしないで」
     私は先に立って歩き出した。
     玄関で、彼用の別の靴を出してあげる。(靴までは乾かせなかった)靴べらを手渡し、また受け取る。こんなことを、もう七ヶ月も続けている。それでも、私たちの間の壁が崩壊することはない。
     私は、永遠に彼女には勝てない。
     今このとき、彼を殺してしまったとしても、私が手にいれられるのは亡骸だけ。魂は昇天して、彼女が天に召されるのを待ち、やがて同化して一つの御霊となる。――そんなことは、今更思うまでもなく分かっていたことだ。
     それなのに、彼に笑顔で見つめられると、心が疼く。
     「たぶん、気付いてないだろうけど……俺と杏子さん、一度もなかったんだよ」
     「……え?」
     「どころか、誰とも、なかったんだ。彼女はクリスチャンで貞操観念が強かったし、俺は俺で、妹のことがあって、そういうこと、嫌悪していたところがあったから」
     「あっ……ごめんなさい。私ったら、自分がそうだったから……千鶴ともそうだったし、結婚前提に付き合っていれば、そういうこと、自然なんだと思ってたの。だから、生まれてくる子供も、あなたの子じゃないかって……本当に、下世話な憶測だったわね」
     「……わかってないね、俺が言ってること」
     「え?」
     「それじゃ、土曜日にまた」
     彼は自分の置き傘を手にして、帰って行った……いったい、何が言いたかったのかしら?
     それより「妹のこと」って、どういうこと? それで嫌悪していたって……。
     妹さん――史織さんは、事故で死んだはず。
     私は喬志の夢を覗いた時のことを思い起こした。
     あの時、まだ子供だった喬志と史織さんは、雪が積もる山道を走っていた。後ろから中年の男に追いかけられながら。
     喬志に手をひかれていた史織さんの太ももには、血が滴っていて……。
     そこで私は気がついた。
     まさか!?……そうゆうことなの!?
     だからこそ、同じことをした大石を殺したいほど憎んだの?
     そんな過去を持っている彼が、そういうことを、嫌悪していたとしても無理はない。それなのに、私に協力してくれた……。
     そこまで思って、私はようやく彼が言いたかった事に気がついた。
     『杏子さんとも、誰ともなかった……それじゃ、私が!?』
     なんてこと……私はあまりにも残酷なことを強いてしまったのだ。誰にとっても初めての相手はというのは、尊く且つ清廉なものでなくてはならないものなのに、私のような女なんかと!
     罪悪感で胸が苦しくなる。
     「君は犯罪者だ」
     夢の中で彼はそう言った――その通りだわ。
     私は結局、母を凌辱し続けた父、祖母を権力で奪い取った祖父と、同じことをしていた。
     私は、犯罪者だった……。



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  • from: エリスさん

    2009年01月23日 15時28分52秒

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    「箱庭・52」
     ――夜になって、私はようやく仕事を始める気になった。悩んでばかりいても仕方ない。
     飛蝶はずっと私の足元で丸くなっている。おかげで爪先が冷えずに済んでいた――よっぽど私のことが心配なのだろうか。今日は一日中、私の傍を離れずにいる。養い猫に心配をかけるなんて、悪い親ね、私ったら。
     もうすぐラストシーンに差し掛かろうとしていた時だった。飛蝶が耳をピクピクッと動かして、起き上った。
     「どうしたの? 飛蝶」
     私の問い掛けに、一声鳴いてから、飛蝶は部屋を飛び出して行った。(ドアは飛蝶のために細めに開けていた)どうしたのか心配になって、私も階下へ降りていく……すると、玄関のすり硝子越しに、人影が見えた。あのシルエットは!
     この土砂降りの中、あの人は傘もささずに来たのだ。平日の今日に。こんなこと、以前にもあった。あのとき彼は……。
     私は急いで玄関を開けて、彼のもとへ走った。
     「喬志さん! なにかあったの!?」
     彼は……泣いていた。息を切り、なんとかして平静を取り繕うとしても、涙だけは隠せないでいる。
     飛蝶も彼のズボンの裾をくわえて、引っ張っている。とにかく中へ入れ、と言っているのだ。
     だが、彼は動けないでいた。
     「喬志さん?」
     「……生まれた……」
     「え?」
     「今日、生まれた……大石の子供が」
     私は夢のことを思い出した――早産。あれはこのことを暗示していたのだ。
     「とうとう生まれやがった! あいつの子供が! 杏子さんの体を使って!!」
     彼は私に縋りついた。
     「畜生ォ!! やっぱりあんな奴、殺しておけば良かった!」
     「……喬志さん……」
     大石の子供――確かにそう言っている。それじゃ、喬志には確信があるの? その子供が自分の子じゃないって。
     それから、彼を家の中へ入れるのは必死だった。彼の慟哭がなかなか収まらないのは無理もないことだが、あのまま雨に打たれているわけにはいかない。
     彼は、玄関を上がったところで、私がびしょ濡れになって、マタニティーが透けて下着が見えていることにやっと気付き、我に返った。
     「……ごめん……」
     私はできるだけ微笑んで見せた。
     「悪いと思ってるんなら、今日は言う通りに先にお風呂に入ってね。私は着替えを取りに行ってくるから」
     「駄目だ。君が先に……お腹冷やすといけないし」
     「暖房効いてるから、体拭いて、着替えれば大丈夫よ。それよりあなたよ。足なんか泥だらけなんですもの」
     と、私はいつになく強気で言った。「ついでだから、飛蝶も入れてあげてね、お風呂」
     あんな状態のまま、話なんて聞けない。強引でも、彼には落ち着いてもらわなくてはいけないから、私は彼を残してサッサと二階へあがって行った。
     それにしても……杏子のことになると、あんなにまで激しくなれるなんて、悲しいかな嫉妬してしまう。やっぱり、彼にとって彼女は絶対に忘れえぬ存在なのだ。身に染みてしまうわ。

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  • from: エリスさん

    2009年01月23日 11時46分29秒

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    「ご報告 続き」

    新風舎で出版したときに誤植になってしまったところも、ちゃんと修正されています。

     そして、値段もお求め易くなりました。

     写真の下になっているのが「新風舎版 罪ゆえに天駆け地に帰す」
     上が「文芸社版 罪ゆえに天駆け地に帰す」
     ちょっとだけ安くなってるでしょ? 千円でおつりが出ます(^-^)


     実際に店頭に並ぶのは3月になってからですが、予約はもうできますので、皆様よろしくお願いします。


     「罪ゆえに天駆け地に帰す」
    著 者・淮莉須 部琉(エリス ベル)
    発行所・文芸社
    3月15日発売予定

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  • from: エリスさん

    2009年01月23日 11時45分28秒

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    ご報告


    出版社の倒産により絶版に追い込まれた私の著作「罪ゆえに天駆け地に帰す」ですが.....。


     このたび、文芸社さんから再版されることになりました(^O^)/

     今朝このように、見本として我が家にも届きました。
     我が家に届いた25冊は、著者である私が好きなように使っていい本なので、

     私の知り合いの方で欲しい人がいたら、言ってね。届けますんで(^◇^)


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  • from: エリスさん

    2009年01月16日 15時46分24秒

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    最近のアニメ(萌え)

     「マリア様がみてる」の4シリーズ目が放送されているのに、どうしてエリスはそのことについて語らないんだ?

     って、思っていた読者の方、いますか???
     語りたくても語れない事情があるんです。
     実は、私が住んでいる東京では放送されていないんです(>_<)
     関東では千葉テレビと埼玉テレビで放送されているそうなんですが、我が家のテレビアンテナをどう設定しても、そのどちらも受信できませんで。
     千葉と埼玉の皆様、ウラヤマシス.....。
     
     なので私はどうしているか――我が家で唯一「足立ケーブル」と契約している兄に録画してもらって、何話かたまったらDVDにダビングしてもらって見せてもらってます(^◇^) これだと本放送からかなり日にちが経ってから見ることになるから、リアルタイムで見ている人には、
     「まだそこまでしか見てないのかよ」
     ってことになりますよね。ごめんなさい。でもそうするしかないんです。
     ああ、地デジが欲しい...。

     それで、昨日1話と2話を見せてもらったんです。
     エンディングの映像が...かなり萌えですよ、皆さん!
     志摩子さんと乃梨子ちゃん、顔近ッ! しかも和服!
     祐巳さんと瞳子ちゃんに到っては...................あとは皆さん、見てのお楽しみです(^◇^)



     フジ系のノイタミナ枠では「源氏物語千年紀 Genji」をやっています。もちろん保存録画しましたとも。
     今年はなんですか、源氏物語が完成してからちょうど千年にあたるんですかね? 去年の暮れには東山紀之が主演していた「源氏物語」のドラマが再放送されていましたし――あれの影響で、私の初夢も現代版源氏物語だったから笑える。
     そういえば魔夜峰央が「パタリロ源氏物語」を描いたのも去年だったっけ。あれはあれで面白かったけど、なんか打ち切りっぽい終わり方だったのが残念。
     で、昨夜のノイタミナの「Genji」ですが――冒頭で、光源氏が「嫌な男」っぷりを発揮していて、ちょっと嫌だった。そのあとで、
     どうして光源氏がこんな大人になってしまったか
     という「元服前の光る君」を語る部分に入って行って、ようやく光源氏に同情する気持ちが湧いてくる。
     映像も綺麗だし、うまい創りだなと思いました。
     来週は六条御息所が出てくるんですね。私は源氏物語の中であのキャラが一番好きです。自分と似たところがあるんで。 

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  • from: エリスさん

    2009年01月16日 15時11分51秒

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    「箱庭・51」
     脱力感から回復し、起き上がってから時計を見ると、もう七時になっていた。
     食欲がなくても無理矢理食事をし、掃除と洗濯を終わらせる。雨が降っていることもあって、今日の庭の手入れはお休みした。
     それでも、居間から庭を眺めながら、考える――あの夢にはいったいどんな意味があるのか。母のことを聞いたから、にしては日にちが経ち過ぎている。やっぱり何かの暗示と考えた方がいい。
     いくら片桐の血筋だからと言って、見る夢すべてが正夢になるわけではない。殊に殺人となると、現に以前見た「喬志が杏子を殺す夢」は当たらなかったわけだから、慎重に分析しなければならないのだ。そう、こうゆう時は「正夢」として考えず「夢占」をすればいい。それなら、殺人は全く逆の意味――復活、もしくは誕生という意味になる。
     誕生と言えば、今日は十二月十八日。杏子の出産予定日は今月の三十日と言っていなかったかしら?
     『帝王切開による出産……ってところかな? それにしては、あまりに強烈なイメージだったけど……』
     そんな単純なことなのだろうか? あまりに単純すぎて、自分の欲望が反映したのだろうか――杏子を殺したい、という欲望が。
     自分にまだそんな欲望があったなんて。
     私と喬志のは、言わば「不倫」。愛し合ってこうなったわけではなく、彼には杏子という長年愛し合ってきた恋人がいる。それなのに、無理矢理引き裂かれ、傷ついてしまったがために、仮初めの慰めを求めていたにすぎない。ちょうどそこへ私が子供欲しさに言い寄った――利害関係が一致したのだ。
     自分でもキツイ言い方をしているが、事実なのだから仕方ない。……それでもいい。彼の慰めになれるのなら、いくらでも自分を差し出すことは出来るけど……果たして、慰めになっているのか。ますます苦しめてしまっているのでは?
     前にも思ったけど、愛してもいない女に自分の子供を産ませるなんて、男の人にとってはきっと非常におぞましく、汚らわしく、恥ずべきことに違いない。それなのに、あの人は私に慈悲をくれた。本当に感謝している――だから、早く解放してあげなくてはならない、のは分かっているんだけど……。
     私は卑劣だ。
     結局、自分が彼と逢えなくなるのが辛いから、無言で引き止めてしまっているのだ。そしてまた、彼は優しすぎるから、私を見捨てられずにいる――無意識にも、私はそこまで計算しているのかもしれない。
     紅藤家の人間はどんなに良い教育を受けても、卑劣に育つ――と、以前母が私たちに言っていた。そうなのだろうか? 私は父ほど淫乱でもないし、祖父ほど卑怯者でもない、つもりでいた。第一、紅藤家の人間でも優しく貞節な人は何人か(それでも何人かなのだが)いる。だから、血筋のせいだとは思いたくない。
     血筋か……思えば、私には元華族の西ノ宮家と、古い伝承と信仰を受け継ぐ片桐家の血も流れているんだわ。特に私は祖母と顔がそっくりだから、片桐の血を色濃く継承している――と、郁子が言っていたっけ。それらの血筋も、私の行動一つで、汚れた物と言われてしまうのだろうか。
     私は、無力だ……。

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  • from: エリスさん

    2009年01月16日 13時38分12秒

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    「箱庭・50」



     その夢は、それから二、三日後の朝方に襲ってきた。
     気付いたら、手にナイフを握っていた――血染めのナイフを。
     見下ろすと、そこに臨月の杏子が腹部を割かれて倒れていた。
     これって……まさか……。
     悲鳴を上げそうになったその時、背後から声が掛かる。
     「君が殺したんだ」
     喬志の声だった。
     私は硬直して、振り向くこともできなかった。
     彼はゆっくりと私の前へと回ってきた……嘲笑の面持ちで。
     「君は犯罪者だ」
     私は、必死に首を左右に振った。
     「君が殺したんだ。彼女に、俺の子を産ませないために」
     「ちっ、違う……」と、やっとのこと声を出し、訴える。「違うわ、私じゃない!」
     言葉は、それ以上出せなくなった。
     喉を酷い痛みが襲う――いつの間にか奪われたナイフは、彼の手によって私の喉に刺さっていたのだ。
     「君は犯罪者だ」
     ――私を悪夢から助け出してくれたのは、飛蝶の声だった。
     目を開くと、真上には(当然のごとく)天井が見える。――飛蝶は私の耳元にいた。
     苦しい……喉に何かが詰まっているような感覚がして、息が出来ない。手足まで鉛みたいに重くなっている。――ようやっと、右腕だけを動かして、胸を叩く。そうすれば、いつもなら痞(つか)えが取れる。(本当に何かが痞えているわけではない。ただそんな感覚に襲われるだけなのだ)なのに、今日はいくら強く叩いても取れない……。そうしていると、飛蝶が大きな声で鳴いた。驚いて体がビクッとした瞬間、喉の痞えが弾けるように取れた。それでも、呼吸困難は長く続いた。
     あんな悪夢を見たあとでは、こうなるのも仕方ない。
     以前なら姉が背中を摩ってくれたり、花梨を持ってきてくれたりしていたが、今は私一人。助け手は誰もいない。
     私は無力だ――一人では何もできない……。
     飛蝶が心配そうに私の顔を覗き込む。大丈夫だよ、と言ってあげたいのに、声が出せない。鼓動まで高鳴ってくる。
     あまりの苦しさに目眩がする。このまま意識まで途絶えるのではないかと思った時、腹部に痛みが走った。
     ただの胎動じゃない。子供も苦しんでいるのだ。
     『駄目ッ、流れないで……あなたに死なれたら!』
     お母さんみたいになりたい。でも、お母さんまでで終わりたくない。目標であり出発点である母を目指すには、この子が必要なのだ。……それだけでなく、愛されずに育った私たちの分まで、この子を愛したい。
     だから倫理を犯したのに!!
     『死ぬもんですか!』
     手で這いながら、机へと向かう。その上に置いてある、勾玉を取るために。目眩で方向がよく分らない。それでも!
     すると、飛蝶がひらりと机上へ飛び乗った。代わりに勾玉を取りに行ってくれたのだ。紐をくわえて、引きずるようにして持ってくると、私の右手の中に勾玉を置いてくれた。
     その時だった――郁子(あやこ)の読経(どきょう)が聞こえ――いいえ、耳の奥に響いてきた。この経文は法華経の……? などと考えている間もなく、勾玉が光りだした。
     不思議なことに、痛みも苦しみも、その光ですべて治ってしまい、脱力感だけが残った。――まさかここまでハッキリとした効果を出すなんて……。今更ながら、郁子の霊力の高さには驚かされる。先刻聞こえてきた経文は、郁子が秘術を唱えた時に使った経文の一節だ。
     飛蝶が心配そうに声を掛ける。
     私は、飛蝶を抱き寄せて、頭を撫でた。
     「大丈夫よ。ありがとう、飛蝶」

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  • from: エリスさん

    2009年01月16日 12時41分52秒

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    「箱庭・49」
     「私の庭なんて、箱庭みたいなものね」
     しばらく沈黙が流れた――もう十二月に入って風もすっかり冷たくなっているのに、私たちはずっと佇んでいた。
     ようやく姉が重い口を開けて、言う。
     「明日からね、庭師の人に来てもらうことになったの」
     「庭師? よくお母さんが承知したわね。他人に庭をいじられるの嫌いなのに」
     「そうも言っていられにくにってね」
     「……お母さん、そんなに悪いの?」
     私の問いに、姉はしばらく答えるのを躊躇(ためら)い、それでも意を決するように私を見て、言った。
     「お母さんは、もう歩けない」
     私の驚愕をどう表現したら良いのだろう。杏子が結婚すると聞いた時よりも、動揺を隠せないほど、私は言葉が出なくなった。
     「膝が固まってしまって、椅子に座るのがやっとなの。立ち上がるのもキツイみたい。特に夜の寒い時間は。だから、ほとんど寝たきりになってる……それでも、昼間の温かいうちは歩こうと頑張ってるけど……」
     「……わ、たし……私……」
     言葉がうまく言えない。
     「私……家へ……家へ、戻る」
     「駄目よ!」
     姉は私の肩を掴んで、尚も言った。
     「あんた、そのお腹で戻ってきたら、お母さんになんて言われるかッ。お母さんのことよ、どんなことしてでも、あんたの子供、殺そうとするわよ!」
     「それでも……それでもいい!」
     「馬鹿!!」
     「だって、お母さんが、お母さんがッ」
     涙で言葉が詰まる――ただ悲しいだけじゃない。私たち姉弟妹(きょうだい)を愛さないまま、永遠に失われようとする者への、口惜しさ。そんなものもあったのではないかと、今は思える。
     その思いは、姉も同じだった。
     私を力一杯抱きしめた姉は、奥底から溢れ出たような声で言った。
     「このまま死なせたりしない!」
     「……お姉ちゃん……」
     「死なれてたまるもんですか。冗談じゃない……」
     これは罰だ――年老いた母を捨てて、一人の世界を築こうとした私への。私だけが苦しむのなら、どんな報いも甘んじて受けるものを、どうして母に……。お母さん……お母さん、お母さん、お母さん!
     許してなんて、言える資格はない。



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